太宰治のレビュー一覧
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太宰治の作品は、冒頭がいい。『人間失格』は「恥の多い生涯を送ってきました」で始まる。
この本では、「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました」で始まる。なぜか、私が言われているような気にもなる言葉だ。
私は、19歳で、家族の反対を押し切って、売れない画家のあなたと結婚して、はや5年。25歳になった。私は、「私でなければ、お嫁に行けないような人のところへ行きたいものだと、ぼんやり考えていた」。あなたの画は、「小さい庭と日当たりのいい縁側の画で、縁側に白い座布団が一つ置かれていた」。それを見て、どうしてもあなたのところへお嫁に行かなければ、と思った。
私を必要とする男性のところに嫁 -
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私はこれまで、「まんがで読破」シリーズ(イースト・プレス)と「マンガでBUNGAKU」シリーズ(三栄書房)の『人間失格』を読んできました。
それらと比較してみますと、大雑把に言って、
【まんがで読破】
ストーリーとして読み応えあり。絵のタッチはやや古臭いが、古典作品の紹介には適しているかも。
【マンガでBUNGAKU】
絵のタッチが現代風だが、ストーリーとしての深みがない。
【本書】
絵のタッチは古くなく、ほかより大型ということもあって迫力もある。
ストーリーとしても深く読めるようになっている。
といった違いがあります。
私個人がお勧めするとすれば、
・「マンガでBUNGAKU」と本 -
Posted by ブクログ
この年になるまで『走れメロス』以外ほとんど読んでこなかった太宰治。
そりゃあ、いつかは読もうと思っていましたよ。
でも、今まで縁がなかったのね。
この作品が太宰初心者向けなのかどうかわかりませんが、面白かったです。
今まで勝手に思っていた、ナルシストのような、ちょっと重ためのコマッタちゃんのような太宰ではなく、素直で軽やかな文章に、とても好感を抱きました。
そして、実にこの本は、今読むべき本として私の前に現れた本でした。
まず、2年前の秋に津軽地方を旅行したので、景色の描写など、割とわかりやすかったこと。
今別、竜飛岬、鰺ヶ沢、十三湖、合浦公園。
特に太宰が青森の高校に通っていた頃よくと -
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先日、100分de名著『太宰治 斜陽:名もなき「声」の物語』高橋源一郎 を読み、
思いの温かいうちに『散華』だけでも読もうと。
よって今回は、『ろまん燈籠』に収録された『散華』のみのレビューとする。
太宰は結局自ら死を選び逝ってしまったけれど、丸っきりこの世の全てを放棄していたわけではないように思えた。
小説家を目指す若き芽を育てていた。
太宰はそんな風に思ってはおらず、友人として接したようだけれど。
三田君が、作品を持参した日とそうでない日の、玄関の戸が開けられる音の違い。
太宰はちゃんと聞き分けて、体も心も気遣う。
まずは体を丈夫にして、それから小説でもなんでもやったらいいなんて言う。 -
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ネタバレいやぁ。自分は太宰治の熱心な読者というわけではないですし、自虐と自己憐憫の果てに破滅に至るような作品なのかと身構えていましたが、意外なほどの明るさと瑞々しさを湛えた青春の書じゃないですか。
まずもって、27歳の若さで世に送り出した処女作品集のタイトルが『晩年』って。人生に疲弊し切った老人の繰り言のような題です。が、内容を読むにつけ、人生にそれだけ絶望し尽くすというのもまた若さなのかも、と思わされましたね。年齢ではなく、感性において、太宰は本当に若い。逆に若者でなければ書き得ないような鋭さといいますか、斬新な感覚に満ちています。
妻の裏切りを知らされ、共産主義運動から脱落し、心中から生き残っ -
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〈乙女の本棚シリーズ〉
太宰治+今井キラ
あさ、目をさますときの気持ちは、面白い。の書き出しで始まる女生徒。
1日の出来事で感じたことを言葉にしている。
その言葉ひとつひとつが音符のようでリズムを感じる。
女生徒ならではの女に関する言葉も鋭い。
草をむしっては、形はちっとも違っていないのに、いじらしい草と、にくにくしい草と、どうしてこう、ちゃんとわかれているのだろう。
理屈はないんだ。女の好ききらいなんて、ずいぶんいい加減なものだと思う。
けさ、電車で隣り合わせた厚化粧のおばさんをも思い出す。ああ、汚い、汚い。女は、いやだ。
自分が女だけに、女の中にある不潔さが、よくわかって、歯ぎしり -
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ネタバレ教科書にも載ってあるとても有名な作品をまだ
読んでないことに気付き、急いで買いました。
「走れメロス」をまだ読んでいなかったとは、かなり自分でも意外でした。冒頭の有名なフレーズが「メロスは激怒した。」から始まるのですが、妹の結婚式のために、3日間のあいだ、竹馬の友であるセリヌンティウスを人質にささげ、ひたすら
走り続けるメロス、その疾走感と、セリヌンティウスとメロスの友情にも注目してほしい。
今回一番私の中で、心に響いた作品が、「富嶽百景」で、太宰治が、山梨県にある御坂峠の茶屋にて、執筆活動中の出来事を描いているのですが、その茶屋で出会う人々との交流がとても微笑ましくて、闇の太宰治がここで払拭 -
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乙女の本棚シリーズから、太宰治さんと紗久楽さわさんのコラボ作品の「葉桜と魔笛」です。鮮やかな表紙で、少女漫画から抜け出してきたような姉妹が描かれていますね♪って、いうか…お姉さんなのって、彼かと思っちゃった(^-^;)
桜が散って、このように
葉桜のころになれば、
私は、きっと思い出します。
で、はじまるストーリー。なんともきれいで切ないはじまり…老夫人が語りだしたのは、今は亡き妹と父のことでした。35年前、妹は腎臓結核の診断にて余命いくばくもない状態…ある日妹がしまい込んでいた、恋人と思われる男性からの手紙を発見する…。妹を元気づけるために、姉は恋人になりすまし手紙を書いて妹の