あらすじ
最後の貴婦人である母、破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
本当に大好きな作品です。
不倫や自殺を扱うこの作品に対しての好き嫌いが分かれるのは当然だと思うけど、私はかず子と直治のどちらにも共感して泣いてしまった。
29歳という年齢への焦り。
地位もお金も家族をも失う喪失感。
どうしようもなく燃え上がる恋心。
生きづらさを抱える人には、この喉が苦しくなるような痛みがわかるはず。
世間の道徳からは外れても、自身の尊厳を守るかず子と直治の生き方に心を打たれました。
Posted by ブクログ
ずっと以前に『人間失格』を読んだきりだった。
上品な文章。
没落する貴族の一家、「最後の貴婦人」である母、麻薬に頼らざるを得ない弱々しい弟、直治。そして、姉のかず子だけが妙に生命力がある、というか庶民に近い、というか。一人生き残るのにも納得。
自殺する直治は貴族にも居心地の悪さを感じ、庶民になりたい思うが庶民からはやっぱり貴族扱いされ、庶民にもなりきれず、生きる場所がなくなってしまう。
母や姉の着物や宝石を売って遊ぶお金を調達し、お酒にかえてしまう直治。
どうしようもない奴だと思っていたけど、自分のことがとてもよくわかっている人だったことが、遺書からわかる。
姉のかず子は「恋と革命」に生きる道を求めようとする。好きな人の子を生み、育てることが彼女の「道徳革命」の完成として。
それぞれ、3人3様の生き方が心に残り、直治は図らずも誰かを思い出させる。
Posted by ブクログ
人間の心の脆く、醜い部分がありのままに描かれていて、苦ぁ〜い気持ちになる。独りになって、惨めになって、それでもそれを隠して、自分は幸福だって思えたら幸せに生きられるんかな。
────恋、と書いたら、あと、書けなくなった。
Posted by ブクログ
やっべえ女 が、だんだんと
おもしれー女 になってしまう。
逞しくなれないご家族の中で革命に目覚める自己肯定感マシマシ「あなたも私を好きなのでしょう」かず子
正直ファン、推せる
Posted by ブクログ
お転婆な娘であったかず子が上原に恋をし、子を孕んでいく。そんな中で段々とかず子が唯一本物の貴族であったおかあさまのような気高さを持っているように感じた。
弟の遺書で最後には貴族として死んでいくところが良かった。
しかし、やはり太宰治の作風はいまいち私と波長が合わない気がする。読解力が足りないのか。
Posted by ブクログ
大人になってから太宰治を読むのは初めてかもしれない。
最後の黄昏と夜明けの対比がいい。
かず子の火の不始末でボヤが起こった翌日、お母様の言葉でかず子が救われた場面が印象的。聖書からの孫引きにはなるが、「機にかないて語る言は銀の彫刻物に金の林檎を嵌めたるが如し」が、「言いたかったけど今じゃなかった」がよくある自分に響きすぎてしまった。
かず子の手紙に記された恋でも愛でもない虹の表現が凄すぎて何度も読み返した。自分の想いをこんな風にお洒落に喩えて手紙に書いてみたいと思って、そんな自分に少し驚いた。
自身をモデルにしているというところに気持ち悪さもあるが、自分にはかず子みたいなところも上原みたいなところもあるなと感じて、そんな2人を嫌いになれなかった。