太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、太宰治さんとねこ助さんのコラボ作品「魚服記」です。ねこ助さんの繊細でどこかさみしさを感じさせるイラストが印象的な作品です。
炭焼きの父とその娘のスワ…父が炭焼きの仕事をしているときは、スワは茶屋の店番をしていた…。また、父がふもとの町に下りるときには、ひとり炭焼き小屋で過ごすのだった…。スワは15歳、少女から女性に成長する時期…「おめえ、なにしに生きてるば」「くたばった方あ、いいんだに」なんとも切ない会話…。季節は秋から冬に向かう頃、いつものようにひとり父を待ちながら過ごすスワ…外を見ると初雪、酒臭い父から逃れるかのように小屋を出ていき…。
スワは父に、自分のことをもっとわかってほしかったんじゃないかな…それとも父から解放されたかったのか…。でも私的には、父に愛してほしかったんじゃないかと感じました。なんとも切ない最期は、しんみりと心に広がって静寂な余韻を残してくれました…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレポローニヤスが魅力的なキャラクターだった。何か条も続く留学の心得は面白い。愛情深いお父さんで、ポローニヤス家は健全で幸せそうに見える。
一方ハムレット家に愛情がないわけでもなく、ただハムレットに伝わっておらず、それで本人は苦しんでいる。
愛が言葉なのかどうか、という議論は興味深い。
ハムレットは愛を言葉で伝えてほしいと切望している(自分自身は伝えようとしていないが)。少なくとも、ハムレットのように愛が言葉であると思っている人に対しては、言葉を尽くさなければ愛は伝わらないのだろう。
しかし仮に、ハムレットに対し言葉を尽くしてみたところで、ハムレットは本当にそれを心からの愛の言葉だと信じられるのだろうか?
オフィリヤがガーツルードに言ったとおり、人間が正直な心を言葉で言い表そうとするほど、嘘っぽく変になってしまうものであり、うまく伝わらないものだと思う。
人間は必ずしも思ったとおり言葉にする生き物ではない、というだけでなく、さらに、思ったとおり上手く言葉にする行為それ自体が相当難しい、という二重の問題がある。
この作品の登場人物もみな多弁だが、そのセリフは、真実を話しているのか、あるいは心からの言葉なのか、いまいち信じきれないものが多い。
人の心を理解しようとすること自体が苦しみを生むようにも思える。人と人とは本当に難しい…。
クローヂヤスも哀愁がある。
結局本当に兄を殺しているのかいないのかわからず、読み返してしまった。
最後の告白が本当であるとすれば、殺すことを決意し、着手しかけたところをポローニヤスに目撃されたが、すんでのところで踏みとどまった、といったところだろうか?
だがクローヂヤスが心から国や新しい家族のためを思っている男であることもまた事実であり、かわいそうにも感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昭和十一年刊行の太宰治の処女作品集。
以前、別のアンソロジーで「富嶽百景」を読んだとき、自分がどう見られているのかをすごく気にする人だと感じたが、それは本書収録の作品にも直截的に書かれている。また、(意識的か苦しまげれかはさておき)小説の筋をいったん止めて作者自身が説明や言い訳をしたり、とりとめのない文句をコラージュ的に並べて雰囲気を演出したり、または箴言めいたことを書いてみたり、気取っていて自意識が非常に強い。解説には二十三、四歳のころに書かれたとされているので、そうなるのも当然ではあるのだろうけれど、いま一歩作品に入り込めない。思春期に読んでいれば、また印象は違ったのだろうとは思う。
どの作品にも作者自身が反映された登場人物が出てくる。
以下は印象的だった作品
・「猿ヶ島」
猿の流れ着いた島が、実は動物園だったと判明する。
先着の猿が語るさまざまな職業についての皮肉が面白い。
・「猿面冠者」
人生の岐路に立たされたとき、見知らぬ人から手紙が送られてくる、「風の便り」という小説を書く過程を作者の思考を交えながら描く。小説のなかで小説を書くという入れ子構造になっている。
同じ手法をとっている「道化の華」(本書収録)では、読者に見られることを意識したうえで悩み、卑下している感がある。
・「彼は昔の彼ならず」
親の遺産を譲り受けた青年は、木下青扇という男に家を貸したが、いっこうに家賃を払う気配がない。取り立てに行っても、いつもうまい具合にごまかされてしまう。働くようにすすめるも、女房が変わるたびに手をつける仕事も変わり、稼げている様子はない。なかば放っておいているところに、青扇の最初の女房が青年のもとを訪れる。
・「ロマネスク(仙術太郎 / 喧嘩二郎兵衛 / 噓の三郎)」
蔵にこもって仙術を会得した太郎。喧嘩の腕を磨こうと鍛錬を積む二郎兵衛。幼いころから嘘をつき続けてきた三郎。思うよういかない三人を、おとぎ話のような形で滑稽に描く。