【感想・ネタバレ】南の子供が夜いくところのレビュー

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ネタバレ

久々に恒川光太郎を読む。こんなに面白かったけ?っていうぐらい世界に入り込んでスイスイサクサクと読めた。

危うく一家心中に書き込まれかけた小学生のタカシ、ワゴン車でカフェを営むユナという謎の女性に助けられて不思議な雰囲気の南の島にやってくる…という表題作から始まり、このタカシとユナが出てくる(端役の場合もあり)短編が続いていく形式。

南洋のファンタジー系ホラーの雰囲気をまとう各編。東シナ海あたりにありそうな島を舞台に、ちょっとユルめに民俗学的伝承感のあるホラーっぽい雰囲気が、夏の蒸し暑さにちょうど良く、残暑厳しい9月に読めて良かったなとも思った。

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2023年09月18日

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作者特有の、現実と異世界との境界が曖昧な、異界が現実と混ざっているような雰囲気が好きな私にとっては満足極まりの作品だった。
あと、タカシ可愛い。

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2023年01月24日

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3冊目の恒川光太郎作品に選んだ一冊。
今回もとっても素敵だった…!
まるで古くから語り継がれてきたおとぎ話を、大切にひっそりと読み聞かせてもらっているみたい。

とある南の島に来た東洋人の少年タカシと、彼を見守る不思議な女性のユナ。彼らを軸にして時代も空間もあっという間に飛び越えては縦横無尽につないでいってしまう、作者の筆はもうお見事。
その筆致の軽やかさに心底うっとりとしてきた頃に、まるで夢が引いていくかのようにあっけなく、けれども美しく物語たちは幕を下ろしていく…
まさに夢見心地な1冊だった。ファンタジー好きにはもちろん、いろんな小ネタが仕込まれてる連作とか、時代を超えて全部が緩やかに繫がっている系の仕掛けが好きなタイプにはぜったいにオススメできる。

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2021年10月11日

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連作短編であるが短編間に深い繋がりはなく、著者の「草祭」のような作品が好きな方にはおすすめである。とある島で起きた時空を超えた幻想的な物語が様々な人物の語り口で展開される。最初の短編を読んだ際、今作は微妙かもしれないと感じたがそれは杞憂だった。全ての短編を読み終えた時に最初の短編を読み返すと変な笑いが出た。「そんなこともあったな」、とまるでとある青年のように。

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2021年05月23日

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時代や国を超えて、人々が繋がるところが好き。思いもよらない展開にぐんぐん惹き込まれました。何となくハロウィンの読書におすすめしたい本です。

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2020年10月20日

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相変わらず恒川さんの幻想的な世界観には惚れ惚れ。全7編の短編で、全て同じ『トロンバス島』という奇妙な島での物語。どの短編も少ない文章の中に1人の、あるいは街や村の人生や歴史が詰まっていて、1冊で沢山の経験をしてきたような錯覚になりました。文体から漂う独特の不穏感がとても好き。

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2016年01月07日

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一家心中しようとしていた家族
その息子タカシが一人の女性に
助けられ、連れて行かれた島
#トロンバス島 で
繰り広げられる短編7作品
.
.
それぞれ違う人物からの
違う時代違う視点の
話だけど、どこかで繋がっている
.
小さな島の
長い旅の終わりを飾る
”夜の果樹園”は
読んでいて、ハッ!とする
そうか。私は瓜畑を渡るのを
やめてしまったのかもしれないと。
少しウルっと来るくらい
心に刺さるものがありました。
.
有り得ないような
有り得るような
そのキワどいラインで
進む話は
妙に現実的で
説得力がある
やっぱり恒川光太郎 さん
好きっす。

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2015年09月26日

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この本を読んで、ホラー文庫は順番に読んできてよかったと思った。ちょっとしたところに前作と繋がってる部分があったので・・・。(本当にちょっとしたところなので順番に読んでいなくても影響はでないですが)

スーの幼少期を書いた「紫苑樹の木」が好きです。それぞれの登場人物に個性があり面白いです。相変わらずパパイヤなりマンゴーなり・・・恒川さんらしさを感じました。

解説もよく、話の復習や確認ができたのでよかったです。終わりはなんと言ったらいいのか・・・。

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2014年06月30日

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ネタバレ

再読。今回もひんやり涼しく、楽しく読みました。
小さな島なのかと思っていましたがかなり広いトロンバス島。コミュニティが小さくないからおおらかなのか、ユナを始めとして不思議な存在がたくさんあるから、今更変わった事があっても…みたいになるのか。いいな、南の島。
トロンバス島が舞台じゃないお話もあってそちらは時代が違うけれど、その他は「こう繋がるんだ…」というゾクッと感があって良かったです。
「まどろみのティユルさん」が今回も好き。ソノバのご先祖、「穏」の出身なのか。あの町から離れたら、一処に留まれずこの世界を巡り廻る定めなのかもしれない…と思ってしまう。それはそれとして、ティユルさんはこれからも大きな木陰を作って微睡んでるんだろうなと、聳え立つ菩提樹が目に浮かぶようです。
タカシも波乱万丈だけれど、父ケイタもなかなか…フルーツタウンで迷子になってる場合じゃない。タカシ、トロンバス島に来られて良かったね…一家心中で死ななくて、というより、この両親のもとで育ってたらひねくれてそう。
話数が多い連作短編集だと、恒川ワールドは時間にも広がりを見せてくるのが良かったです。滅びる場所もあるけど、何百年も続いてきて、また続いていく世界を感じられました。

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2023年08月03日

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☆4.0

ゆるくつながる七編が収録されている。
語り口は淡々としているが、そこには確かに叙情が滲む。
南国の架空の島、トロンバス島が主に舞台となっているが、いつの間にか現実との境界を越えてあちらへ行ってしまいそうになる気持ちを体験した。

「南の子供が夜いくところ」
一家心中による死を迎えようとしていた一家が、訪れたバスの露店で出会ったのは、120年生きている呪術師の女性ユナだった。
息子のタカシはユナに連れられていったトロンバス島で生活しながら、別々の島で働いているという両親を待っている…

自分の知らぬところで自分のことが決められ、目まぐるしく振り回されたタカシが、本当の意味でトロンバス島に馴染んだのはきっとこの夜なんだろう。

「紫焰樹の島」
ユナが子供の頃住んでいた島には紫焰樹と呼ばれる樹があった。
その場所は聖域となり、つけた果実は村でも大事にされ一年に一度の祭りの時のみ食すこととされていた。
聖域にたどり着けるのは果樹の巫女だけ。
ユナはある時紫焰樹に偶然たどり着き、巫女に選ばれたのだと知る…

じゃれ合うユナとトイトイ様がとってもキュート。
"古き良き"という表現が似合いそうな島は、その存在自体がファンタジーそのものだ。
紫の焔のように見える紫焰樹の花を心底見てみたいと思った。

「十字路のピンクの廟」
トロンバス島のティアムという街で見かけた十字路にあるピンクの廟。
中には木彫りのご神体があり、通りすがりの女の子が投げキスをしている。
街の風習かと思いきや、知らない人もいる。
聞き込みしてみると、小学校の先生が建てたと言う。
何故そんなものを建てたのだろうか…

な、なんておちゃめなヤツなんだ!と思ってしまった。
絶対むっつりだぜ、あいつ。
そんな一面も持っているけれど、本当は怖いヤツなんだろうな。

「雲の眠る海」
島の祭りが盛大に行われた翌日、ペライアは大国を後ろ盾にした付近の島から攻め落とされた。
伝説にある島の一族の力を借りれば攻め返すことも不可能ではない。
自らの家族の安否もわからぬまま、シシマデウは〈大海蛇の一族〉を探すため海に漕ぎ出した…

明確に言葉にできないけど、とんでもなく切ない気持ちを心に刻み込んでいった一編。
それは何故か泣き出してしまいたくなるような、もしかしたら傷なのかもしれない。

「蛸漁師」
崖の下に若い男が死んでいる、そう警官へ告げた蛸漁師をしている男は「ヤニューって知っているか?」と聞いた。
その男が蛸漁師になった理由、そしてその崖にいた理由が少しずつ語られ明らかになってゆく。
何故彼は警官にそんな話をするのか。
そのことにさえ、とても大きな理由があるのだ…

ちょっとミステリっぽさもあって、スリリングで好き。
"俺だけが知ってる蛸の秘密"が、すごい究極の悪趣味よね。
爺さんの愉悦って感じ。

「まどろみのティユルさん」
目覚めた時、何かに埋まっていた。
動けずに長い眠りの中にいたが、飲まず食わずでも平気だった。
名前はティユル。
思い出してみれば海賊をしていた過去が浮かぶ。
その頃出会った人、奪ったもの、奪った命、与えたもの。
海賊をやめた後のこと。
このまどろみの先には何が…

一番好きな一編かも。
読んでいるうちにティユルさんが雲上の人に思えてくる。
ゆるやかな永遠の平穏にいてほしい。

「夜の果樹園」
ケイタは息子のタカシに会いに行くためにバスに乗った。
間違ったバスだとは知らずに。
たどり着いたのは町中に蔦が絡まる奇妙な町。
そこに住むのはフルーツ頭の奴らだった。
バスの停留所に戻ってもバスは一向に来ない。
そこで赤ひげと名乗る一人の小鬼と出会う…

この連作の中では最もホラーっぽい。
流されて流されてここまで来たか。
思えば最初からタカシの父親はそんな感じだったね。
もうきっとタカシの方がしっかりしてるぞ!



続きが読みたいような、でもここで終わっていてほしいような、自分の中でも面白い位置に残る作品集だった。
あわよくば、恒川さんの他の作品で少しリンクとかしてくれたら嬉しい。

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2023年07月15日

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神秘や怪異がすぐ隣に「ただ、ある」ような。足元を少し掘れば残酷な歴史がすぐそこに現れるような。
夢と現実がゆるやかに溶け合うような島の、連作短編集。

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2023年02月21日

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ネタバレ

”ユナ”という呪術師が全部の話に絡んでくるが、一つ一つは独立している短編。
どれも不思議なお話。一家離散した家族は結局また一つになることはなく、でも父と息子は会えたかもしれない。敵に襲われた島の若者が長い間かけて竜の一族?を見つけ技術を受けて敵に勝とうと思うが、途中で「そうなったらもっと人が死ぬ」ことに気づく。海賊だった男が長い年月かけて菩提樹になった。島に流れ着いた西洋人は便利な知恵をたくさんもっていたが彼が善意で教えてくれるものも、後に人の欲をかきたて秩序を乱すものになりかねない。

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2022年12月30日

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 文章は軽妙で読みやすくスルスル読めていく。悪霊やら不思議な存在が関わる話したちはなかなかに楽しい。短編集なものの、島々の今や過去を舞台にした話なので歴史やよく出てくる不思議なキャラの背景がわかり先に進むほど、不思議な世界に入り込める。
 続きがあるならもっと読みたいところだ

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2022年09月06日

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ネタバレ

今回も面白かった。
最初の短編が結論なく終わったから不完全燃焼と思っていたが、全ての話においてタカシが絡んでおり、彼の島での生活が垣間見れる。
オンも出てきて、他の作品と繋がった。
それぞれの短編で主人公となる人物が決まっており、読みやすかった。
情景描写も鮮やかで行ったことのない島の暮らしが目に浮かぶ。


・南の子供が夜いくところ
一家心中寸前のところユナに手助けされ、南の島にやってきたタカシ。
父親とも母親とも別々の島に暮らすことになる。
結論が出るわけではないけど、タカシは生き延び日本に戻ってきたのかな、と思われる描写が冒頭にある。
母親の勝手で振り回された子供が許さない気持ちわかる。南の子供が夜悪夢を見た時に行くところは、悪夢を取り除いてくれるおばさんの家。
・紫焔樹の島
ある島ではタイトルの樹が一本生えている。実を食べれるのは一年に一度のみ。樹の場所がわかるのは女性だけで、選ばれたものは果実の巫女と呼ばれる。果実の巫女は島の神様トイトイ様と話せる。
果実を食べると不老不死にはならないが、力が漲る程度の効果はある。白と赤の実のうち赤しか食べちゃダメ。主人公はユナ。最後は島全員伝染病で全滅し、ユナが白い実を食べてしまい、イギリスから来たスティーブンと島を離れておわる。
この不思議な設定がもう面白いし、作り込まれた世界観。トイトイ様みたいな神様と私も友達になりない。
・十字路のピンクの屏
タカシの友人のロブが主人公
ロブが会った魔神がロブに変装して女性とキスをする願望を叶えた話。
墓参り、私は全然行かないけど、死体を出して新しい布を巻き直して囲んで宴会する、ってなかなか子供には衝撃的だと思った。
・雲の眠る海
ある島から命からがら逃れた戦士の話。伝説の海龍蛇の民族を探し、島を助けてもらうために旅に出る。結果現代のユナとタカシがいる島に流れつく。
男のいた島は昔水没し遺跡の島となっている。雲が海面に着くほど下がってきて、雲の中を泳いだあと島に着いたこと先にユナたちがいた。タイムスリップもの。男は最後消えた。
・蛸漁師
岬で蛸漁師をしている男が主人公。
蛸漁師に至るまでの一連の事件を語る。この男の息子はユナとタカシに会ったことがある子供だった。彼が死に、検証をした父親が結果的に復讐を果たし、これまでの不思議な一連の顛末復讐した相手の父親に話しているというオチ。
・まどろみのティユルさん
海賊だった男が主人公。ティユルは目が覚めると石になっていた。石だけど話せるし、少しずつ体が土から出てくる。タカシと話すこともできる。子供の頃のユナとも知り合いで、再開は果たせず木になった。オンが出てきた!!

・夜の果樹園
タカシの父親が主人公。タカシに会うためにやってきた島のバスに乗って、終点で降りると犬になっていたところから始まる。犬になって、小鬼になって、アボカドになって、最後は人に戻ってタカシに会えただろう、流れ。何年間ものストーリーに感じるがたった1日だったという神隠し的なオチ。島の裏の野生のフルーツがたくさんなってる廃墟に行ったと考えられる

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2022年08月06日

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ホラーというかファンタジーというか恒川ワールド❗️短編集ではあるけれど人物や出来事が所々リンクしている。
夜の果樹園が一番好きだった。なんか昔、こういう雰囲気というか絵面の絵画を観なかったっけ?(シュールな感じの。)
以前美術館で観た、顔が野菜や果物の集合体で描かれた絵を思い出した。

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2022年05月11日

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不思議な繋がりのある短編集。むわっとした南国の香りと温度と色彩が漂って来そうな語り口と、もし自分が迷い込んだら、と恐ろしくもなる他にはない素敵な作品。
まどろみのティユルさんと夜の果樹園が好きでした。例えて言うなら南国の千と千尋。

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2022年03月03日

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時間軸が行ったりきたり、1つ1つの話がまるで夢の中のようで断片的であったけれど、おもしろかった。個人的には漁師の話と果物頭の部分が奇怪で好き。

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2021年08月21日

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南国の架空の島を舞台とする連作短編集。民話や神話を読んでいるような雰囲気の異国情緒に溢れたファンタジー。
時代も登場人物もばらばらだけどどこか少しずつ繋がっている。夜逃げして一人息子だけで島に預けられたタカシや、120歳を超えても若々しい姿の呪術師ユナといった、ところどころに顔や名前の出る人物たちも魅力的。
後半になるほど面白くなってきて、特に最後の三編「蛸漁師」「まどろみのティユルさん」「夜の果樹園」が好き。

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2015年12月28日

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『夜市』に続いて、恒川光太郎連読み2作目。
南海に浮かぶ、架空の島、トロンパス島の物語。
自然信仰と、日本的八百万の神や鬼の類いが上手くブレンドされた、「ファンタジーの皮を被った悪夢」が展開されてゆく、連作短編集。
個人的にはオチは想定内だったが、「まどろみのティユルさん」が一番好き。
恒川先生、この流れ(トロンパス島シリーズ?)で、まだ書けるような気がする(ユナの話はまだまだありそうだし、ソノバ辺りの視点からのエピソードも面白そう)、期待しているのは、自分だけだろうか…?

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2014年03月11日

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傑作『夜市』から続いてきた異郷を舞台にした作品群から一転。伝説、民話、神話、怪談という民族心理に根付いた寓話を一つの舞台で語られる短編集として構成、展開しようとした恒川光太郎の意欲作。
絶望の淵からの再生と復活をテーマに7つの話が語られてゆく。表題の『南の子供が夜いくところ』は、この短編集のプロローグ的な話であり、主人公のタカシ少年と大呪術師ユナが南洋に浮かぶトロンバス島との関わり合いと、この島にまつわる奇談で読者を現代、過去、異界へ縦横無尽に駆け巡る異世界へと誘う構成と飽きることなく一気に読ませる「技」は見事。日本人の深層心理にある「南国望郷論」に基づくユートピア「トロンバス」。大自然の不思議は神々へ畏怖と優しさとして人の中に息づく。恒川が魅せた新たな「異世界」。
作中、トロンバス島の住人の中に「ON:オン」からやって来たとされる人物は前作『雷の季節の終わりに』の舞台となった「穏:おん」からか?ちょっとしたファンサービスが嬉しい。

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2015年11月04日

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【2024年28冊目】
ホラー小説ではない、と思います。なんだろう、幻想耽美小説?

一家心中の間際、少年のタカシはユナと名乗る不思議な女性に出会い、とある島に導かれる。この物語のキーパーソンはタカシとユナの二人。ずっと幻想世界にいるようなお話が続く短編集でした。

表題作から始まる7つのお話。とある果樹と共にある島で育ったユナ。十字路にあるピンクの廟の由来。島が襲われ、伝説を頼りに別の島を目指す男。息子を失い、蛸漁師を引き継いだ男の罪。地面に埋まった元海賊。そして、息子に会いに向かってフルーツの町にたどり着いた男、などなど。

あまりネタバレしないように概要だけ書こうとしても、カオスになってしまう今作。バカンスのお供に持っていくと、ふわふわした心地で読めるのでいいかもしれません。角川ホラー文庫から出てますが、怖くはないのでご安心を。

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2024年02月10日

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一家心中の運命から救われた少年が、彼を救った魔女(?)に連れられて南の島で暮らし始める……。こう聞かされても、今時の読者はそこまで甘いだけに話を想像することはないだろうが、それでも大方の予想を超えて、血なまぐさく、暴力に満ちた連作集。全体の雰囲気から少しズレているような「十字路のピンクの廟」や、スーパーナチュラルな出来事が起きない「蛸漁師」なんかが好み。

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2022年04月10日

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ホラーというほど怖くも無く、やはり恒川さんらしい幻想譚。
同じ島が舞台で登場人物も共通なので、明らかに連作短編なのですが、各編で世界観が異なります。勿論ミスなどでは無く意図したものでしょう。
旅をして様々な世界観の土地を訪れる物語はよくありますが、この本の場合は多少の時代差はあれ同じ島内の話なので戸惑ってしまいました。というか、そこに引っかかってしまい、恒川さんの奇想、南の島が舞台なのにどこかヒンヤリとして薄暗くノスタルジックで切ない恒川ワールドを十分に楽しめなかったような気がします。
ちょっと残念。

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2020年10月18日

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南の島を舞台にした不思議な連作短編。それぞれ主人公は違うけれど、呪術師ユナと日本人の少年タカシでゆるくつながっている。

魔法なのか、呪術なのか、はたまた夢か幻か。南の島の明るいイメージと一見似つかわしくない幻想的な世界が広がる。

どれも恒川さんらしい美しい文章で綴られているけれど、幼い日のユナを描いた「紫焔樹の島」と植物のように半分地中に埋まっている元海賊の男が過去を回想する「まどろみのティユルさん」が特に好み。

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2018年05月21日

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南の子供が夜いくところ:一家心中しようとしていた家族の子供タカシが、両親と別れて南の島の教授の家で暮らすことになる。

紫焔樹の島:タカシを一家心中から救ったユナの幼き日の物語

十字路のピンクの廟:タカシのクラスメイト達の話、ピンクの廟には謎の像が祀られている。その成り立ちを探る

雲の眠る海:ペライアという島国の興亡を描く物語酋長の甥のシシデマウさんが主人公!

タコ漁師:息子が死んでタコ漁師になった男の話ヤニューという妖異も登場する

まどろみのティユルさん:元海賊のティユルさんは首だけが土から出ている!?

夜の果樹園:タカシの父親がタカシに会うためバスに乗ったら不思議な場所に迷い込むそこは、住人達の頭がフルーツの街!?


トロンバス島と呪術師ユナを中心とした七つの短編!幻想的な物語を好きな人は、どうぞお読み下さい!

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2017年10月29日

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南の島を舞台にした連作短編集。恒川作品は好きだが、これはイマイチだった。
南の島にあまり思い入れがないので、最初の方はあまり話に入れなかった。だが、最後の三編は楽しく読めた。オンがルーツという登場人物がいて、おっ!と嬉しくなった。
フルーツ頭の話で、人間でないものになればまたそのものの苦労があるという話は、金持ちの飼い猫っていいな、と思っていた私への戒めかもしれない。

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2016年05月24日

Posted by ブクログ

ホラー文庫というから、覚悟して読んだらあれあれ?ファンタジー??むしろ、世にも奇妙な物語向きな幻想小説といった不思議な話。
南の島、感覚的には南太平洋の島国あたり?を舞台にした、南国特有の生温さや空気感のある話。借金取りから逃げるために夜逃げ同然に島に来たというのが唯一現代日本とつながるところかな。

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2015年07月18日

Posted by ブクログ

内容(「BOOK」データベースより)
からくも一家心中の運命から逃れた少年・タカシ。辿りついた南の島は、不思議で満ちあふれていた。野原で半分植物のような姿になってまどろみつづける元海賊。果実のような頭部を持つ人間が住む町。十字路にたつピンクの廟に祀られた魔神に、呪われた少年。魔法が当たり前に存在する土地でタカシが目にしたものは―。時間と空間を軽々と飛び越え、変幻自在の文体で語られる色鮮やかな悪夢の世界。

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2014年07月22日

Posted by ブクログ

一番最初のつかみはOKな感じだったけど途中中弛みな感は否めません。でもこういうテイストも時にはありかもとも思ったりもする。読後の不思議な感覚が残ります。

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2014年06月16日

Posted by ブクログ

共通点は一人の呪術師?だけの短編集。
不思議が当たり前な世界観なので、オーデュボン的なつくり。
まったりと、絵本みたいな感覚で読めた。

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2014年02月11日

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