太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
太宰32歳から36歳までの作品を収録。
表題作の「ろまん燈籠」と「雪の夜の話」が物語で、
後はエッセー調。
戦時中で、書きたいことも自由に書けない、
自分の考えも、内容によっては
あるがままを語るのは、危険な状況だったが、
そんな制約の中でも、彼の文体の軽やかさは
失われなかった。
自分だけでなく、家族、友人の
死を、常に意識せざる終えない状況に置かれても、
不安に負けて自分の魂を売り渡す事だけは、
時に道化を演じ、おどけてみながらも、
断固として拒絶していたのではないかと思う。
太宰は、読者に向かって、
たとえ暗い時代にあっても、
腹を括り、命のある限り生きろ、希望を失うな、
と、自分の作品を通して呼び掛けた。
つつましくも明るく生きる家族の
姿を描くなどして皆を鼓舞し続けた。
どんな環境に置かれようとも、
彼は小説家であり続けようとし、
その使命を全うした。
大いなる文学のために、
生まれ、生き、死んだ人。
しかし、それにしても、もっと生きて
「ろまん燈籠」はシリーズ化して書き続けて
欲しかった。 -
Posted by ブクログ
『右大臣実朝』と『惜別』の二作品から構成される。
いずれも文豪と称されるだけある筆力だった。
にわかファンなので、あまり詳しいことは知らないし語れないけれども、説得力のある、ものすごい引力を持った文体だな、とは思った。
もしかしたら語り手が率いる作品だからかもしれないけれど、そこに作家のガッツというか意欲というか情熱のようなものが感じられた。
さらさらと流れるように語られる雅やかな『右大臣実朝』
動乱の中を精神的にもたくましく生きなければならなかった『惜別』
二つの異なった魅力と趣をもつこれらの作品は、どこか根底に作家の自信と意気込みがあるように思える。
しかし、物語の展開が急進するあたりでは、思いあまってか確かに己が出過ぎていると指摘されるのも納得がいくのだけれど、当時の戦時中という背景を考えると、むしろよくここまで出せたな、と思わざるを得ない。
いずれにせよ、面白いと一言で終わらせるにはもったいない衝撃を与えられた。 -
Posted by ブクログ
表題作のほかに『右大臣実朝』が収録された新潮文庫です。
どちらも太宰さん中期後半の作品で、歴史が好きな らじにはとても面白かったです。
『惜別』は戦時中、国家に依頼されて書いたお話らしいけど、中国の魯迅さんが仙台で学んでいたときの物語で、大日本帝国万歳とかいう話じゃないし、中国と日本の文化交流について、いろいろ考えさせられたお話でした。
はるか昔は中国の文化を朝鮮経由などで受け入れていた日本が、近代では逆に日本に中国からの留学生が来るようになっていたわけで…。
そもそも中国という土地は不変でも、そこを統治した民族はぐるぐる入れ替わっているからね。
日本のように長いこと同じ民族(混血はあるけど…)が同じ系統の帝を据えて歴史がつながっている国は世界でも超~レアなわけで…。
らじは今の「政治屋」は大っ嫌いだけど、日本に生まれて良かった~♪って思いました。
鎌倉が好きなので実朝さんのお話も良かったです。 -
Posted by ブクログ
太宰治の最晩年3作を所収した一冊。
『人間失格』
子供のころから、他人・世間の条理が理解できず、恐怖と戸惑いを感じながら、それでもやっていくために道化を演じ、酒を飲み、身を持ち崩していった男の独白。
理解できない、理解されない。下手にうまく世を渡ってしまったものだから一人深く悩んだまま、答えは見いだせず。
ここまでとはいかなくとも、周囲に溶け込めず、集団の中で孤立あるいは浮いてしまった経験のある人なら、この辛さを理解できるし、この辛さを世のマジョリティたちにぶっ放した太宰に喝采を送りたくなる、そんな作品。
『グッド・バイ』
闇市でやり手の主人公は、恋愛もやり手で愛人が10人ほど(妻も子もある)。でも34歳になり、そろそろ身を落ち着けようと、愛人たちとの別れを決断する。そのために取った手段というのが、美人の旧知の女性を妻と偽証して、愛人たちのもとを一人一人訪問するというもの。
このトンデモアイデアが巻き起こす騒動劇・・・。
のはずだが、絶筆にて未完。
「人間失格」とは似ても似つかないコメディタッチ。策略に利用する美人の女性というのが、美人だけどガテン系で普段は至極だらしないというのも面白い。
シニカルにコミカルに男女関係を描いていったであろう本作、残されている部分だけでも楽しく、何とも続きが気になりとても残念。
『如是我聞』
昨今の文壇に対して太宰が書いた捨て身の小論文。
案外と、太宰は情熱家というか、感情の強い人間だったんだなあ。多少、理不尽な個所があっても読み手を思わず頷かせてしまうほどの迫力で、外国文学者や先輩文人たち、特に志賀直哉を徹底的にこき下ろす。
当時の文壇について無知なので何とも言えないが、太宰という人を理解するのには分かりやすい一品かもしれない。