太宰治のレビュー一覧
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太宰治 (1909-1948) は、中学時代から芥川文学に魅せられ、後に短編小説の名手となった。現代文学の先駆的作品が多く、長く新鮮さを失っていない。第一回芥川賞候補となったが、結果は次席。選考委員である川端康成に「作者、目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった」と私生活を評された。太宰はこの選評に憤慨抗議した。彼にはマイナス思考の作品が多く、川端はそれを危うんだのではないだろうか。
『雪の夜の話』(1944) は、「少女の友」に発表した作品である。少女の目から、東京の戦時下の風俗を描いている。次の文は、その一節である。
「おれの眼は、二十年間きれいな雪景色を見て来た眼 -
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表題作ヴィヨンの妻他四作品!
伊坂幸太郎のバイバイブラックバードを読み、どうしても本作収録のグッドバイを読みたくなり購入!
グッドバイを読んで、作者に死んでほしくなかった事と伊坂幸太郎がNICEな解釈と適度なアレンジでバイバイブラックバードが時空を超えた作品に仕上がっていたと思えた。
他の作品で手紙形式のパンドラの箱 読むに連れて登場人物達がくっきりしてきて輪郭がハッキリしたところで終了!これももう少し読みたかった!
結核患者のサナトリウム?小説
ヴィヨンの妻はダメな夫に腹立つものの皆んなが幸せなら良いのかなぁ?とも思ったり思わなかったり・・・
眉山は主人公達に金払えと言いたくなる! -
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太宰治の新潮文庫にある作品のうちこれだけ読んでなくて、死ぬまでには読まないとと思いながら、ずっと手が出なかった。これを読んだらもう新しい作品には出会えないと怖かったので。
しかしこのご時世いつ死ぬか分からないからと、読む決意をしたのであった。
「右大臣実朝」は「鉄面皮」で多く引用されていたので、読まないといけないと思ってた。しかも熱意をかけて書いていたことを知っていたから余計に。思ってたよりも難しくなくて、実朝の人間性の移り変わりがドラマチック。「駆け込み訴え」に似た感じと解説にはあったけど後半は特にそう思う。そして最後の引用で締め括るとこまで手を抜いているように見えて、全然いない(少し -
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ネタバレトカトントン、何を表した音なのかはっきりとは説明できないけど、ふっと我に返って冷める瞬間は自分にもあるので共感して読めた。最後の一段落の意味するところを理解できるようになりたい。
ヴィヨンの妻は、「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ。」というラストらへんの台詞が心に残った。
この短編集で意外にも一番好きだと思ったのは眉山だった。眉山が可哀想で。「ほかへ行きましょう。あそこでは、飲めない。」というラストらへんの台詞から「僕」の強い後悔に胸を痛める心情が伝わってきた。そこで店を変えてしまうのはなんだか卑怯にも思えるけれど、あえてそういう人間の弱さ狡さみたいなのを描い -
購入済み
男
メロスという人間は,突っ込みどころ満載である。
確かに正直で誠実な男であり,絶対に真似できない。
でも,リスク管理ができていないし,常に感情の赴くまま,全部自業自得なところがある。
ラストのくだりは面白かった。
セリヌンティウスは繊細な優しさに溢れる男に違いない。 -
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ネタバレ全体的に、ものすごく前衛的で、語り手である自分に批判的で、詩的で、難解なフランス文学を思い出した。
「魚服記」は結末の意味がわからず、父親に犯されたという解釈を読んでなるほどなぁと思うと同時に何だか後味が悪かった。
「列車」は人間の心理が深く描かれている作品だなぁと感嘆した。
「地球図」はただシロオテに同情。悲しい話だった。純粋な信仰心に感動。
「猿ヶ島」は冒頭の描写にまんまと騙されて、自分が見物されている側だったというオチをまさに体験した。
「道化の華」は、一人称と三人称が交錯する型破りな形式で、こちらが恥ずかしくなるくらい己を曝け出し自己批判に終始していたが文章が美しくて惹き込まれてしま