太宰治のレビュー一覧
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昭和21年から23年にかけて発表された八編が収録。
「ヴィヨンの妻」は、太宰の妻からの目線で描かれています。苦労が滲み出ているものの、懸命に生きていると感じさせる小説です。しかし太宰は自分の都合の良いように解釈しているようですが‥。この小説の最後に、妻のセリフで「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きてさえすればいいのよ」は、何だか切なくなりました。
こちらとは対照的に、「おさん」では妻と太宰の本音がぶつかり合っているような小説が書かれています
社会に馴染めず、孤独な太宰治は聖書の引用と共に小説にしがみついて生きている‥そんな惹きつけられる力強い文章に魅力を感じます。
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太宰は6男坊で生まれて、甘えられないし我儘も言えない数々の苦労がある幼少期を過ごしています。
最後に登場する飲み屋のママが言うように「お父さん(実家)も悪かった事もあると思う」に同感します。けれども、これだけ兄弟が多ければ両親もそれぞれの子供に構っていられない様子も納得できました。
お金もあり、学校へも通えて。
かなりの美男子が更に罪ですね。
薬局でモルヒネが買えるのは、この時代ならでは、完全に依存症のようでした。だれか賢くて支えてくれる女性がいたら良かったのに‥。
友人の堀木は、本物の悪友です。それでも堀木自身は、自宅で両親とうまく同居し、それを見た太宰は複雑な心境になっています。
実の両親とは直接的な家族の関わりが無い背景から、堀木を羨ましく思えたのかもしれません。
同情したい気持ちはあるものの、弱い彼に近寄りたくなる女性たちの気持ちもわからなくはない‥
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ネタバレ○正義と微笑
純真な青年の内面を、日記形式で巧みに表現した作品。
主人公(芹川進)の感情の動きをとても丁寧に綴っており、学生(こども)から社会人(おとな)になっていく過程での苦悩や葛藤が描かれる。
拗らせた陰キャのような思考(自分は特別だと思っている)に、とても感情移入できた。
春秋座で厳しい稽古に必死に食らいつき、どんどん活躍の場を広げていく中で、あれだけ尖っていた青年が、「己れ只一人智からんと欲するは大愚のみ」と悟る。社会の厳しさ、地に足をつけることの重要性を理解するラストの余韻が素晴らしい。
序盤に出てくる黒田先生の勉強論は、幅広く教育現場で引用されるべき。(p.17)
自分自身も死に物狂いで大学受験の勉強をして、その時に学んだことは何一つ覚えてないけど、一つのことに打ち込んだ経験は確実に財産だと言える。
○パンドラの匣
敗戦国となり先が見えず暗い日本の世相と、結核療養所の人々を重ね合わせて、希望を持ち続けることの意義を訴える作品。
手紙形式で、「健康道場」なる異質な結核療養所の人間模様が描かれる。戦後まもない作品にも関わらずユーモラスな描写の連続で、戦争の影をほとんど感じさせない作品だった。
メインで語られるのは、主人公が恋をする「竹さん」と「マア坊」という二人の女性との交流。くどくど友人への手紙に二人について書きまくるものの、最後は大失恋に終わってしまう。
結核に苛まれ、恋愛に失敗したとしても、
『すべてを失い、すべてを捨てた者の平安こそ、その「かるみ」だ。』(p.316)と謳い上げる。
最後は戦後間もない日本国民全員に対しての、太宰治からの優しいエールで締めくくられる。
「僕の周囲は、もう、僕と同じくらいに明るくなっている。全くこれまで、僕たちの現われるところ、つねに、ひとりでに明るく華やかになって行ったじゃないか。
あとはもう何も言わず、早くもなく、おそくもなく、極めてあたりまえの歩調でまっすぐに歩いて行こう。この道は、どこへつづいているのか。それは、伸びて行く植物の蔓に聞いたほうがよい。蔓は答えるだろう。」(p.331) -
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ネタバレかなり集中して読まないと100%楽しむのは難しい。太宰治と行く!津軽探索、そして酒。といった感じの一冊。
内心、小説らしい物語を期待していたから、少し残念な気持ちも無くはないが、全体的に面白かった。酒を求めて歩き回り、太宰治の故郷を作者自身の目で体感できたことは面白かった。
ただ、自分が津軽に対してイメージする事が難しく、綺麗な風景や何もない長屋が並んだ村など、戦時中の津軽はこんな感じなんだと思いながら読んでいた為、感動も薄かったかもしれない。
人に慣らされた景色、人の匂いのする景色。この表現はとても秀逸だ。どれだけ綺麗な場所であっても、観光客が押し寄せ、たくさんの人の目に晒されるほど、魅力が弱まったりする事もある。穴場スポットを見つけて、自分だけが自然を体感できる時こそ、これ以上ない充実感を得られるものかもしれない。その部分には深く共感をすることができた。
郷土の話も多く出てくる為、少し難しい部分もあるが、調べながら読んだりするととても面白い一冊だと思う。 -
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表題作でもある"ろまん燈籠"は5人兄妹が順々に書き連ねて1つの物語を作る話だが、それぞれの個性が作品の中にも滲み出ている中でストーリーも良くできており作中のラプンツェルはまた別の作品として楽しめた。
純文学に置いてはストーリーよりも表現を楽しむものだと感じていたがこの作品はストーリーとしても面白かったので他の太宰作品も読んで見たい。
その他の話では"禁酒の心"で描かれる禁酒をしようと思ってもつい誘惑に負けてしまう気持ちや食べに来ているのか飲みに来ているのか分からなくなる気持ちに共感できた。
"雪の夜の話"では短い話しながらも戦時中でも感じることのできる雪景色の美しさを想像し、ラストではお兄さんを意気消沈させるお姉さんの一言が痛快だった。
総じて読みやすい作品が多く、ストーリーよりも表現を楽しむ純文学という自分の中の偏見を取り払ってくれる作品だった。 -
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津軽の近代風土記。太宰の津軽回想録と冒険譚。
太宰自身、本書を書く上で、津軽の歴史を勉強していることが窺え、資料の引用部分が冗長に感じるほど長く、頻繁にある。故に読みづらい箇所が多く、小説として読むにはかなり時間がかかるのではないかと思う。その部分は非常に面白くない。この部分は津軽に興味のある人でないと読めないのではないかと思う。太宰の回想部分や冒険譚で、ようやく太宰節が出てくるように感じがする。
また、他の太宰の作品に比べて、本書の太宰の筆致はかなり明るい。(といっても相対的に明るいというだけではある。)太宰の精神状態は常に病んでいると思っていたが、比較的健康な状態で書いたことはすぐにわかった。いつもなら故郷の話をするにも、兄弟との会話をするにしても、常に後ろ暗いものを抱え、それを包み隠さず吐露するのが太宰文学だと思っていたが、今回はそうした後ろ暗いものすらも、自分自身軽く受け流すような余裕が見えた。
また、特に最後のたけとの再会のシーンは非常に前向きで印象的だ。太宰のこれまでの苦悩には、生家に馴染めず、隔絶し、さらに自分だけは兄弟やみんなとは違ってしまっているという異物感があった。しかし自分のルーツは生家のみでないことを悟り、孤独感から解放され、自分が異物であることは当然であり、そしてそのままでいいのだという自己肯定にまで転じている。
太宰にしては後味の良い晴れやかな終わり方でよかったが、津軽の歴史について言及する部分は非常に読みづらく時間がかかったのが読んでて苦しかった。 -
Posted by ブクログ
70年以上前に書かれた作品が今も多くの人に読まれていることが、ただただすごいことだと思う。
太宰治の本名の津島修治が作中に出てくるのも楽しい。
個人的には、「親友交歓」と表題作の「ヴィヨンの妻」がよかった。
「親友交歓」は、実際にこんな図々しい同級生が訪ねてきたら絶対嫌だけれど、読んでいる分にはおもしろい。
「ヴィヨンの妻」も、妻子がありながら借金までして飲み歩く夫は絶対嫌だけれど、奥さんのさっちゃんはたくましい。
「男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです」という夫の言葉に、太宰本人の思いが重なっている気がして、切ない。