恒川光太郎のレビュー一覧
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何とか読み進めて最後の章まで行ったが、正直に言うとそれまであまりこの本にハマれていなかった。もちろん話が面白くない訳ではなく、単に自分が求めていた恒川光太郎さんの世界観ではなかったというだけだが。しかし、最後の章 音楽の子どもたちの出来がそれまでの思いを全て払拭してくれるくらい素晴らしかった。何なら作者の代表作 夜市 にも引けを取らないくらい面白かった。
あらすじ 外界から遮断された世界(妖精の国) で生活していくには、管理人的立ち位置である風喎が満足するような演奏を行う必要がある。十二人の少年少女は物心着く前から孤立した世界で暮らし、楽器と向き合っていくが、やがて自由を求める者が現れ -
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ネタバレ全編通して幻想と現実の境界を揺るがすような物語が静かに、心を侵食してくるような作品だった。
物語の多くには「死」の影がつきまとうが、それは決して単なる恐怖の演出ではなく、
人の内面にある弱さや欲望、そして無意識の衝動を映し出す鏡のように感じる。
登場人物たちが一様に、淡々とした態度のまま、しかし確かな「好奇心」に突き動かされて、
踏み入ってはならない領域へと足を踏み込んでしまうという点。
その「一歩」の先にあるのは、異世界であったり、どこか歪んだ現実であったり、時には犯罪や狂気の世界であったりする。
そして誰もが持っている「知りたい」「確かめたい」という衝動をひしひしと感じさせる。
そう -
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ネタバレ明らかに現実とは異なるはずの世界にも関わらず、
ふと「自分がその世界の中にいたのではないか?」と錯覚させるような、
不思議な感覚をもたらす作品だった。
「鸚鵡幻想曲」は、「自分とは何か」という根源的な問いを突きつけるように、
自分もまた「ある集合体の一部」なのではないか、
今この形をしている自分がやがて何かによって「解かれる」日が来るのではないか、
そしてまた、別の集合体として「再構成される」ことを無意識に願っているのではないかと、そんな想像を誘った。
作中の鸚鵡たちは、人間には掴めるが鳥には掴めない何かを象徴していた。
日々当然のように受け入れている「身体」や「存在」は、案外脆く、
実は -
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最も好きな幻想作家の一人恒川光太郎の作品集。文庫化されたので再読。まず「ケシヨウ」なる魔にまつわる短編が五編。しかしケシヨウという魔物の話ではなく人間の醜さいやらしさどうしようもなさを描いていて幻想味は薄め。何がどうなったのやら曖昧模糊とした結末のものもある。そして寄る辺のない「リュク」という少年が、聖者として崇められる人物(じつはダウォンなる妖魔)に導かれる物語。みなしごの人生の行き着いた先にえもいわれぬ感動が。最後は「風禍」なる不思議な存在が生み出した異界に育つ音楽の子供達の物語。このように美しく不思議な異界を想像力で創造し多くの言葉を重ねないにもかかわらず豊かに紡ぎ上げる恒川の筆力にうっ
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ネタバレ恒川光太郎さんの最重要短編集。
シンプルにどの話も面白かった!
恒川光太郎さんはホラーという括りでジャンル分けされていることが多いが、ジャンルの幅を超えた幻想小説家であると思う。
恨んだ相手を殺す能力があると言っている”だけ”かもしれない相手との、少し不穏さを感じさせる現実味のある作品「風を放つ」
かつて家族を殺した犯人を、洗脳により正義のヒーロー”グラスゴースト”に仕上げて殺人をさせるという復讐劇「迷走のオルネラ」
最初の二作はSFとは言い切れない現実味のあるストーリーだ。
数日おきに”夜行”についていきあらゆる世界線を旅する「夜行」
擬装集合体の人間が拡散され二十匹の鸚鵡となり生きていく話 -
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最愛の作家の一人恒川光太郎作品。『ヘブンメイカー』が未読だったので、それを読むために再読。氏の作品は初期の、和風で土のにおいのする作品――「夜市」「風の古道」『草祭』『雷の季節の終わりに』などをこよなく愛しているので、実はこの『ヘブンズメイカー』、初読の時あまり気に入らなかったのだけれど、なんと愚かだったことか! 再読してみるとやっぱめためた面白い。言葉だけで異世界(それもなんとも魅力的な)を構築する輝く想像力と、少ない行数で芳醇な物語を紡いでみせる手腕に脱帽。やはり恒川は凄い。自分恒川光太郎と津原泰水を読める時代に生きていて本当によかった。津原氏の新作はもう読めないけれど、恒川氏にはもっとも
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ネタバレある日、くじ引きで一等賞を当てた主人公。異世界に飛ばされて10の願いを叶えられるスタープレイヤーとして生きていくことが描かれたファンタジー小説。
すごく読みやすくて読む手が止まりませんでした!
世界観もとっても好きでした☺︎
主人公がスターの使い道について悩む姿が描かれていて、いざ10の願いを叶えるとなると難しいなと思った
スタープレイヤーは地球に帰ることを願うとどうなるんだろうか、すでに地球にはもう1人の自分がいるから今の自分が消えてしまうのではないか、と言う疑問はどうなったんだろう…?もっと広がった世界について知りたいなと思った
でも、続編があるみたいだから、この世界がもっと詳しく -
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「家が呼ぶ」に大興奮して以来、すこしずつ朝宮運河さん編纂のアンソロジーを買い集めている。今作も大興奮!
✂-----以下ネタバレです-----✂
はじめに収録されたタイトルドンピシャの「恐怖」は、短くもラストにドキッとする極上の作品。最初からこの作品…もう期待しかないが、続くは小松左京「骨」。じっくり掘り進められた恐ろしく壮大な情景が、蘇る記憶とともに一気に駆け抜ける大迫力に感動…。
「夏休みのケイカク」「正月女」は現代の割と身近な景色を思い浮かべつつ読み進めていたけど、オチに違ったカラーのダークさがあり面白い。
今回すごく好きだった「ニョラ穴」は、SFチックな作風。日本のこ