太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「薄明」
現実主義でポジティブ志向
そういう人であるがゆえに周りからはいつも
「本気か冗談かわからない」
などと言われてしまう
それでひそかに傷ついたとしてもポジティブ
その明るさが滅びの姿であろうか
「苦悩の年鑑」
軽薄なポーズでくそ真面目
そういう人であるがゆえに周りからはいつも
「本気か冗談かわからない」
などと言われてしまうんだろう
それで世をひねて、純粋なものに憧れる
実際、本気か冗談かわからない
「十五年間」
彼はサロン文化を軽蔑していた
そこでは誰もが空気に敏感であった
異物を探してこれを叩き、連帯感を強めていた
挙句が開戦論である
しかしそれはそれとして、彼は戦争に乗った
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凄まじいの一言。読後は呆然自失となる。
太宰にとって、世界とは無意味にすぎなかった。
印象的な文言に「世間とは、個人ではないか」というのがある。
思慮深い真理として感じられ、皆が抽象的に想像していることを、見事に言葉として表現しているのではないだろうか。
圧倒的なニヒリズム。
彼はもしかすると、重度の対人恐怖、社交不安障害であったのかもしれない。
現在、心療内科、精神内科などは簡単に予約が取れないほど通う人間が多いという。
そんな生きづらい世の中の内に、太宰が今も読まれている理由があるのだろう。
自己破壊を繰り返すことでしか、生きる価値を見出せないような、文学を語る資格がないのだというよ -
Posted by ブクログ
やっぱり「人間失格」は凄まじい。
太宰作品をそんなに読んだわけではないけど、これだけは別格だ。葉蔵の心理描写が恐ろしいほど真に迫っており、自分の心理とシンクロし、ドキドキする。
自分と葉蔵は似ているわけではない。だが「お前も同じ穴のムジナじゃないのか?」と問われれば…葉蔵が竹一に見透かされた時のように血の気が引いて顔面蒼白になるだろう。
僕は外面は常識的な好人物を演じている。職場では仕事がデキるやつ、部下に慕われる面倒見の良い上司ヅラするのも自然と板についているし、大方の評価も良い。
しかし、本当は問題は避けたい、サボりたい、休みたい、楽したい、逃げ出したい。生活と対面維持のためだけに仕 -
Posted by ブクログ
言わずと知れた名紀行文。
高校生の時授業でダイジェストを読み、夏休みに通しで読んだ上で感想文を書かされた。
多分、その時は全文を読まず、適当に書いた。
自分を含むあらゆることを呪っていた高校生で極度のひねくれ者だったが、高校3年間で現国の教科書で習った『城の崎にて』『檸檬』『こころ』、そしてこの太宰の文章はいずれも心に残った。
後々、本を読むのが大好きになって今に至るのは、これらの作品のおかげかもしれない。
解説で町田康が、最後の場面での、乳母たけの言葉に「ここにいたって心が動かぬものがあったとしたらその人は人非人である」と書いている。そこまで言うか。
と言いつつ、僕はおばあちゃん -
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構成
一文目で印象的なセリフを持って来る、という構成と言えばこれが走りと感じています。
学校で習って読み解いた作品ではありますが、自分で読んで自分で解釈する事も大切だと改めて感じました。 -
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芸術家の業、罪といえば芥川の地獄変が思い起こされる。また、本作は作中作構造をとりつつ元の物語の解体・再構築を試みていて、面白い仕組みになっていると思った。
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内容が病気に関連するものであり陰りはあるのだが、さわやかに描いている。「奥さんのさしがね」が何を指すのか、いくつか説が考えられそう。考えて読むのも一興。
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泉鏡花然り、文豪には犬が苦手な人が多い印象がある。本作はどこまで実体験に即していてどこまでフィクションなのか分からないが、読み物として面白い。
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ネタバレ 購入済み
ラストの「みんな幸福に暮した。」の唐突感・尻切れトンボ感たるや。シニカルで厭世的なオチにしないであえて「めでたしめでたし」で終えたことこそがある種皮肉に満ちている。
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散文詩のような作品。「秋の蝶」の醜くもたくましい姿を書き込んだ「大へん苦しかった」のはパビナール中毒の頃か。「トンボ。スキトオル。」のフレーズが一番気に入った。