恒川光太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
民俗学者の青年が興味を持った、「キ」をあらわしたという鬼婆の絵画。彼はその非現実的な存在に強い興味を抱いていた。
そして今やだれも知らないその絵を描いた画家自身の幼少期の記憶から綴られてゆく、鬼婆や狒々といったかたちで伝承されながら、ひっそりと歴史の裏側に存在していた「キ」の存亡を描いた短編集。
淡々とした筆運びで人の酷さと温かさを両面で描きつつ、人か人ならざる者かのはざまである「キ」という存在を徐々に浮き上がらせていく手業はさすがの巧さ。血なまぐささの中に抒情的な風情を携えた語りは、上質な大人向けの童話のようなノスタルジーを備えていて、心地よく物語世界に浸れました。とても良かったです。 -
Posted by ブクログ
恒川さんの短編集です。
これまで本に収まらず埋もれていた作品と
アンソロジーに収録された作品をまとめたもの。
読み始めて、いつもの古民家ホラーだけでないなあ、ばらけているなあ、
と思っていましたが、そんな一冊なのです。
読み終えて 作者あとがきの作品解説を読みましたら、短編一作づつの背景が見えまして面白くなりました。
「古入道きたりて」
『和菓子のアンソロジー』2014
夏に夜独りだけの時見ることができる山のような巨人、から始まる民話のような幻想のようなお話だったのですが、まさか和菓子の方とは。
「焼け野原のコンティニュー」
『オール讀物』2014 現代作家が描く戦争小説 パニックSF
-
Posted by ブクログ
ネタバレあらすじを目にしてから読んだら、想像と違う始まり方で意表を突かれた。
異界と地球、それぞれに生きる登場人物の視点の切り替わりが、ファンタジーとSFを行ったり来たりしているみたいで独特な雰囲気。
プーニーが現れてから人々の営みが死と隣り合わせになり、様々なことが制限される状況は、3.11後やコロナ禍を思い起こさせる。
プーニーの生体や異界の仕組みなどについては科学的な解説があまりなく、ふんわりしている。しかし、社会がどう変わったかという描写は細やかでリアリティがあるので、世界観に説得力が生まれているように感じた。
鈴上さんに対する印象が、物語が進む中でどんどん変わっていくのは、バイアスに関す -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルと装丁が魅力的で気になっていた作品。
プーニーという地球外生命体?が突如現れる。平凡な主人公がプーニーに取り込まれ、理想郷のような夢の世界で核となり幸せに生きて行く。
地球では、プーニーにより多くの犠牲が出ており、プーニーとの適合者が地球を守ろうと奮戦。
主人公と地球人、お互いに今生きている場所を守りたい。それぞれの大切な場所、でも、どちらか一方を守るともう一方の世界は滅びてしまう。
現実か幻かではなく、自分が大切に思う生活を守り抜きたい人々の群像劇でした。
突飛な設定であるも、とてもわかりやすい文章のため、すぐにこの世界に入り込むことができた。
恒川先生の物語は、どこか恐ろしく -
Posted by ブクログ
ネタバレ生活の中の牢獄といってもいいような空間で、リアルな風景の中にホラーというか不思議な感覚を溶け込ませた、深みには欠けるがアイデアの優れた一冊だった。
手にとって見ると、「牢獄」と言う題名が少し気になったが、読んでいると、捕らえられて出られない世界のことだった。
☆ 秋の牢獄
雨の音を聞きながら、朝起きて普通の生活を送る、友人の釣りの話を聞き、帰って音楽を聴きながら豚肉とキャベツの醤油炒めを食べて。
次の日に目を覚ますと変な既視感に襲われた。また雨が降っていて、友達は昨日と同じ釣りの話をする。日付けを聞くと昨日だと思ったのが今日だった。1日がダブっているのだ。
もう一度繰り返すならもう少し違った -