あらすじ
「健康道場」という風変りな結核療養所で、迫り来る死におびえながらも、病気と闘い明るくせいいっぱい生きる少年と、彼を囲む善意の人々との交歓を、書簡形式を用いて描いた表題作。社会への門出に当って揺れ動く中学生の内面を、日記形式で巧みに表現した「正義と微笑」。いずれも、著者の年少の友の、実際の日記を素材とした作品で、太宰文学に珍しい明るく希望にみちた青春小説。
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Posted by ブクログ
太宰治とは思えない読みやすさや痛快さ、話の分かりやすがあって面白かった。太宰治にしては珍しく舞台は大阪、健康道場での日常が手紙形式で知ることができる。愉快といえば愉快、くらいと言えば暗い、どう捉えるかは読み手次第といえる部分もありますが、僕は楽しく読むことができました
Posted by ブクログ
・あらすじ
「正義と微笑」
芹川進という少年の16歳から18歳までの日々を綴った日記形式の作品
「パンドラの匣」
健康道場(結核療養所)にいるひばりという渾名の男の子が友人に宛てた書簡形式の作品
・感想
どちらもYouTubeの朗読で聴いたのが初読?で、とても面白かったので活字で世界観に浸りたいと本を購入。
私の好きな朗読者の方は読み方・声・演技(私が聴いてる方はただの朗読というより若干の演技(誇張された読み手の解釈が入っている)がとても太宰作品の雰囲気に合っていてもうそのイメージが固定されてしまっている所がある。
今回はその雰囲気を保ったまま活字で読むことになったんだけど、なんだかよりこの作品たちの魅力が伝わってきてすごく面白かった!
正義と微笑は太宰で一番好きな作品(次点は黄村先生言行録シリーズ)で初読?は朗読だったんだけどやはり活字で読むとまた違った魅力がある。
芹川少年のあの年代特有の青臭さと潔癖さと万能感が微笑ましくて可愛い
Posted by ブクログ
「もう君たちとは逢あえねえかも知れないけど、お互いに、これから、うんと勉強しよう。勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記あんきしている事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。」
Posted by ブクログ
○正義と微笑
純真な青年の内面を、日記形式で巧みに表現した作品。
主人公(芹川進)の感情の動きをとても丁寧に綴っており、学生(こども)から社会人(おとな)になっていく過程での苦悩や葛藤が描かれる。
拗らせた陰キャのような思考(自分は特別だと思っている)に、とても感情移入できた。
春秋座で厳しい稽古に必死に食らいつき、どんどん活躍の場を広げていく中で、あれだけ尖っていた青年が、「己れ只一人智からんと欲するは大愚のみ」と悟る。社会の厳しさ、地に足をつけることの重要性を理解するラストの余韻が素晴らしい。
序盤に出てくる黒田先生の勉強論は、幅広く教育現場で引用されるべき。(p.17)
自分自身も死に物狂いで大学受験の勉強をして、その時に学んだことは何一つ覚えてないけど、一つのことに打ち込んだ経験は確実に財産だと言える。
○パンドラの匣
敗戦国となり先が見えず暗い日本の世相と、結核療養所の人々を重ね合わせて、希望を持ち続けることの意義を訴える作品。
手紙形式で、「健康道場」なる異質な結核療養所の人間模様が描かれる。戦後まもない作品にも関わらずユーモラスな描写の連続で、戦争の影をほとんど感じさせない作品だった。
メインで語られるのは、主人公が恋をする「竹さん」と「マア坊」という二人の女性との交流。くどくど友人への手紙に二人について書きまくるものの、最後は大失恋に終わってしまう。
結核に苛まれ、恋愛に失敗したとしても、
『すべてを失い、すべてを捨てた者の平安こそ、その「かるみ」だ。』(p.316)と謳い上げる。
最後は戦後間もない日本国民全員に対しての、太宰治からの優しいエールで締めくくられる。
「僕の周囲は、もう、僕と同じくらいに明るくなっている。全くこれまで、僕たちの現われるところ、つねに、ひとりでに明るく華やかになって行ったじゃないか。
あとはもう何も言わず、早くもなく、おそくもなく、極めてあたりまえの歩調でまっすぐに歩いて行こう。この道は、どこへつづいているのか。それは、伸びて行く植物の蔓に聞いたほうがよい。蔓は答えるだろう。」(p.331)
Posted by ブクログ
私が男だったなら、身悶えするほどに赤裸々な中二的、と思ったのかも。
若干引いて、生温い目線で読んでしまいましたが。
かといって、登場する女性陣の目線に共感するわけでもないんですけどね。
こんな希望に満ちた本を書いていても、自殺を繰り返して最終的に成功しちゃったっていうのがなんともなー。
太宰作品は今までメロスを教科書で読んだくらいだったんだけど、今頃ちょっと手を出してみようかと思ったのですよ。
同じく教科書に出てた夏目漱石は概ね揃えて読破するぐらいにはまったので、こちらはほんと遅蒔きながらです。
まぁぼちぼち読んでみましょう。
ちなみに女の私が読んで身悶えしたのは「ひなのころ (中公文庫)/粕谷知世」。
うひーってなったねあれは。まさにこっぱずかしい反抗期を赤裸々に!的な(笑。