太宰治のレビュー一覧
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・・・・・・っということで、太宰にしては珍しく、十分なる資料を参考にして書かれた小説である。
こういう小説も書けるのだと、彼の才能にいまさらながら驚かされる。
日本に留学していた魯迅の仙台時代の物語である。
彼を描くのに、彼と友人だった学生の思い出話として語らせている点がとても凝っている。
医学を目指していた魯迅が何で文学に転向したのか、その謎を丁寧に描いている。
本当の彼の内面に切り込みたいとすれば、こういう小説という形式が一番適切なのだと思わざるを得ない。
魯迅が文学に目覚める過程を書くことによって、太宰自らが抱く文学への自信と誇りを感じざるを得ない。
内容とは別に、当時の日本を取り -
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全部酒のせい
戦時中に書かれたものらしい。人心が荒廃して、卑屈になって、吝嗇になるのは酒のせいだという論旨。人々の醜悪・滑稽な振る舞いがいろいろ書かれているが、果たしてそれが他人事なのか、自分も含めてなのかは、定かではない。だが、軽蔑にせよ、自嘲にせよ、衛生上良くない考え方であることは確かだろう。酒のせいにしてはいけない。酒は、駄目を加速させることはあっても、駄目にすることはない。
が、読み物としては楽しく書けているし、戦時中の描写が貴重なので星4つ。読書は道徳講義ではないのである。 -
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太宰32歳から36歳までの作品を収録。
表題作の「ろまん燈籠」と「雪の夜の話」が物語で、
後はエッセー調。
戦時中で、書きたいことも自由に書けない、
自分の考えも、内容によっては
あるがままを語るのは、危険な状況だったが、
そんな制約の中でも、彼の文体の軽やかさは
失われなかった。
自分だけでなく、家族、友人の
死を、常に意識せざる終えない状況に置かれても、
不安に負けて自分の魂を売り渡す事だけは、
時に道化を演じ、おどけてみながらも、
断固として拒絶していたのではないかと思う。
太宰は、読者に向かって、
たとえ暗い時代にあっても、
腹を括り、命のある限り生きろ、希望を失うな、
と、自 -
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『右大臣実朝』と『惜別』の二作品から構成される。
いずれも文豪と称されるだけある筆力だった。
にわかファンなので、あまり詳しいことは知らないし語れないけれども、説得力のある、ものすごい引力を持った文体だな、とは思った。
もしかしたら語り手が率いる作品だからかもしれないけれど、そこに作家のガッツというか意欲というか情熱のようなものが感じられた。
さらさらと流れるように語られる雅やかな『右大臣実朝』
動乱の中を精神的にもたくましく生きなければならなかった『惜別』
二つの異なった魅力と趣をもつこれらの作品は、どこか根底に作家の自信と意気込みがあるように思える。
しかし、物語の展開が急進するあた -
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表題作のほかに『右大臣実朝』が収録された新潮文庫です。
どちらも太宰さん中期後半の作品で、歴史が好きな らじにはとても面白かったです。
『惜別』は戦時中、国家に依頼されて書いたお話らしいけど、中国の魯迅さんが仙台で学んでいたときの物語で、大日本帝国万歳とかいう話じゃないし、中国と日本の文化交流について、いろいろ考えさせられたお話でした。
はるか昔は中国の文化を朝鮮経由などで受け入れていた日本が、近代では逆に日本に中国からの留学生が来るようになっていたわけで…。
そもそも中国という土地は不変でも、そこを統治した民族はぐるぐる入れ替わっているからね。
日本のように長いこと同じ民族(混血はあるけど -
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太宰治の最晩年3作を所収した一冊。
『人間失格』
子供のころから、他人・世間の条理が理解できず、恐怖と戸惑いを感じながら、それでもやっていくために道化を演じ、酒を飲み、身を持ち崩していった男の独白。
理解できない、理解されない。下手にうまく世を渡ってしまったものだから一人深く悩んだまま、答えは見いだせず。
ここまでとはいかなくとも、周囲に溶け込めず、集団の中で孤立あるいは浮いてしまった経験のある人なら、この辛さを理解できるし、この辛さを世のマジョリティたちにぶっ放した太宰に喝采を送りたくなる、そんな作品。
『グッド・バイ』
闇市でやり手の主人公は、恋愛もやり手で愛人が10人ほど(妻も子もあ