【感想・ネタバレ】パンドラの匣のレビュー

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勉強は人格を形成するに共感した。僕もそう思う。勉強の姿勢によって人格が歪んでしまうのを理解しているから。勉強をしなさいで勉強をすると塞ぎ込み、檻の中で生活しているような感覚に苛まれる。檻の中にいると狂うのです。懲罰房の話を聞いたことがあるだろうか。あいつらは手足を縛られ、1ヶ月間会話と身体の自由をほとんど奪われるらしい。自由を奪われると人は狂うのだ。懲罰房の人間はげっそりして、歯茎から血を出し、目が虚ろになって出てくるらしい。そうだ、勉強は自分がやりたいようにやるのが1番なのだ。したくないものをやれと言われりゃ歪んでく、やりたいものをやれば良くなってく。いい形成のされ方をする。そんなことを考えさせられた。と言うより、明確化された。

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2024年04月29日

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ネタバレ

・あらすじ
「正義と微笑」
芹川進という少年の16歳から18歳までの日々を綴った日記形式の作品

「パンドラの匣」
健康道場(結核療養所)にいるひばりという渾名の男の子が友人に宛てた書簡形式の作品

・感想
どちらもYouTubeの朗読で聴いたのが初読?で、とても面白かったので活字で世界観に浸りたいと本を購入。
私の好きな朗読者の方は読み方・声・演技(私が聴いてる方はただの朗読というより若干の演技(誇張された読み手の解釈が入っている)がとても太宰作品の雰囲気に合っていてもうそのイメージが固定されてしまっている所がある。
今回はその雰囲気を保ったまま活字で読むことになったんだけど、なんだかよりこの作品たちの魅力が伝わってきてすごく面白かった!

正義と微笑は太宰で一番好きな作品(次点は黄村先生言行録シリーズ)で初読?は朗読だったんだけどやはり活字で読むとまた違った魅力がある。
芹川少年のあの年代特有の青臭さと潔癖さと万能感が微笑ましくて可愛い

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2024年02月25日

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「正義と微笑」は何度も読み返している。
漠然とした理想を掲げていた主人公が、生活人として地道に努力をするようになる。物事を継続できないときに読むと、自分も努力しなければならないと気が引き締まる。
「微笑もて正義を為せ!」「人を喜ばせるのが、何よりも好きであった!」という主人公の理念にもよく共感できた。「パンドラの匣」と合わせて、どちらも爽快な読後感だった。

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2024年02月16日

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スマホを見ていたら、「正義と微笑」の勉強についての一節が出てきて、気になったので買った。
この文庫本に収録される2作品は、どちらも若者が主人公の青春小説。若い頃ならではの葛藤や希望などが表現されている⋯という言葉だけでは表せないほど絶妙なところまで書き上げていると思った。
例えば勉強についての先生のセリフを読んで、最初は感銘を受けても、実行に移すとなると難しいし、実際できない。まさに今、中学生の自分。笑
感じのいいだけの陳腐な文章じゃなくて、作者個人の、特有の思いが伝わる文章が魅力的である。
そして、この小説からは、太宰治だからこそ書ける日々の尊さ、そして生きる希望を感じられる。
(解説までちゃんと読む人間のぼんやり解釈)

太宰治、角川文庫の人間失格と、教科書の走れメロスしか読んでなかったけど、やっぱり良い。
理屈では言えないけれど、文学のセンスを持ってるってこういうことなのかなと思わせる。

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2023年12月08日

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「パンドラの匣」は二十歳の主人公が親友へ宛てた手紙形式になっていて読みやすかった。手紙を読んでいくので不思議と主人公を近くに感じる。

こじれた恋愛と笑いもあって、ちょいちょい挟んでくる「新しい男」というワードが、昭和の厨二病感むき出しで面白かった。

主人公が結核患者なので、病み系かな……と思いきや。
匣を開けてみると、様々な絶望があるけれど希望もちゃんとあるという終わり方が非常に好みで印象に残る。
「人間失格」とは対照的な読後感が味わえた。

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2023年03月08日

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思春期のみずみずしくて苦い感じがまっすぐに表現されていてすごい
大人が読んでこのガキャと思ってしまうところとかわいいなと思ってしまうところのバランスがリアル
爽やかで読みやすい

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2023年02月04日

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ネタバレ

「もう君たちとは逢あえねえかも知れないけど、お互いに、これから、うんと勉強しよう。勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記あんきしている事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。」

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2022年10月06日

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ネタバレ

【正義と微笑】
多感な時期を過ごす青年の日記をモチーフにした小説。
人を見下したり、背伸びをしたかったり、でもあんまり努力はしなかったり。
そんな青年が、逃れられない現実と向き合っていく話だと思っている。
青年の兄のような、心から寄り添ってくれる味方がいたならば、人間は強く成長できるのだろう。
大切にしたい言葉はいくつかあるが、
「微笑もて正義を為せ」
「日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ」
が特に良い。

【パンドラの匣】
「健康道場」という一風変わった精神論的な病院に入院している、結核患者の書簡体小説。
病室の仲間の様子や、看護師との恋模様が描かれている。
看護師である、絶世の美人の 「竹さん」 をおばさんめいて書いたり、純粋で可愛らしい看護師の 「マア坊」を不良少女のように書いたり....。
主人公の主観的な見方が、手紙を交わしている人物がお見舞いに来た時のみ、客観視して見られるのがなんか本当に面白くて面白くて..。
あとは病室のメンバーが絶妙にすき。
越後獅子が1番好きだったから、あの終わり方は満足。
「好くも好かれるも、5月の風に騒ぐ木の葉みたいなものだ。 なんの我執もない。」 が1番好き。

太宰文学に珍しい、明るく希望に満ちた青春小説だった。
太宰治は森見登美彦さんが好きだから、私も好きになりたいと思う。

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2022年08月01日

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明治大正昭和、日本人の生活や考え方が劇的に変わった太宰治たちが生きた時代。
そんな太宰治の作品が、今生きている私にも共感できるのは、喜ばしいことなのかもしれません。
素直になりたい自分がいる。
素直になれない自分がここにいる。
でも勇気をもらえました。
明るい感じの太宰治がいい。

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2022年05月24日

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太宰治作品の中では明るめの青春(?)小説。
とても読みやすく、ページをめくる度めくる度、
楽しく読めた。
かるめの小説なのでオススメ。
正義と微笑は、少年ながらの様々な感情が感じられるようで良かった。

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2022年03月01日

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パンドラの匣は太宰治がこんな話を書けるのかと初めて知った一冊。まず第一に言葉が良い。美しくて味わい深い。そして、結核治療の道場というのに内容は底抜けに明るくて脳天気で、そして生きることと性愛に必死で一生懸命な人物たちが良い。見え隠れする死よりも、今ここでの生に必死になり、一喜一憂しときに自己防衛的に自分を誤魔化したり騙したりする主人公には、可愛らしさも感じる。太宰治の暗いイメージが一気に覆される。

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2022年02月19日

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『正義と微笑』がお気に入り。高校生の時に「なんで勉強なんかしなきゃいけないんだ」と、うじうじ考えていた時間に、本書に出会いたかった。でも、大人になってからの方が勉強の楽しさとか大事さが分かっているから、余計に言葉が染みる。

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2021年12月12日

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「正義と微笑」は日記形式、「パンドラの匣」は書簡形式で書かれていて、著者と対話をしているような感覚で読み進められた。とても読みやすくて面白い。
なかなかに辛辣な表現もあり、くすっと笑ってしまう表現もあり、なるほどと感心する表現もある。
戦後の新しい世の中に踏み出す人々はこんな気持ちだったのかなあ、と、想像を膨らませて読むことができた。約80年前の人々の暮らしや思想、言葉遣いは今と違っていることもあれば、同じ部分もあって、なんだか面白い。
「正義と微笑」の、勉強する意義を語る場面は本当に素晴らしいと思った。また、学生時代特有の、受験や将来に対する焦燥感や、自分は何者なのかといった悩みも書き表されていて、共感した。

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2021年08月21日

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「囀る雲雀。流れる清水。
 透明に、ただ軽快に生きて在れ!」

不幸と絶望が跋扈する匣に残る
一条の光、或いは希望の糸。

死病と闘う彼らの糸を編めば
柔らかな毛布となり心を包む。

「作者なんか、忘れられていいものだよ。」

蔓は伸びる。陽の差す方へ。

/////

中後期の太宰作品で数少ない「希望」に満ちた小説。やっと読めた!『正義と微笑』『パンドラの匣』2作収録。

『正義と微笑』序盤の勉強論が刺さり投稿したツイート、とっても多くの人に見て、色々教えても頂きました。感謝

これを機に勉強に一歩踏み出せたり、本好きな人がもっと増えたら嬉しい!!

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2021年05月01日

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読んでいて気持ちが明るくなる作品。
太宰治は人の心を書くのが上手いと感じていたが、このような青春真っ只中の若者の気持ちを描写するのにも長けていたのには驚きだった。

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2021年03月16日

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「正義と微笑」との二作。R大に合格するも俳優という職業に挑戦する芹川進。「パンドラの匣」では健康道場という結核療養所で看護婦への恋愛感情に迷う小柴利助(ひばり)。二作とも人間観察力の鋭い青年が悩みながらも日々真面目に考え抜いて人として成長していく青春物語。大人経験が長くなるにつれ、適当にやり過ごし鈍感になって、いつしか失ってしまった若者の純粋な気持ちの揺れ動きが、vividに表現されていて懐かしく微笑ましい。結局、凡人の私には、何十年たっても働くことの本当の意味、愛することの本質はわからずじまいですが、それでも希望をもち続け陽が当たる方向に進むしかない、と思っております。

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2021年01月05日

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笑える!爽やか!戦時中の作品とは思えません。
ラストの
「私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当たるようです」
この文章が堪らなく大好きです。

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2020年11月22日

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人生のテーマとなる言葉を掲げたり、知らないうちに隠してしまってた感情に向き合わなければならなくなることで、「大人になる」移行期が描かれている。

微笑もて正義をなせ!というフレーズは、嫌味がなく素敵だなと思った。
リアリストになったいま、尊敬していた兄を見る目が変わってしまったこと。死に依って人間が完成すると思い至ること。二篇を通して自分が10〜20代で感じたことが書かれてたように思う。

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2023年12月31日

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手紙調で書かれた作品
初めて読んだ太宰治作品だったけど、印象と違って爽やかな青春ものだったことに驚いた
恋心やルームメイト達を面白おかしく書いてあってサクサク読むことが出来た

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2023年11月03日

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「正義と微笑」
自分のやりたいことを悩みながらも見つけていく姿を見て、自分本位でムカつくときもあったけど、良かった。
「パンドラの匣」
恋愛観というか、女性観は昔のもので共感はできないけど、昭和のツンデレ男子が見れた。コロコロ変わる気持ちがいかにもウブでかわいい。

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2023年08月14日

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「パンドラの匣」「正義と微笑」、戦中戦後期に書かれた青春長編二作。
太宰の根底にある懐っこさに触れられた気がして何度も頬が緩んだ。

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2023年07月28日

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表題作「パンドラの匣」よりも、もう一編の「正義と微笑」の方が面白い。進学のため必死で勉強してきた16歳の芹川進という少年が、自分の本当にやりたいことは何なのかと自問し、演劇の道に邁進する。全編に散りばめられた聖書からの引用が胸を打つ。
太宰治の小説「女生徒」のような瑞々しさを感じる青春小説で、帯に強調されているような「なぜ人生に勉強は必要なのか?」という問いに率直に答えてくれるような小説とは少し違うが、人生や自分の行く道を考えるヒントを与えてくれる作品と思う。それでいてテーマをやたらと重く考えず、爽快感のある読後感を得られる作品と思う。「学生時代に読みたかった…」というのはその通り。

反対に、表題作は主観描写が続くので少々読みづらい。最後の「蔓の伸びていくところにあるもの」は印象的だが。

しかし、どちらもおよそ100年前の小説とは思えない、現代と変わらない若者の姿を描いていて素晴らしかった。戦前の小説ですよ、と言われなければ分からないであろう普遍性のある両作品である。

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2023年05月14日

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太宰治の文章は読みやすいな。
収録されている「正義と微笑」は日記、「パンドラの匣」は手紙、と主人公視点のごく限られた情報しかない中で話が楽しめる。
試験勉強をしながら「数学は今後の人生で役に立つの?」と思っているのや、「「助手(看護婦)の化粧が濃いから追放しよう」と大騒ぎするのは普段もてないからその仕返し」と分析されているところ。今でも通じるものがあるなと思った。私は、助手さんたちに健康道場の人たちは随分世話になっているんだから、厚化粧だろうが問題にするべきでないと思うけれど、時代的なものもあるのかな。孔雀さんが謝って丸く収まる描写は残念だった。

「或いはね」という主人公の口癖、女性に何もしていないのにモテてる様子は村上春樹の小説を思い出した。

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2023年05月10日

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「正義と微笑」
話が通じないという悩みの根底には
儒教だの体育会系だのいった紋切型への嫌悪がある
腹を割って互いの話を聞く姿勢を誰もが持ったならば
そんな悩みはすぐに解消するだろう
しかしそうはならない
理由は様々だけど、紋切型に全部はめ込まなければ
不安になってしまう人が大勢いるからだ
どこに逃げてもそういう人々からは逃れられない
そして、紋切型を嫌悪する自分もまた
実はそういう紋切型に人々をはめ込もうとしているわけだ
それらに気づいて絶望できなければ
インチキな大人になるしかないだろう
じゃあ最初の悩みを解消するために何をどうすべきかといえば
結局、堕落を覚えて自らに幻滅するしかないのである
そんな逆説を17歳で味わう人の日記
対米開戦の直前に発表された作品であるらしい

「パンドラの匣」
身体が弱くて兵役検査に落ちたのだと思う
肺病の悪化を周囲に隠したまま
死ぬことばかり考えている若者がいた
しかし玉音放送を聞いて憑き物が落ちたのか
死ぬのをやめて療養所に入ることにした
彼は看護の女たちに囲まれながら
規則正しいモラトリアム生活を送ることになり
日ごと変わりゆく社会情勢のなか
恋と気づかぬような恋をするなどして
欧米の自由主義とは異なった日本ならではの
モラトリアムな自由に目覚めていく
自堕落なのではない
個々の献身によって優しい社会を作り、守ってゆく決意だ
ただしそれは死に瀕した人への優しさなのかもしれないけれど…
敗戦直後で何も決まってなかった頃の奇妙な呑気さを
リアルタイムで書いた作品と言うべきだろう
「トカトントン」の主題を肯定的に書いたらこうなった、みたいな
戦争の悲惨さを思い出させるものはなにもなく
そしてやっぱり結末は明るい

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2022年08月18日

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『パンドラの匣』
著:太宰治
新潮文庫

太宰治の『正義と微笑』『パンドラの匣』の二篇を収めた文庫。
太宰作品にしては長い部類の物二つな感じ。
そして、二作とも思春期の男子が主人公で、男性版『女生徒』といった雰囲気がある。
そして太宰作品としてはこれまた珍しく(?)少しもじめじめしたところのない、爽やかさ漂う作品。

『正義と微笑』は役者を志す少年の、
『パンドラの匣』は療養所生活をする少年の成長物語。
太宰作品=暗い、すぐ死にたがる
なイメージの方に是非是非読んでみてほしい、爽やか太宰治。
『正義と微笑』には、
「なぜ役に立たない勉強が必要なのか」という誰もが抱く問に対する完璧なアンサーが書かれています、割と序盤に。

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2022年04月06日

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ネタバレ

太宰治作品は読まず嫌いで、今回初めて読んだのが
このパンドラの匣。
友人から太宰治作品にしてはポジティブな作品だよと言われチョイスしたのだが、うーん。自○という単語が割と多かったりなぜそこそうネガティブに捉えた!?と不思議に思うところがややあったので、他の作品がよほど暗めの作風なんだと気になる笑
だ人の感情を描写するところはやっぱりすごいし、
正義と微笑では、勉強の必要性を感じさせてくれてこれこそ人を動かす純文学なんだと感じた。
エンターテイメントの小説だけではなく、こういった学びのある純文学もこれから読んで、人生を豊かにできたらと思う。

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2021年08月08日

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太宰作品に抵抗があり(暗いでしょう・・・?)
なかなか挑戦できなかった私に
「これはわりと明るいよ」と
友人がプレゼントしてくれました。

『正義と微笑』

17歳の男の子の感情の機微、

特に自分が他者よりも秀でて、
特別であると信じ、特別でありたいと願っているーー

そのもがく姿に共感が持てるなあ、と。
少しのことで感情も思想も大きく変化していく一貫性の無さが
少年期から青年期へ移行する期間のゆらゆらした感じがあって
日記形式なのも相まってとてもリアルで面白かったです。

「ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!」

教員を辞める黒田先生の言葉が印象的。

『パンドラの匣』

主人公目線での2人の女性の描写、
友人への書簡形式ですすんでいく物語で
最後の最後に書簡ならではの種明かしがあります。
とても純粋な、青春小説であり、恋の物語。
敗戦直後の若者は希望とは別に喪失感もあったのでしょうね。

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2021年01月02日

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正義と微笑は、冒頭近くの教師の言葉はすごく好きだけど、その先の展開にはあまり惹かれなかった。パンドラの匣は、甘酸っぱい気分になったし、文章が美しいと思った。どちらも日記とか手紙とかの変わった形式で書かれていて、実験的だな。

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2020年10月23日

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 「正義と微笑」(昭和17年6月)と「パンドラの匣」(昭和20 年10月〜11月)の二編が収められている。
 「正義と微笑」は太宰の年少の友人の十六歳から十七歳の時の日記を下敷きにし、「パンドラの匣」は結核で亡くなった太宰のファンの闘病日記を下敷にしている。両方とも下敷はあるがフィクションも含み、太宰自身の心情を濃く反映している。そしてどちらも、十代後半から二十歳くらいの青年の心のうちの懊悩、挫折、喜び、生命力……などに満ちた青春小説である。
 「正義と微笑」の主人公は、父親替わりの兄の愛情を受けながら、自分の進路について悩んだり、友人との確執に悩んだり、教師のことを批判したり、家族の愛情に感謝したりする日々を日記に書く。今日清々しく、未来が明るく見えたかと思うと、次の日には何もかも訳もなく、虚しく感じ、自殺したくなるというような、青春の心の浮き沈みを書いている。
 理解あるお兄さんに背中を押され、俳優を目指す主人公。希望する劇団に入り、毎日修行の日々。初舞台がおわり、楽屋風呂に入ったとき、
「あすから毎日、と思ったら発狂しそうな、たまらぬ嫌悪を覚えた。役者は、いやだ!ほんの一瞬間の出来事であったが、のたうち回るほど苦しかった。いっそ発狂したい、と思っているうちに、その苦しみが、ふうと消えて、淋しさだけが残った。なんじら断食するとき、……あの、十六歳の春に日記の巻頭に大きく書き付けておいたキリストの言葉が、その時、鮮やかに蘇って来た。汝ら断食するとき、頭に油をぬり、顔を洗え。苦しみは誰にだってあるのだ。ああ、断食は微笑と共に行え。……」と、自分を奮い立たせる。
 そうだね。社会に出始めの時、自活し始めたとき、誰もがそんな淋しい気持ちになるよね。新社会人でなくても、私だってこの主人公の倍以上の年齢だけど、新しい道に進む時には、そんな淋しい、自分がとてつもなく愚か者のような気持ちになる瞬間が一日に何度もある。そんな、一瞬の気持ちを三十代で表現した太宰さんは本当に心底真面目な人だったのだと思う。
 大阪、名古屋公演を終え、二ヶ月ぶりに東京に帰り、駅に迎えに来てくれた兄さんの顔を見て、
「僕は、兄さんと、もうはっきり違った世界に住んでいることを自覚した。僕は日焼けした生活人だ。ロマンチシズムはもうないのだ。筋張った、意地悪のリアリストだ。」
 こんなに清々しく、自分の成長を認められたことが私にあっただろうか。いつまでも、誤魔化して、甘えている子供であり続けたと思う。
 最後の主人公の決意の言葉が好きだ。
 「真面目に努力していくだけだ。これからは、単純に、正直に行動しよう。知らないことは知らないと言おう。出来ないことは出来ないと言おう。……磐の上に、小さい家を築こう。」

「パンドラの匣」は「健康道場」という風変わりな結核療養所で、迫りくる死におびえながらも、病気と闘い、明るく精一杯生きる二十歳の青年と患者(塾生と呼ばれている)同士の交流、看護婦さん(助手と呼ばれている)との恋愛感情などを描いた青春ドラマだ。学園物でもない、病院ものでもない、閉ざされた特有の空間での青春ドラマ。新聞連載だったそうで、書き進むにつれて太宰自身が虚しい気持ちになり、連載を早々に切り上げたそうなので、ストーリーはなんだか盛り上がりにかける気がしたが、ドラマ化されたら面白いかもしれないと思った。

 

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2021年02月21日

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学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。
けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。
これだ。これが貴いのだ。
勉強しなければいかん。
そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。
ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!
p19

人間は不幸のどん底につき落とされ、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷の希望の糸を手さぐりで捜し当てているものだ。
 〜
それはまるで植物の蔓が延びるみたいに、意識を超越した天然の向日性に似ている。
p232

この道は、どこへつづいているのか。
それは、伸びて行く植物の蔓に聞いたほうがよい。
蔓は答えるだろう。
「私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当たるようです。」
p402

またいつか読み直したい。

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2020年10月06日

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