太宰治のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
マリリンに似た夫人
TUTAYAディスカスで知ったこの本。どこを探しても見つからなかったが、ここで読むことが出来ると教えてもらい登録。早速、読んでみました。
マリリン・モンローがこの夫人に似ていると映画レビューにはありました。どんな夫人なのかとても興味があり、読みましたが、自分を犠牲にしてまでも他人に尽くす、尽くしすぎる夫人に呆れながらも、なんとなくマリリン・モンローに似ていると思いました。そして夫人に感化されたお手伝いさんも寛大な心になり…とありますが、私は夫人の健康が心配だし、図々し過ぎる人達を許す気にはなれないと思った。短いお話ですが、多くの事を考えさせられる印象深い作品だと思います。 -
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ろまん燈籠。兄妹連作のラプンツェル童話、愛される力を失っても愛する力は永遠に失われず、そこに人が生きる誇りがあるという次男の指摘に感銘。最後を飾る長兄の「ぶちこわしになったような気もする。」に笑う。
みみずく通信。大真面目の発言を高校生に笑われる、外界と精神との乖離。
服装に就いて。町田康が重なって仕方ない。
誰。怖い。自分が悪魔かどうかに就いて、やっぱり主観と客観が乖離して怖い。
恥。凄い!自意識の氾濫!
作家の手帖。煙草の火を貸してあげて、御礼を言われることに対して言い知れぬ恐怖を感じるセンス。
佳日。人間性の勘所。どんなにムカついても「これだから愛おしい」という感じは、よくわ -
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久しぶりに読みました。太宰のエッセイや書簡のようなものを集めた作品集。49編も入ってるとあって、1~2ページの短いモノが多いです。
太宰の小説の言葉と文体が好きな私は、大変満足して読むことができました。なんでこう、琴線に触れるんだろう。心地よく、愛しいです。
大学時代に読んだ太宰の全集に印象に残る話が載っていましたた。
海で難破した男が助けを呼ぼうと崖にすがりついた刹那、団らんする家族の様子が目に入り、あの団らんを壊してはならないのではないかと思って、助けを呼ぶことができず、そのまま波にさらわれてしまったという話。
この本に載っていたので、数年ぶりに読めて、よかったです。
だいたい、この -
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ネタバレ太宰のデビュー短篇集。
太宰治を知る上でのエッセンスが詰まってると個人的には思います。
「葉」と「猿面冠者」が好き。
「葉」は小説ではなく、アフォリズムっていうのかな?デビュー前の作品やボツになった作品の印象的な断片を集めて散りばめた作品。
いかにも太宰って感じの警句が揃ってる。
「猿面冠者」は『どんな小説を読ませても、はじめの二三行をはしり読みしたばかりで、もうその小説の楽屋裏を見抜いてしまったかのように、鼻で笑って巻を閉じる傲岸不遜の男がいた。』
こんな書き出しで始まる、ある駆け出し作家の話。
本気で読むとラストで肩透かし食らっちゃうかも。
作中作をちゃんと一本描き上げてくれていたら -
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ネタバレ太宰治の「葉桜と魔笛」は
生きること、死ぬことに対する悲しみが
とても分かりやすく表現されている。
読みやすい。つまり、伝わりやすい。
そして優しい。痛々しいほど、優しい。
優しさとは何か。
優しさとは、こういう家族のことだ。
姉も妹も父も、それぞれに優しい。
家族愛の美しさは
「新樹の言葉」にも溢れている。
血のつながりではなく
乳のつながりが描かれている。
主人公が大人になってから
乳母の子供らと出会う。
この関係性がいい。
そして「偉くなりたい」というストレートな前向きさがいい。
作品全体に危うさがあるからこそ
明るい気持ちが、いっそう輝きを増す。
それから、この兄妹のために -
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ネタバレ没落していく旧家が描かれ、無常感漂う作品であった。貴族として生きていくことはしたくない、だが貧乏人の中で戯れていても、自分の貴族的な面が際立つ。自分はどこにも所属できない。という弟君の苦しみは、運良くインテリ集団に入ってしまったが、彼らの考えになじめず、だからといって田舎でチャラチャラしていてるかつての友人と付き合える気もせず、どこにも所属意識を持てない自分と重なった。
主人公が『経済学入門』を読み、以下のように述べていることが印象的であった。
人間というものは、ケチなもので、そうして、永遠にケチなものだという前提が無いと全く成り立たない学問で、ケチでない人にとっては、分配の問題でも何でも、ま -
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※こちらに収録された『待つ』のみの感想です
人が一番不安を覚える行為。それは待つ、ことかもしれない。
次に起きること・遭遇するものを充分に想像できてしまっているのに、
その予想を裏切られ、考えてもいなかったことと向き合うことになる。
そんな気持ちに駆られることが「待つ」の持つ一面だ。
しかし、そうなる可能性を背負うことは放棄できない。
主人公の娘は、誰もが逃げたくなるその事実に
まっすぐぶつかり、壊れそうになるまで考え、悩む。
彼女は、きっと、きっと幸せになれる、と私は確信している。
たった4ページの掌編小説が、もう何年も脳裏に焼きついている。