太宰治のレビュー一覧
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昨夜から読んでいた『人間失格』を読み進めた。太宰治は、 小説家である前に一人の人間で、ただ自分を見つめる術として小説を書いていた。
どの自分が本当で、どの自分が嘘なのか。いつもおどけて見せて、人を笑わせようとする。嫌われたくない、嫌われないように人に好かれるように生きることに長けている。『人間失格』は、太宰の遺書のようなもので、陰気臭さを感じるのはいうまでもない。女性と心中しようとしたがために、家族と縁を切られ、その日その日を生きながらえて行った。女性に生き、女性に死んだ人生だった。
太宰治は、本当にモテる人だったようだが、女性が勝手に助けてくれていたようだ。というのも、女性の扱い方を心得て -
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終戦後から自殺するまでの3年間に書かれた短編集。著者の反抗精神が随所に出てくる
新潮文庫 太宰治 「グッド・バイ」
最初の短編「薄明」に描かれた 敗戦直後においても「捨て切れない一縷の望み」とは、田舎臭さや乞食根性が持つ 人間の自由思想、反抗精神、高貴さのことかな、と思って読んだ
「苦悩の年鑑」「十五年間」は、言葉のインパクトが強いが、ストレートな敗戦国民の心情を理解することができる作品だった
「春の枯葉」の「人間は現実よりも、その現実にからまる空想のために悩まされている〜世の中は決して美しいところではないけれど、無限に醜悪なところではない」は名言
昭和22年に書かれた「メリイ -
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解説の中に「太宰は明るさと暗さを対立的にとらえるのではなく、暗さの中に明るさを、明るさの中に暗さをみる眼をもっていた。」とあり、とても腑に落ちた。人生がガラガラと崩れていくかず子の中にも強さだったり明るさがあった気がする。だからこそ、最後まで読めたと思う。
待つ。ああ、人間の生活には、喜んだり怒ったり悲しんだり憎んだり、色々の感情があるけれども、けれどそれは人間のほんの一パーセントを占めているだけの感情で、あとの九十九パーセントは、ただ待って暮しているのではないでしょうか。幸福の足音が、廊下に聞こえるのを今か今かと胸のつぶれる思いで待って、からっぽ。ああ、人間の生活って、あんまりみじめ。生 -
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徹底した自己開示と自己批判に見せかけて、
弱い自分を全面に出してくるこの自己愛の病理こそが、
太宰そのものなのだろうか。
青春というよりも、
限りなく未成熟な、
皮膚がまだ完成していないような自我を、
ここまで剥き出すことができるのが、
また文学の意味でもあるか。
いずれにせよ文学として昇華されたと見えて、
当の本人は自殺してしまっているので、
ただの遺書ということだ。
そこに意味を見出して、
未だに多くの人に読まれるわけだから、
巡り巡って文学として成仏するのか、太宰の魂は。
一方で大変興味深いのは、
延々とつきまとう不安と恐れについて、
そしてそれを防衛するための「お道化」の描写が、
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読み終わって、ほおっと嘆息が漏れました。
これは、19歳で風采の上がらない貧しい画家に嫁ぎ、5年間の結婚生活を経て、夫となった男の本性が少しずつ露わになる中で、その違和感に苦しんだ挙句に、別れを告げることを決意した妻が、夫にしたためた手紙です。
「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました。」で始まる太宰独特の語り口は、淡々と、しかし、ひりひりと妻の心情を伝えます。
本の帯に書かれた「小説としても 画集としても 楽しめる 魅惑の1冊」という言葉そのままに、しまざきジョゼさん書き下ろしのイラストは、読解を助けるとともに、作品の風情を視覚化して空気感を画にしているかのようです