太宰治のレビュー一覧
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前期に書かれた表題作「もの思う葦」から晩年の「如是我聞」まで、太宰の言葉が集められた1冊。
太宰はどこまでも一生懸命で、全力で文を書いている。(そのことは、何かの短編で語っていた。)不器用な懸命さというかなんというか、自己犠牲的なもの。命懸け。でも命懸けで書きたかったのは、小説であって、創作だった。だから随筆とか自分のことについては、おざなりでやっつけ感満載。お金のための、お酒のための仕事といった感じ。
「如是我聞」は、今まで溜め込んで来たものを一気に書き散らした、自己破壊的な印象を持った。世間に対する恨みのようなものもあったかもしれない。そしてうわあああっと喚いて、あっけなく死んでしま -
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以前、映画化されたオムニバス作品の原作。玉石混交の短編集。
『BUNGO 文豪短編傑作選』角川文庫
鈴木梅太郎が脚気の原因がビタミンB1の不足だと特定し、年間死者数万人と言われた国民病を劇的に改善したのに、陸軍軍医総監の森鴎外はエリート根性から百姓学者が何を言うかと馬鹿にしてそれを取り入れなかったため、陸軍兵士はバタバタ死んだ。というエピソードをかつて知ったばかりに鴎外は読まず嫌いだったので、この中に所収の『高瀬舟』が初鴎外だった。生き方は共感できないが、作品は実に面白かった。
弟殺しの罪で島流しになる罪人を護送中の同心は、どうしてもその男が肉親を手にかけるような罪人に見えなかった。男 -
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ネタバレ自分でお話を書き始めてから、周囲の書き手さんが読まれているらしいと気が付いた太宰治を、自分も読んでみたいと思って買った全集の9巻。
この年になるまで、読んだことがなかったのもなかなか恥ずかしいことかもしれないけれど、この年にならないと読んでも分からなかっただろうから、いい時期に読んだのだろうと思う。
巻を進むにつれて、「生きることのつらさ」が実感として痛みに変わっていく。9巻はそれが特に強くて、ついに「死んでいく人は美しい」がはっきりと現れてきた印象がした。
人間失格は有名で、その一文にある、
(それは世間がゆるさない)
(せけんじゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
が、とても私 -
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ネタバレ漫画の後に収録されている未完の小説を読んでみたら、漫画以上に漫画っぽいところが多々あり、漫画の方はずっといろいろと漫画的なところを削ぎ落としていることが分かった。しかし、小説のコミカライズではなく、あくまで小説は原案であり、小説を元に作った現代を舞台にしたフィクションであるので、別に小説の通りにする必要は全くない。力強い絵で持っていく感じは小説にはない漫画ならではの文学性みたいなものがあったように思った。
小説は未完の遺作とのことで、大長編かと思っていたら短かった。この後大長編になる感じもしなかった。遺作と言うには気楽な楽しい雰囲気の漫画みたいな小説だった。
このように感じることもこ -
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ネタバレ『パンドラの匣』
終戦とともに、無理な気取りを捨て、命を燃やす決意をした青年。結核を治すべく、「健康道場」に入門する。そこでの生活が、彼から友人に向けた手紙で浮かび上がる。
当時重篤な疾患だった結核だけど、その暗い側面に一切光を当てていない。健康道場での生活は、小さな恋があったり、おかしな綽名で呼び合ったり、ちょっと楽しそう。かなり笑えた。森見氏の「恋文の技術」はこの話から着想を得たのかしらん。
『トカトントン』
トカトントン。その音が聞こえた途端、無気力になる。仕事も恋も夢も欲も、トカトントンで無に帰す。トカトントンが悪いのではなく、本当はやる気もないのにトカトントンを言い訳にしてる -
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【斜陽】
この世には、美しいものと醜いものとが混在していて、もちろんそれは明確に線引きされてこっちは美でこっちは醜だという風にはなっていません。むしろ、美醜は同一のモノやコトに同居していて、見るとき、見る者によってどちらの面も発現しうるものであるのだ、ということを徹底的に謳った物語のように感じました。
話の大筋だけを捉えると、旧貴族の凋落を描いたどうしようもなく暗い話です。暴力はありませんが、全体が死の気配で満ちています。
嫌悪、疾病、泥酔、困惑、貧乏、没落。そういうネガティブなものが充満する中にあって、可愛らしさや純粋さがところどころで突然に顔を出します。小さく容易に壊れてしまいそうなもので -
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一区切りずつ、丁寧に読むのが味わい深い短編集。太宰治の、緊張しきった鋭利な文章が目を覚まさせる。
『古典風』散文調が現代ではツイートと呼ばれる、様に思われた。てると十郎については少々思い当たる節がある。
『女の決闘』作中の作品とされるものの空気はまるで映画のよう。澄み切った文体で時は冬に違いないと感じた。ただ、舞台はロシアで水溜りは凍ってはいないが。ドキッとしたところを抜き出しておきたい。「真実は、家庭の敵」「念念と動く心の像のすべてを真実と見做してはいけません」「薄情なのは、世間の涙もろい人たちの間にかえって多いのであります」「『女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はあ