恒川光太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ古代マヤ文明をモチーフにした架空の古代国家に暮らす様々な立場の人間の視点で、一つの国が滅びる顛末を追体験するようなお話。
読む前はファンタジー作品だと思ってたし、ページも600ページちょっとあるから最後まで読めるか不安だったんだけど、不思議とスルスル読めちゃったね。
正直意味のわからない単語とか、理解しがたい文化的背景とかもたくさんあったんだけど、作中であまり詳しく説明してないのが逆によかったのかもしれない。こういう作品は世界観説明が長く、その間に読むのが嫌になることが結構ありがちだと思うんだけど、そういうのがまったくなかった。古代の話だけど、会話シーンが現代口調だったのも馴染みやすくて◎。
それと登場人物の名前が日本名ではなく、人数も多いとよく起こる「誰が誰なのかわからなくなる問題」もなんでかそんなに起こらなかった。もちろんまったくなかったわけではないけど、それぞれのキャラクターの内面がものすごく押し出されていたからかもしれない。個性的!変人!とかでは全然ないんすよ。それぞれの信念というか、主義・主張みたいなものが一貫していて、キャラクター像がはっきりしているっていうのかなぁ、うまく表現できない……。
この作品の不思議な読みやすさの理由をうまく言語化できたかはわからないが、私がこの本を読む前に感じていた不安はまったくの杞憂だったということだ。
(「読みやすい」は褒め言葉か否か、という議論もあるようですが、私は賞賛の意味で「読みやすい」と言っているつもりです。)
物語の内容的には……、そうですねぇ……、とりあえず当時の生贄文化が色濃く描写されているので、グロ描写にはご注意あそばせ。
大枠としては、長期政権にありがちな、形骸化し腐敗しきった王侯貴族と、自らを「天からの使い」と称する少年を祭り上げる民衆たちとの大きな争いがあって、その中で自分たちが掲げている大義を成すために多くの犠牲を払うことへの葛藤や、自分たちの鬱憤晴らしや快楽のために大義を盾にしてその理念とは真逆の振る舞いをしていく末端の民衆たちへの絶望など、理想を実現する過程で起こる矛盾と虚しさに最後の最後で打ちのめされた感じ。
この国は滅びるべくして滅びたんだな。そして新しくできる国も同じように滅びていくんだろうな。という人間の愚かさを再認識しましたね。 -
Posted by ブクログ
恒川さん独特の ダークで不思議な世界観がめちゃくちゃ好みだった〜!
異次元から始まるストーリーは、どこかうすら怖くはあるけど、序盤からめちゃくちゃ惹き付けられた。
その後の展開も そういう事か〜の連続で最後まで飽きる事がなかったな〜。
恒川さんの物語って 物哀しさと どこか懐古的な感じもあって ほんと独特。
ちょっと乙一さんと似てる気もするけど、どちらも大好き。
もっと読み進めていきたい作家さんだ(^-^)/
⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
この世でない、どこか異次元の世界に静かに佇む「穏」という隠れ里。
ここでは四季の他に「雷季」と呼ばれる時期があり、その季節には悪い事をしたり、もういらないと判断されたものが鬼衆により連れ去られるという噂がある。
そんな雷季のある日、突然2人暮らしだった姉が姿を消し、1人残されてしまった少年 賢也を中心に進む物語。
⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
-
Posted by ブクログ
本作は非常に贅沢な恒川光太郎の連作短編になっております!
六つの短編と間をつぐむ物語の断片5話からなる本作ですが、いくつかの話は長編にできるような造り込みとなっています!
1話目の【箱の中の王国】は次の話で続きは?と期待してしまうほどの面白さ!!
物語としては繋がって行くものの恒川光太郎のファンとしてはスピンオフで物語を掘り下げて欲しいです!!!!
箱の中の王国:主人公はゴミ捨て場で拾った箱の中に世界が広がっでいるのを発見した!
鈴と銀太の冒険:大正時代を生きていた姉弟の時間を巡る冒険譚!!
短時間接着剤:闇バイトの話!?でもドラえもんの道具のようなものが・・・
洞察者:能力者?の少年とその能力により運命を変えられた人達の話!設定が絶妙!!!
ナチュラロイド:少年は小さな国の王様に選ばれた!その国には秘密があり、少年の人生にも秘密があった!
円環の夜叉:特定の条件下では死んでしまう場合もあるけれど、基本的には不死者!そんな人達の話!
この他に全体の物語を下支えする【物語の断片が5話】あります!
満足できるけれど、おかわりの欲しくなる405ページ!!! -
Posted by ブクログ
いや〜面白い!めくるめく古代生贄文明の世界。権力者たちの思惑が交錯する王国、宗教儀式、思想論争、力と力がぶつかり合う決闘、策略の限りを尽くした戦争、、ヒリヒリする諸々の要素が詰まった600ページ超えの濃密な物語の中で人と人の出会いと繋がりがドラマチックにうねるように紡がれて回収されていくワクワク感。想像力、展開力がすごいし、魅力的な人物たちがどう生命を燃やすのかが気になってページをめくる手を止められない。生贄や闘いで流される夥しい血の匂いや滅びた王国をあっという間に呑みこむ獰猛な密林の緑の匂いが漂ってきそうな描写。新しい思想の始まりと啓蒙、既存勢力と新興勢力の対立、国同士の争いや一国の興亡、それらをめぐる一個人それぞれの信念や生き様、群衆の狂気が絡み合っていくのを読みながら、文明や宗教の誕生や変貌や盛衰、地動説や進化論をめぐる宗教と知識学問の対立など世界中で連綿と続く人間の賢明さと愚かさが入り乱れる営みを思う。喰うか喰われるかの「ジャガーワールド」。一冊の本の中に広がる世界に入り込む幸福感、物語を読む楽しさを存分に味わえた。
-
Posted by ブクログ
それ単体で独立しているようでもあり、それぞれが多かれ少なかれ繋がっているようでもある。
この世に生きる全ての人も、人々が紡ぎ出す全ての物語も、そうなのだと思う。
斉藤壮馬さんが解説を書いていなければ、私はこの作品を手に取ることはなかったと思う。
縁、巡り合わせ、偶然、必然。
どんな風にも言えるけれど、私は今、この作品を読むことができてよかったと思っている。
ひとつひとつが短編小説として読み応えがあるしそれぞれ受ける印象も違う物語なのに、全てをひとまとまりの小説だと捉えるとものすごく壮大で、受け止めきれない。
この一冊の本の中に宇宙を感じた。
そしてこんな宇宙を描き出せる人がいるのだなと畏怖を覚えた。
きっと作者も不老不死ではないはずなのに。
その一方で、ところどころ私の知る他の物語や現代社会への風刺を読み取れて面白く読めた。
やはり全ては繋がっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ好き!
個人的に誠一は、『みんなを苦しめてすまない。自分が悪かった』と億が1に思うことがあったとしても、あの看護師に殺されていた気がする。
大前提として『《未知なるもの》に攫われた被害者』であると同時に『多数のために幸せを奪われて不幸な現実に突き戻された敵国の民』という立場なのを理解しておかなくちゃいけない。
「ここは夢です。幻の世界です。家族もみんないなくなるし、貴方も死ぬ可能性が九割ですが、世界を救って死ねるなら本望ですよね?良い生き方ですよね」
なんて言われて納得するかぼけ!!
自暴自棄入ってるとはいえ交渉下手くそか!!
その人は年月をかけて幻想を現実だと認識してるんだよ!?
でも、同時に『多くの人が死ぬ要因のひとつ』となった事実も残っていて……
今回の看護師は突入者の家族を殺された、暴言を吐かれ続けたという大義名分があるけれど、まあ、なくても『気に食わないから殺す、自分のように不幸になれ』と手を出していたに違いない。
野夏がされたように、自分のために他人を悪だと決めつけたい人は沢山いるだろうから。
だから、看護師と誠一は大きな差は感じない。
悪人(魔物)を成敗した。
どちらも今いる場所が現実だと信じて疑わなかった。
でも決定的に異なるのは、誠一は他者へ向け向けられる愛に由来にしていて、看護師はただの恨みでしかなくて、言い訳を取り繕って感情で動いていたところ。
だから、ふたりの信念には小さいけど明確な差が有るように私は思う