あらすじ
最後の貴婦人である母、破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
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Posted by ブクログ
言葉が美しくて、今までわたしが読んできた子供向けの物語とかけ離れた、これが『 小説』なんだと痛感しました。ヨルシカの曲の元になってるからと読み始めましたが、なんという淡く脆い作品なんだと心を打たれました。斜陽の意味が、難しいです。また大人になったら読みたい1冊でした
Posted by ブクログ
本当に大好きな作品です。
不倫や自殺を扱うこの作品に対しての好き嫌いが分かれるのは当然だと思うけど、私はかず子と直治のどちらにも共感して泣いてしまった。
29歳という年齢への焦り。
地位もお金も家族をも失う喪失感。
どうしようもなく燃え上がる恋心。
生きづらさを抱える人には、この喉が苦しくなるような痛みがわかるはず。
世間の道徳からは外れても、自身の尊厳を守るかず子と直治の生き方に心を打たれました。
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美しい退廃を挙げるなら、迷いなくこの作品を選ぶ。
「沙羅双樹の花の色 盛者必衰のことわりをあらわす」とはまさにこのこと。必ず傾く陽の光をしなやかな色彩で描く傑作。痛みと切なさが入り混じった上質な余韻が残る。
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時代的な背景も相まって、登場人物の切実さに胸が打たれる小説だった。それでいて所々でハッとするような名文が出てくるのだから夢中にならないはずがない。
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4.5/5.0
「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」
自らの人生に退屈し疲弊したかず子がそう思い至り、破滅への憧れを抱く様にも確かに共感したが、自分がそれ以上に大いに共感したのは、弟の直治の方だった。
「人間は、いや、男は(おれはすぐれている)(おれにはいいところがあるんだ)などと思わずに、生きていく事が出来ぬものか。」
という一文に代表される男子社会の中での虚勢を張らなければならない息苦しさや、同調圧力、貴族として産まれてきたことへのコンプレックス、自らを不良として偽る様、
「遊んでも少しも楽しくなかった」
という遺書においての告白に非常に自分と近いものを感じた。
そして、戦時中に綴られた直治の日記内での、戦争や国に対する不信感や一個人としてのやるせなさに戦中、そして戦後のリアルな質感を感じられた。
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10代の時に「人間失格」を読んでから苦手意識のあった太宰。やっと読む気になり20年近くぶりに。
ある貴族の没落を描いた作品。
前時代の象徴たる浮世離れした上品さを持つ母の死、それにより姉弟はどのように生きることを選択するのか。
貴族であることを捨てきれず、時代に絶望する直治、恋と革命のために生きることを誓うかず子。
それぞれの「斜陽」へ向かう登場人物と太宰を重ね、彼の生きづらさがやっと少し分かったような気がした。
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Audibleにて聴書。
主人公にもその弟にも共感出来なかった。
貴族じゃないからだろうか。
主人公の叔父には共感できた。
凡人だからだろうか。
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ずっと以前に『人間失格』を読んだきりだった。
上品な文章。
没落する貴族の一家、「最後の貴婦人」である母、麻薬に頼らざるを得ない弱々しい弟、直治。そして、姉のかず子だけが妙に生命力がある、というか庶民に近い、というか。一人生き残るのにも納得。
自殺する直治は貴族にも居心地の悪さを感じ、庶民になりたい思うが庶民からはやっぱり貴族扱いされ、庶民にもなりきれず、生きる場所がなくなってしまう。
母や姉の着物や宝石を売って遊ぶお金を調達し、お酒にかえてしまう直治。
どうしようもない奴だと思っていたけど、自分のことがとてもよくわかっている人だったことが、遺書からわかる。
姉のかず子は「恋と革命」に生きる道を求めようとする。好きな人の子を生み、育てることが彼女の「道徳革命」の完成として。
それぞれ、3人3様の生き方が心に残り、直治は図らずも誰かを思い出させる。
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蛇にピアスのような蜃気楼のように楽しむ感じの難しい話だった。育ちの良い透き通るような儚さから段々と太宰治の書きたい生々しい気持ちが滲み出てくる。
この本に出てくる様々文章は、わざわざ、重い腰を上げてメモを取りたくなるほど、繊細で魅力的で核心をついた芸術の様なものばかりでした。
【メモリスト】
- 学問とは虚栄の別名である。人間が人間でなくなろうとする努力である。
- 人から尊敬されようと思わぬ人と仲良くしたい。けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。
- ひどくややこしい台数の因数分解か何かの答案を考えるように、思いをこらして、どこかに一箇所、ぱらぱらと綺麗に解きほぐれる糸口があるような気持ちがして来て、
- 私は、このごろ、少しずつ、太って行きます。動物的な女になってゆくというよりは、ひとらしくなったのだと思ってます。
- 女のひとは、ぼんやりしていて、いいんですよ。
- あなたは、恋をしたら、不幸になります。恋を、なさるなら、もっと、大きくなってからにしなさい。三十になってからになさい。
- 世間でよいと言われ、尊敬されているひとたちは、みな嘘つきで、にせものなのを、私は知っているんです。私は、世間を信用していないんです。札つきの不良だけが、私の味方なんです。札つきの不良。私は、その十字架にだけは、かかって死んでもいいと思っています。万人に非難せられても、それでも、私は言いかえしてやれるんです。お前たちは、札のついていないもっと危険な不良じゃないか、と。
- 人間は恋と革命のために生まれてきたのだ
- 「古今東西(ここんとうざい)」とは、**「昔から現在まで」と「東西四方」を合わせて「いつでもどこでも」**を意味する四字熟語
- 幸福感というものは、悲哀の川の底に沈んで、幽かに光っている砂金のようなものではなかろうか。
- 死んで行くひとは美しい。 生きるという事。 生き残るという事。 それは、たいへん醜くて、血の匂いのする、きたならしい事のような気もする。
- 人間は、みな、同じものだ。なんという卑屈な言葉であろう。人をいやしめると同時に、みずからをもいやしめ、何のプライドも無く、あらゆる努力を放棄せしめるような言葉。
- なぜ、同じだと言うのか。優れている、と言えないのか。奴隷根性の復讐。けれども、この言葉は、実に猥せつで、不気味で、ひとは互いにおびえ、あらゆる思想が姦せられ、努力は嘲笑せられ、幸福は否定せられ、美貌はけがされ、光栄は引きずりおろされ、所謂「世紀の不安」は、この不思議な一語からはっしていると僕は思っているんです。
Posted by ブクログ
人間の心の脆く、醜い部分がありのままに描かれていて、苦ぁ〜い気持ちになる。独りになって、惨めになって、それでもそれを隠して、自分は幸福だって思えたら幸せに生きられるんかな。
────恋、と書いたら、あと、書けなくなった。
Posted by ブクログ
平等や旧来の道徳、それらをめぐる同調圧力の存在を、没落華族の視点を借りることで、より痛切に、アイロニカルに浮かび上がらせる筆致。すさまじい。まるで今の世の中にいる自分の身の周りについて指摘されているかのようで、胸がざわざわする。
生まれながらに手にしていたステータスを剥奪され生身の人間として再出発するのには、裸を晒すかのような抵抗感を伴っただろう。
かず子2.0。
だからこそ、生き抜くことが革命だ。
Posted by ブクログ
とりあえず『斜陽』という題名の素晴らしさに感じ入った。斜陽という美しくも悲しい響きと、生活能力のない元貴族が落ちぶれていく様がリンクしていた。貴族なんて縁のない私でも、要所要所で共感しましたよ。親を失う恐怖、些細なきっかけでズブズブはまる恋、生きていたって何になる、という投げやりな気持ち。心の機微が文章に乗っていてふと、泣きそうにすらなってしまった。『人間失格』ほどではないが暗い気持ちになったので次はユーモアのある太宰治の本を選びたい。
Posted by ブクログ
解説の中に「太宰は明るさと暗さを対立的にとらえるのではなく、暗さの中に明るさを、明るさの中に暗さをみる眼をもっていた。」とあり、とても腑に落ちた。人生がガラガラと崩れていくかず子の中にも強さだったり明るさがあった気がする。だからこそ、最後まで読めたと思う。
待つ。ああ、人間の生活には、喜んだり怒ったり悲しんだり憎んだり、色々の感情があるけれども、けれどそれは人間のほんの一パーセントを占めているだけの感情で、あとの九十九パーセントは、ただ待って暮しているのではないでしょうか。幸福の足音が、廊下に聞こえるのを今か今かと胸のつぶれる思いで待って、からっぽ。ああ、人間の生活って、あんまりみじめ。生れて来ないほうがよかったとみんなが考えているこの現実。そうして毎日、朝から晩まで、はかなく何かを待っている。みじめすぎます。生れて来てよかったと、ああ、いのちを、人間を、世の中を、よろこんでみとうございます。117
悲しみの限りを通り過ぎて、不思議な薄明りの気持、あれが幸福感というものならば、陛下も、お母さまも、それから私も、たしかにいま、幸福なのである。148
Posted by ブクログ
人から勧められて読みました!
何となくですが、太宰治は直治に自分を投影していた気がします。自分の死生観や世間に対する考えを彼を通して叫んでいた、そんな気がしました。
Posted by ブクログ
かず子も直治も、心底真面目な人なんじゃないかと思った。根が真面目なあまり羽目を外しきれないし、終戦で世の中が根底から変わったことに対応できなかったのでは?それは本人達のせいではなく、「華族とはこうあるべき」のような教育やモノの見方がされてきたからだろうと感じました。結局、市井の人への憧れが上原であったり、上原の妻であったりしたのかもしれない。
しかし、やっぱりこの太宰治という人は天才だと強く感じました。
Posted by ブクログ
母が死んでから時の流れが一気に早くなった。時代の終わりを告げられたかの如く一気に登場人物4人が四者四様に崩れ去った。
読み進めるにつれて自分の呼吸が浅くなるのを感じた。身震いや鳥肌すら感じることもあった。怖かった。小説が好きな理由は、登場人物になりきることで本の世界に没入できるからであるが、『斜陽』については否。これは本と一定の距離を取って読み進めないと危険。「死への憧憬」「滅亡」というテーマを作品の根本にあるからであろう。そわそわ感や蛇に睨まれた蛙とでもいうのだろうか。自死の場面を神様視点と一人称視点で事細かに描くから生まれるこの言語化できないゾクゾク/ソワソワ感がすごかった。
どこかの書評で見た太宰作品特有の、「きみ」「あんた」といった人称の使い方はこの作品でも使われていた。まるで読者に指をさしているかのような表現に自分も『斜陽』の世界に何度も入り込みかけた。
作品の随所にみられる思想の数々、太宰自身の苦悩を完璧に言語化し、登場人物たちにその苦悩の洋服を着せる技法。自分が気づいてないだけでもっと沢山の文学的特徴があるだろうが、太宰治自身に興味関心を抱かずにはいられない。しかし、彼について理解するためにほかの作品を読むときは間違いなく精神的に健康な時に読むべきであろう。
<印象に残った言葉>
- 学問とは、虚栄の別名である。人間が人間でなくなろうとする努力である。
- 不良とは、やさしさのことではないかしら。
- 私はあなたの赤ちゃんを産みたいのです。ほかの人の赤ちゃんは、どんなことがあっても生みたくないんです。
- 「人間は、みな、同じものだ。」なんという卑屈な言葉であろう。人を卑しめると同時に、自らも卑しめ、何のプライドもなく、あらゆる努力を放棄せしめるような言葉。・・・なぜ、同じだというのか。優れていると言えないのか。奴隷根性の復讐。
- 弱いのでしょう。どこか一つ重大な欠陥のある草なのでしょう。
- 僕は、貴族です。
- 革命は、いったい、どこで行われているのでしょう。・・・海の表面の波は何やら騒いでいても、その底の海水は、革命どころか、身じろぎもせず、狸寝入りで寝そべっているんですもの。
匿名
良くも悪くも丁寧に繊細に人間が描かれていると感じました。太宰治の小説は初めて読みましたが、明るい話ではないのに、文章が美しくて何だか不思議な魅力を感じました。
Posted by ブクログ
やっべえ女 が、だんだんと
おもしれー女 になってしまう。
逞しくなれないご家族の中で革命に目覚める自己肯定感マシマシ「あなたも私を好きなのでしょう」かず子
正直ファン、推せる
Posted by ブクログ
戦後の没落貴族・かず子の絶望が詩的で淡々とした語り口に潜んでいながらも、真新しい人生を切り拓いていく彼女の強さがとても印象的だった。弟・直治の自壊的な生き方は著者自身の実体験も投影されているようでフィクションを超えた告白録然とした迫力がある。救いがなく重い。
Posted by ブクログ
私には少し難しかったかもしれない。文豪の作品を触れる度に思う。そして再読させられる。それほど罪深くて奥深い。人間失格と同様、斜陽も太宰本人を写し出している人物で構成されている。故に、生々しい。滞在的二人称によりあたかも自分もその場にいるような、登場人物として作品を見ているような錯覚に陥る。太宰治の考え方は、やはりすごく悲しく虚しいと思う。ただ、その悲哀の中に人間の核心に迫る大部分がある。明るさだけを持つ人間なんていない、明るさを判断するには暗さが必要だ。暗さの中にこそ明るさはある。それは逆も然り。太宰は明るさの中の暗さを主張している気がするが、私は逆に暗さの中にも明るさがあると気付かされた。それが恋でも愛でも、革命でも麻薬でも遺伝子でも。そこに本能で気付かされる場合も多くある。自分にないものを魅力と感じるように。
Posted by ブクログ
お転婆な娘であったかず子が上原に恋をし、子を孕んでいく。そんな中で段々とかず子が唯一本物の貴族であったおかあさまのような気高さを持っているように感じた。
弟の遺書で最後には貴族として死んでいくところが良かった。
しかし、やはり太宰治の作風はいまいち私と波長が合わない気がする。読解力が足りないのか。
Posted by ブクログ
弟は貴族出身ということに実はプライドがあって、それを捨て切ることも、それに相応しくなることもできず、苦しかったんだと思う。私も捨てられないプライドに苦しむときがあるから共感した。
ネット上の解説を読むと、姉と弟の対比構造を理解できて面白かった。
Posted by ブクログ
大人になってから太宰治を読むのは初めてかもしれない。
最後の黄昏と夜明けの対比がいい。
かず子の火の不始末でボヤが起こった翌日、お母様の言葉でかず子が救われた場面が印象的。聖書からの孫引きにはなるが、「機にかないて語る言は銀の彫刻物に金の林檎を嵌めたるが如し」が、「言いたかったけど今じゃなかった」がよくある自分に響きすぎてしまった。
かず子の手紙に記された恋でも愛でもない虹の表現が凄すぎて何度も読み返した。自分の想いをこんな風にお洒落に喩えて手紙に書いてみたいと思って、そんな自分に少し驚いた。
自身をモデルにしているというところに気持ち悪さもあるが、自分にはかず子みたいなところも上原みたいなところもあるなと感じて、そんな2人を嫌いになれなかった。
Posted by ブクログ
太宰三作目(?)
人間失格の衝撃と比較し、たんたんと落ち着いた雰囲気に序盤は退屈でしたが、
後半は持ち前のざらざらとした感情表現が加速度的に続き、とてもまとまりよく、人の不幸とモチベーションに関する強い感情が描かれていたと思う。
Posted by ブクログ
かず子は共感出来ないし正直苦手な人間ではあるのだが、何となく羨ましいと思う気持ちもある。
太宰が本来どんな意味で題名を付けたのかは分からないが、四者四様に傾いてく様は正に斜陽。