太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今まで、敬遠していたことに激しく後悔。
なんだろう、この何回も読みたくなる感じ。すてき。太宰すてき。
名言を浴びせまくられ。
誰にでもある、かよわい感情を、物惜しみせずに見せびらかしてくる。
それにたまらなく共感する。さみしい。かまってってかんじ。
自分はどうしようもない人間だと思う反面、他の人間とは違うことを信じている。そんなところがおろかで、恥ずかしくなる。
収録作品は
『秋風記』
『新樹の言葉』
『愛と美について』
『ろまん燈籠』
『女の決闘』
『古典風』
『清貧譚』
好きだったのは『新樹の言葉』
太宰が山梨とゆかりが深いことを知る。嬉しくなる。 -
Posted by ブクログ
パンドラの匣、トカトントン、ヴィヨンの妻、眉山、グッド・バイ
どれも好きな作品。
パンドラの匣:
友人への書簡の形式になっている。書き手は結核患者であり死を感じずにはいられないが、書き手は嬉々としたり落ち込んだり苦悩したり感情豊か。彼は生きているのだ、ということが伝わってくる。
同室の登場人物も看護婦とのやりとりもなんだかさわやか、ほがらか。しかし、背景は隔離された健康道場であることを思い出すととたんに、そこは幻想で、暗い死にとつながっている感じもする。
トカトントン:
無気力になる瞬間を「トカトントン」という音であらわす。
わかる。そういう瞬間がある。
ヴィヨンの妻:夫は救いようのない残念な人間。妻は強い。その強さは狂人ではないかと畏れを抱くほど。
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Posted by ブクログ
時代としては太平洋戦争中、
太宰文学としては中期後半に書かれた
長編二作が収録。
「右大臣実朝」は、
源頼朝と北条政子の子として生を受け、
年若くして征夷大将軍となり、
28歳で甥の公暁に暗殺される源実朝の半生を、
その死によって源氏の将軍は
三代で途絶える事となった悲劇の年若き権力者の姿を
傍で仕えた従者の視点から語った作品。
謀略や抗争といった血生臭い場所に身を置き、
自身の破滅、源氏の破滅に向かって静かに進みつつも、
真の貴族であり、「金塊和歌集」などを生み出した
優れた歌人であった実朝。
「アカルサハホロビノ姿デアロウカ。
人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。」
そんな彼の発する言葉は、本作品において
片仮名と漢字で書き記されており、
世間一般の凡人とは違った、
崇高な光に、と言ったら良いのか、
どこか浮世離れした空気に包まれている。
一番世俗に触れているはずなのに、
自らの意思か何かの力で
それからかけ離れてしまっているような存在である。
吾妻鏡の原文と語り手である従者の当時の思い出話、
そして実朝の片仮名交じりの言葉が複雑に入り組み、
いつの間にか読者は迷宮を通って
御所の実朝の前に導かれたような錯覚に落ちるかもしれない。
大変緻密に作られた作品である。
「惜別」は、中国の革命家魯迅の
仙台留学時代を、彼と同級生であった
片田舎の老医師の回顧録といった形で描いた作品。
こちらは、作者の意図から
大きく乖離してしまうかもしれないが、
いつの間にか太宰の魂が乗り移ってしまった
中国人留学生の「周さん」、若き日の魯迅の
徐々に変化を辿って行く心の過程も興味深いが、
自分はどちらかと言うと、
彼の周りの人物達の様子に心惹かれた。
恩師である藤野先生の彼に対する慈愛、
本作品の語り手である田中卓君、
世話焼きのおっちょこちょいの津田憲治君の
「周さん」を囲んでのどたばたぶりが
なんとなく温かくて、そして優しくて、
私は好きだ。
ひっそりと行われた教師の心遣い、
同級生達の無邪気な行動によって
「分かり合えない」疎外感や孤独、
憂国の想いに苛まれた周さんの青春時代は、
息苦しく暗いものとなってしまうはずのものから、
決してそれだけではなかった、
愛おしい、懐かしさを覚えるような想い出に
変わっていったのではないだろうかと
そんな想像をさせられてしまう作品なのである。