太宰治のレビュー一覧
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富嶽百景:
太宰自身がモデルとのことで、「私には誇るべき何もない」と言いながら「高尚な虚無の心」の記述もあり、生きにくさが垣間見える。
富士の描写がメンタルと共に色々代わり、「いつ見ても素敵」と思う私は単純だなと思い知らされる。
女生徒:有明淑の日記から
ジェットコースターみたいな感情の起伏。コロコロ思考が豹変し、「とても論理的に考える良い子」かと思えば毒舌炸裂だったり、時代を超えて、みんな思い当たる不安定な時期。
八十八夜:
「文学は高尚」と思い、自らをがんじがらめにしていた笹井さん。結局普通の男やん!暗黒王になれたら良いね。
きりぎりす:
最後まで読まないとタイトルの意味は分からない -
Posted by ブクログ
「右大臣実朝」と留学時代の魯迅を主人公にした「惜別」がカップリングされた文庫。
太宰の中期の中編とのことだ。
自分にとって何が感慨深いかというと、「右大臣実朝」を初めて最後まで読み切ったということ。
「吾妻鑑」やら「増鏡」、「承久軍物語」がちりばめられたこの作品、読みづらいのは当たり前だが…。
十代の頃、ちくま文庫版の全集で通読していって、実朝で挫折。
文学部の学生となってから再チャレンジし、少しは読み進めるも、鎌倉幕府の御家人たちの人間関係が頭に入らず、挫折。
(「鎌倉殿の十三人」でも観ていたら、また違っていただろうか?)
四半世紀近く経っての再チャレンジで、ようやく最後のページまで到達。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと以前に『人間失格』を読んだきりだった。
上品な文章。
没落する貴族の一家、「最後の貴婦人」である母、麻薬に頼らざるを得ない弱々しい弟、直治。そして、姉のかず子だけが妙に生命力がある、というか庶民に近い、というか。一人生き残るのにも納得。
自殺する直治は貴族にも居心地の悪さを感じ、庶民になりたい思うが庶民からはやっぱり貴族扱いされ、庶民にもなりきれず、生きる場所がなくなってしまう。
母や姉の着物や宝石を売って遊ぶお金を調達し、お酒にかえてしまう直治。
どうしようもない奴だと思っていたけど、自分のことがとてもよくわかっている人だったことが、遺書からわかる。
姉のかず子は「恋と革命」に -
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太宰治を初めて読んだ。全体に漂うノスタルジックな世界観とは裏腹に、文章自体は思いのほか平易で、読みやすさがあった。主人公の内省が率直に描かれ、情景描写はあえて抑えられているように思えた。作品の舞台や風景よりも、語り手の心の動きに焦点が置かれている点が印象的だった。
「猿ヶ島」は、より物語性を備えた一篇で、純文学初心者としては意外性があった。島に漂着した主人公が、実は猿であり、そこが動物園だったという結末は寓話的でありながら、どこか現代的な小説らしさも感じられる。単なる童話にとどまらず、大人向けの文学として仕立てられており、猿を主人公に据えることで人間社会を風刺的に映し出しているように思えた。 -
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蛇にピアスのような蜃気楼のように楽しむ感じの難しい話だった。育ちの良い透き通るような儚さから段々と太宰治の書きたい生々しい気持ちが滲み出てくる。
この本に出てくる様々文章は、わざわざ、重い腰を上げてメモを取りたくなるほど、繊細で魅力的で核心をついた芸術の様なものばかりでした。
【メモリスト】
- 学問とは虚栄の別名である。人間が人間でなくなろうとする努力である。
- 人から尊敬されようと思わぬ人と仲良くしたい。けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。
- ひどくややこしい台数の因数分解か何かの答案を考えるように、思いをこらして、どこかに一箇所、ぱらぱらと綺麗に解きほぐれる糸口 -
Posted by ブクログ
山崎富栄の雨の玉川心中は読んだことがあったが、人間失格はかなり腰が重くやっと読んだ。
思った以上に読みやすい。
あとあれだ、太宰って本当にモテてきたんだな…
読んでいて、結構どうしようもないなと思った。
葉蔵は人間失格の烙印を押されるのだが、それは周りから見た葉蔵であり、本人の視点からすると異なることがわかる。
持って生まれたものと、環境による人格形成は、それらが複雑に絡んで起きる化学反応みたいなものだと思う。
その家に生まれたからそうなったとも言えるし、その家に生まれたから生きたともとれる。
兄たちが最後まで見捨てなかったのは、本当の葉蔵に気づいていたからかなとも想像した。 -
Posted by ブクログ
表紙がとある漫画家殿が描いていた•太宰治聞いたことあるな〜の軽い気持ちで読んだけど。重い、重すぎる。最後の最期まで救いようが無いなと呆れてしまう一方で、良くも悪くも人間らしくて素直にいいな〜と思いました。
情けないところも厭らしいところも全て曝け出していく、、のは大人になればなるほど難しくて世間が求める「大人」になってしまったんだなという気づき。
読んだのは10年前くらいになるので、再読してもう一度「しょうもないな〜」「でもそういう側面ってどこかに隠し持ってるよね」を感じたい。
何度読んでも、新鮮な気持ちでしょうもないを味わえると思います。