太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
文は素晴らしい。こういったタイプの絵は私にはわからない。ので、絵をシャットアウトして読んだ。読み終わって、じっくり絵を見た。
1人の人間に執着した人間の愛憎、師など、高い位についた人間の振る舞いなどが、勢いある文章で描かれていた。まさかユダが主人公とは…。最初の方は気づかなかった。ただキリストと使徒の話をなぞらえて書いているだけだと思っていた。
ここに描かれているユダの愛憎は、ある世界的ピアニストを慕い、ピッタリとくっついている、ある日本のピアニストを連想させた。彼女も似た様な心境なのだろうかと重ね合わせて読んだ。
無駄のない力強い文章。素晴らしかった。
この文に絵はいらないかな。 -
Posted by ブクログ
新年の一冊目は、太宰治の後期作品集。
太宰はひさしぶりに読んだけど、あらためて好きだなぁと思わせてくれるような文体や世界観で、収録作のほとんどが掌編(随想?)ながら満足度が高かった。
そして、彼が死の間際まで連載のために執筆していたという未完の遺作が「グッド・バイ」。
太宰はこれを書きながら、自分ももうグッド・バイでいいと思ったのかもしれないね。
主人公である色男が数多の愛人と縁を切るため、絶世の美女(だけどひどい鴉声で大喰らいで金遣いが荒くて部屋は汚い。実写にするなら橋本環奈一択)に助けを乞い、クセの強い彼女を手懐けながら二人三脚で別離行脚にでるというような、明るくてユウモアと可能性に満ちた -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間くささを捨てたから人間失格なのか。語彙力。幾人かの現代人でも心の奥底で思っているだろうことがスラスラ言語化されている。見ず知らずの他人でも自分が注目されているかもと思う瞬間は私にもあってしまう。皿が空くのを待っている人や現金を出すまで待ってくれる店員など。それに怯えるような、酷く非難されているような気がしてしまう時もある。どの時代にも変わらない心が見れた気がして不思議な気持ちになった。やはり文字というのは素敵だ。ただ、知っていて考えないようにする人、そもそも気づいてない人がいる中、この闇と向き合っていた太宰治の苦悩は計り知れない。