恒川光太郎のレビュー一覧
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大好きな恒川光太郎さんの作品。期待した通り、その世界観に引き込まれて、あっという間に全部読み切ってしまった。マヤ文明に詳しくない私でも楽しんで読めた。エルテカ王国と言うひとつの国が滅びるまでを描いていて、登場人物はだいたいろくな死に方をしないのが逆に清々しい。スレイとシベリア、ドルコとフォスト、注目すべき関係性が何組書いたけれどこの2組が特に好き。元々のレリイの教えが信者たちに伝わっていないくだりが切なくてよかった。続編があれば是非とも読みたい、キャラのその後がどうなったのか気になりすぎる。
スレイにとっては仇だけれど、シベリア•ワカが1番かっこよくて好き。 -
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恒川光太郎さんの新作、いつもながらとても面白かった。少し不思議な怪譚ではあるものの、怪異的な要素は控えめで、「現実の世界にもこのような集団がいたのではないか」と強く想像力を掻き立てられた。世の陰に隠れたダークヒーローのような存在であり、もし現在も続いているのなら、年甲斐もなくぜひ参加してみたいと思ってしまう。
物語の節々で垣間見える人の優しさにも胸を打たれた。もっと掘り下げてほしい魅力的な登場人物が多数登場するが、あえて語りすぎない点も、恒川さんの小説ならではの魅力なのかもしれない。
これからも恒川さんの新作は常にチェックして、手に取っていきたい。 -
Posted by ブクログ
日常のすぐ隣に、ふとした拍子に迷い込んでしまいそうな異界。その静かで美しく、どこか懐かしい情景が目の前に浮かび、夢の中を歩いているような感覚で一気に読んだ。「夜市」と「風の古道」は異なる物語でありながら、どちらにも人間の願いや選択、取り戻せないものへの思いが描かれている。何が起こるか分からない不気味さの中に、切なさと温かさが溶け合う独特の世界観が魅力的だった。
派手に泣かせるのではなく、読み終えたあとから場面や言葉の意味がじわじわと胸に広がり、いつまでも余韻が残るという感じ。
怖い話というより、美しくも残酷な現代の寓話のような作品で、静かな幻想譚や、少し不思議で切ない物語が好きな人にぜひ薦めたい一冊! -
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ネタバレ1部目は夜市、2部目は風の古道の2部構成であった。
1部目の夜市は、主人公と女友達が夜市に向かうのだが、夜市で老紳士と出会う。主人公は過去に弟を夜市で売り、野球の才能を得ていたが罪悪感から弟を取り戻すために夜市へ行く。弟が攫われた人攫いの店に行くが弟がどれか分からない。人攫いに偽の弟を買わされそうになったところを老紳士が助け人攫いを殺す。実は老紳士は弟であった。弟は若さで自由を買ったのだ。みな助かるかと思われたが、主人公は夜市の一部として永遠に飲み込まれてしまう。
2部目の風の古道は、主人公がとある老婆から家に帰るための裏道があると奇妙な遊歩道を案内される。その遊歩道は様々な怪異者が通る禁断の道であった。そこから出るためにたまたま男と出会い、その男に連れられ出口を探しに行く。その男は人間ではないのだが、主人公を助けてくれ、何とか出口までたどり着く。そこで主人公は帰りたくないと帰るのを拒む。主人公は元の世界に戻るのかそれとも異世界に居続けるのか。 -
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ネタバレ短編書評
箱の中の王国
日常の中に潜む非日常。偶然見つけた箱の中に世界が広がっていて、そこに思いを寄せる主人公の彼女は箱の世界に入ることを望み、、といったお話。この箱を使って何か悪巧みをするのではなくて、純粋に、ひっそりと箱庭世界を楽しむというのが幻想的な世界観を加速させている気がして良かった。箱の中の世界もメルヘンチックな設定だけではなく、王族と民衆の格差、発生する連続殺人など、実際にこっち側の世界でもあり得るような側面も備えているのが、箱の中を通した別世界との交流という点で面白さに拍車を掛けているように感じた。現実世界に残る者、箱庭世界に飛び込む者。それぞれの想いが交錯する、哀愁のある終わり方が堪らなく好きだ。
スズとギンタの銀時計
なかなか優劣はつけ難かったが、強いて言えば本作の中で一番好きな短編だ。まだ幼い姉弟が最底辺とも言える環境から抜け出し、社会の荒波の中で二人三脚で生き抜こうとする。そんなある日、未来に飛ぶことができるという銀時計に出会ったことから物語の歯車が狂い始める。
何処となく漂う不穏で不気味な雰囲気が、時代背景と物語の設定にマッチしていてゾクゾクした。
時を飛ばし、未来へ飛ぶ。その代償、というか皺寄せがある所がこの物語の面白さの所以だと思う。最後のシーン、未来へ行くことのできる銀時計を手放し、大いなる冒険が終わる。それぞれの現実と闘う覚悟を決め、ちゃんと生きようと決心する所が何処となくカッコよく見えた。本作の中で一番ホラーチックで、一番忘れられない話だった。
短時間接着剤
詐欺を行う子悪党達が、短時間だが、人をもくっつけておける超強力な接着剤に振り回されるドダバタ劇。登場人物の性格は牛島くんに出てくるような、他責本願、意気地なし、事勿れ主義。それでも、つい応援したくなったのは何故だろうか。
ここで、これかの短編にも大きく影響してくるシグマが現れる。
洞察者
人の未来をおよそ6割の確率で当てることのできる少年の話。この能力を気味悪がられたり、一方的な使い方で時に恨まれたりもしたが、最後、良い方向に持って行けて万々歳。ちょっと中弛みを感じた。
ナチュラロイド
新しく一国の王になった子供が、前王の殺人行為を調べる所から始まる。そこにはナチュラロイド、即ちロボットが関わっていて、、といった話。この辺でまた面白さが増してきた気がする。ファンタジーとミステリーが交わる事ってのはなかなかないので、一風変わった独特な面白さがあった。ただ生き残るために行動する、自我を持ったナチュラロイド。確かに、そこに殺人ばダメだという人間独自の価値観を持ち込むのも酷だなとは思った。色々と空想のしがいがある話だった。
円環の夜叉
舟が沈没し、仮眠状態に陥った主人公。次に目を覚ました時は70年後で、周りの環境は大きく変わっていた。そこで、ある程度の怪我は治る、半永久的な不死者になったことを何者かに告げられる。突然訪れることになった第二の人生で、主人公はそれからどう生きていったのかという話。世界はどのように回っているのかとか、何故主人公は不死身になったのかとか、疑問に思っていた事が余す事なく繋がっていくので非常に爽快。最後のこの物語に今までの短編の話が全て帰結していく。消滅、再生を繰り返す人類、次の世界へ行く者、旧世界と共に滅びゆく者、世界の、その外側からの交信。一気に話が壮大になって風呂敷も限界まで広がられたのに、本作の締めとして綺麗に
終わるのは本当に壮観だった。どうしてここまで幻想的でロマンチックな話が描けるのか。終始唸るばかりだった。
感想
(何があるか、分からないから面白いんじゃない。今度は私が物語の主人公よ。)過去も現在も未来も関係ない、この世界の何処かで人知れず新たな物語が生まれている気がした。最高の終わり方だった。
雨の日に拾った小さな箱から、ここまで世界が広がるなんて一体誰が想像できようか。自分の並外れた想像力を言語化し、さらに作品として非常に面白いものに仕上げる。それでいて、ただ面白いだけでなく、忘れられないようなロマンや哀愁、壮大な感動をサラッと置いていく。この芸当が出来る作者のことを、もはや一人の作家ではなく、高尚な芸術家だと思ってしまう自分がいる。
本作を読んで、自分が一番好きな作家は恒川光太郎さんだと改めて断言できるようになった。