あらすじ
困難な戦争期にあって、深く芸術世界に沈潜することで時代への抵抗の姿勢を堅持し、日本文学の伝統を支えぬいた太宰中期の作品から、古典や民話に取材したものを収める。“カチカチ山”など誰もが知っている昔話のユーモラスな口調を生かしながら、人間宿命の深淵をかいま見させた「お伽草紙」、西鶴に題材を借り、現世に生きる人間の裸の姿を鋭くとらえた「新釈諸国噺」ほか3編。(解説・奥野健男)
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見栄とか、世間体とか、プライドとか、そう言ったものにどうしても自分で自分の首を絞める現代人にはピッタリじゃないでしょうか。なるほどこう展開するのかな?と思っている方向にいかずバッドエンドもあれば、昔話をこう解釈したのか!という驚きも楽しめます
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読むのは2回目だが、面白かった。今まで読んだ太宰治の中でもトップクラスに面白い物語ばかりだった。
新釈諸国噺とかお伽草子とか既にあるものについて空想を巡らして、自分のスタイルにすると言うのはとても面白い。特にお伽草子カチカチ山の兎と狸を16歳の処女と37歳の中年大食男にしているのが痛快だった。男として恐ろしくなるようなことではあったけど。
新釈諸国噺は全て楽しく読めたが、中でも「義理」という作品が印象的だ。武士の義理の悲しさがよくわかる。西鶴がベースとのことだが、西鶴は読んだことがないので、元になった話も読んでみたい。
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12/20 お伽草子 太宰治
ずっと読みたかった作品400ページ越えの大作。短編集。
どんなものかと思って読んだが、盲人独笑以外、清貧譚、新釈諸国噺、竹青、お伽草子面白かった。盲人独笑も意味がわかったら面白いのだろう。面白かった。
好きな話は猿塚、裸川、女賊、赤い太鼓、カチカチ山。
太宰中期の作品も好きだな。
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・あらすじ
第二次世界大戦中に描かれた太宰治中期の作品集。
中国と日本の古典、お伽話をベースに太宰のユーモアと観察眼、空想力が存分に発揮された作品。
・感想
先にYouTubeの朗読で全部聞いてたけど、今回は改めて朗読を聴きつつ(読むスピードに合わせたので1.5倍速だけど)本を読んでみた。
太宰らしいユーモアが溢れつつ生真面目、ちょっと自虐的で笑えるところが多々あって面白かったw
特に好きなのはやはりお伽草子。
日本のお伽草子を太宰が二次創作?するにあたりキャラクター設定、舞台設定、ストーリー展開について太宰なりに肉付けしてるんだけどそれがまたとても面白い。
こういう作品を読むと太宰の繊細さ、観察眼、洞察力がよくわかる。
カチカチ山であれだけの苛烈な罰を狸が受けるには…と空想巡らした結果があの狸とウサギのキャラ設定なのが絶妙(男性はやっぱり「狸かわいそう」と思ってしまうのかもだけど)
後半なんて特に狸が今後一切近寄ってほしくない不快すぎる生物としてウザキモに書かれてるのすごいなって…。
あの結末に少しの同情心も湧かないw
あとは桃太郎さんを太宰が書けない言い訳をだらだら書いてるところもユーモラスすぎて好き。
「日本一の快男児なんて日本ニ、三にすらなったことない作者に書けるわけない」みたいに書いてるところ笑った。
太宰はあと駆け込み訴え、風の便り、ろまん燈籠、女生徒、畜犬談、皮膚と心、黄村先生言行録あたりも本で読みたい。
他にあの太宰にしては珍しいミステリー調のやつ…題名忘れたけどあれも読みたいな。
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全部面白かったけど、「浦島さん」が特に好き。
亀が、すぐ何でもかんでも批評や干渉をしたがる人間の煩わしさをズバズバ論破していくのが爽快だった。
確かに人間は他の生き物と比べておせっかいなところがあると思う。
ネットで言うと、どこの誰かもわからない匿名の書き込みにあれやこれやと批判や同情をよせていたり。
また、どこの馬の骨かもわからない奴の虚勢を張った自慢話が蔓延っていたり。
彼らは外聞に重きを置きすぎている。
そんなに外聞は大事か。
亀にそんな疑問を投げかけられたような気がした。
価値観を押し付けたり押し付けられたり、そんな世の中じゃ多様性からは程遠い。
相手は相手、自分は自分。
それぞれが自分軸を確立し、周りに干渉しない、また自分とは全く異なった価値観を同情や蔑みなしにただ受容する。
そんな考えの生き物たちが集まった竜宮城、ぜひとも行ってみたい。
※だいぶ昔に読んだ作品なので内容を断片的にしか覚えていません。
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太宰によるフォークロア新解釈をたっぷり味わえる一冊。新釈諸国噺などは、西鶴の原文にちかいのだろうなという話と、『粋人』『遊興戒』『吉野山』など太宰節が滲み出ている話とに分かれている。
特に好きだったのが『竹青』と『浦島さん』。
こうも伸びやかな想像力、幻想的な世界を鮮やかにいきいきと書くことができる作家とは。戦時中の制限された中で、ひとびとを、そして自分自身を鼓舞させるような、そんな切実とした思いも裏に感じる。両者、あまりにうつくしい世界観で、もっと色んな人に読んでもらいたいなぁと思った。これを作者名を伏せて読んで、一体どのくらいのひとが太宰と気づくだろうかと。
そうした美しい描写のなかで、太宰が綴る率直な言葉というのはまたいつも以上に胸にひびくものがある。「年月は、人間の救いである。忘却は、人間の救いである。」
お伽草子は珍しくも「父」としての太宰治が垣間見えるところもあり、なんだかほっこりもした。
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タイトル*お伽草紙
著者*太宰治
出版社*新潮社
作品紹介*
困難な戦争期にあって、深く芸術世界に沈潜することで時代への抵抗の姿勢を堅持し、日本文学の伝統を支えぬいた太宰中期の作品から、古典や民話に取材したものを収める。”カチカチ山”など誰もが知っている昔話のユーモラスな口調を生かしながら、人間宿命の深淵をかいま見せた『お伽草紙』、井原西鶴に題材を借り、現世に生きる人間の裸の姿を鋭くとらえた『新釈諸国噺』ほか3編。
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太宰さん流の昔話、好きだ。
軽快に語られているが
人間の中に根強く存在する
慈悲、強慾、怨恨、嫉妬が
語られていて興味深い。
浦島太郎の話。これもまた良い。
『年月は、人間の救ひである。
忘却は、人間の救ひである。』
人間が最も恐れる老いというのも
美しく、幸福なことなのかもしれない。
年老いてまたこの本を手に取った時、
私はどう感じるのだろうか。
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特に印象に残ったのは「浦島さん」。物語中には太宰の独自の解釈が垣間見られるが、最も感銘を受けたのはやはりパンドラの箱の話である。パンドラの箱は開けると膨大な憎悪や悲観など否定的な感情、悪物質が放出される。ただ、底に残るのは希望である。どれだけ辛くても、希望を見出して生きていけという太宰の強く優しい訴えだと考えることができる。そして、「浦島さん」を太宰が執筆完了したのは昭和20年、終戦直後のことである。
本当に太宰治は偉大な作家だと思う。
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洒脱なユーモアと豊富な語彙、軽やかでそれでいて格調を感じさせる文体。
太宰治の良さに満ちている短編集。『お伽草紙』を太宰の最高傑作に挙げる人も多いが、わたしもこの作品は好きだ。防空壕の中での娘への語り話という設定が凄い。日本絶体絶命な時に、こんな戦意高揚に全く寄与しそうにない作品群を書く太宰はやはし凄い作家なのだと思う。西鶴の作品に材をとった『新釈諸国噺』や古典的短編も、太宰の教養の深さがうかがえる。“猿塚”という話だけは相当後味が悪いけどやはり巧い。
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特に、昔話をもとにしたお伽草紙がとても面白い。
太宰さんならではの切り口がたまらない。
太宰は暗い、というイメージを持っている人に、是非読んでもらいたい。
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戦時中に書かれた作品で、いずれも古典や民話、伝承を基に、彼独自にアレンジした小説である。解説にあるとおり、この時期の太宰治は、彼の読書体験から、作中人物の心理や情景を解釈して創作するという手法がなされている。
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太宰治はユーモアさを備えているのかと思い知らさらました。
それくらいこの一冊はおもしろくアレンジが効いていて、楽しくて、時にダークな面にドキッとさせられる。
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中期の名作ですね。
学生時代(20年近く前)何度も読みました。
今回、津軽へ年末一人旅に行こうとする後輩のために貸し出すべく再読。
御伽草子の筆が軽く、饒舌。
「曰く、惚れたが悪いか」
は名言です。
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面白かった。後半のお伽草子の幾つかの短編が特に面白かった。私小説的な作者の独白のようなものではなく、ただ単に読者のため、読者を楽しませるために書いているものだというのが伝わってきた。
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こぶとりじさん、浦島太郎、カチカチ山、舌切り雀を太宰流にアレンジしてユーモアたっぷりに仕上げた短編集。浦島さんとカチカチ山がよかった。
新解釈諸国噺など読み応えがあるものが多い。なかでも清貧譚という短編が良かった。
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太宰治の悲痛な感じは弱く楽に読める
理屈っぽい面倒くさい持論を展開してて青さも感じる
昔話をちゃんと読んだことがなかったから、
昔話話自体の理解も深まって良かった
1番好きなのは、浦島太郎の亀かな
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太宰治にかかると、子供のためのおとぎ話が、人間の生き方や深層心理を描く心理小説になってしまうのか。確かに採択されたお話はどれも一癖ある噺であり、素直に面白かったと終わるより、引っ掛かりのある噺である。かちかち山は特に男女の仲の恐ろしさを描くホラーとして優れている。
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なにげない文章の中から登場人物の人となりを読み取ることができて、息を吸うようになんの抵抗もなく主人公が遭遇している状況をイメージすることができる文章力は、さすがだと納得せざる終えない
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この本を読んで太宰は人間の本質や内面を文章化することに優れているのだと感じた。
特に印象に残っているのはカチカチ山の話。人は見かけによらないということや 、誰しも多かれ少なかれこの本に出てくる登場人物のような気持ちは持っているのではないかと思わされた。
ある種、読んでいて人生における教訓が詰まったような1冊だった。
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素晴らしかった。
太宰治はあまり読んだことがないが、この作品群はユーモア満点で面白い。
特に竹青や、御伽草子は読みやすい。
芥川は文章の装飾がセンス満点といった感じだが、太宰は人間の内面の分析のセンスが満点という感じ。
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『ノイズカット』
太宰治の人生の中で中期を彩る作品。
この作品では太宰治のアツイ情熱を感じる。
どこか、なにか悶々としたものが吹っ切れて、ある制約がある中を自由に闊達に表現されている感じがする。
ちなみに、カチカチ山は女性の感想をきいてみたい。
デートでこの話題をだしたら飯がまずくなるかも。。。
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浦島太郎とカチカチ山がとにかく面白い。作者の批評精神が全開で、この人はずっとこう言う世間と人間に対する不満というか醒めた見方を何処かで持ち続けて居たのだなと思う。斜陽等の長編にも通底して、この世の中に対する虚無めいた見方が流れているように感じる。
反面、この文庫に収録の他の作品はあまり面白いと感じられなかった。特に新釈諸国話は正直、読むのがつらい。いかに作者のエッセンスで翻案したとは言え、余りに元の西鶴のストーリーと合っていないと感じ、読んでも何ひとつ感じるものがない。
お伽草紙は良かったのだが、他が上記なので、個人的には文庫全体としての評価は低めとなってしまった。残念。
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初めてしっかりと太宰治を読んだが現代の作家たちとは何もかも違く読みにくかった。個人的に面白い話も多々あったためまた太宰治の作品を読んでみたいと思う。昔話を面白く作り変えるのはとてもユーモアがあり、彼しかできないのではないかと思った。
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カルチャーショック!
それぞれの昔話の解釈がすごい。
カチカチ山のたぬきが中年のやらしい、きたない親父で、うさぎが残酷な15.6の少女という解釈には、圧倒された。いくらひどい仕打ちをされても、惚れている弱味でついつい近づいちゃう、みたいな。
最後の「古来、世界中の文芸の哀話の主題は一にここにかかっていると言っても過言ではあるまい。女性にはすべてこの無慈悲な兎が一匹住んでいるし、男性には、あの善良な狸がいつと溺れかかってあがいている」には、なんともいいがたいものがある。
こぶとりじいさんにしても、だれも悪く無いのに不幸な人が生まれてしまったと。
人間って本当にさまざまな考え方を持っているもんだな。
そして、こういうパロディ?を読むと、原本をハッキリ知らなかったんだなともおもう。
1989 の感想を転記
Posted by ブクログ
「こぶとりじいさん」、「浦島太郎」、「かちかち山」、「舌切り雀」という有名なおとぎ話を太宰が独自のユーモアな解釈をしたもの。
特に浦島太郎は、助けた亀との言い争いのシーンがとても長く、しかもあまりにもお互い理屈っぽくて笑ってしまった。
子供向けの昔話であるがゆえに描かれていないだろう余計な会話であるとか、あえて描かなかったかもしれない人間らしい薄汚い場面だとかをあえて見せることによって、昔話を新たな解釈をして読むことが出来る、少し皮肉っぽい面白い作品だった。
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困難な戦争期にあって、深く芸術世界に沈潜することで時代への抵抗の姿勢を堅持し、日本文学の伝統を支えぬいた太宰中期の作品から、古典や民話に取材したものを収める。“カチカチ山など誰もが知っている昔話のユーモラスな口調を生かしながら、人間宿命の深淵をかいま見させた「お伽草紙」、西鶴に題材を借り、現世に生きる人間の裸の姿を鋭くとらえた「新釈?国噺」ほか3編。"