太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
空気を読み、愛想笑いをし、役割を演じる。世間の人々は人間関係の調整をしながら”普通”に生きている。一方、葉蔵にとって演技は人間関係の表面的な調整ではなく、存在全体の偽装と感じる。素の自分を出した瞬間、存在を否定されると恐怖する。でも葉蔵を否定するのは世間ではなく葉蔵自身。自分で自分を否定しているため、幸福が来ると「自分には資格がない」と感じる。葉蔵は自分を隠すため、命懸けの演技を続けているうち、何が自分の本音か、どこまでが役なのかわからなくなる。演技しているのではなく、演技しかなくなる。仮面を外した奥が空洞になり、”人間である”という感覚から脱落していく。太宰治『人間失格』1948★
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五月のキュウリの青味には、胸がカラッポになるような、うずくような、くすぐったいような悲しさが在る。太宰治『女生徒』1939
幸福の便りは待っている時には決して来ないもの。『正義と微笑』1942
駄目な人間は幸福を受け取るときでさえ、下手くそを極めるものである。太宰治『貧の意地』1944
かず子。旧華族の娘。家は没落、東京の邸宅を失い、伊豆の小さな家に引越し。母は弱気になり病死。弟(直治)が戦地から帰国するが、家の金を持ち出し、酒に溺れて自殺。かず子は元カレの上原を訪ね、一夜を共にし妊娠▼もう一度お逢いして、その時、いやならハッキリ言って下さい。私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。私ひとりの力では、とても消す事が出来ないのです▼生きていること。やりきれない息もたえだえの大事業。太宰治『斜陽』1947
よい仕事をしたあとで一杯のお茶をすする。お茶のあぶくにきれいな私の顔がいくつもいくつもうつっている。どうにか、なる。太宰治『葉』1947
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爆撃のさ中に、幼児達は奇妙に泣かないものである。彼等の心臓は波のような動悸をうち、彼等の言葉は失われ、異様な目を大きく見開いている。(彼らの目は)必ずしも不安や恐怖というものの直接劇的な表情を刻んでいるというほどではない。理智的に思われるほど情意を静かに殺している。坂口安吾『白痴』 1946
私は悪人です、と言うのは、私は善人です、と言うことよりもずるい。坂口安吾『私は海を抱きしめていたい』1947
虚空・狂気・桜。坂口安吾『桜の森の満開の下』1947
自由を与えられれば与えられるほど生きるのはつらいんだよ。縛られれば縛られるほど生きるのは易しいんだよ。坂口安吾『作品 創刊号』1948 -
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、太宰治さんと紗久楽さわさんのコラボ作品の「葉桜と魔笛」です。鮮やかな表紙で、少女漫画から抜け出してきたような姉妹が描かれていますね♪って、いうか…お姉さんなのって、彼かと思っちゃった(^-^;)
桜が散って、このように
葉桜のころになれば、
私は、きっと思い出します。
で、はじまるストーリー。なんともきれいで切ないはじまり…老夫人が語りだしたのは、今は亡き妹と父のことでした。35年前、妹は腎臓結核の診断にて余命いくばくもない状態…ある日妹がしまい込んでいた、恋人と思われる男性からの手紙を発見する…。妹を元気づけるために、姉は恋人になりすまし手紙を書いて妹の枕元におく…。姉が書いた手紙だといとも簡単に見抜いた妹、そのわけは…。
切なすぎる(涙)。そして、家族愛を思いっきり感じられる作品でした!!家族の思いを最期に感じとることができた妹は、この手紙のおかげでこの世での悔いをちょっと減らせたのかもしれない…きっと、そうだと思う、と解釈しました。 -
Posted by ブクログ
物語の世界に没頭したい質の私はあまり短編集は好んで読む方ではない。しかし、本書は素晴らしかった。
太宰治の執筆活動による中期に書かれた作品集なので、晩年のとことん破滅的、反逆者的な側面は少々なりを潜めており、所々普通に笑かしてくる。
特に「風の便り」ではお笑いコントのような軽快さで偏屈な貧乏作家と毒舌なベテラン老作家の手紙のやり取りがなされていく。突然の「馬鹿野郎」は声に出して笑った。
だからといって、やはり太宰治なので一貫して厭世的でありネガティブである。
太宰治は「人間失格」で完成されてしまっているので、作品順に読んでいくのもまた一興。
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Posted by ブクログ
『私の小説を、読んだところで、あなたの生活が、ちっとも楽になりません。ちっとも偉くなりません。だから、私は、あまり、おすすめできません。
こんど、ひとつ、ただ、わけもなく面白い長編小説を書いてあげましょうね。いまの小説、みな、面白くないでしょう。
みんな、面白くないからねえ。面白がらせようと努めて、いっこう面白くもなんともない小説は、あれは、あなた、なんだか死にたくなりますね。』
短編小説かと思って買ったらエッセイだった。
面白い方ですねえ。現代を生きてたらひねくれたブログとかやたら書いてそう。
太宰治は女生徒が特に好きで、「なんで男なのに女の子の細かな心情がわかるのかしら」と思っていたら「女性を描くのに秘法を思いついた」と書いてあった。 -
匿名
購入済み良くも悪くも丁寧に繊細に人間が描かれていると感じました。太宰治の小説は初めて読みましたが、明るい話ではないのに、文章が美しくて何だか不思議な魅力を感じました。
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Posted by ブクログ
中村文則さんのエッセイを最近読んだので、その繋がりで読みました。
太宰治の人となりについてはほとんど何も知らないので、読む前の勝手なイメージでは「気難しく人嫌い」な人かと思っていましたが、作品を読むと「ユーモアの感覚もあって、実際に話せばあんがい話好きな人だったんじゃないか」という印象を受けました。
個人的に良かったのは富嶽百景の一場面で、天下茶屋の2階に寄宿している主人公が店の人間とも親しくなってきた頃、店の若い女性店員が1人で客の相手をしている時に、わざわざ1階に降りて隅でお茶を飲みながら遠巻きに見守ってあげているところです。
そんなにあからさまな優しさを出す感じの主人公じゃないんですが、さりげない描写の中に書き手の優しさが滲み出ているなぁ、と感じました。