【感想・ネタバレ】人間失格 3巻(完)のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2022年12月10日

太宰治の希代の問題作「人間失格」を、舞台を現代社会に移し、鬼才古屋兎丸が完全漫画化。
「恥の多い生涯を送ってきました」――ネット上に見つけた大庭葉蔵の独白が赤裸々に綴られたページ。掲示されていた3枚の写真は、葉蔵の転落の人生の軌跡を描いていた。読み進めるほどに堕ち、崩壊していく葉蔵の人生。彼は何を恐...続きを読むれ、逃げていたのか。
大庭葉蔵は、「道化」を演じることで生きてきた。同級生が声を掛けてきた時は変顔で応じ、先生の前で答えを発表する時はツメの部分でわざと間違え、高校までは「面白い奴」というキャラで人気者になり、そんな道化が息苦しくなると美術予備校に逃げ場所を求め、風俗でしか自然な笑顔を見せることが出来ず、周りが求める「普通」の正解に沿って演技をすることで人間関係を成り立たせていた。それは、「普通の人間」が怖い葉蔵にとって、人間に繋がる唯一の手段だった。そんな葉蔵が友人になったのは、美術予備校の同級生堀木正雄。堀木と夜の遊びに夢中になる中で葉蔵は、政治的な集会に身を投じる。別に思想に共鳴したからではなく、人間観察の延長だし、葉蔵は「非合法」「日陰者」を見ているとうっとりするほど優しくなれるから。そんな中で政治的団体のリーダー佐々木に信頼されある企業のビル爆破計画を見せられた葉蔵は、そのビルが自分の父親が経営している会社であることから、葉蔵の生き方の根源の「道化」が父親の自分に対する抑圧的な接し方にあると気付いてしまう。
高校にろくに行っていなかったことが父親にバレてカードやマンションを取り上げられた葉蔵は、バイトしながら高校生活をすることになる。政治的団体のリーダー佐々木の彼女と関係したり、キャバクラのホステスのアゲハと関係したりしながら女の金にすがり生きてきた葉蔵はドン底まで堕ち、鎌倉の海でアゲハと心中未遂をする。
アゲハとの心中に失敗し、ひとり、生へと取り残された葉蔵は、送られた留置所の中で、彼女への償いを生きる糧にしていこうと決心する。そして釈放、父親の側近に居候生活。平穏な生活を取り戻したかのように見えたその裏には、葉蔵を再び絶望の闇へと落とし込む事実が隠されていた。自分の罪も金で帳消しされ父親に金で縛られる人生に絶望した葉蔵は、うわべだけの無気力な人生を生きていくしかなかった。つかむ場所のない深い暗闇の波間で、葉蔵がようやく掴んだもの……それは「女」だった。自分が女に寄生する天才としった葉蔵は、出版社に勤める田中静子のアパートに転がり込み、自分の人生を日記スタイルの小説で描いていく中で、得意な絵を生かした漫画で生きていこうとする。だが読者や静子の娘の期待に息苦しさを感じた葉蔵は、原稿料を酒と煙草に費やし、原稿料を飲み尽くすと静子のものを質に入れ酒代にした。田中静子から逃げた葉蔵は、バーのママの2階に居候する。バーのお客やママのお陰で世界に対する恐れが薄れた葉蔵は、煙草屋のバイト朝井佳乃に恋をする。朝井佳乃と結婚した葉蔵は、幸せな結婚生活をするが、隅田川花火大会の夜に会社から解雇された布川が佳乃を犯してしまう。佳乃の清らかさを汚した罪の意識から葉蔵は、酒浸りになり、ついには覚醒剤に手を染めてしまう。佳乃に売春させるまで堕ちた葉蔵は覚醒剤を断ち漫画家として立ち直ろうとするが、葉蔵を破滅させたのは葉蔵の父親だった。
葉蔵が人間関係を成り立たせていた「道化」までいかなくても、学校や家庭やネットでキャラを変えて器用に立ち回る現代の若者の方が、葉蔵の「僕は人間が怖い、だけど理解して愛されたい」という葛藤を共感し易いと思う。
古屋兎丸は今まで負の感情に押し流され破滅する人間を描く作品が多いだけに、葉蔵が抱えた「普通」という価値観や人間が理解出来ず怖いがために「道化」という手段を使い人間関係を成り立たせていた心情や女に寄生する一方で救いを求める弱さが丁寧に描かれ、後半の覚醒剤中毒になった葉蔵の幻覚や撹乱状態の描写、極めつけは古屋兎丸自身が出会う生きながら彼岸に行ってしまった葉蔵はトラウマ級です。
自分の感覚や価値観を葉蔵に押し付け、葉蔵が「道化」という生き方を身につける原因の父親は毒親そのものだし、現代でこそ読まれるべき「人間失格」漫画版です。

0
ネタバレ購入済み

REO
2022年09月18日

救いようのない結末で後味悪い。容姿や配偶者に恵まれても自分次第で人生はどん底まで堕ちてしまうと改めて確信する。作品は非常におもしろい。

#切ない

0
購入済み

圧倒される迫力

2022年04月24日

原作は読んでいないけれど、現代風に描き直されて、理解しやすいストーリーになっていると思います。良いとか悪いとかという問題でなく、ただ圧倒される迫力を感じます。読後感は決して良くありません。でも何故か頭の片隅にこびり付いて、いつまでも忘れることができません。原作が持っている破壊力でしょうか。

#シュール #ドロドロ #ダーク

0

なるほど

2018年08月26日

原作ではヨシ子も薬局のおばさんも死なないんだけどこれなら葉蔵を取り巻く女達がめったやたらに不幸になってストーリーの悲惨さが増しますね。人間失格は葉蔵が脳病院に入れられるところまでなんだけど太宰治との出会いセッちゃんと再開のエピソード、最後は葉蔵の息子の葉一が揚げるタコの新聞紙に太宰治の心中した記事が...続きを読む載っているというオチもよかった。

0

Posted by ブクログ 2015年10月17日

ヤク中になって次元上昇ラリってる描写が圧巻すぎる。
でも、狂った時点でそこに救いがある。
自己を失ったまま死に至ることができるのだから。

古屋先生が、自らの作品を批判的に評しているように、狂うことの中に救いのようなものを見たような気がした。

太宰治の小説は、あまりにも現実味がありすぎて、また、あ...続きを読むらゆる救いを拒絶する。
正常になることもできない、かといってギリギリのところで壊れ死ぬほどの苦痛と罪の一切が霊魂を束縛し支配するのだが、それでも、あらゆる愛からの離反と世界への恐れを抱えながら、人生を放棄することもできない、
霊魂の「生殺し」が生きている限りつきまとい、そこから逃れ解放されることはないのだ。

キルケゴールの言う、
「絶望してなおも自己自身であろうとする絶望」の極致が太宰作品には描かれている。

人間にとって最も苦悩であり、苦しみであることは、
事件や悲劇そのものよりも、
恐れることそのものであり、
いつ、恐れていたことが現実となるのかわからないこと、
そしてその恐れから逃げ惑えば逃げ惑うほどにその恐れは確実にその身に降りかかるのだという経験が、
その人間の人生をさらに不安定なものにしているのだ。

あがけばあがくほど、
右にいっても左にいっても、
戦っても逃げても
その人は不幸に絡め取られていき、袋小路の中に追い詰められる。


では、救いはあるのか。


私は、あらゆる絶望下、一切の希望が考えうるすべて閉ざされたとしても、
ある、
と断言しよう。

むしろ絶望の度合いが増すほど、その力は強くなる。
それは、むしろ絶望さえも利用し、一切の闇に打ち勝つ権能を持つ。


それが何かというのは、それぞれ答えを出してみてほしいのですが。

0

Posted by ブクログ 2013年11月05日

ゾクゾクが止まらない最終巻。あとがきにもあったようにオチは少し甘さが残ったけれど、それを含めても巧みな展開と演出だった……。
これはいい漫画だわ……!!!

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年10月12日

現代版人間失格、実際にいる人物をおってるようで
見ていて、実物する人物ではないのかと思うほど

しかし主人公の落ちて行く様子は
馬鹿やろうと一括したくなる、
愛する恋人である奥さんのレイプ事件を
きっかけに現実から逃避し薬に溺れ下落していく、
一番の悪は誰、犯した担当、見てすぐに助けず
現実を見せつ...続きを読むけた友人、どの配役もまた人間らしい
心の病みだ。

0

Posted by ブクログ 2011年06月26日

古屋兎丸が誰かの日記として読んでいるというメタなところに少し救われた。原作の絶望感との間にワンクッション置いてくれた感じで。

0

Posted by ブクログ 2011年06月10日

古屋兎丸は絵がきれい。
美術の先生だもんね。美術の先生が、ある日彫刻かなんかの授業してる時に、
「作業終わった子はこれ読んで暇つぶしてなさい」
みたいな感じに教室の片隅において置いてくれるなら最高。
あたしは小説を漫画で読むなんて!って思ってる人間だけど、古屋兎丸の人間失格はオリジナルだった。
太宰...続きを読むの原作を忠実にストーリー展開させながらのオリジナルさに職人の業を感じた。
3巻中盤からの"次元上昇"が兎丸のオリジナルだし主人公の唯一の救いなのだと思う。
でも1巻から通して読まないと本当のラストは分からないな。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年11月02日

大庭が絶妙な運びで壊れていくのが悲しかった。堀木が普通だと思ってたのに、不意に見せた残酷さが衝撃だった。
大庭は生まれつき生きづらい性質かと思ってたけど、最後になってきっかけが明かされた…子供のときから辛い人生だったんだな…読み返すと、新たに気づく描写もある。女にも裏切られてたのか。みんなから好かれ...続きを読むるような人が、抵抗する力もなく人間にすりつぶされたのがつらい。
表紙の大庭の悪人面は中身と違う気もするけど、悪い男ではあるな。
この世は辛いことが多すぎて、何もかもから逃げ出したい気持ちは私もあるな~、何もわからなくなるというか、周りを認識できなくなるのが救いというのもわかる気がする。
小説読んでないのであとがきが助かる…原作には救いがないのか。滅びの美学もあるけど、絶望と希望のないまぜは人間らしいし面白いと思う。太宰治は偉大なのかな~、色んな人に読まれてるし、何度もリメイクされてるね。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月22日

父親が死んだことで解き放たれるのではなく
より引きずり込まれていく描写が悲しい。
どうにかならないのかと思うが
結局ここまでくると周囲がなんとかしてやるしか
方法もなかろう。
それも、病院などプロの手に委ねるしかなく
素人の手に負える範囲ではもはや無い。

堀木の微妙な悪意の描写も気分が悪く
髪を切...続きを読むってしまった佳乃も痛々しい。

翻案の仕方が面白かったし、小説も読み返したくなった。

0

Posted by ブクログ 2012年04月13日

文章で読むより絵でみた方が壮絶だと思った。でもこれでも原作より救いがある結末なんだよな。これは原作の方もしっかり読み返したい。

0

Posted by ブクログ 2011年12月10日

太宰治の現代版。罪と罰といい、こういう流れができつつあるのかな。
原作知っていると、さらに楽しめますね(^_^)

0

Posted by ブクログ 2019年01月22日

20160429追記
2016年4月28日に小説を読み返したのを機に、4月29日にマンガの方も読み返す。

0

Posted by ブクログ 2016年10月06日

バンチの廃刊に伴って途中で終わっててそのまま続きを読み忘れていたんだけど、まー思ってたぐらいの結末だった。
太宰先生に遠慮したのかもしれないけど、古屋先生にしては人間不信度は低めの作品と言えるかもしれない。

0

Posted by ブクログ 2011年07月14日

原作を結構忠実(?)に漫画化。

ただ時代背景は現代としてあるが、登場人物の名前もほぼ同じくしてある。

ネットで読むきっかけとなった日記。

それを見つけたある漫画家が・・・・

と何か異次元での繋がりを持たせたストーリー展開と期待したところまったくのハズレ。
絡みがないならいらないというかほぼな...続きを読むかった存在だったように思える。


原作がかなりエグイ人間なのに、描写になるともっとエグイ・・・

0

「青年マンガ」ランキング