太宰治のレビュー一覧

  • タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-(新潮文庫nex)

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    ネタバレ

    総題の漢字よし。
    収集箱じゃつまらない、蒐集函なのだ。
    カバーイラストも素敵。
    新潮文庫nexというレーベルで、ヤングアダルトにこの作品たちを差し出した編集部、GJ!

    ■坂口安吾 桜の森の満開の下
    既読を再読。

    ■芥川龍之介 影 ★
    初読。
    芥川といいえばドッペルゲンガーなのでそういうことかと中盤で思わせておいて、ラストなんと映画だった? 夢だった? というオチ!
    しかもそれすら真実かどうか不明な放り出し方。凄い。
    しかし、「歯車」でも感じたことだが、狂気に飲み込まれそうな感覚を、それでも作品化「しちゃえる」ことが、逆に悲劇だったのかもしれないと考えたりもした。

    ■江戸川乱歩 芋虫
    既読を再読。

    ■泉鏡花 浮舟 ★
    初読。
    少年士官、袂の懐中時計が消えたと思いきや、遭遇した赤ん坊が持っている。
    赤ん坊は落ちないよう橋に赤い帯で結ばれている。
    という、それだけの話。
    それだけなのに、耽美で禍々しい予感だけが、際立つ。

    ■折口信夫 身毒丸
    初読。中公文庫で読み切れなかったのだ。
    で、実際読んでみても、あまり文意が読み取れず。
    俊徳丸伝説をもとにした謡曲や説教はもとより知らず。
    中上健次や三島由紀夫文脈で名前を聞いたことがあるくらい。
    wikipediaに、
    >折口信夫は俊徳丸伝説から仏教的・教義的な要素を取り払い、近世芸能の原始的なかたちを再現することを意図して短編小説「身毒丸」を書いた(大正6年発表)。「身毒丸」は「しんとく丸」にこの字を当てはめたもので、主人公は先祖伝来の病を持つ田楽師の息子として描かれている。折口信夫は「しんとく丸は『俊徳丸』と表記されることが多いが、もともとは『身毒丸』と表記されていたのだろう」と語っている。
    とあるが。
    なんとなくホモホモしい雰囲気で、いいといえばいいのだが。

    ■小栗虫太郎 白蟻 ★
    初読。
    面白……かったかどうかはわからないが、なんだか凄みのある文章だった。
    というのも、人里から隔絶された家族は全員狂って、野生に返っていると思いきや、実際は明朗な滝人という女。
    明朗というか、小栗式衒学を織り交ぜる形で、木の根っこに対して延々語りかける、その絵面はもう狂人。
    しかも子供はフリークスで、足元の草むらをザザザーッと這い進む、それを殺人の道具にしちゃう、という、もうドウカシトル話。
    その背後には、夫が入れ替わっているのでは!? という疑念があるわけだが、その犯行理由が凡庸に思えるくらい、クルットル設定で、あー確かに「黒死館殺人事件」でもワケワカランが勢いは凄まじかったなと思い出した。

    ■谷崎潤一郎 刺青
    既読を再読。

    ■夢野久作 瓶詰地獄
    既読を再読。

    ■太宰治 駈込み訴え
    既読を再読。
    耽美幻想という函に入れられることで、別の見え方。

    ■夏目漱石 夢十夜
    既読を再読。

    0
    2025年06月24日
  • 十二月八日・苦悩の年鑑 他十二篇

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    “私はここに生れて、そうしてこんな淡い薄い風景の悲しさに気がつかず、のんきに遊び育ったのかと思ったら、妙な気がした。”(p.123『帰去来』)



    “元気とは、身体を支持するいきおい。精神の活動するちから。すべて物事の根本となる気力。すこやかなること。勢いよきこと。私は考える。自分にいま勢いがあるかどうか。それは神さまにおまかせしなければならぬ領域で、自分にはわからない事だ。 お元気ですか、と何気なく問われても、私はそれに対して正確に御返事しようと思って、 そうして口ごもってしまうのだ。”(p.137『作家の手帖』)


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    2025年06月23日
  • パンドラの匣

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    太宰治作品に対する先入観を裏切る、明るく前向きな2編が収められていた。
    特に『正義と微笑』には、心に残る言葉がたくさんあった。

    「微笑をもて正義を為せ!」

    青春小説でありながら、青春時代を過ぎた私のような読者も置いてけぼりにはされない。
    むしろ、歳を重ねるほどに「顔は柔らかく、芯は真面目に」と心がけるべき場面は増えていくように思う。

    とはいえ、決めたはずのスローガンを守り続けるのは難しい。
    主人公の進自身も八つ当たりや迷走を繰り返す。
    そんな中登場する『ファウスト』の朗読シーン。

    「此の虹が、人間の努力の影だ。(略)
    人生は、彩られた影の上にある!」

    実体のない虹と、苦労を包む微笑。
    この二つのイメージが重なり合い、理想を追い求める人間の努力そのものが、美しいものとして肯定されているように感じた。

    この一節が、高い理想と現実のすれ違いに悩む進にぴったりとはまり、「迷っても、笑って、なお進め」という、作品全体を貫くあたたかなメッセージとして伝わってきた。

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    2025年06月20日
  • きりぎりす(乙女の本棚)

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    太宰治文学忌、入水遺体が発見された日
    1940年昭和15年の短編 太宰治30歳

    売れない画家へ望んで嫁いだ女性
    結婚後徐々に世間に認められる夫
    名声と共に失われる清貧
    金にも地位にも固執していく
    価値観の相違に耐えられなくなった妻からの
    5年目の夫への別れ

    きりぎりすの鳴き声を背骨にしまって生きていく
    物語は理解しやすいが、最後コオロギの声を女は認識しながらきりぎりすへと言葉を転換させる
    さらっと読むと不思議な一節となる
    ご本人も名声と仕事が欲しかったのではと思うのですが、それを逆手に取った戒めでしょうか

    しまざきジョゼさんのイラストは昭和前半の雰囲気があり良かったです

    きりぎりすとコオロギは古語では、ほぼ同じかな?

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    2025年06月19日
  • 乙女の本棚 女生徒

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    ある女生徒の朝起きてから、夜眠るまでの日常を描いた短編。
    ひたすら眼にしたものに対する感想、ちょっとした不満など女生徒が頭の中で考えている事をとりとめもなく書き連ねている。
    太宰のイメージとは正反対の乙女感丸出しの作品。
    今井キラさんのイラストと相まってまさに“乙女”の本棚に相応しい作品だなと感じた!

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    2025年06月18日
  • パンドラの匣

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    初の太宰作品。
    読みやすくて主人公の苦悩や想いに共感する部分あり。名言もあり。カルチベート大切にしていきたい。

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    2025年06月18日
  • 富嶽百景・女生徒 他六篇

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    ネタバレ

    女生徒は太宰が女性となって本人の語り口で話を進めていく。もっと何かのイベントがあっても良かったようにおもうのだから。

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    2025年06月18日
  • 乙女の本棚 女生徒

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    乙女の本棚シリーズ。
    少し厚めだなと思ったら、かなりの文字量でした。思春期の女の子の繊細で、揺れ動く心情がとにかくツラツラと書かれています。作者がオジサンだとは、とても信じられません。

    自分はこんな思春期を過ごしていないけど、当時の心情を文章にしたら、これぐらい揺れ動いていたのかな?昔を懐かしく、この感性をどこか眩しく感じるような作品でした。

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    2025年06月16日
  • 乙女の本棚3 葉桜と魔笛

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    乙女の本棚シリーズの一冊。
    シリーズ最初期のものだけあって、乙女の本棚のコンセプトがはっきり打ち出されているような気がする。こういうのを作りたいんだという思いが、きちんと形になっていると思う。
    まあ、確かにこの絵は乙女だねえ。

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    2025年06月15日
  • 津軽

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    太宰がこれ書いた年齢に
    自分が追いついてしまった衝撃

    34,35歳。
    自分の原点探したくなる気持ち、
    今ならわかる(浅い感想)

    「ね、なぜ旅に出るの?」
    「苦しいからさ」

    ぐらついてくるんだよね、自分が。
    だからなのかな。
    最後の言葉がぐっときたのは。
    「元気で行こう。絶望するな。では、失敬」

    おめーに言われたくねーよ。と同じ歳になった今だから真っ直ぐ受け止められた。

    あと5,6年で不惑と言われる歳。
    無理だね。
    きっと人生終わるときまで迷いまくりだし、
    苦しくなるだろうけど。

    そのときは、
    大切な人たちに会いに、大切な思い出に会いに
    旅に出てみようかな。


    歳を重ねてまた読んでみる行為はいいね。

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    2025年06月13日
  • パンドラの匣

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    以前に読んだ、古賀史健さんの本のなかで『正義と微笑』が紹介されており、とても気になったので読みました。

    思ったよりとても読みやすかったです。太宰治の文章って、こんなにスムーズに頭に入ってきやすかったっけ?と思うほど。書簡体小説だからでしょうか?

    主人公の芹川進くん。無事に志望する劇団に入れて良かったです。試験後のやりきった感じは読んでいるこちらにも清々しさがひしひしと伝わってきました。
    初任給で、お兄さんに万年筆をプレゼントしたのかな?

    最初のほうに出てきた黒田先生のセリフは名言でした。
    カルチべート。この言葉をしっかり胸に刻みました。
    なんで勉強なんかしなくちゃいけないんだ?と悩んでいる、小中高校生に是非読んでいただきたい。

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    2025年06月11日
  • 魚服記(乙女の本棚)

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    二度の自殺未遂の後、24歳で書かれた『魚服記』。太宰治の作品です。ねこ助さんのイラストが、物語の雰囲気をうまく伝えてくれているように思いました。

    東北の人里離れた村で父親と暮らすスワ。日中過ごす滝のそばで、ある青年の不慮の死を目撃します。その後もこの場所で父親の帰りを待つ毎日。そして成長し···。という感じでした。

    物語は、全体的に重苦しさを感じました。スワが父親に放った言葉が、この物語ではとても印象的でした。

    最後に、生まれ変わって自由と解放を手に入れたスワが、滝壺に吸い込まれていったことで、なんともいえない気持ちになりました。

    ねこ助さんのイラストのスワの眼に、思いが込められている感じがしました。

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    2025年06月02日
  • 晩年(新潮文庫)

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    著者の物語と著者自身の関わりについて、よく言われていることがあるけれども、ここでは、そのことについては触れない。あえて僕が、それを語る必要がないと思うからだ。皆で同じことを言うなんて、言い方は悪いかもしれないけれど、馬鹿げていると思う。いまさらなのですよ。悪しからず。
    人というのは、どうしようもなくて、それは誰しも心当たりがあると思う。浮かぶも沈むも、本人次第、と言ってしまったら身も蓋もないけれど、その心当たりが人一倍強く思いあたる僕としてはなおさらだ。堕ちるときは堕ちる。言い訳だってするし、他人のせいにもするかもしれない。妥協だって肯定するし、いつだって逃げ道を用意する。ここまで思い当たることがあると、自己嫌悪を通り越し、諦めの境地に踏み込むことも厭わない。
    そんなものですよ、人なんて。
    読書の際は、常に僕自身のことを平行して考えているような気がする。確信は、あるような、ないような、曖昧な感じがするけれども、それは、きっと共感ということにつながっているのかもしれない。読書を始めるまで、共感という感覚には馴染みがなかった。想像力が足りなかったのかな。共感って、想像力だと思うから。想像して、自分のこととリンクするから、共感に至るわけでしょう?著者の物語を読むと、いつもそう思う。想像が生々しく思えるくらい。それだけ共感の度合いも高まるというもの。
    『晩年』という短編集は、物語のバリエーションに魅力があると思う。著者の物語につきまとう重さが幾分薄らいだ、物語としての面白みに富んでいる印象。物足りなさを感じるなら、それはあまりにも著者のイメージに引かれ過ぎだと思う。固定観念は、ほどほどに。でないと、見逃しているものが、あるかもしれませんよ。

    著者の人生を知るからこそ、それを覗き見しているような気がして、愛おしくすら思えてくる。自らの人生などと重ねてみたりして、ぼく自身の不甲斐なさに頭を抱えてしまうこともあった。そのうえで、何らかの発見があるのでは、と期待してしまう浅はかさ。

    いや、自分のことは棚に上げてしまおう。あくまで読者は傍観者。距離感は思いのほか近いけれど、鵜呑みにしてしまうことなどは、分をわきまえつつも、どこか熱狂を抑え切ることが難しい。ある意味で自虐なのかもしれない。自身に重ねてしまう。
    省みては、ため息をもらす。

    どこかの物語に登場する、何をとっても完璧な主人公は一見気持ちがいいけれど、果たしてそれは、傍観者である読者との関係をより鮮明にするだけで、いわば他人行儀な熱狂の先には、結局何も残らない。

    読者である自身との境界の曖昧さこそ、著者の物語に惹かれる理由だと確信している。

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    2025年09月15日
  • 新樹の言葉(新潮文庫)

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    昔、晩年の短編集を読んだけど
    これは中期の短編集ですね。
    文章の相性としては読みやすく感じたけど
    内容のほうは、え〜ちょっとそれ
    どうなん〜みたいなところ。

    中では『葉桜と魔笛』に少しホロリ。
    『新樹の言葉』も旧知の人の
    子供にあたる兄妹との小さな酒宴が温かい。
    『春の盗賊』も妙な展開だけど
    なんだか可笑しみがあって好きでした。

    0
    2025年05月25日
  • 乙女の本棚 女生徒

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    はい44オネェはおさむちゃんです

    TheSECOND見るの忘れちゃったんだよなー誰かマジでスケジュール管理してほしいwってそっちのお、お、お、おさむちゃんじゃなーい

    どうなの?

    なんか最後に最果タヒさんが、違うんだけど共感するみたいなこと書いてましたけど

    いや、そんなこと言ったら東京タワーにいるインチキ占い師と一緒でこんだけ色々言ったら何かしら当てはまるわ!って言う

    特に『女生徒』なんか、すぐ「あ〜それわたし〜」とか言いそうじゃない(ド偏見)

    かの太宰治をインチキ占い師呼ばわりです

    でも、なんか分かる
    このあっちこっちに揺れて、ぐるぐるしながら膨れ上がる、なんか醜い気持ち
    乙女やなー

    ( ゚д゚)ハッ!

    でもそうか!
    別に太宰は、あなたの気持ちを言い当てます!とか言うでないわ
    読み手が勝手に言ってるだけだわ

    ごめん
    インチキ占い師とか言ってごめん
    ただの妄想日記を書いただけなのにインチキとか言ってごめん
    猛省しとります

    いやただの妄想日記て!
    失礼か!( ゚д゚ )クワッ!!

    0
    2025年05月25日
  • 人間失格

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    結局、令和も昭和も
    人間は何を信じて生きていけばいいかわからないものなんだね。
    誰も信じなくても、誰でもを信じても結局酷い目に遭うなら、
    好きに生きるしかないね。
    27年、濃い人生だ。
    まともな人間とはなんだろ。
    狂った主人公の周りにいたまともな人間は、果たして人間だったのか。あくまで、人間ぽかっただけでは?

    あと、カフェーは風俗店の意味だったんだね。
    カフェ酒池肉林はネーミングセンス草

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    2025年05月12日
  • 待つ(乙女の本棚)

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    乙女の本棚シリーズの一冊。
    太宰治といえば『人間失格』「走れメロス」のイメージが強い。しかし、この本を読めば、太宰治に対するハードルがだいぶ下がるのではないだろうか。

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    2025年05月06日
  • 晩年

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    “「ほんとうに、言葉は短いほどよい。それだけで、信じさせることができるならば。」”(p.11『葉』)

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    2025年05月05日
  • お伽草紙(新潮文庫)

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    ネタバレ

    浦島太郎とカチカチ山がとにかく面白い。作者の批評精神が全開で、この人はずっとこう言う世間と人間に対する不満というか醒めた見方を何処かで持ち続けて居たのだなと思う。斜陽等の長編にも通底して、この世の中に対する虚無めいた見方が流れているように感じる。
    反面、この文庫に収録の他の作品はあまり面白いと感じられなかった。特に新釈諸国話は正直、読むのがつらい。いかに作者のエッセンスで翻案したとは言え、余りに元の西鶴のストーリーと合っていないと感じ、読んでも何ひとつ感じるものがない。
    お伽草紙は良かったのだが、他が上記なので、個人的には文庫全体としての評価は低めとなってしまった。残念。

    0
    2025年05月02日
  • タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-(新潮文庫nex)

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    ネタバレ

     耽美とは何なのか未だ理解できていないが、収録作から思うに愛憎、背徳、情念、倒錯、フェティシズム、幻想、狂気etcが入り混じったものか。そこにタナトス≒死への衝動が加味された、名だたる文豪らによる10編。

    「桜の森の満開の下」(坂口安吾)や「瓶詰地獄」(夢野久作)は本書のコンセプトをまさに体現している作品か。作家のフェチ全開「刺青」(谷崎潤一郎)、美しくニューロティックな幻想「夢十夜」(夏目漱石)、サスペンスからの意外な結末「影」(芥川龍之介)もそこに沿ったものかと。
    "美"という点では泉鏡花の「浮舟」、折口信夫「身毒丸」なのだろうが、個人的には独特の文体含め作品世界にハマれず味わいきれなかったのが正直なところ。「芋虫」は愛憎や倒錯という点ではそうかもしれないが、乱歩の"耽美"な作品というなら「人でなしの恋」辺りでもよかったのでは。

     上州の山間に住む逼塞した一家。落盤事故からの生還後変貌した夫に疑念を抱く妻の執念がやがて……という「白蟻」(小栗虫太郎)は異彩を放つ一編。終始陰鬱な情景描写、狂気を帯びた女性の独白と晦渋で読み辛い地の文が続き(一体何を読まされてるんだ……)という思いを抱えたまま一家の運命を見届けることになる。何となくだが平田弘史氏の画が非常にマッチしそうな気がする。ただし異形の息子だけは日野日出志風かも。

     裏切者の代名詞として歴史に名を残す男の訴え「駆込み訴え」(太宰治)。ラストに男が名乗るが大半の読者は前半部で彼、そして"あの人"が誰なのか気付くだろう。敬愛を募らせた余りの独占欲からの憎悪。2000年前の裏切りの真相は最早知るべくもないが、収録作中で"愛憎"を明確に最も描いているのはこれかもしれない。

     レーベルはライトノベル、YA向け中心の新潮文庫nexではあるが、「桜の森の満開の下」「芋虫」「瓶詰地獄」ら有名作品と共に「影」「白蟻」「駆込み訴え」などややマイナー?な作品も収録する凝った構成。10代のそれも早い内にこんなのを読んだらその後の人格形成に影響が出そうな気がしないでもない、が。

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    2025年04月25日