太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
太宰治なら『人間失格』と『斜陽』だね、という太宰ファンを見つけたらそいつはモグリである。太宰の小説はかなり、笑っちゃうことばかり書いてある。彼は本物の道化なのだ。シリアスに太宰を読む人間はどうかしている。太宰という作家は、お笑芸人系の作家なのだ。どれもこれも一級品の道化心が散りばめられていて、彼の人生同様いい加減でもったりした話しぶりとドライヴ感により読者たちを引き込んでいく。すなわち、三島由紀夫ほどに、固定観念を押し付けてこない、優しい場所に読者を誘い込み隔離し幽閉するのが太宰流なのである。太宰にかぶれた憐れな少年少女たちは、太宰と自分をダブらせ、なんて人生は儚いんだろうねえ、なんて前髪をは
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Posted by ブクログ
ネタバレ○正義と微笑
純真な青年の内面を、日記形式で巧みに表現した作品。
主人公(芹川進)の感情の動きをとても丁寧に綴っており、学生(こども)から社会人(おとな)になっていく過程での苦悩や葛藤が描かれる。
拗らせた陰キャのような思考(自分は特別だと思っている)に、とても感情移入できた。
春秋座で厳しい稽古に必死に食らいつき、どんどん活躍の場を広げていく中で、あれだけ尖っていた青年が、「己れ只一人智からんと欲するは大愚のみ」と悟る。社会の厳しさ、地に足をつけることの重要性を理解するラストの余韻が素晴らしい。
序盤に出てくる黒田先生の勉強論は、幅広く教育現場で引用されるべき。(p.17)
自分自身も死に物 -
Posted by ブクログ
あまり本を読んでいるところを見たことのない母の鞄の中にあったので、自分も読んでみようと思った。
太宰治の自叙伝的な作品らしく、みんなを楽しませるためのものではなく、自分のために書いたもので、自分の内的事実を吐き出そうとしていると。
人の闇の部分や現実から逃げたくなってしまいそうな弱い部分は誰にもあると思うが、ここまで多いと、普通の人間と思われなくなってしまう。
読み始めた頃は、難しい表現や否定的な感情が多いし、文章が長くて、休憩する所がわからなくて馴染めなかったが、最後まで頑張って読み終えた。やっと解放されたような感覚。
妻や子供たちにも読んでもらい感想を聞きたい。
そして、忘れた頃に -
Posted by ブクログ
私には少し難しかったかもしれない。文豪の作品を触れる度に思う。そして再読させられる。それほど罪深くて奥深い。人間失格と同様、斜陽も太宰本人を写し出している人物で構成されている。故に、生々しい。滞在的二人称によりあたかも自分もその場にいるような、登場人物として作品を見ているような錯覚に陥る。太宰治の考え方は、やはりすごく悲しく虚しいと思う。ただ、その悲哀の中に人間の核心に迫る大部分がある。明るさだけを持つ人間なんていない、明るさを判断するには暗さが必要だ。暗さの中にこそ明るさはある。それは逆も然り。太宰は明るさの中の暗さを主張している気がするが、私は逆に暗さの中にも明るさがあると気付かされた。そ