太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
意外と読みやすく、ユーモアがある文章に驚いた。
構成が面白い。
はしがきで登場する男に対し、語り手は嫌悪を剝き出しにしている。
その理由が、手記として描かれた男の人生を読み進めるうちに腑に落ちていく。
太宰治はどれほど自分を信じ、好きだったんだろう。
自己嫌悪は自己愛の裏返しだ。
太宰が友人だったら、何やってんの、ってこづきたい。
だけど、もう知らん、と言いながら、なんだかんだまた一緒に居酒屋でくだをまいたりしそうな気がする。
太宰はダメで、しょうもない。
しょうもなくて、情けなくて、まるで自分みたい。
どこか憎めなくて、みんな太宰を好きになるんだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ太宰治の作品をちゃんと読んだのは、これがはじめてかもしれない。
ほぼ「走れメロス」を小学生の時に読んだきりだった。
中高6年間教わった国語の先生は、あまり太宰がお好きでなかったため、太宰に対してはネガティブな印象を持っていた。
しかし、今回、青森への旅を機に読んでみて、その印象は好ましいものへと変わった。
津軽への帰郷の旅行記という体裁をとる本書は、戦時中にもかかわらず、道中始終酒を飲み、
世の中に、酒というものさえなかったら、私は或いは聖人にでもなれたのではなかろうか
などと述懐するあたりの人間臭さがよかった。
最後に太宰が、自分の育ての親とも言うべき女性と再会する場面 -
Posted by ブクログ
すきなひとを生きる目的と、革命の源泉だと言い切る主人公。それは、妾という一般の道からは外れた形だったがその潔さと無垢な姿勢は美しさすら感じた。
主人公の弟の遺書にある生きる目的が母親しかないという部分は共感した。
自分もお酒をよく飲む。騒ぐ。女とも遊ぶ。でもそれが心の底で求め、楽しいと感じることができる時間ではないと意識の裏で思う。
主人公の弟は母親にものすごく愛されていたのだと思う。母親の大きな愛は異質ともいえる力、長く覆いかぶさるような影響力を持つ。
愛されすぎてしまった人間は他の幸福が入り込む余地がなくなり、転じて空っぽになってしまう気がする。