太宰治のレビュー一覧
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学生時代、『待つ』を読んだ時に、この短い文章でこれだけ不安定な心情を表現できる文豪の才に衝撃を受けた記憶があったのと、乙女の本棚シリーズの本が欲しいなと思っていた頃にたまたま書店で見かけたので購入。
最初の数ページは、百年前の太宰の語りと、現代調のイラストに隔たりを感じたが、しだいに、じわじわと、この作品で語られている心許なさとイラストの虚無な眼をした少女が重なってきて、何度も読み返してしまう。眺めれば眺めるほど、小説世界を深掘りしていく耽美で病みを抱えたイラスト。
関係ないけど、ゲスの極み乙女の「id1」という曲に「ぼくらは少しだけ明日を待ちすぎてる気がする」という歌詞があるのを思い出した。戦争が始まって世の中に置いてきぼりにされたように感じて、生きづらさを拭ってくれる突破口を求めている。
この作品の最後の一文に、学生時代の私はただならぬものを感じたのだが、歳をくってから読むとそこまでの衝撃はない。ただ、確かに、どこかしらの駅に、こういう若い子はいるだろうなと思った。昔は私もそういう子どもだったかもしれない。そして、そういう頃の感性を忘れないでください、と語りかけられている気になった。 -
Posted by ブクログ
太宰治晩年の短編集
戦中の疎開中の出来事としての話しが多い
そして晩年ということで
なかなか苦しい生活の家庭や
それをかえりみずに
家に寄りつかない男の姿
健気に子供を抱えながら支える
妻の大変さ
などなどまるで自分のことのようだけれど
はたして本当に
こんなふうだったのか
それとも自分の不甲斐なさを
嘆きつつそんな男ばかり
物語上に登場させているのか
「おさん」では
愛人と出かけたまま帰らず
妻は諏訪湖まで遺体を受け取りにいく
いつしか心の中は
こんな将来でなければならないと
思い込んでいったかのよう
軽快な楽しい、しかもオチがあったり
そんな文章からは
お茶目な一面をうかがわせるが
本当の太宰治は
はたしてどんな人物だったのか
会ってみたいものです
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Posted by ブクログ
ネタバレ面白いが、誰に感情移入をすれば良いのか、何をテーマとして考えれば良いのかがわからなかった。前半は華族が徐々に困窮していく様子が描かれていたが、後半には恋愛模様が入ってくる。直治の絶望もそこまで描かれることなく、あっさり自殺してしまった。かず子の恋愛も上原に会いにいく前の心情、手紙、会っているときは面白かったが、あっさり終わってしまった印象。解説でも言われているように「膝を叩きたくなるような文章」はなかったように思える。
解説を読んだことで『斜陽』の読み方がわかった。
母と娘がだんだん落ちぶれていく。それと同時にかず子は思想が浅く飲んだくれの上原に惹かれていく。母が結核で死に、直治が自殺した中、醜くても生きる道を模索するかず子が描かれている。暗く繊細で退廃的な太宰が描く生きる決意が描かれている。 -
Posted by ブクログ
本書は、太宰治が新津軽風土記の執筆を依頼されて、生まれ故郷の津軽を歩いた旅日記だ。
完全なる私見だけれど、この本の面白さは3つある。
ひとつめは当時の津軽の風土に対する生き生きとした描写だ。書かれたのは昭和19年なので第2次世界大戦末期だが、ほのぼのして豊かな風土が歴史とともに描かれる。それは津軽に行ったことが悔やまれるほどだ。この本を手にして津軽を旅したくなる。
ふたつめはやはり太宰の女々しさというかうじうじしただらしのなさだ。彼の生家に仕えた女中や書生を訪ね歩く中で、太宰の煮え切らないウジウジした態度が垣間見える。そしてそれは太宰の魅力でもある。彼の人生を辿る旅でもあるので、太宰という人間がどうつくられたかが自らの筆で書かれており、そこも面白い。
最後はなんと言っても育ての親であるたけとの再会の場面だ。この本のクライマックスでもある。病状だった母のかわりに幼い太宰の面倒を見て、本を読ませたたけと30年ぶりに再会を果たす。ここは良質の恋愛小説でも読んでいるかの気持ちになる。
いろいろな楽しみ方ができる太宰らしくない明るい終わり方の本だった。 -
Posted by ブクログ
「ダメ男だ。」
と評価して読み終える人もいるかもしれない。
幼少期からの人生をここまで鮮明に、秀逸な文で心情を表した人は他にいないのではないかと思う。まさか彼と同じ人生を歩んだ人は殆ど居ないと思うが、そのダメ男の感情の中には私達の心の奥底にあった幾つもの共通点が、遂にその素晴らしい文で輪郭を浮かべられたはずだ。
この一冊は彼の人生を持ってして作られた唯一の本であり、死を予定した本人にしか造ることの出来ないもの。死を予定したことで許された走馬灯である。本作に追随する偉大な作品は、今後造られることは殆どないと思う。
ダメ男、ただこのダメ男によるあまりにも有名な「人間失格」という存在は間違いなく我々の心の柱になり、どれだけ多くの人々の心を和らげ、救ったのだろうかと想像する。この作品があまりにも有名であるという存在は、私には計り知れない程大きな意味を持っていると思う。その点日本人は幸運だとさえ思ってしまう。