太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
北村薫「太宰治の辞書」に、この短編集に収録中の「水仙」についての奥野健男の解説が「明白な勘違い」であると書いてあったのが気になって読んでみた。
「水仙」は収録作品中でも印象的な作品で、確かに奥野のいうように「善意や社会良識がある人間を根本的にだめにしてしまう」わけではないが(善意や社会良識は「水仙」にも「忠直卿行状記」にも出てこないような…)、北村が言うように必ずしも忠直卿の「裏返し」ではなく(そもそも「善意」と「悪意」の対立項が成立しないので)、おべっか(忠直卿及び水仙の取り巻きによる)にせよ恨みから来る無視(水仙の主人公による)にせよ、相手をいい加減にあしらう在り様は、無意識下に「天才」な -
Posted by ブクログ
歌広場のハイボールみたいな1冊。ただひたす粗悪一直線な飲み物を、あそこまで飲んでヒーフー騒ぶことができるのは一体どうしてなのだろう。
戦争が開けてすぐで作品ばかりだからなのかどうか知らないが、生粋のクズが8巻にはたくさん出てきた。その中には無論太宰も含まれており、以前の文集に見られたような、人と人が心を通わせてほっこりするような素敵な話はまるで皆無で、堕落した人間の性根腐りきったどうしようもなさ、そしてそれに振り回される心優しき人々の尊き苦悩が焼き付けらている。
なかでも「親友交歓」に出てくる男は誰でもぶん殴りたくなるような逸材ではないか、ノンフィクションっぽいのがさらに救いようがない。事 -
Posted by ブクログ
プチフールみたいな1冊。主に新訳諸国噺についてだけど、どれを取って食べても甘くて美味しい。「西鶴は世界で一ばん偉い作家である」と太宰が評するほどの名手、存分に堪能しました。
なかでも
「人魚の海」「赤い太鼓」「吉野山」かな。人魚の海のラスト一文かっこいいな。「此段、信ずる力の勝利を説く」か。単なる小噺かもしれないけど、とってもかっこいい。「赤い太鼓」のラストは素直に感心したし「吉野川」の主人公は清々しいほどのクズで笑ってしまった。素直に面白い。
新訳諸国噺を抜くなら「佳日」も良かった。ちょっとイイ話。ここまで5巻ほど太宰治の全集を読んできたけど、扱う題材の豊富さと文章を書く卓越した技能(巻 -
Posted by ブクログ
ネタバレアフォリズム、エッセー集。
小説を書きたい、エッセーなんか書きたくない、適当に埋め合わせようって気持ちが漏れ出てる書き方のものが多かった気がする。
今まで何作か太宰を読んできて思ったのは、太宰の文章は本当にうまくて好きで、話の内容自体としては私小説色が強いものより太宰の影があまり出てこないような創作された話のほうがどちらかというと好きだったってこと。
太宰の弱さや繊細さ、自分が大好きなくせに嫌いにもなったりするような部分はうまく作品に昇華されていれば好きなのだけど、こうやってエッセーで愚痴感覚で読むと結構きつかった。
俺はこんなにがんばってるのに世間がせめる。生きづらい。
世間はこんなも