恒川光太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ短編2本立ての和風ファンタジー小説。
ホラーとのジャンル設定は、
どう考えても間違いであり足かせにさえなっているが、
それで売り出されてしまったためか、
もう取り返しがつかなくなってしまったようだ。
個人的にはタイトル同名の短編「夜市」がよかった。
もう片方も舞台感は悪くはないが、
規模感とコンパクトさでより引き締まるのが「夜市」のほう。
キャラクター、牽引するミステリー、ひねりは共に
世界観のファンタジーのカセならではのもので
機能も成立していて納得感がある作り。
キャラクターの置き方のセンスもよい。
感受性、相性、関係性の設定がうまく考えられていて、
掛け合いの台詞に読ませる魅力と旨味があり、
ほどよい現実感のぼやかしの度合いなども含めて
ファンタジーとしては空気感が理想的である。
登場人物の数が限られる短編だから
気になる構成の癖としては、
なぜか「答え合わせ」「最終結果」「真相明かし」といったところは、
疑似視点人物以外の誰かに回想で語らせる傾向があるところが挙げられる。
覚めやすいという意味であまりいい構成とは言えない上、
2本立ての短編集に2本連続でこの構成は悪目立ちする。
疑似視点人物に設定された、
がさつでドライながらも、共感力と勘の良さが平均的な
女子高生はとても良い味していた。
絶妙な具合に若干全部が他人ごとに終始するところによる、
本当の物語の当事者の少年の心を慮る
若干取り残された読者のやりきれなさも後味として効いている。
狙ったブラックヒューモアとまではいかないが、
それに類する何かしら重さや暗さに、
ある種の笑いの機能を持ち込みつつ
展開させるバランスが大変よい。
本筋に関係ない、前段の会話に出てくる、
繊細枠担当の当事者少年の「昔の女枠の悪女」について、
嫌になった場面と理由の短いやりとりがあるが、
その悪女の台詞と場面のチョイスは
絶妙なリアリティとそれを根に持つことの滑稽さがあり、
作風を代表するちょっとした名シーンとして思い出になる。
日常的にそういうことをプロセスできない厄介な生真面目感性と、
いちいち考えずにけろっと忘れる質との隔たりの、
主人公二名が住む世界の根本的違い見事の呼応表現にもなっているし、
それ単体でもこじらせエピソードとして面白い。
普段人はそういうことを何かしら大小引きずっているもので
行き場のない気持ちの語る場もないのだから、
小説読む価値のひとつが、そういうところにあるよね、
と思い出させるのに充分だった。 -
Posted by ブクログ
近年読んだアンソロの中で一番面白かったです。質が違うなと思いました。ついこの前読んだホラーアンソロを藁とした時、こちらは完全に煉瓦。造りが頑丈すぎて我々は煙突からしか入れない。が、その唯一の入口さえ地獄へ直通ですからね。まったく、感謝して落ちていきたいですね。
特に素晴らしかったのは初っ端わずか8ページほどの恐怖、どこか童話みのある骨、妙にリアルな正月女、それから大トリの人獣細工ですよね。頭抱えました、読後。こんな詰め込まんとってくれよ。俺をどうしたいねん。ほんまありがとうな。
最近のホラーがことごとく好みじゃない俺には、こういうのはもう刺さりすぎて息ができないですね。穴だらけになった心を取り出して見せてあげたいぐらいです。あまりに鋭利。真の名作は劣化しないということを、この傷をもって証明したいぐらいです。 -
Posted by ブクログ
3編の短編が収録されています。
過去に「夜市」を読んで、独特の雰囲気に魅了された私。
本作も同じ雰囲気だといいなと、どうしても期待値があがってしまいました。
そして、読んでみての感想ですが、どれもがおもしろいのは言わずもがな、著者の独特のあの雰囲気は健在で、非常に満足度の高い読書体験となりました。
最後の一編はちょっとだけ雰囲気違う気がしましたが、それも楽しく読むことができました。
正直、短編ってちょっと苦手なんですよね。
良い短編ほど、「そんなところで終わるの!?結末読ませてよ!」とか「あれは結局なんだったの?設定教えてよ!」みたいなフラストレーションが溜まるので、どちらかといえば長編として読みたい派なんです。
本作も当然良作揃いでしたので、前述のフラストレーションが溜まってしまいました。
最後の一編なんて、これからだろっていうところで終わるので、キーッとなってしまいました。
良い短編に仕上げる一つのテクニックなのかもしれませんね、最高潮のクライマックスでスパッと終わるのが。
短編は終わり方も重要なんだと思います。
この作品、平成22年(2010年)の作品なんですよね。こう入った作品は時間が経っても色褪せないんですね。
恒川作品、俄然読みたくなりました。 -
Posted by ブクログ
積読チャンネルで紹介されていて手に取った一冊です。
ショートショート集なので、少しずつ細切れに読めるのがよかったです。どの作品もそれぞれ面白かったのですが、なかでも米澤穂信さんの「燃えろ恋心」が圧倒的に好きでした。
リズムもテンポもよく、一気に駆け抜けていくように読めて、最後のオチまできれいに決まっています。これはできれば、内容を何も知らずに読んでほしい作品です。
特によかったのが、青春時代の「大人は自分たちのことをわかってくれない」「なんとなくこちらの味方ではない」という感覚の描き方でした。
ラブレターを買ってから、実際に書くまでの過程もいいです。誰かに恋をしているというより、恋をしている自分ごと、恋そのものに精一杯恋をしているような書きぶりがとても素敵な文章でした。 -
Posted by ブクログ
ホラー大賞を取った「夜市」と本作に収録されている「風の古道」が収録されている
解説でもあったが夜市と風の古道はホラーというより幻想ファンタジーという感じの作風で進み全然怖くなかったどちらかというと神や妖怪の類の話だ
内容はどちらも好みなのだがどちらの方が好きかというと風の古道の方だろう
でも夜市も風の古道もどんな話と聞かれると答えづらい
内容が説明しづらい物語なのだ
だが一度物語を読み始めるとあっという間に読み終わる読みやすさと物語への没入感がよかった
風の古道のオチでも書いてあったがこれは成長の物語ではない
ただ現実と神の間の世界に迷い込んでしまった人間の物語にすぎない -
Posted by ブクログ
自分だったら10個何に使うかな、と思って読んでいた。
きっと自分だけの欲望のために使うんじゃないかなと思う。
※ネタバレあり※
主人公みたいに人のために使えるのかなぁと疑問に思った。
途中に出てきた女性のように、逆ハーレムみたいなことをしだすんじゃないかなとも思った。
マキオという存在の大きさと、きちんとマキオを大切にしようとする主人公に好感をもてた。
結局彼女はこの世界に留まることを選んだけど、
あ、もとの世界に戻って終わりじゃないんだ、とびっくりした。冷静に考えれば消えるだけだからそうなんだけど。
解説を読んでこの話が伝えたかった、自由になること、ということがテーマ(自由であろうとするほど制約がかかる)であることがわかった。
ファンタジーも現実も同様のことが起こる、ということに、なんだか悲しさというか、現実をつきつけられたというか、
結局どこにいてもコミュニティや社会はあるし、
人付き合いや人間関係の難しさから逃げられないんだなと思った。
フルムメアの存在が結局なんなのか深く触れられなかったことも、ファンタジーであるということを考えにくくするためによなったと思う。もしもう少し書かれていたら、作り話チックになってしまうなと