あらすじ
現世から隠れて存在する異世界・穏(おん)で暮らすみなしごの少年・賢也。穏には、春夏秋冬のほかにもうひとつ、雷季と呼ばれる季節があった――。著者入魂の傑作長編ホラー・ファンタジー!
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何も残らないのに何かが残る感覚。
恒川光太郎の作る他では感じられないざわざわしたワードが大好き。
風わいわい、空棲生物、闇番、どれもがここでしか知らない気持ち悪さがある。
トバムネキの心臓は今もどこかで廻っているのだろうか。最後にトバを笑った風わいわいの呪いが怖かった。
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現世から隔離された地「穏」。
そこでは春夏秋冬の他に、雷季と呼ばれる神の季節があった。
恒川さん作品を読むのはこれで6作目ですが、1、2を争うほど好き。
どこか懐かしく切なく残酷な物語に一瞬で引き込まれる。
恒川さんの長編作品好きだなぁ。
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現実とは少しズレた場所に存在する異国、穏。そこで冬季と春季の間にごく短い間にだけ、雷季と呼ばれる雷が鳴り狂う季節がある。ある年の雷季に姉が失踪してしまった少年は、不思議な存在「風わいわい」と出会い、自身のルーツに纏わる騒動に巻き込まれる…。
↑の少年や、その友人、現実世界の少女など何人かの視点に切り替わりつつ、話が進んでいく。穏の世界観は松明で明かりを取る昔の日本みたいな感じ。現実世界の少女、茜と少年の関係性が分かったときはかなり衝撃だった。
いわゆるラスボス的なキャラクターがいるが、きちんと出てくるのは割と後半からだったので、もう少しはじめから出てきてたほうが、最後の戦いに感情が入ったかなぁ、とは思った。
ラストはちょっと切ない…。後ろ髪を引かれるあっさりとした終わり方もあって、なんか夏の終りって感じ(実際は雷季だけど)。元の場所に戻ったといえばそうだけどね…。
全体を通して、ちょっと不思議な異世界の話であり、昔ばなしのようにテンポよく進んでいく感は、僕の好きな同著者の風の古道を思い起こさせられた。
あと、俺っ子萌えってこういうことかぁ〜、って思った(小並)。
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恒川氏独特の異世界ファンタジー。主人公はいつものようにヒーローではないごく普通の人。読者からは感情移入しやすくなっている。最後まで明らかにならないところも多いが楽しめた。この世界観を子供向けに変えるとジブリのようになってしまうのかと考えてしまった。
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恒川光太郎の世界観が大好きなのですが、今作もしっかり一気読みしてしまいました。ジャンルとしてはホラーとのことですがファンタジー要素が強く、読んでいて少し切なくなる読み味。
ラストが少し駆け足で、伏線というか人物の掘り下げがなかったりもう少し余韻が欲しかったですが、その物足りなさも恒川ワールドにマッチしているような気になるのが不思議です。
「風わいわい」がかわいい。
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『夜市』『秋の牢獄』に続いて読んだ、恒川光太郎さんの作品です。
正直、その2作にはホラー要素はあまり感じられなかったのですが、今回初めてホラー感を味わいました。
虐待や人殺しなどの描写が怖かった点と、ラストでムネキの心臓が閉じ込められて、今もどこかで封印された缶がごとごと鳴っている、という点です。
この先もし、うごめく缶を見つけたとしても、わたしは絶対開ける勇気はないです((((;゚Д゚)))))))
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前作『夜市』の流れを汲むホラーとファンタジーの融合に加えて、冒険小説の要素も取り入れられ、そこに新たな可能性が見受けられます。
風霊鳥、闇番、鬼衆などのネーミングセンスも秀逸で、冬と春の間にある短い季節「雷季」の設定も含めて、想像力を掻き立てられる独自の世界観には心惹かれるものがありました。
物語が終わっても続きが気になる作品は数多くありますが、この作品もその一つで、いつかこの登場人物たちにまた会いたい、そんな気持ちになってしまいます。
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後半からぐんぐん面白くなって引き込まれていくストーリーが良かった。ファンタジーと現実が混じり合い、この先どうなっていくのだろうと思った断片が繋がっていくのが面白かった。
隠のなかは平和だというが、異端が強制的に排除されていくような場所が平和なわけがない。隠は、私の知っている世界とはまた別の閉鎖的な残酷さに満ちていて、そのなかで次第に逞しくなっていく主人公・賢也が心強かった。
一度はトバムネキに奪われた人生だが、人々の助けもあり最終的には自分の力で取り戻したことに救いを感じた。同じく、家を出る選択肢しかなかった茜に、立ち上がる強い気持ちがあることにも。
いつかは大人にならなきゃいけない、自ら選んで歩んで行かなくてはならない、という成長を感じさせる話でもあった。その先には誰にも真似できない自分の人生が待っていてきっと実感が得られるのだと思う。
ホラーファンタジーにやや残虐さ
同じ作者の「夜市」や「夜行の冬」で際立っているリリカルで繊細な雰囲気がこの作品全体にも漂っている。ただ他の作品と比べるとむき出しの暴力や殺人が描かれていて、私として今ひとつしっくりこない。やはりこの作者は、長編よりは中.短編で余韻を持って話をまとめたほうが落ち着きが良いのではないかと感じた。
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前回は「夜市」を読み、もうひとつ読んでみようかと思いこれを手に取った。そして面白かった。
何がどうと説明は出来ないけど、出だしのプロローグがとてもいい。すぐに引き込まれていった。
もう少ししたら、他の作品も読まずにいられない。
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序盤は世界観に引き込まれながらも、これどう展開していくんだろうと言う感じが結構続いた。
終盤のハラハラ感ある急展開、並行して進んでいた別々の視点からの話が繋がる感じが面白かった。
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ホラーが苦手なので、「角川ホラー文庫」に怯えていたが、所謂ホラーな展開は全くなく、
むしろグングン引き込まれてすぐに読破してしまった。
先日、同じ著者の「スタープレイヤー」を読んだが、恒川光太郎氏は異世界を書くのが本当に上手なんだなと感じた。
特に、本作の舞台である穏は、本当に実在するのではと思ってしまうほど。非常に面白かった。
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再読でも面白かったです。
長編では恒川さんのノスタルジックでダークで容赦ない世界にじっくり浸れます。
『穏』も、この世の理とはかなり違う決まりで動いている世界。暮らしているのは人だろうけど、限りなく彼岸に近い世界だと思います。
賢也パートと茜パートの時系列が違う事に気付くとゾッとしました。賢也の、雷の季節に消えた姉が茜だったとは…。
その中でも外れまくっているのが絶対悪・トバムネキだけれど、彼も歪んだ理由はあって。それでも、無間地獄に堕ちるのは壮絶。
早田さんは何者なんだろ。穏の血を引く者ではあるっぽいけど。
賢也が最終的に穏に戻れないのは、やっぱり穏での階級で穂高の家より下だからなのかな。苦い。
あとがき、恒川さんの印象が変わりました。これからも読んでいきたいです。
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現世とは少し違う空間に隔離されている『穏』に住む少年賢也
ある事で穏に居られなくなった賢也は自分に取り憑いた「風わいわい」の力を借りながら現世をめざす
穏には穏のルールがあり世界観はとても面白かった
ホラーというよりダークめのファンタジーかな
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あの世の瀬戸際にあり、世界の地図には載ってない人里『穏』が舞台の物語。相変わらずの切なさとどこか懐かしい雰囲気が漂う独特の世界観。こんな世界が、もしかしたらあるかもしれないと思ってしまう。この話のテーマは「因果」だと思う。
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読みやすかった。
世界から切り離された集落【穏】
不思議な力を宿すかぜわいわい。
雷の季節に人が消える。
持ち味の恒川ワールド全開だった。
この不気味な雰囲気が夏に欲しくなる。
不死のサイコパス怪人トバムネキ…
物語のリアリティと非リアリティの境界を曖昧にされる感覚が楽しい。
どこか村上春樹をも思わせる。
面白かった。
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現世から隔離された隠れ里「穏」に暮らす少年が、とある秘密を知ったことで穏を追われ、少年に取り憑く「風わいわい」と共に旅に出る。
やはり恒川さんが描く異界は憧れを抱くほどに美しく魅力的!
とにかく一つ一つの設定やディティールの発想力に惚れ惚れする。
この不思議でたおやかな世界観にいつまでも浸っていたくて読み終わりたくないとすら思った。
その幻想世界の中に不意打ちのように現れる醜悪な人間の描写…この毒気もまたいいアクセントになっている。
おや?と戸惑うくらい空気感が変わる章を重ね、やがて「そういうことだったのか」と一つに繋がる気持ちよさ。
先が全く読めない展開に本当にドキドキしながら読んだ。
それだけに、最後の展開の意外さには呆気にとられた。
クライマックスのカタルシスに欠ける気がしたけど、このいきなり放り出されたような喪失感も含めて恒川ワールドの中毒性を形作っているのかも…しれない??
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筆者の得意な別世界と現実の話。
ホラー感は薄いが不思議なファンタジーで、読みやすく面白い。
最近立て続けに筆者の小説を読んだがはずれはなかった。
賢也はこれからどんな日常を送るのだろうか…
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冬と春の間に神の季節である雷季が存在し、現実世界とはずれた場所にある地図にも載っていない「穏」という場所。情緒豊かな田舎でありながら、秘匿された土地であるが故の闇を孕んでいて、世界観に浸れた。
雷の季節に姉を失い「風わいわい」に憑かれた賢也が闇番と打ち解け、夜な夜な「墓町」に通うところは、ちょっぴり悪いことをしているようで、同時に他人に誇れるような秘密で、冒険心をくすぐられた。
正当防衛としてナギヒサを刺殺してしまった賢也が「穏」を追われて物語は茜という少女視点に移る。二人の関係性は、分かりやすく仄めかされていたが「雷の季節に攫われた姉」という部分が謎として残り続けたので楽しめた。
現実世界に渡る際には、「穏」と「現実」との調和がとれていて、あたかも「穏」が当たり前に存在しているような感覚になった。
「風わいわい」がなんとも癖になる響きで、一度は憑かれてみたくなる。ことによると、もう飛び去ってしまった後かもしれない。
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「夜市」から「秋の牢獄」と読み
「雷の季節の終わりに」
現世から隠された異世界“穏(おん)”で暮らす
少年賢也
その世界では春夏秋冬の他に雷季と呼ばれる季節がある
恒川さんは数ページあるいは数行で
現世でないどこかへあっさりと引き込んでしまう
その世界に現世との儚い繋がりを持たせるところも今まで読んだ作品と共通して
ファンタジーでありながら幻想を見させる
角川ホラー文庫だけど、ホラー感は低めかなと
少年は穏から 現世へと逃亡する
そこで 関わる 闇番とか穏からの使者等の
現世との関わりの部分が 浅いのかな?
読みながら納得する間合いが必要だった
穏の世界観だけでも良かったかも
Posted by ブクログ
名作『夜市』の直後に書かれた作品の様です。
この小説の舞台になる「穏」という異世界は、どこかノスタルジックで儚く、少々不気味で『夜市』の世界を思い起こさせます。主人公の少年もボーイッシュな少女も魅力的ですし、穏の中にある墓町の闇番の活躍など秀逸です。
ある事件をきっかけに「穏」を逃げ出し現実界・東京に戻った主人公は、そこで魔性との戦いに巻き込まれます。こちらは残虐、おどろおどろしい世界です。ただ終盤は無用なごちゃごちゃ感があり、まとまりに欠けたり、妙に淡白な所もあって少々残念でした。
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昔話のような、この独特の世界観。次元が違うどこかに存在する穏。閉鎖的で、ちょっと息苦しさを感じる。トバムネキの母親、そんな理由で鬼衆にお願いされちゃうとか、どんだけ閉鎖的なの。酷いよ。
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ここではない、どこか。
にんげんではない、なにか。
世の中に潜む穩の仕事人。
今日狙われたりして。
明日意外に強い自分が生まれたりして。
すごい想像力。
別の本も読んでみよう。
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3.5
普通の人間は行くことができない、地図に載っていない町、穏(おん)
穏やかな町だから、穏。
この閉鎖された町で暮らすのは果たして幸せなのか。
話を読み進めていくうちに、この町に行きたいか行きたくないかわからなくなってきます。
ちなみに私は行かないです笑
とある人が死んだところからガラッと展開が変わって面白かった。
時系列とか話してる人がコロコロ変わるから、理解力がある程度必要。
Posted by ブクログ
相変わらず独特の世界観で細かな段落で構成されているので時間を掛けても読み易かった。 残酷なシーンも淡々と描かれていて、妙に引っ張らないというか大げさに表現しない所がとても好感が持てる。 只、他作品と比べて惹き込まれるような感覚はなかった。 この作家の本を続けて読みすぎたからか。 でもまだ読んでない本があるので他作品も読み進めようと思う。
Posted by ブクログ
地図に載らず、外の世界から少しずれた空間にある土地「隠(おん)」。
ここでは冬と春の間に、雷季と呼ばれる災いの季節が存在した。雷季には人を攫う鬼が出ると言う…しかしその裏では、雷鳴に紛れ、鬼衆に扮した大人たちが、隠の厄介者を殺処分していた。
そんな謎の土地に、下界(地図に載っている世界)から来た賢也と茜(姉の様な存在)だったが、茜はその数年後の雷季に姿を消し、茜に代わる様に「風わいわい」と呼ばれる鳥の精霊が賢也に取り憑いた。
賢也はその存在を隠しながら、同級生の穂高、遼雲、穂高の兄ナギヒサ、ナギヒサの友人たちと楽しい日々を過ごしていたが、1人墓町という所で死者と出会い、ナギヒサが殺人鬼である事を知る。
だがナギヒサに感付かれ、賢也は殺されそうになるが、風わいわいの助けもあり何とかナギヒサを倒す事ができた。しかし、狡猾な青年であるナギヒサによって賢也が罪人とされ、追われる立場に。そして賢也は隠を出る事を決意する。
獅子野と呼ばれる追手から逃げながら下界を目指していた賢也だったが、追手と共に兄の敵討ちに来ていた穂高と再会し、獅子野が既に幻獣に殺された事を知る。複雑な気持ちのまま2人は行動を共にし、ついに下界に辿り着く。穂高はナギヒサの奇行を知りつつ、見て見ぬ振りをする自分を責めた。そして2人は和解した。
物語は、茜と賢也が隠に移り住むまでの経緯を辿りながら進み、その原因となった不死の敵「トバムネキ」が登場する。トバムネキは隠に生まれ、かつて伝説の鬼衆として恐れられた男。残忍かつ狡猾な男で、幼い頃に風わいわいを騙し、呪術による鎖で風わいわいと融合し、不死の能力を得た。過去にそのトバムネキを茜たちは倒し(鎖で繋がれていた風わいわいも解放)、数年後の復活に向けて封印の準備を進めていた。
そして、それぞれの物語は下界にて収束し、風わいわいを失った状態で復活し弱体化したトバムネキ、復讐に燃える風わいわいと、その力を得た賢也、トバムネキを監視し封印の準備してきた茜(当時失踪した茜はトバムネキ監視の命を受けていた)、最後の戦いの末、トバムネキの心臓の封印に成功。心臓を失った不死の体は、復活の度に息絶える。永劫に終わらない苦痛のリングを男は廻り続ける。
そして平穏を取り戻し、
やがては新しい季節が訪れる。
目次には無いが、話の流れは以下の通り。
プロローグ 薄闇の彼方
第一章 隠 (賢也)←物語の視点
第二章 死者の門 (賢也)
第三章 幽霊 (賢也)
第四章 暴力 (賢也)
第五章 座敷地獄 (ナギヒサ)
第六章 風の鳥 (茜)
第七章 草原 (賢也)
第八章 獣 (賢也)
第九章 都市の外 (茜)
第十章 怪人 (茜)
第十一章 世界渡り (賢也)
第十二章 隠へ (茜)
第十三章 待ち合わせ (賢也・茜)
第十四章 幽人の歳月 (トバムネキ)
エピローグ 雷の季節の終わりに
恒川光太郎さんらしい世界観で、下界と隠がまるで違うレイヤーのような異世界の表現方法や、異世界同士で貿易する場面、死者が彷徨って墓町に出現し会話するところなど、夜市に通じるものを感じた。
また、主人公たちだけでなく、敵の視点でも描かれている点は珍しかったし、それにより登場人物それぞれの気持ちを想像して読み進めることができた。
また、風わいわいというネーミングセンスや、茜が義母に対する侮蔑を綴ったノートの内容など、所々に遊び心が見られ、全体的に面白かったと思う。
ただ、最後の決着が少しあっさりしていた印象。弱体化していたとはいえ、トバムネキが最強の設定だっただけに物足りなかった。しかも、アルミ缶の中に封印って、まさかの魔封波。悪くない。