あらすじ
「私は人ではありません。数百年を旅して回り、メンタマグルメに興じています」
公園の雑木林を狩り場に、人間のメダマを狙う《猫》。
かかわったものに呪いをかけ、どこまでも追いかける《蛇》。
甘言で家を乗っ取り、金だけさらっていく《狐》。
古今東西、人間の陰に生き、喰らい、時に育てる化物たち。
その醜くて愛おしい姿を、とくと、ご覧あれ!
醜悪、異様、狡猾、艶然――。
恒川光太郎が描く、身の毛もよだつ究極のホラー七篇!
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Posted by ブクログ
タイトルから化物がたくさん出てくる話かと思ったけど、その化物は人間のことを指していることが読んでいくうちに理解できた。
人間の中にある形にならない思考や狂気が何かのきっかけで出現するとき、他人からみると理解できない化物に映る。
前半はそこに狂わされる人と巻き込まれる人の話。
後半は帯にもある「人間を飼う」ことで生まれる世界への違和感と問題提起に思えた。
Posted by ブクログ
「人と化物の境界線」がどこにあるのかを考えさせられた。
登場人物は人の皮を被った化物なのか、
それとも化物のように醜い心を持った人間なのか、その判別すら曖昧になっていく。
結局のところ恐怖の根源は外側にある異形ではなく、人間の奥底に潜む狂気や醜さそのものであると感じさせられる。
作中では「ケシヨウ」と呼ばれる魔物が怪しく徘徊し、まるで本編の深淵へのガイドのように登場するのが強く印象に残る。
ケシヨウは人間の負の感情を感知して姿を現し、
そのおぞましさは鏡のように人間の心の闇を映し出しているように思う。
災厄を生み出すのは常に人間の側であり、ケシヨウはそれに引き寄せられる存在に過ぎないのかな。
ケシヨウが化物であるなら、人間もまた同じく化物である。人間と化物の境界は崩れ去り、自分自身の心の奥底にも同じおぞましさが潜んでいるのではないかと疑わざるを得ない読感がある。
Posted by ブクログ
何とか読み進めて最後の章まで行ったが、正直に言うとそれまであまりこの本にハマれていなかった。もちろん話が面白くない訳ではなく、単に自分が求めていた恒川光太郎さんの世界観ではなかったというだけだが。しかし、最後の章 音楽の子どもたちの出来がそれまでの思いを全て払拭してくれるくらい素晴らしかった。何なら作者の代表作 夜市 にも引けを取らないくらい面白かった。
あらすじ 外界から遮断された世界(妖精の国) で生活していくには、管理人的立ち位置である風喎が満足するような演奏を行う必要がある。十二人の少年少女は物心着く前から孤立した世界で暮らし、楽器と向き合っていくが、やがて自由を求める者が現れ、、 といった内容である。
孤立した世界で自由を求める姿は(進撃の巨人)や(新世界より)を思い出した。
この話は余韻の残る終わり方や、十二人の少年少女が織りなす人間模様が深い哀愁を醸し出していて、恒川光太郎さんが作り出す独特の世界観楽器見事に表現されていた。この壮大な設定と世界観で描かれる長編を是非とも見たかった所ではあるが、そこは仕方がない。むしろ、短編でここまで内容を盛り込んで面白くできるのは流石の力量だと感じた。
Posted by ブクログ
最も好きな幻想作家の一人恒川光太郎の作品集。文庫化されたので再読。まず「ケシヨウ」なる魔にまつわる短編が五編。しかしケシヨウという魔物の話ではなく人間の醜さいやらしさどうしようもなさを描いていて幻想味は薄め。何がどうなったのやら曖昧模糊とした結末のものもある。そして寄る辺のない「リュク」という少年が、聖者として崇められる人物(じつはダウォンなる妖魔)に導かれる物語。みなしごの人生の行き着いた先にえもいわれぬ感動が。最後は「風禍」なる不思議な存在が生み出した異界に育つ音楽の子供達の物語。このように美しく不思議な異界を想像力で創造し多くの言葉を重ねないにもかかわらず豊かに紡ぎ上げる恒川の筆力にうっとりする。やはり結末には静謐な深い感動がある。やはりダウォンも風禍もケシヨウと同じ種族の存在なのだと思う。しかし、帯に「身の毛もよだつ、究極のホラー七篇!」とあるのがいただけない。もうそろそろ恒川作品を「ホラー」と言うのをやめてほしい(ホラー小説が良くないといいいたいのではない)。「ホラー」だなどするから「あまり怖くなかった」とか「もの足りなかった」などという的外れで愚かなレビューを書く輩がでてくるのだ。
Posted by ブクログ
ケシヨウと呼ばれる人ならざるモノが、関わる七つのお話。
なんでこの本のタイトルが、「化物園」なんだろうと、読みながら考えてましたが、ケシヨウ視点から見た人間が「化物」だから「化物園」なのかと。
前半は禍々しい話ばかりでしたが、最後の2篇はいつもの不思議な世界、恒川ワールドでした。
やっぱこの人の作品面白いわ!
Posted by ブクログ
何も情報を見ずに読んだ。短編集なのかな?と読んでいくと短編だが読んでいく内に最後の所で少し泣きそうになる自分がいた。
個人的にはどの登場人物も何かを追っている? 未練がある人物ばかりだと思う。
この小説は未練が募りに募って最後にはこの小説の題名、化物園の化物が……見ればわかります。
個人的にはとても面白かったです。
Posted by ブクログ
仕事がキツすぎたり体調また崩したりで読み終わるのにひと月もかかった。
恒川さんらしいファンタジックな世界に溢れながらもダークな質感がありかなりよかった。
最初の三作と日陰の鳥はどれもよかった
Posted by ブクログ
不思議小説
世界観がよかった。
全部違うケシヨウの話なのかなと思うけど、猫になるのは作者の趣味?それとも同じケシヨウの話なのかな?
書き下ろしの音楽の子どもたちはありがち設定だけどなんぼ読んでもいいもんですね。
善良な怪異に飼われている無垢なこどもの話もっとください。
Posted by ブクログ
恒川光太郎作品は「夜市」が飛び抜けて好きな他にも「草祭」、「竜が最後に帰る場所」と好きなのだが、実のところ最近読んだ恒川光太郎作品はハマらないものが多かった。だがこれは面白かった。
・猫どろぼう猫
化物園はこういう雰囲気という自己紹介的な作品だと感じた。短い物語ながら伏線も回収されて快感だった。
・窮鼠の旅
ケシヨウは関係ないのだがホームレスを飼いならして一緒に自殺しようとしたが結局1人で自殺した女が不思議すぎる。最期ケシヨウに立ち向かうかの様に終わったが彼はどうなったのだろうか…窮鼠猫を噛むとも言うが果たして…
・十字路の蛇
一番好き。十字路の彼が誰なのか、単に浮浪者なのかなのか、味方なのか敵なのか、ほれが明かされていく過程が気持ち良く、部外者ヅラしていた主人公が突然舞台に上げられる様は読んでいて驚きとともに爽快感があった。
・風のない夕暮れ、狐たちと
完成度が高すぎてこれを単体で出しても賞賛されそうだなと思った。化物園は総じて物語の回収が見事。この作品も最終的に女が欲に目が眩んでしまうのも、久多可が妖であると示唆されるのも読んでいて気持ち良い。
・胡乱の山犬
幼い時の悲惨な性体験のせいで、性を感じず力で優位に立てる幼子にしか興味が持てない人というのは実際に居そうだと思った。そして昔の倫理観であればこういった話も実在したのではないかと思ってしまった。そしてケシヨウの正体はこの幼子なのではないかと思う。
・日陰の鳥
この作品だけ書き下ろしということもあってか特筆するようなことはなかった。
・音楽の子供たち
この作品の中で唯一西洋ファンタジーぽい作品。「術理はなに?」で建物であったりピアノなどの道具であったりが開放されていくのは面白い。そして人に術理がかけられているのではないかなどホラーの様な要素もありとても良かった(そこは深堀されなかったが…)その気になればもっと長編で書けそうであるし見たいと思った。