太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ太宰治の作品をちゃんと読んだのは、これがはじめてかもしれない。
ほぼ「走れメロス」を小学生の時に読んだきりだった。
中高6年間教わった国語の先生は、あまり太宰がお好きでなかったため、太宰に対してはネガティブな印象を持っていた。
しかし、今回、青森への旅を機に読んでみて、その印象は好ましいものへと変わった。
津軽への帰郷の旅行記という体裁をとる本書は、戦時中にもかかわらず、道中始終酒を飲み、
世の中に、酒というものさえなかったら、私は或いは聖人にでもなれたのではなかろうか
などと述懐するあたりの人間臭さがよかった。
最後に太宰が、自分の育ての親とも言うべき女性と再会する場面 -
Posted by ブクログ
すきなひとを生きる目的と、革命の源泉だと言い切る主人公。それは、妾という一般の道からは外れた形だったがその潔さと無垢な姿勢は美しさすら感じた。
主人公の弟の遺書にある生きる目的が母親しかないという部分は共感した。
自分もお酒をよく飲む。騒ぐ。女とも遊ぶ。でもそれが心の底で求め、楽しいと感じることができる時間ではないと意識の裏で思う。
主人公の弟は母親にものすごく愛されていたのだと思う。母親の大きな愛は異質ともいえる力、長く覆いかぶさるような影響力を持つ。
愛されすぎてしまった人間は他の幸福が入り込む余地がなくなり、転じて空っぽになってしまう気がする。 -
Posted by ブクログ
「右大臣実朝」と留学時代の魯迅を主人公にした「惜別」がカップリングされた文庫。
太宰の中期の中編とのことだ。
自分にとって何が感慨深いかというと、「右大臣実朝」を初めて最後まで読み切ったということ。
「吾妻鑑」やら「増鏡」、「承久軍物語」がちりばめられたこの作品、読みづらいのは当たり前だが…。
十代の頃、ちくま文庫版の全集で通読していって、実朝で挫折。
文学部の学生となってから再チャレンジし、少しは読み進めるも、鎌倉幕府の御家人たちの人間関係が頭に入らず、挫折。
(「鎌倉殿の十三人」でも観ていたら、また違っていただろうか?)
四半世紀近く経っての再チャレンジで、ようやく最後のページまで到達。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと以前に『人間失格』を読んだきりだった。
上品な文章。
没落する貴族の一家、「最後の貴婦人」である母、麻薬に頼らざるを得ない弱々しい弟、直治。そして、姉のかず子だけが妙に生命力がある、というか庶民に近い、というか。一人生き残るのにも納得。
自殺する直治は貴族にも居心地の悪さを感じ、庶民になりたい思うが庶民からはやっぱり貴族扱いされ、庶民にもなりきれず、生きる場所がなくなってしまう。
母や姉の着物や宝石を売って遊ぶお金を調達し、お酒にかえてしまう直治。
どうしようもない奴だと思っていたけど、自分のことがとてもよくわかっている人だったことが、遺書からわかる。
姉のかず子は「恋と革命」に -
Posted by ブクログ
太宰治を初めて読んだ。全体に漂うノスタルジックな世界観とは裏腹に、文章自体は思いのほか平易で、読みやすさがあった。主人公の内省が率直に描かれ、情景描写はあえて抑えられているように思えた。作品の舞台や風景よりも、語り手の心の動きに焦点が置かれている点が印象的だった。
「猿ヶ島」は、より物語性を備えた一篇で、純文学初心者としては意外性があった。島に漂着した主人公が、実は猿であり、そこが動物園だったという結末は寓話的でありながら、どこか現代的な小説らしさも感じられる。単なる童話にとどまらず、大人向けの文学として仕立てられており、猿を主人公に据えることで人間社会を風刺的に映し出しているように思えた。