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「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました。……」名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して印象深く描いた表題作など、著者の最も得意とする女性の告白体小説「燈籠」「千代女」。著者の文学観、時代への洞察がうかがわれる随想的作品「鴎」「善蔵を思う」「風の便り」。他に本格的ロマンの「水仙」「日の出前」など、中期の作品から秀作14編を収録。(解説・奥野健男)
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Posted by ブクログ
76冊目『きりぎりす』(太宰治 著、1974年9月 初版、2008年11月 改版、新潮社) 1937年から1942年までの間に発表された作品で編まれた短編集。著者の得意とした女性告白体小説と随筆的作品が中心となっている。 文才が大きく開花したとされる中期作品群が揃っているだけあり、どの短編も恐ろしい...続きを読むほどの完成度を誇る。 過剰なまでの自省心と鋭い観察眼が生み出す彼の作品は時に人の心を抉るが、その根底に深い優しさがある事をこの短編集は教えてくれる。 〈この薔薇の生きて在る限り、私は心の王者だと、一瞬思った〉
学生時代に心酔していた太宰治、ちょうど読む本が尽きたので、本棚からふと手に取ってみて、うわ!やっぱりいい!と思った。 今回特に好きだったのは以下三編。 『燈籠』 口に出したくなる「言えば言うほど、人は私を信じて呉れません」というキラーフレーズ、 そして「それに違いはございませぬ。いいことをしたと...続きを読むは思いませぬ。けれども、ーーいいえ、はじめから申しあげます。私は、神様に向かって申しあげるのだ。私は、人を頼らない、私の話を信じられる人は、信じるがいい」という毅然としたスーパーキラーフレーズ、 極めつけのラスト、蔑まれていても別にわびしくない、逆に美しいと思うというカウンター。 世間的にどう思われていようが、明るい電灯の下で仲良くしているのだけで特に何もなしとげていなかろうが、幸せでいいし、誇りを持っていいのだと晴れやかな気持ちになる。 『皮膚と心』 女の、気分でころころ移り変わる感情の解像度が高すぎる。思ったことを思ったまま、その場で書いているようですごい名人芸。 吹き出物でどんどん大袈裟に落ち込んで、勝手に鬼や悪魔になった気分になり、もはや「私は、お化けでございます」「このまま死なせて下さい」とまで思うのは滑稽で、でも共感できる。 『佐渡』 太宰のギャグセンスが爆発している作品だと思う。 自分をさむらいに例えるくだりがすごく好き。 美化せず、佐渡のつまらなさをそのまま書いている正直さがいい。
1939-41年に発表された短篇から14篇を抽出。どれも文句なくおもしろい。その掴みと語りの巧さ。そして言いようのない読後の余韻。とくにユーモアとペーソスを湛えた「畜犬談」、「きりぎりす」、「佐渡」がいい。 「佐渡」は、旧制新潟高校で学生相手に講演した翌日、単身佐渡に行く様子が描かれている。11月中...続きを読む旬、そぼ降る雨のなか、近づいてくる佐渡の島影の描写がみごと。(2時間45分の航程だったが、いまもカーフェリーだと同じだけの時間がかかる。雨などで天気が悪ければ、太宰の描写を追体験することができる。)
これ読んで自分は太宰治が好きなんだなと思った。自分の中のネガティブな波長が合うというか。 世間的に手紙小説といえば「こころ」なのだろうけど自分にとっての手紙小説はこの作品だなぁ。
電子書籍『きりぎりす』を読む。 短編ですぐに読めてしまう。 お金が入ってくると、別のものを失っていく寂しさ、悲しみ。もう戻ってこないのだなと思った妻はお別れする。 きりぎりすの声が聞こえてくるようだ。
太宰にとって、報われぬ人生こそ表現者として最も大切で、美しいものであり、それを無理やり華々しくしてしまうことは全てを汚し破壊する行為なのだろう。 そんな太宰の価値観は己の生き様や人間性を自分で受け入れ肯定する為に生まれたのだろう。 太宰が狂人に成り得なかったのは妻子の存在があったからこそなのであろう...続きを読む。 狂人になり得ぬ表現者は時に世界一つまらぬ人間にもなってしまう。 太宰も、きりぎりすの画家も、報いるべき存在によって狂人に成り得なかった。 そんな自分の、表現者として必要のない、大切な人に報いる気持ちを自虐するかのように書かれているようだった。 失敗作の人生を与えられた人間にとって、陽の光を浴びることは俗欲にまみれた行為でしかなく、脚光を穢れとして永遠に苦悩の中で生きなければならないのかしら。 諦めることを肯定も否定もせず世の理としてするっと飲み込ませる感覚は、太宰の亡霊に足首掴まれて彼の生きた世界へ引きずり込まれるよう。 きりぎりすは、「おわかれ致します。」の一言で始まった。その固い意思が宿る切れ味のある一言に引き込まれる。 あなたは、嘘ばかりついていました。私にも、いけない所が、あるのかも知れません。と。 そして、「この世では、きっと、あなたが正しくて、私こそ間違っているのだろうとも思いますが、私には、どこが、どんなに間違っているのか、どうしても、わかりません。」で終わる。 世間の価値観に一切鑑賞されることなく二人の間にあった幸せ。 ひとつの出世から濁流のように世間が二人の間へ入って来る。 表現する者は、干渉されてはならないのだ。 表現者としての成功は、大衆から喝采を浴びることかもしれないが、表現者としての幸せは、誰にも邪魔されず、大切な人のためだけに、贅沢もせず、醜い見栄も張らず、ただ純粋に表現することなのである。
年代の違いを埋めるほどの魅力を感じる。 もう一度改めて読みたくなる。 ※記録「きりぎりす」、「風の便り」 「風の便り」が特に良かった 自分はバンドマンで、歌詞を書く。芸術家としての何たるかを知らしめられた。芸術なんてない、人生、事実、もっとリアリズムのこと。誰かの頭の中で実際に存在する。想像と現実...続きを読むのどちらがリアリティがあるのかなんて、なんとセンスのないこと。 とにかくやり続ける事、辞めないっていう才能。 努力の矛先が注ぎ込めるほどの大きな器を持っているのなら、幸せな事だと実感した。
青森県五所川原市 エルムの街 くまざわ書店にて購入。 太宰治の故郷、青森へ旅に出ると本が買いたくなる。今年は きりぎりすにした。 好きな物語がたくさん入っている。 「燈籠」のどんでん返しは痛快。 この女の子の目線から見ると、自分を正当化し凄まじく善人として描いているが、男の子側から見ると、迷惑な勘...続きを読む違い女にしか思えない。 このギャップがとても愉快だ! 姥捨は、太宰の自殺衝動へのプロセスかと思えてしまう。 「黄金風景」はもう圧巻。 嫌がらせをした相手から優しさで仕返しされる。 親切さで報復されるのが一番堪えるのだ!! 女中お慶がキラキラ輝く、その様はまさに黄金風景!! まーぶしーいっ! 「皮膚と心」 もう大好きだー! このご主人、キミは一体どれだけデキタ人なんだ! 女心分かりすぎ!大正のモテ男かよ! 全く!カッコよすぎるぜ! コンプレックスを「俺は好きだよ」なんて言ってのける。優しさ。 見栄っ張りなら肝を冷やしちゃうな。 きりぎりすは、これも太宰の作家像の変遷を描いたのか!?と思ってしまう。 大衆のための書き手か。 それとも己のための物書きか。 島間違えをしてしまう 「佐渡」 東京から離れて離島に来たのに、都会かぶれている女中に出会ってガッカリする場面はニヤニヤ止まらん! ダメな兄を家族ぐるみで殺害する 日の出前。 盲目的に兄を慕い、傀儡のように付き従う妹が最後、ものすごいひと言を放つところもこの話の醍醐味。 そうか、お主も悪よのぉ。
『きりぎりす』の最後のところで床下で鳴くこおろぎが、彼女の心のなかでなぜタイトルのきりぎりすに変わるのか、その意味について考えている。
「女生徒」よりも様々な角度の物語が含まれている短編集。人々の不変的な心情をここまで描けるのはさすがとしか言いようがない。何度読んでも新しい発見がある。
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