あらすじ
旧家に生まれた“暗い宿命”を描く私小説集。
名作「富嶽百景」を含む、太宰の私小説で構成したアンソロジー集。
明治42(1909)年6月、太宰治こと津島修治は青森県北津軽郡に誕生、のちに遠く東京にあって望郷の念を募らせていた。
津軽での幼・少年期を“遺書”のつもりで書き綴った処女作「思い出」で文壇デビューを果たし、その後、兄との不和から十年ぶりとなった帰郷を描いた「帰去来」や、母危篤の報を受けての帰郷を描く「故郷」、そして、時局差し迫る中での津軽旅行をまとめた「津軽」と、旧家に生まれた者の暗い宿命を描いている。
解説を同じ東北出身の作家・佐伯一麦氏が特別寄稿。
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Posted by ブクログ
なぜ太宰があんなに自虐的に、卑屈に育ったのか、すこし分かる気がした。
育ての母、女中たけに影響を受けた性格により、豪族の家の生まれでも、どこか平民気風が抜けずに兄弟とは折り合いが悪く、それがいつも自分のせいのように感じている。
自分は気品がなく、粗野でがらっぱちだという。
太宰治の文章は、いつもどこか女々しくて、自己内省が激しく、怒りの刃はいつも自分に向けられている。
優しい人なのだ、と思う。
「津軽」の最後、たけとの再会で、涙がはらはら出てくるのは、やっぱり太宰が優しい人で、社会の不条理さえも自分のうちに抱え込んでしまう、そんな太宰の最期を思うから、それで泣けてくるのだと思う。