太宰治のレビュー一覧
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ネタバレ印象に残った言葉たち
死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目が織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きようと思った。(葉 p.11)
安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしているときは、生のよろこびを書きつづる。(葉 p.28)
私は、すべてに就いて満足し切れなかったから、いつも空虚なあがきをしていた。私には十重二十重の仮面がへばりついていたので、どれがどんなに悲しいのか、見極めをつけることができなかったのである。そしてとうとう私は或るわびしいはけ口を見つけ -
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学生時代、桜桃忌に青森を目指す友人がいた。
彼の影響もあって太宰治さんの本を手に取るようになった。金木の斜陽館も訪ねた。
ネガティブで女々しくて、、と揶揄されても私は好きだった。
大学を卒業する頃、彼と、か細い声で壊れそうな音楽を聴いた。彼女の歌の世界には太宰が息づいていた。そんな彼女の歌が、テレビから流れてくるなんて夢にも思わなかった。
森田童子さん。もう鬼籍に入ってしまったけれど。
津軽にはそんなイメージとはかけ離れた骨太でユーモラスな太宰がいる。自虐の癖は相変わらずだけど、紀行文みたいな小説だ。
金木の辺りから眺める岩木山を想像する。金木を語る太宰の体温は熱い。
でも、なんと言っても3 -
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ネタバレ「あたしは、ほんとうに男のかたと、大胆に遊べば、よかった。あたしのからだを、しっかり抱いてもらいたかった。…お悧巧すぎた。…あたしの手が、指先が、髪が、可哀そう。死ぬなんて、いやだ。いやだ。」
病気で死ぬ間際にある妹のこの言葉が胸に刺さった。若い時分に死ぬということは、したいことが叶えられぬうちに死ぬということ。人はいつ死ぬかわからない。だからこそ、お悧巧でいすぎるよりも、自分の望みを叶える行動をとっていかないと、死の淵が見えたときに後悔してしまう。そう思う前に、やりたいことをやれるうちにしっかりしたいと思った。
太宰治は、本当に人の心の奥底にある本音をえぐり出すのがうまい。死にたくない、とい -
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燈篭
スピードが速い。量ではなく思いの。女性目線のモノローグという太宰らしさ。
姥捨
心中物。絶望した描写がよい。どれほど愛し、どう裏切られたかが書かれてないので、そこに至る曲折は想像。結果生きてしまうことによって、いろいろな後始末が面倒
黄金風景
目をかけるというのは多義?感謝される振る舞いの記憶は抜け落ちたのか、奉公していた家への義理が強く、水に流していたところも「負けた」と言わしめたのか
畜犬談
ユーモア小説。Twitterで漫画化されてそう
おしゃれ童子
これもユーモア。意にそぐわなくてやけくそになるファッションも思春期
皮膚と心
待合室で妄想膨らむあたりで色が随分変わった。