感情タグBEST3
Posted by ブクログ
2023/06/16
桜桃忌が近いため、以下の作品を読んだ。
『燈籠』
冒頭で語られる痛々しい思いと、強く虚しく眩しい終わり方がとても好きだった。
この作品を読んだときのどうしようもない気持ちは、言葉では言い表すことができない。
『満願』
夏の穏やかな日々に、ふと差し込む眩しい光。
そんな情景がラストで描かれる。
私はこの作品を読むたびに、爽やかな青と白を思い浮かべる。
『葉桜と魔笛』
姉と妹の間で繰り広げられる優しい嘘に、胸が締めつけられる。
あの口笛はもしかしたら父親なのでは……と私も思ったが、高齢になった姉自身から語られる昔話は、口笛の正体は分からないままでもいいと思わせてくれる。
心に生まれる「もしかしたら」という思いと、神様のおかげだと思っていたい気持ち。
そのどちらも穏やかに包み込むような読み心地が好きだった。
待ち待ちて ことし咲きけり 桃の花
白と聞きつつ 花は紅なり
この作品に登場するこちらの短歌は、太宰さんが書を書くときに好んで書いた短歌だそうだ。
聞いていた色とは違う色だったという意外性と、驚き、喜び、面白みなどが感じられる短歌だなぁと思った。
『黄金風景』
のろくさくて、いつも下に見ていた女中・お慶。
語り手の「私」は幼少期、お慶をいじめていた。
そんなお慶には今、幸せな家庭があり、「私」のことを「親切に、目をかけて下さった」と言う。
「私」は落ちぶれてしまったというのに……。
そんな「私」の惨めで恥ずかしくて情けない感情、そして「彼らはそうでなければならないのだ」という思いが絶妙に描かれていて、読みながらやるせない気持ちが溢れた。
『I can speak』
たった文庫4ページで、こんなにも胸が締めつけられるのかと驚いた。
工場から聞こえてくる女の歌声に救われる。
そういう瞬間が、日常にはあると思う。
語り手が見かけた姉と弟。
その弟が言った「I can speak」という響きは幼いが、純粋で汚れていないもののように感じた。
姉は歌声の主かどうかは分からないが、「ちがうだろうね」という終わり方が優しく、少し愉快な感じを含んでいるようにも思えた。
Posted by ブクログ
本当の太宰は明るい太宰だという人があるけれど、私は違うと断言するね。絶望でこそ太宰、この真実が一極集中する境に明るさが見えるだけよ。綺麗な名作が多い本書だったが「女生徒」や「姥捨」がやっぱり好きだね。
Posted by ブクログ
創生記、喝采、二十世紀旗手、あさましきもの、HUMAN LOST、燈籠、満願、姥捨、I can speak、富嶽百景、黄金風景、女生徒、懶惰の歌留多、葉桜と魔笛、愛と美について(5篇)
Posted by ブクログ
昭和11年10月〜昭和14年6月の作品。
「満願」、「黄金百景」、「女生徒」等好きな作品目白押しで、
読んでいて「あ、これ面白かった!あー次のも面白いぃぃ」って興奮w
「富嶽百景」は太宰にはまったきっかけの作品でもあるので、
個人的に思い入れが強い。
太宰ってこんなに明るいんだ!ってびっくりしたのです。
「放屁なされた」というようなユーモアあふれる表現もあるし、
作品自体が明るいほうへと向かうような希望のあるもので好きです。
短編で読みやすいので、太宰あまり読んだことない人にはここらへんの作品もおすすめだと思います。
Posted by ブクログ
1巻よりすらすら読めた。
創世記、喝采、二十世紀旗手、あさましきもの、燈籠、満願、HUMAN LOST、黄金風景、姥捨、富嶽百景、I can speak、女生徒、懶惰の歌留多、葉桜と魔笛、愛と美について(秋風記、新樹の言葉、花燭、愛と美について、火の鳥)収録。
ベタやけど、女生徒、葉桜と魔笛、愛と美についてが好きです。
Posted by ブクログ
『HUMAN LOST』が読みたくて購入。……が、序盤が兎に角読みづらくて苦悩したのでよっぽど諦めようと思ったけど、途中から突然読みやすくなってビビった(笑)。『富嶽百景』は地元なので要所要所でニヤニヤさせてもらった。女学生目線で書かれた『女生徒』は「この人こんなのも書けるんだ!」と驚いた。『愛と美について』の5兄弟はめんどくさそうだなぁ…と思いながら読んでいたら最後のお母様の大オチに爆笑。『火の鳥』が未完なのが惜しい。そんな感じで、結構楽しんでたみたい、私。