あらすじ
両親と島を訪れた少年は、集落の祭りの夜に妖しい女と出会う。彼女はその場で少年の未来を予言する――(「月夜の夢の、帰り道」)。美しい海と島々を擁する沖縄が異界に変容する。『私はフーイー』を改題し文庫化。
※本作品は、二〇一二年十一月にメディアファクトリーより刊行された単行本『私はフーイー 沖縄怪談短篇集』を改題して文庫化したものが底本です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
かなり好みのファンタジー作家の恒川光太郎さん。
7つ全ての話が沖縄を舞台としていて、読んでいて異界に迷い込んでしまったような感覚になりました。
そして毎度のことですが、恒川光太郎さんの作品はファンタジー要素だけではなく、必ず現実との繋がりがあります。
(別人の中に魂だけが蘇る主人公が、実際に起きた沖縄での戦争に巻き込まれたり…)
異世界に浸っていたらいきなり現実に落とし込まれたり、逆に現実から異世界に引きづり込まれたり…
現実も遠くない位置に”異界”が存在している沖縄に、魅了されっぱなしでした。
また、一面に広がるサトウキビ畑や亀甲墓、突如現れる「わん」「えー」などの方言など、どこか独特な沖縄の雰囲気を味わえる作品なのも、読んでいて楽しかったです。
Posted by ブクログ
観光地としての沖縄ではなく、
むしろ異界の入り口としての沖縄の姿をまざまざと見せつけられたような感覚に包まれた。
土着の信仰と幻想、そして現実とが絶妙に融合し、そこにしかない「気配」が漂っている。
恒川光太郎の描く沖縄は、単なる舞台装置として存在するのではなく、
そこに生きる人々の日常と深く結びつきながら、非日常を自然に溶け込ませている。
その空気感は、まるで幼い頃にだけ感じられた「何か」、例えば黄昏時に遠くでじっとこちらを見つめている妖かしのような存在を想起させる。
作中に発現する怪異は、人間の善悪や理解を超越して、ただ「そこに在る」。それらは時に恐ろしくもあり、時に優しくもある。意味の外側に存在し、ただ生きているそんな怪異の存在に、
自身の生命の在りようが重なって見える。
Posted by ブクログ
舞台は沖縄。もしかしたら自分にも起こりうるかもしれないと感じる、現実味のある異世界感。それが絶妙に怖い。どれも大好きだけど特に最後の2作が秀逸です。
Posted by ブクログ
この本を読むのは2回目、なのだが初読時の内容が記憶に残っておらず。。。
改めて読んで、こんなに美しい作品をなぜ覚えていなかったのかと、自分を責めた。「美しい」以外に似合う言葉はないと思う。
収録されている7篇、全部美しいが、「夜のパーラー」を含む後半の4篇がお気に入り。
「夜のパーラー」は他の作品よりも現実味があって、特に怖かった。
Posted by ブクログ
久しぶりの読書。
久しぶりの恒川光太郎 。夏になると彼の作品が読みたくなる。ので、未読だったこちらの短編集を。
やっぱり彼の描く異界と、現実世界とが交わる時の滲むように曖昧な境界の表現が大好きだ。
七篇の中でも特に『弥勒節』が気に入った。序盤に森で老婆に会うシーン、死者と語らっているとは思えない不思議な空間だった。
読んでいてなぜか、『草祭』に出てきた天化が読みたくなった。膨大な数の声と人生とが胡弓に吸い込まれていく様が、なんだか天化の盤上を眺めていた時の感覚に近かったのかもしれない。
表題作の『月夜の島渡り』はラストに向かって収束とも、救いのあるループの再回転ともとれる演出がとても心地よかった。あとオタクはどうしても転生譚のような『わたしはフーイー』が好き。五十年という、前世で関わりのあった人々の晩年と絶妙に被る周期で“思い出す”ことで生まれる交流や仕掛けもお見事です。
Posted by ブクログ
沖縄を舞台にしたファンタジーホラー短編集。情緒がたまらない。夢と現の境目の曖昧さを柔らかい筆でなぞる、大変色気のある作品集でした。沖縄の島っていう舞台がまた良いと思ったら、恒川先生沖縄ご在住なんですね!不思議な夢をみて目が覚めたときのような気持ちになりました。
Posted by ブクログ
恒川 光太郎さんの作品を読むのは2冊目。前回読んだ代表作の『夜市』よりも今作は私好みで一つ一つのお話全てが素晴らしすぎて感動すらある。沖縄なのか異界なのか。神聖なる異形のものたち。しかし、ファンタジーとかホラーという一言では括れない物語の重圧さで十分に堪能いたしました。<追記>クームンの庭先の木に掛けてある無数の靴、そして…(ネタバレになるので伏せます)。先日読んだ『新耳袋殴り込み 最恐伝説』新世界の首吊り廃墟でも同じような無数の靴…そして…。実在する何かのマジナイですかね…。
Posted by ブクログ
【2025年79冊目】
胡弓が呼び寄せるもの、靴を集める魔物の住処、無人島の洞窟に棲う軟体生物、夜のパーラーと人の欲望、お化け電車と女の一生、月夜の預言者、転生を繰り返す女――美しい海に囲まれた島の国、琉球を舞台にして、異界へと片足を踏み入れる7つの短編集。
全編に渡って不可思議さが漂い、どの物語も引き込まれるように読みました。ファンタジーでもSFでもない、奇異で独特な世界観は、もはや恒川光太郎ワールドというジャンルがあっても良いのではと思うほど。
やっぱり人間のシンプルな怖さに惹かれてしまうので、中でもやっぱり「夜のパーラー」が一番好きかも。日常の中でありえそうな感じがする話だけに余計に。
話によっても文体が異なっているのも、面白い。一人アンソロジーみたいになってる、でも恒川光太郎さんだなぁと思う、魅力が迸っている。
今作も楽しんで読ませて頂きました!
Posted by ブクログ
相変わらず独特の雰囲気と距離感で、なんとも言えない、ざわざわとした怖さを感じさせる。
沖縄という、より異界と近い土地を効果的に使用している。「月夜の夢の、帰り道」「私はフーイー」以外は、魔に飲み込まれていく話。唯一「月夜の夢の、帰り道」だけは魔を跳ね返す力強さがあって、特に好きだった。
こんな稀有な作家、恒川光太郎にはもっと作品を出してもらいたい。
Posted by ブクログ
全てのお話が、胡弓の調べで紡がれるでーじ上等の「弥勒節」みたいでとてもよかった。
恒川さんの物語は昔話みたいだし、異界がすぐ隣にある世界だけれど、この作品集は舞台が沖縄というのもあり、更に異界とこちらが共存しているなと感じました。それが住む人たちにとってあたり前なのも。
そして、沖縄を描くには沖縄戦を描かないわけにはいかない、というところも誠実です。沖縄が経てきた悲しみから沖縄戦を外すことはできません。
「月夜の夢の、帰り道」「私はフーイー」がよかった。やり直すきっかけだったり、道を切り開いたり。
「ニョラ穴」「夜のパーラー」は真逆で、それも怖かったです。
Posted by ブクログ
私はフーイーが一番好き
他は人間が怖い話ばかりで後味悪くて胸焼け気味だったんだけどフーイーで清々しく読み終えられた この話なかったらムリだったかも
パーラーの話と洞窟の奥にいる怪物の話がかなり怖かった イモガイの毒を売る男とかも
私はフーイーの、牙がある首刈りの人も悪い人だけど本土から来た警察官をリンチするような人間の心を引き継いでる感じがしてなんとも言えない
Posted by ブクログ
とても幻想的な小説だった
不思議な雰囲気だが、それ以上に感じる恐怖
個人的には、夜のパーラーが一番怖かった。もはや人間なのか妖怪なのかも分からない、、
Posted by ブクログ
舞台は、沖縄、というか琉球って言った方が雰囲気的には合うな。
実に怪しい。
琉球も異界の入口が、すぐ隣りにある感じなんかな?京都みたいに。
実は沖縄は行った事ないんやけど、何か目的もなく行ってみたい気もするな。
シーサーなどに守られている異界の街。
そういう身近な異界をテーマにしてそうな短編集7つ。
雰囲気、実に良し!
そうホラー、ホラーって感じより、こういう怪しいの好き!
妖怪というか、異形の者が、ホンマに近くにいそうで怖いけど…
でも、命の価値はめちゃ低い…
Posted by ブクログ
珍しい、沖縄を舞台にしたホラー。
沖縄の自然、精神性、夜、方言…
沖縄という舞台でしか醸成できない、ぬるくて畏怖の念を覚える空気感を、各短編ごとに、見事に描いていた。
Posted by ブクログ
沖縄を舞台にしたホラー小説。
じめっとして暑い雰囲気があります。
恒川氏の小説は夜市が代表作として挙げられることが多いですが、ホラーの雰囲気としてはこの本の方が好きです。
Posted by ブクログ
今回は全て沖縄でのお話し。
沖縄も京都とは違う異世界への入口がそこかしこに
さりげなく口を開けてるって感じがしてます
その期待を十分すぎる程に淡々と時に優しく
時に不気味に 時に理不尽に異界へと誘います。
これが好きなんですよぉ~
7つの不思議なお話です。
「クームン」と「私はフーイー」がお気に入りです。
Posted by ブクログ
冬に買ったが、夏向きなので、ねかせておいた本。
「弥勒節」「クームン」と「私はフーイー」が面白かった。
首刈り男は、ハワイに移民したので米兵となって殺しにくるかと思ったが、そんな事はなかった。
胡弓の音楽を聴きたくなった。
沖縄行ってみたいなぁ。
Posted by ブクログ
メディアファクトリーから 2012年11月に刊行された『私はフーイー 沖縄怪談短篇集』の改題文庫版で作者の住む沖縄の島々を舞台にした怪談、奇談の7話で構成される短編集。
デビュー作『夜市』以来、毎回「どうしてこんな話が描けるのだろう」と感心することしきり。琴線に触れるストーリーは、本編で語られる弥勒節(みるくぶし)を奏でる「胡弓」のようだ。 その旋律ともいえる独特のテンポと文体は、むかし、子供の頃に聞いた婆ちゃんが警句を込めた不思議で怖い怪談風味の土地寓話のような懐かしい「耳触り」がなんとも素敵。
南方や近隣の島々から渡来して住人と成る独特な民族構成とその文化、そして時代の流れの中に激しく翻弄されてきた土地の歴史。「南国の楽園」と言うイメージに裏側に潜む暗く恐ろしい人間のエゴと自然と共存するために伝えられてきた信仰が絡み合うファンタジー。
Posted by ブクログ
2011年の『私はフーイー』の改題文庫版。
沖縄を舞台にした幻想譚。短編7編を収録。
現実と不思議な世界が交錯する恒川ワールド。
最初の「弥勒節」、最後の「私はフーイー」の時間軸の大きさがいい。
薄めの文庫本なので、他の本が読み終わりそうなとき、荷物を減らしたいときに
ちまちま読んだ。
Posted by ブクログ
沖縄舞台の短編7編。沖縄だけど明るいリゾート地じゃなく、現実と虚構と歴史と狂気が混ざったパワースポットっぽい感じ。
・よかった編
「私はフーイー」
「100万回生きたねこ」みたいだなぁと思いながら読む。何のためにと問われても答えられない転生。ねこは愛を得て終わりにできたけど、フーイーは島に人が生き続ける限り流転を繰り返すのかなーそれもまた大変だと。でもその背に翼が生えても、自由じゃなく故郷を求めて一直線なのが眩しくて切ない。
「幻灯電車」
「生きているから生きている。その時が来るまで生きている。」何のために、と考えていた昔の方がまだ希望があったんだと思わせる諦念が痛い。奪われ歯向かい、得ては失い、疲れ果てた彼女が最後に乗った電車の行き先が安寧の地であればいいなあと思う。
・良くなかった編
特にない。でも前に見たことある断片が多いかなあという気はした。共通項が多いことが一概に悪い訳じゃないけど、新しい世界が見たいというのも読者のわがまま。
<総評>
文章にほの暗さと掴みどころのない色気が滲むのは詩才だなあと思う。あと「クームン」とかもそうだけど、恋が生まれて関係ができる所がものすごいさらっと書かれていて、ギュウギュウ悩んでドタバタするラブコメ(最近読んだ別作)とかとえらい違いじゃ、と思うと同時にうまくいく時はそういうもんだよな、というのも思った。あとはこの個性を生かしたまま違うタイプの新鮮さを、と思うんだけど、どうなんだろう同じものしか書けない(書かない)作家さんなのだろうかうむうむ。
Posted by ブクログ
南の島に伝わる伝承のような短編。
全ての短編において現実世界の中に怪異がふと顔を覗かせている。
全て全く違う話ではあるもののキーワードでは繋がりを感じる。泉や、胡弓、山羊など。そして共通項として死が深くストーリーに絡まっている。
生という日常の対立効果として死という未知なる異界・存在が際立つことで、この不思議な話に引き込まれていく。
この小説の色は黒に近いグレーかな。
そもそもホラー文庫から出発されてはいるけれど、恒川作品の中では明るい話が少なくて、個人的には星3つ。
・弥勒節
ある楽器で弥勒節を引いたらヨマブリが吸い取られる。
ヨマブリは瘴気みたいなもの?
ヨマブリに触れたり当たったりしたら最悪死に至る。最終的に弥勒節でヨマブリの存在自体を吸い取ってしまった。最後まではっきりとヨマブリがなにかわからないけど、うやむやなところがこの世に存在する都市伝説みたいで本当にありそうに感じた。
・クームン
クームン→廃屋に住みつき靴紐を愛する清潔感なさそうな男性。鳥には好かれる。言葉は話せず身振りのみ。
一見あきらかやばい存在だけど、実は妖怪?幽霊?願いを叶えてくれたり守ったりしてくれる存在でもある。沖縄のお話。
・ニョラ穴
ニョラという軟体動物の妖怪が洞窟の奥にいる。
ニョラの臭いを自覚したら白昼夢に陥るらしい。
こうやって民話のような伝説は語り継がれていくんだなと感じる作品。
・夜のパーラー
現代のお話。これまでのような都市伝説のような話ではなく、生と死の人間くささが感じられる。
おばあが妖怪のような人間なのか、人間のような妖怪なのかは謎だけど、1番怖いのは人間ですね。
というかここまで全ての話で死が密接に関係している。
・幻灯電車
昭和初期のお話。
幽霊電車が今回の不思議体験ネタ。
乗客はのっぺらぼうで車掌はヤギのような角がある。
今回も生と死が根幹にあった。
死が近くなると幽霊電車が現れるのかな?
・月夜の夢の、帰り道
読み終わってからタイトルを読み直して納得。
小学生の頃、旅行先の祭りで宣告されて運命。それ以降の主人公の未来は結果的に夢だった。夢とは少し違くてその運命を受け入れた通りの現実でもある。その運命を過去の自分達が否定すること、強い意志を持つことで語られる主人公の現実は消滅し、また小学生の視点に戻った。
・私はフーイー
フーイーという女性が50年おきに蘇りを繰り返す話。50年おきだから必ずフーイーを知っている知人がいる。そして、フーイーが接する死の瞬間に立ち会うもう1人の男もまたフーイーと同じく蘇りを繰り返していた。
Posted by ブクログ
沖縄が舞台の7つの怪異譚。 沖縄に訪れた時、観光地から一歩外れて静寂で少し不気味な道に迷い込んだことを思い出した。 異界への入口があちこちにありそうな沖縄の雰囲気と、恒川さんの筆致の相乗効果で、現実と怪異の境目が曖昧になる。 「月夜の夢の、帰り道」が特に好き。
Posted by ブクログ
この文庫本は、2012年に刊行された単行本「私はフーイー 沖縄怪談短篇集」が改題され、文庫化されたものです。前題の通り、沖縄を舞台にした7つの短篇で構成されています。
私自身は、恒川光太郎さんの作品はこれで5つ目です。今回は、自分には馴染みのない沖縄が舞台でしたが、節々に見られる方言などの沖縄らしさがとても新鮮でした。
ちなみに、この中での私のお気に入りは「クームン」です。恒川さんらしさ全開の、温く、残酷で、どこか懐かしいストーリーでした。
Posted by ブクログ
沖縄が舞台の異界譚
どの物語も楽しめた。
沖縄の持つ神秘的で奇怪な雰囲気を上手く表現してて、「沖縄ってこういう不思議なところがあるかも」と読みながら実感させられた。
似たようなシリーズがあればまた読みたい。
Posted by ブクログ
これはいい!恒川流琉球怪異譚は面白い!前回読んだ『南の子供…』は外国の架空の島という設定で個人的に違和感を覚えちょっとしっくりこなかったが、今回の沖縄を舞台にした物語は非常に楽しめた。沖縄の歴史的な背景や風土・風習に現実と異世界が絶妙にマッチし独特な世界観を醸し出している。人間の奥底に眠る残虐性は異世界でも現実でもいつ目覚めるか分からない怖さをこの作品は皮膚感覚として残してくれた。美ら海の切ない波音がいつまでも心に響く。