太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
物語の世界に没頭したい質の私はあまり短編集は好んで読む方ではない。しかし、本書は素晴らしかった。
太宰治の執筆活動による中期に書かれた作品集なので、晩年のとことん破滅的、反逆者的な側面は少々なりを潜めており、所々普通に笑かしてくる。
特に「風の便り」ではお笑いコントのような軽快さで偏屈な貧乏作家と毒舌なベテラン老作家の手紙のやり取りがなされていく。突然の「馬鹿野郎」は声に出して笑った。
だからといって、やはり太宰治なので一貫して厭世的でありネガティブである。
太宰治は「人間失格」で完成されてしまっているので、作品順に読んでいくのもまた一興。
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Posted by ブクログ
表題作「パンドラの匣」よりも、もう一編の「正義と微笑」の方が面白い。進学のため必死で勉強してきた16歳の芹川進という少年が、自分の本当にやりたいことは何なのかと自問し、演劇の道に邁進する。全編に散りばめられた聖書からの引用が胸を打つ。
太宰治の小説「女生徒」のような瑞々しさを感じる青春小説で、帯に強調されているような「なぜ人生に勉強は必要なのか?」という問いに率直に答えてくれるような小説とは少し違うが、人生や自分の行く道を考えるヒントを与えてくれる作品と思う。それでいてテーマをやたらと重く考えず、爽快感のある読後感を得られる作品と思う。「学生時代に読みたかった…」というのはその通り。
反対に -
Posted by ブクログ
太宰治の文章は読みやすいな。
収録されている「正義と微笑」は日記、「パンドラの匣」は手紙、と主人公視点のごく限られた情報しかない中で話が楽しめる。
試験勉強をしながら「数学は今後の人生で役に立つの?」と思っているのや、「「助手(看護婦)の化粧が濃いから追放しよう」と大騒ぎするのは普段もてないからその仕返し」と分析されているところ。今でも通じるものがあるなと思った。私は、助手さんたちに健康道場の人たちは随分世話になっているんだから、厚化粧だろうが問題にするべきでないと思うけれど、時代的なものもあるのかな。孔雀さんが謝って丸く収まる描写は残念だった。
「或いはね」という主人公の口癖、女性に何もし -
Posted by ブクログ
『私の小説を、読んだところで、あなたの生活が、ちっとも楽になりません。ちっとも偉くなりません。だから、私は、あまり、おすすめできません。
こんど、ひとつ、ただ、わけもなく面白い長編小説を書いてあげましょうね。いまの小説、みな、面白くないでしょう。
みんな、面白くないからねえ。面白がらせようと努めて、いっこう面白くもなんともない小説は、あれは、あなた、なんだか死にたくなりますね。』
短編小説かと思って買ったらエッセイだった。
面白い方ですねえ。現代を生きてたらひねくれたブログとかやたら書いてそう。
太宰治は女生徒が特に好きで、「なんで男なのに女の子の細かな心情がわかるのかしら」と思っていた -
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匿名
購入済み良くも悪くも丁寧に繊細に人間が描かれていると感じました。太宰治の小説は初めて読みましたが、明るい話ではないのに、文章が美しくて何だか不思議な魅力を感じました。
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Posted by ブクログ
中村文則さんのエッセイを最近読んだので、その繋がりで読みました。
太宰治の人となりについてはほとんど何も知らないので、読む前の勝手なイメージでは「気難しく人嫌い」な人かと思っていましたが、作品を読むと「ユーモアの感覚もあって、実際に話せばあんがい話好きな人だったんじゃないか」という印象を受けました。
個人的に良かったのは富嶽百景の一場面で、天下茶屋の2階に寄宿している主人公が店の人間とも親しくなってきた頃、店の若い女性店員が1人で客の相手をしている時に、わざわざ1階に降りて隅でお茶を飲みながら遠巻きに見守ってあげているところです。
そんなにあからさまな優しさを出す感じの主人公じゃないんで