恒川光太郎のレビュー一覧
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架空の国、エルテカ
生贄にする人間を捕獲する部隊に捕まった少年・スレイの物語から広がるエルテカ存亡のお話
思想、取捨選択、生き死に
物語に出てくるそれら全てが、それぞれの登場人物に描かれた生まれ育ちや立場に裏打ちされている
ひとつひとつの因果の糸が大きな川の流れのようになって、一国の歴史に繋がる様を見せつけられた
一国の存亡というマクロな話なのに物語はほぼ人物に焦点が当たっているミクロさ
読み進めていくうち、坂道を動き出したら止まらないかのように人々を巻き込んで「国」が転がっていく
え、大丈夫?そっちでいいの?気づいたらブレーキもないしハンドルもなくて、どうすんのこれ?みたいな
群像劇 -
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マヤ文明、生贄、国の滅亡と重いテーマではあるけれど、登場人物みんな魅力的で、それぞれの関係性や繋がりも深掘りされていてのめり込んでしまいました。
だからこそ旧知の仲だったり、かつては同志だった人たちがそれぞれの考える正義や信じる道を選んだ結果争うことになってしまうのがとてもやるせなかった。
和解してほしい人たち、この人は生き延びてほしいと思った人がどんどん命を落としていく…
生い立ち、立場、選択、何かがどこかで違っていたら全く違う人生を歩んでいたかもしれない。
ファンタジーだからといって死んだと思っていた人が終盤になって実は生きていました!と登場するなんてご都合展開もなく、命を落とした人はそれ -
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待ちに待った恒川光太郎の新刊!
最近雑誌にも書下ろしがなかったのはこの長編のためだったのか、と発売を知った時に納得。
マヤ文明が軸になっているので、グロテスク、カニバリズムの表現が多々あるので苦手な人は注意。
最初の方は、今までの著作と毛色が違ってて恒川ワールドとは思えない作品だな、と思ってたけれど、ある登場人物にスポットが当たり始めてから個人的には流れが変わったように思える。
それは最高神官のフォスト・ザマ。
謎に包まれた人物だったが物語が進むにつれて人物像に鮮やかな色付けがされてゆき、実は彼女も主人公の一人なのでは、という考えにすら至った。
過酷な世界で前を向いて、自己を貫き生きていくこと -
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「時は全てを消していく。過去は常に改竄される---」
いや、もう、とんでもないものを読んでしまった。物語の余韻を何度も反芻してたら、2日たっていた。言葉にできないってこういうことか。
物語の余韻と書いたけれどこれは、はるか昔に生きた誰かの人生そのものだ。
マヤ文明の高度な建築技術で築かれた神殿。
天文学や“0”という概念を生み出した叡智の民。
文字を暮らしや戦いに用いていたという。
そんなことがストーリーにうまく組み込まれていて、自然とこの世界に引きずりこまれてしまう。
太陽神への生贄。心臓を捧げる儀式。“人を喰う”ということで力を得るという信仰。奴隷制度、力の格差。
そんな時代の中 -
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ネタバレ伝奇SF。再読ですが、何度読んでもこの世界に取り込まれてワクワク読んでしまいます。面白かった。
長編でも、寂しさを覚える読後感は変わりません。
地球に降り立った金色様の、永い幕引き…と思うと大変寂しい。
相手や自分を、許す許さない…がぐらぐら揺れ続けるのも良かった。
「筋か。この世の恐ろしいところはな、筋などというものは、本当はどこにも存在しないのだ。ただ、筋を通した、通っていないと当事者とその周囲の者がいうだけでな」
不思議な力を持つ遥香のことを邪険にせず、謎すぎる存在の金色様のことも邪険にせず「違う種類の神様だけど」みたいに接するお年寄りたち、おおらかだなぁ。
日常と異常が無理なく共存 -
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ネタバレミステリー読み飽きてきた体にファンタジーが染みるゥ!そろそろファンタジー読みたいなあと思っていたら、まさかのファンタジーもので最高でした。箱の話からいろんな世界が繋がっていて、未来の未来の未来の終わりまであると思いませんでした。面白いなあ。文章も読みやすくて好きです。時計を投げて解決させる▶︎投げた先で時間が止まってしまうの話の流れが好きです。もっとこの世界のいろんな話を読みたくなってしまいますね。
夜市を調べていてホラーを書く作者さんなのかなーと思って手に取った本だったのですが、予想外のファンタジーで最高です。たぶん読んだタイミングがめちゃ良かったです。 -
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ゆっくり過ごしたい晩夏にちょうどいい短編集かも。ホラーだけど怖がらせるためのホラーじゃなくてそっと存在する怪異みたいな世界が優しくて懐かしくてさみしくて、穏やかな読後感が良かった。キャラクターが立っていて魅力的だし文章の景色がとてもきれいなので映画というより穏やかなアニメみたいだった。恒川光太郎氏の作品は初めて読んだけど、同世代だからなんだろうか自分の子供時代と似た雰囲気を感じた。表題作も、2作目も両方大好きで、早速作者の別の本を購入した。 景色ありありと浮かぶように描かれていてそれらがすごく素晴らしいので映像化したらとてもみたい、誰か映像化してくれないかなって思う。
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「人と化物の境界線」がどこにあるのかを考えさせられた。
登場人物は人の皮を被った化物なのか、
それとも化物のように醜い心を持った人間なのか、その判別すら曖昧になっていく。
結局のところ恐怖の根源は外側にある異形ではなく、人間の奥底に潜む狂気や醜さそのものであると感じさせられる。
作中では「ケシヨウ」と呼ばれる魔物が怪しく徘徊し、まるで本編の深淵へのガイドのように登場するのが強く印象に残る。
ケシヨウは人間の負の感情を感知して姿を現し、
そのおぞましさは鏡のように人間の心の闇を映し出しているように思う。
災厄を生み出すのは常に人間の側であり、ケシヨウはそれに引き寄せられる存在に過ぎないのかな -
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幼い頃、読書をしない母が珍しく面白いと言っていた本。『風の古道』が好きだと言っていたのを今でも覚えている。当時は表題の『夜市』が圧倒的に面白く母の気持ちが理解出来なかったが今ではとても良く分かる。そして今回、何度目の再読かわからないかわ相変わらず素晴らしい作品だと思った。一体何人の人間がこの文章にあてられ小説を書き、劣化版夜市を生み出したのだろうかと思いも巡らせずには居られない。そんな作品。
■夜市
テーマがまず魅力的である。妖怪のような生き物が市場を開いていてそこに入り込んでしまう主人公。似たテーマの作品を探していたこともあったが結局自分が読みたいのは『夜市』なのだと気付かされ探すのをやめ -
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ネタバレ
子供向けながらも、大人でも面白いということと、好きな作家が何人か書いていたので読んでみた。面白かった。特に最後の恩田陸のはすごかった…。
「象の眠る山」田中啓文
象眠山(ぞうみんやま)というのが出てくるので、象?ガネーシャ?と連想させておいて、正体は昆虫。最後のオチも、もしかしたら寄生されたかも、というもの。
それでも、UMA的な存在や、横道という解説キャラが出てくるので面白かった。横道が解説して助けてくれる、便利すぎるキャラ。
「とりかえっこ」木犀あこ
人頭(じんとう)という怪異。出現条件がピンポイントすぎる。何か元ネタがあるのか?50.65センチというのは人の肩幅?何から来てるんだ