あらすじ
しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになった――(「夜行(やぎょう)の冬」)。古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する五つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける鬼才による最重要短編集。 (講談社文庫)
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明らかに現実とは異なるはずの世界にも関わらず、
ふと「自分がその世界の中にいたのではないか?」と錯覚させるような、
不思議な感覚をもたらす作品だった。
「鸚鵡幻想曲」は、「自分とは何か」という根源的な問いを突きつけるように、
自分もまた「ある集合体の一部」なのではないか、
今この形をしている自分がやがて何かによって「解かれる」日が来るのではないか、
そしてまた、別の集合体として「再構成される」ことを無意識に願っているのではないかと、そんな想像を誘った。
作中の鸚鵡たちは、人間には掴めるが鳥には掴めない何かを象徴していた。
日々当然のように受け入れている「身体」や「存在」は、案外脆く、
実は異質な何かでできているのかもしれない、
自分の内側にある“自分でない何か“に気づかされるような読後感があった。
「夜行の冬」は、寓話的に解釈してみると、
あの物語を通して見えたのは、
「今、この世界を生きる」ということの重さと、
それをおろそかにした者に降りかかる「帰れない」という罰のようなものなのかな。
異界へと続く道は、決して非現実ではなく、生き方を誤ったときに開かれる、
もう一つの現実なのかもしれないと感じた。
物語が終わっても、あの世界は確かにどこかで続いている、という余韻が強く残った。
時間も空間も流動的で、決して閉じた物語とは感じなかった。
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恒川光太郎さんの最重要短編集。
シンプルにどの話も面白かった!
恒川光太郎さんはホラーという括りでジャンル分けされていることが多いが、ジャンルの幅を超えた幻想小説家であると思う。
恨んだ相手を殺す能力があると言っている”だけ”かもしれない相手との、少し不穏さを感じさせる現実味のある作品「風を放つ」
かつて家族を殺した犯人を、洗脳により正義のヒーロー”グラスゴースト”に仕上げて殺人をさせるという復讐劇「迷走のオルネラ」
最初の二作はSFとは言い切れない現実味のあるストーリーだ。
数日おきに”夜行”についていきあらゆる世界線を旅する「夜行」
擬装集合体の人間が拡散され二十匹の鸚鵡となり生きていく話「鸚鵡幻想曲」
竜が生まれてから、厳しく過酷な生物世界を生き抜いていく話「ゴロンド」
後の3作品は、どこか現実味のない幻想的な雰囲気の強いファンタジー作品だ。
一話目から五話目に進むにつれ、どんどんファンタジー色の強い作品となっていくためなのか、読んでいて心地よい酩酊感を感じられました。
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『秋の牢獄』に続き、恒川作品四作品目。タイトルに惹かれて購入。どの短篇も良かったが——特に「夜行の冬」「鸚鵡幻想曲」がお気に入り。前者はホラー版『夜ピク』とでも言いましょうか。歩く度に世界が変わり、もし自分だったらと——いろいろ考えさせられます。後者は発想がぶっ飛んでて、まさかあんなことになるとは——○○シーンは想像しただけで鳥肌モノでした…。解説を読み「…嗚呼、なるほどなぁ」と。まだそれほど数を読んではいないが、どの作品も本当に独特な世界観でこの著者にしか描きえない作品なんだと感心しました(^^) 星四つ半。
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1、風を放つ
小さな瓶の中に収められた、小さなつむじ風。それは持ち主が恨んだ人を殺せる力を持つ。その瓶をもしかして恨みを買ってしまったかもしれないマミさんが持っている話。結局それだけで何も起こらなかったのですが、ふんわり怖かったです。あれ?もう終わったの?というところもよかったです。
2、迷走のオルネラ
悲惨な経験をした少年が気の毒でした。これは科学的に証明できない要素がたしか出てきませんでした。なので実際にあってもおかしくはない話でした。人間の執念が怖かったです。
3、夜行の冬
お散歩をして帰ってきたら別の人生になっている話。以前「ミッドナイトライブラリー」で似たような展開を読みました。その人生に満足したらそのまま居着いていい。飽きたら再チャレンジ、ということですが、そうなるとそこそこ満足した人生に巡り会えても、ひょっとしてもっと素敵な人生が待っているのでは?と欲が出てきそう。
いろいろな人生を渡り歩く設定も面白かったですが、夜行の途中に脱落して闇に飲まれるシーンが怖かったです。
4、鸚鵡幻想曲
本書では、これが1番面白かったです。始まりと途中と最後でどんどん話が変わっていきます。集合体は、どうしてこんなこと筆者さんは思いつくのでしょうか?どんな想像力をしているのでしょうか?鸚鵡が元人間だったから少し喋れて、大介に報復するシーンで、老婆が祈祷したりして、人間ってなんか滑稽に思えました。
5、ゴロンド
完全なファンタジーでした。
毛無し猿、ことヒト。
ゴロンド目線からうかがえる毛無し猿はなんだか無駄な争いばかりを繰り返し、
これもまたなんだか人間って馬鹿馬鹿しいな。無駄なことばかりやっている、と感じました。
完全なファンタジーなら好きだけど、現実社会での話の中にいきなり科学的に説明のつかない要素が出てくると途端に冷めてしまう私でしたが、恒川光太郎さんのホラーは全然冷めないです。むしろ本当に面白いです。現実とそうじゃない事を融合させる展開がうまいのかなあ。「そんなことありえないでしょ」ということも普通に淡々と書いていらっしゃるので、そこなのかなあ。
もっと恒川光太郎さんの独特の世界に浸っていたいので、他の作品も読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
奇譚・SF・ファンタジーなどにカテゴライズされる5つの短編集。
SFといっても宇宙的なものはなく、強いて挙げれば登場人物が描く漫画が作中作になっていて、その舞台が花が咲き誇る月面ってところぐらいかな?
とにかく着想が珍妙で面白い。
何か変わった小説を読みたい時や、複雑なプロットが面倒な時にサクサク読めるのでおすすめしたい。
Posted by ブクログ
恒川光太郎作品、初読です。
カバーにある通り、本屋でまず夜行を少し読んでみたところ、不思議と惹かれたので購入しました。
後書きにもありましたが、全体として
現実→ファンタジーへとどんどん染まっていく感じが読んでいてとても不思議で心地よかったです。
この方の作品について特に魅力だと感じた点が二つあります。
ひとつは、情景描写力です。
細かく述べられているわけでもないのですが、なぜか情景がはっきりと、俯瞰的に脳裏に浮かびます。
読んでいてとても快適といいますか、楽しめました。
『夜行』では冬の闇のしんとしたしずかな空気感、しかしどこか不穏で寂しいような感覚が。『鸚鵡幻想曲』では、気が違ってしまったかのようなおかしな人間と対峙した時の緊張感や生温い温度を感じ、その度に驚きました。
こう、臨場感があると言うよりかはやはり俯瞰して、落ち着いて第三者視点で、しかし没入できるような、どこか安心して読むことができる快適さがありました。
もうひとつは、話の節々に「人生だな」と感じられる表現や構図が散りばめられていることです。
うまく言えないのですが、『夜行』の、はっきりとした目的を持っていないにも関わらず抱く「置いていかないでくれ」という漠然とした焦り、「もっとより良い環境がひとつ先にあるような気がしてしまう」という縮毛の娘や主人公の根拠のない期待。『ゴロンド』の、翼が生えどこにでも行けるほど知性も体躯も発達したゴロンドと何も変わっていないウーガーの比較、池の中から一生出ることもなく生を営む兄弟たちを「不幸だとは思わない、そっとしておこう」と嘲笑することもなく思うことができるゴロンド。ゴロンドは特に「人生」を感じる部分が多かった。
池の中で一生を終える彼らも、外に出てきたがそこから進化しないウーガーも、成長できたゴロンドも、環境によってその生き方が、あり方が決められているだけ。ふと池から出られることに気づかなければ。シンの鳴き声が聞こえなければ。案内してくれる仲間に出会っていなければ。さまざまな運が重なり、生物はそこで出会い手に入れた環境で生を営む。そこには優劣などないはずだが。
うまくいえませんが、ファンタジーなのに(特に後半)、ファンタジーであるが故なのか、非常に自分の人生や周囲の環境、今の世間に通ずるところを感じ、没入して読めつつもさまざまなことに思いを巡らせることができました。
私が最後に帰る場所はどんなところだろう。自分で選び、決めることができるのだろうか。何かのきっかけで狂気に呑まれ、誰かの手により導かれてしまうのだろうか。それともより良い場所を探して、現状では満足できず歩き続けるのだろうか。
最後には、めでたしめでたしとどこかの村の壁画で見つけられたいものです。
毛無し猿より。
幻想の世界へ。
特に印象深かったのは、「迷走のオルネラ」と「ゴロンド」でした。
「迷走のオルネラ」で、つきあっていた頃は煩わしかったコジマアヤカの「君はどう思う?」が、後に手紙で見た時、もの凄く懐かしく嬉しく感じたのに自分でも驚きました。
「ゴロンド」は、何世代にもわたり最後に帰る場所へと飛び続ける竜という、とてつもないロマンが書かれています。竜になって、空を(もしかすると宇宙をも?)飛んでみたくなってしまいました。
上記の2話は、ふとした拍子に思い出してしまう程気に入ってしまいました。でも、どのお話も素晴らしいです。一度読み始めると止められない本でした(^^)
Posted by ブクログ
恒川さんのお話おもろいなー!ファンタジーと現実の入り交じったお話を得意とされているんですかね?あんまりないタイプのお話が多くて、読んでいて先が分からず楽しいです。文章も好きです。
今回のお話は話の繋がっていない短編集でしたが、どれも面白かったです。むしろ表題になっている竜が最後に帰る場所がいちばん面白くなかったまである(言い方悪くてすみません)。そのため星を減らしましたが、最後のやつ以外どれも好きな作品でした!母親を殺した人間を洗脳して善良な殺人犯に仕立て上げるやつとかめちゃ好きですね。世にも奇妙な物語じゃないですか。
恒川さんの作品は2つ目なんですが、全部読んでみたいなぁとおもうくらいに好感度の高い作者さんが見つかって嬉しいです。今度は短編集じゃない、長編の話を読んでみたいなぁ、と。やはり夜市を読まねばですかね…。
Posted by ブクログ
久しぶりの恒川本です。
「風を放つ」「迷走のオルネラ」「夜行の冬」
「鸚鵡幻想曲」「ゴロンド」の5作品を楽しめます。
特に「夜行の冬」は夜市から入った方、特に風の古道が好きだった人にはドンピシャリと刺さるのではないでしょうか。
まぎれもなくホラー要素を孕んでいながらも、不思議で体験してみたくなる魅力にあふれた世界観。
世界を渡り歩く事で、人生のリセマラが出来るような状況ですが、何をもって終わるとするのかいざ考えると難しいです。
恒川さんの真骨頂は、自分が登場人物の立場だったら…と想像させる力でしょうか。
「鸚鵡幻想曲」「ゴロンド」も従来の恒川作品に魅了された方、ファンタジックで不思議な童話の世界、世にも奇妙な世界がお好みの方は絶対に楽しめる作品です。
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本作はホラーよりも幻想ファンタジー寄りと言える。深く考えなくてもスイスイ読めるのが気持ちよい。オチとか社会風刺もないのがよい。恒川氏の初期の作品群だが、既にアイデアはたくさん持っていたのだろうか。
Posted by ブクログ
解説にもあったが、人間社会からどんどん離れていくように物語が並べられている。
故に、人間社会のドロドロや、人間関係の胸糞さから、順に解放されていくので、読後感は結構良い。(恒川作品は虐待やイジメやらの描写がわりとキツイ…)
人間社会は弱い者でもひとまず生きられる。しかし、そのかわりに弱い者には過酷で残酷な生を強いられる。
一方、獣?の世界は弱肉強食、過酷な自然と戦わねばならないが、人間のような弱者に向けられるドロドロした悪意や敵意はない。
どちらが幸せというわけではなく、そういうものだろうけれど、獣の世界はやはり強い。
「鸚鵡幻想曲」ではそういう人でない(なくなった)モノのしたたかさ、本当に弱者に向けられる目があって、一番読後感が良かった。
(世界観的には「夜行の冬」が良いのだが、あれは人間世界の酷薄さが一番滲み出ているので…)
Posted by ブクログ
最後の話で心がじんわり温かくなった。
いつか、遥か昔(わたしたちが想像も出来ないくらい昔)に竜は居たかもしれない。
今年は辰年だったことを読み終わってふと思い出して、今年読むべくして読んだのかなあとありもしないことを思った。
竜も、他の絶滅した生き物たちも、もしかすると本当にそういった風に言葉を知っていたり、あるいは人間に近しい形で生活をしていたのかもしれないと思うととてもあたたかいきもちになる。
人生の中でまた読み直したい本のひとつ
Posted by ブクログ
よく分からない世界へ連れていってくれる作家という印象の恒川さん。幻想的でありながらも現実的でもある読み口は独特でやはり他では例を見ない人だと実感。面白かったのは「夜行の冬」と「鸚鵡幻想曲」前者は百鬼夜行のテイストにリセットものをくっつけた感じでこの人の得意とする恐ろし系物語。怖さと幻想さのバランスが絶妙で良かった。後者は発想が素晴らしい奇妙な作品。星新一さんらしさはあるがそこからもうひとひねり加えている所に凄さがある。これがめちゃくちゃに面白い。奇妙なので面白いとしかいえないのがもったいないくらい面白い。
Posted by ブクログ
夜市に続く2冊目の短編集。5つの短編が収録されていて、1つ1つは本当にすぐ読み終わる短さ。
読んでいて、不思議な感じのする世界観に引き込まれてどんどん先を読みたくなるものの、最後は「あれ?結局どう言う話だったの?」という感じで終わるものが多かった印象。
ただ、読んだ後の、このちょっと取り残された感はある意味癖になりそうな、この作者の短編作品における特徴なのかなと思った。
ただ、最後のゴロンドのドキュメンタリーのような話は本当に何だったのだろう…?笑 とても不思議だった。
Posted by ブクログ
恒川光太郎氏の書く本を読めば読むほどにはまっていく。
5編からなる短編集だが、後半の作品にいくにつれてどんどんと引き込まれていった。
夜行の冬、鸚鵡幻想曲、ゴロンドの3編は特に面白かった。
Posted by ブクログ
久々に読んだ恒川さんの本。
最近途中挫折することが多いので、絶対面白くて読み切れるもの、と思い選んだ。
間違いなし!
やっぱり面白い。1話目は普通目だけど、2話目からは恒川さんワールド。
先が読めないし、人の心の描き方が絶妙!
少し怖くてどこか妖しく美しい感じ。
ダークなファンタジーにハマってしまう。
オルネラは心の動きや展開が面白くて、鸚鵡の話はよくこんな事思いつくなぁーという面白さ。
Posted by ブクログ
とても面白かった。
なんだか怖いのに少し懐かしくて優しい感じ。
子供の頃感じていたような思いなのかな。
親切な人はその都度いてくれて、だから悲しくても救いはある。
人と怪異が触れ合うのは少しの時間。
少し寂しいけれど、また会えるんじゃないかって思う。
Posted by ブクログ
よくわからないけど、そのわからない感じが心地いい恒川作品。
どの短編も発想が面白くて非現実的な話とは思えないほどしっかりしてるから不完全燃焼なく納得できる。
夜行の世界観が私は好きだった。爽やかで静謐な空気がある。
Posted by ブクログ
5つの趣の違う短編集。夜市、無貌の神に続いて読んだので最初社会派な作風にびっくりしました。現実感のある話のほんの少しの違和感から始まり、最後には竜となり帰る。5つの短編を通してどんどん幻想世界へ入っていく流れが面白いです。中でも『夜行の冬』『鸚鵡幻想曲』が傑作。色々な恒川作品が読めて楽しかったです。
Posted by ブクログ
この人独特の世界観が好きな人にはたまらない。 ホラー感が微塵も感じず、ファンタジーと言うか幻想を上手く文章にした感じ。 この作家はいつも残酷なシチュエーションを誇大せず淡々と何時でも誰にでも起こりうと思わせる感じで描く所ががとても共感が持てる。 京極夏彦や村上春樹にも通じる心地いいマンネリ感。
Posted by ブクログ
現実を生きながら、ふと幻想に足を踏み入れるような短編集。
すぐそこに広がっているかもしれない知らない世界に想いを馳せ、胸をときめかせたり恐怖に怯えたりする。本の中でそういう体験ができるのは幸せなことだ。不思議な満足感の中読み終えた。
特に「夜行の冬」が好みだった。歩かなくてはならないから歩いているなんて、まるで人生のようだ。
Posted by ブクログ
短編ですが、時間も空間も広がりがあって、お話が終わった後もあの描かれた世界は続いていくんだろうなと感じさせられました。
特に中盤以降の3篇が好き。
「夜行の冬」は錫杖の音に導かれる旅、「鸚鵡幻想曲」は鸚鵡の鮮やかさにやられるけど結構シビア。
アサノは命取られなくても、この先まともに生活は出来なそう。怯えて暮らすんだろうな、それは長く続くから死よりも苦しそうです。
そして「ゴロンド」。恒川さんの描く人でないもののお話は壮大で好きです。ファンタジーかつ、自然の厳しさ美しさが感じられます。人間のことだろう〈毛無し猿〉の醜さ滑稽さも。
角川ホラー文庫の恒川光太郎作品ですが「上品な文章だね」と言われてた方がいて、確かに…と思いました。
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遠い、遠い昔、私たちの祖先はそこからやってきた。そして私たちは今、そこに戻る最中。そこはあまりにも遠く、一匹の寿命では到底辿り着けない。だから何世代もかけて、私たちはその土地を目指している。私たちは、私たちの血が求めるままに、風の中にそこへの道を見つけ出す。百の島を超えて、千の島を超えて、その土地を目指す。一匹では無理でも、遠い子孫がいつかそこに辿り着くために。
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相変わらず唯一無二の世界に連れて行ってくれる話ばかりです。ただ、この本の話は自分にはどれもそこまでささらなかったかも…『夜行の冬』が私は好きでした。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて読んだ。
最初の話、何…?としか思えなくて読むのやめようかと思ったけど「鸚鵡幻想曲」「ゴロンド」が面白かった。
鸚鵡幻想曲、アサノは使命感で「解放」してるんだろうけど、意思ある相手に対して無機物としか思ってなさそうで怖い。独りよがりのアサノが気付いてないだけで宏のようなパターンは今までもあったんじゃないだろうか。
あそこでアサノを始末しておけば良かったのに…とか思ってしまった。最後の出会い方が鸚鵡の誘導によるものとはいえ、ひまわり畑の背景もあってなんだか神秘的だった。
「ゴロンド」って本のタイトルじゃないんだ…最初の爬虫類の誕生みたいな描写でヤモリとかかと思ってた。そういえば伝説上の竜の姿ってどうやって伝わってきたんだろう。こういう風に産まれてたのかな、本当にいたかもしれない、と思えてくるような詳しい描写が好き。
竜が最後に帰る場所を明確にどんなところなのか描写しないで、そこへ仲間と共に向かうという最後が、旅はまだ続いていくんだという期待感に満ちていて良かった。
Posted by ブクログ
前作南の子供が、個人的に低評価になってしまったので、期待して閲覧。
夜行の冬、鸚鵡幻想曲はそれぞれ一冊で読みたいくらい面白かった。
特に夜行は、行く先々でのエピソードを連作短編集で作ってほしい。
それくらい設定が良かった。
Posted by ブクログ
ファンタジーだけど自分が知らないだけで実際にはあることなのかもしれない。そんな短編集。とてもきれいな文章で読みやすく、きつい内容のものもあるのに穏やかで水彩画のようだと思いました。
風を放つ
比較的日常に近いところでのファンタジー。マミさんがなんだか本当に存在しているのかわからないふんわりした妖精のような感じなのと読後感もなんだかふんわり。
迷走のオルネラ
DVが物語の中心なのでやや手に汗握る展開からスコーンと静かな蒼い月に意識を持っていかれる。最後は春の暖かな空気にまた持っていかれるがラストは考えさせられる。
夜行の冬
絵画的でもありホラー的でもあり。冬の美しさとグロテスクな闇とパラレルワールドと。短編なのが惜しい、もっと読みたいと思いました。
鸚鵡幻想曲
この本は読み進めていくにつれて、より現実離れしてくる仕掛けなのでしょうか。本当ならえぐいわーという感想をもってもおかしくないのにすんなり受け入れている自分がいるのは、私が鳥好きだからかこの作品の力なのか。
ゴロンド
ダーウィンがきたの小説版を読んでいるよう。すっかりゴロンドの生活にひきこまれました。そしてこの本のタイトルに結びつくのですね。動物を飼っていると彼らの人生や運命に対する悟りに感服することがあるのですがそれらが細やかに描かれていて訳もなく感動しました。ラストは、そっかそうだよね!とストンと腑に落ちた気持ち。
Posted by ブクログ
まだ2冊目なのでつかみ切れていないのですが、皆が口を揃えていう「異世界に連れていかれる」という言葉に納得してしまう作品でした。
気に入ったしちょっと怖かったのが「夜行の冬」異形の者について行ったばかりにパラレルワールドを旅し続ける事になった者たち。もっと良い世界を望んで今ある幸せで満足出来ない辺りは分かるかも。
「ゴロンド」は竜と言われる爬虫類が、どじょうのような幼体から、逞しい竜になり旅立っていく物語で。壮大で可愛らしく、夢中で読みました。この話が題名の元になっているんですね。