【感想・ネタバレ】雷の季節の終わりにのレビュー

あらすじ

現世から隠れて存在する異世界・穏(おん)で暮らすみなしごの少年・賢也。穏には、春夏秋冬のほかにもうひとつ、雷季と呼ばれる季節があった――。著者入魂の傑作長編ホラー・ファンタジー!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

何も残らないのに何かが残る感覚。
恒川光太郎の作る他では感じられないざわざわしたワードが大好き。
風わいわい、空棲生物、闇番、どれもがここでしか知らない気持ち悪さがある。

トバムネキの心臓は今もどこかで廻っているのだろうか。最後にトバを笑った風わいわいの呪いが怖かった。

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2025年12月04日

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ネタバレ

『かつて私を巻き込んだ大きな波は、ついに私を岸辺に打ち上げ、私の少年時代を攫うと、果てしない大洋へと引いていった。』

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2023年01月24日

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ネタバレ

『夜市』『秋の牢獄』に続いて読んだ、恒川光太郎さんの作品です。
正直、その2作にはホラー要素はあまり感じられなかったのですが、今回初めてホラー感を味わいました。
虐待や人殺しなどの描写が怖かった点と、ラストでムネキの心臓が閉じ込められて、今もどこかで封印された缶がごとごと鳴っている、という点です。

この先もし、うごめく缶を見つけたとしても、わたしは絶対開ける勇気はないです((((;゚Д゚)))))))

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2024年10月07日

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ネタバレ

後半からぐんぐん面白くなって引き込まれていくストーリーが良かった。ファンタジーと現実が混じり合い、この先どうなっていくのだろうと思った断片が繋がっていくのが面白かった。
隠のなかは平和だというが、異端が強制的に排除されていくような場所が平和なわけがない。隠は、私の知っている世界とはまた別の閉鎖的な残酷さに満ちていて、そのなかで次第に逞しくなっていく主人公・賢也が心強かった。
一度はトバムネキに奪われた人生だが、人々の助けもあり最終的には自分の力で取り戻したことに救いを感じた。同じく、家を出る選択肢しかなかった茜に、立ち上がる強い気持ちがあることにも。
いつかは大人にならなきゃいけない、自ら選んで歩んで行かなくてはならない、という成長を感じさせる話でもあった。その先には誰にも真似できない自分の人生が待っていてきっと実感が得られるのだと思う。

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2023年09月18日

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ネタバレ

再読でも面白かったです。
長編では恒川さんのノスタルジックでダークで容赦ない世界にじっくり浸れます。
『穏』も、この世の理とはかなり違う決まりで動いている世界。暮らしているのは人だろうけど、限りなく彼岸に近い世界だと思います。
賢也パートと茜パートの時系列が違う事に気付くとゾッとしました。賢也の、雷の季節に消えた姉が茜だったとは…。
その中でも外れまくっているのが絶対悪・トバムネキだけれど、彼も歪んだ理由はあって。それでも、無間地獄に堕ちるのは壮絶。
早田さんは何者なんだろ。穏の血を引く者ではあるっぽいけど。
賢也が最終的に穏に戻れないのは、やっぱり穏での階級で穂高の家より下だからなのかな。苦い。
あとがき、恒川さんの印象が変わりました。これからも読んでいきたいです。

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2021年10月04日

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ネタバレ

 冬と春の間に神の季節である雷季が存在し、現実世界とはずれた場所にある地図にも載っていない「穏」という場所。情緒豊かな田舎でありながら、秘匿された土地であるが故の闇を孕んでいて、世界観に浸れた。
 雷の季節に姉を失い「風わいわい」に憑かれた賢也が闇番と打ち解け、夜な夜な「墓町」に通うところは、ちょっぴり悪いことをしているようで、同時に他人に誇れるような秘密で、冒険心をくすぐられた。
 正当防衛としてナギヒサを刺殺してしまった賢也が「穏」を追われて物語は茜という少女視点に移る。二人の関係性は、分かりやすく仄めかされていたが「雷の季節に攫われた姉」という部分が謎として残り続けたので楽しめた。
 現実世界に渡る際には、「穏」と「現実」との調和がとれていて、あたかも「穏」が当たり前に存在しているような感覚になった。
 「風わいわい」がなんとも癖になる響きで、一度は憑かれてみたくなる。ことによると、もう飛び去ってしまった後かもしれない。

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2019年04月01日

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ネタバレ

昔話のような、この独特の世界観。次元が違うどこかに存在する穏。閉鎖的で、ちょっと息苦しさを感じる。トバムネキの母親、そんな理由で鬼衆にお願いされちゃうとか、どんだけ閉鎖的なの。酷いよ。

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2022年04月07日

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ネタバレ

ここではない、どこか。

にんげんではない、なにか。

世の中に潜む穩の仕事人。
今日狙われたりして。
明日意外に強い自分が生まれたりして。

すごい想像力。
別の本も読んでみよう。

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2021年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

地図に載らず、外の世界から少しずれた空間にある土地「隠(おん)」。

ここでは冬と春の間に、雷季と呼ばれる災いの季節が存在した。雷季には人を攫う鬼が出ると言う…しかしその裏では、雷鳴に紛れ、鬼衆に扮した大人たちが、隠の厄介者を殺処分していた。

そんな謎の土地に、下界(地図に載っている世界)から来た賢也と茜(姉の様な存在)だったが、茜はその数年後の雷季に姿を消し、茜に代わる様に「風わいわい」と呼ばれる鳥の精霊が賢也に取り憑いた。

賢也はその存在を隠しながら、同級生の穂高、遼雲、穂高の兄ナギヒサ、ナギヒサの友人たちと楽しい日々を過ごしていたが、1人墓町という所で死者と出会い、ナギヒサが殺人鬼である事を知る。

だがナギヒサに感付かれ、賢也は殺されそうになるが、風わいわいの助けもあり何とかナギヒサを倒す事ができた。しかし、狡猾な青年であるナギヒサによって賢也が罪人とされ、追われる立場に。そして賢也は隠を出る事を決意する。

獅子野と呼ばれる追手から逃げながら下界を目指していた賢也だったが、追手と共に兄の敵討ちに来ていた穂高と再会し、獅子野が既に幻獣に殺された事を知る。複雑な気持ちのまま2人は行動を共にし、ついに下界に辿り着く。穂高はナギヒサの奇行を知りつつ、見て見ぬ振りをする自分を責めた。そして2人は和解した。

物語は、茜と賢也が隠に移り住むまでの経緯を辿りながら進み、その原因となった不死の敵「トバムネキ」が登場する。トバムネキは隠に生まれ、かつて伝説の鬼衆として恐れられた男。残忍かつ狡猾な男で、幼い頃に風わいわいを騙し、呪術による鎖で風わいわいと融合し、不死の能力を得た。過去にそのトバムネキを茜たちは倒し(鎖で繋がれていた風わいわいも解放)、数年後の復活に向けて封印の準備を進めていた。

そして、それぞれの物語は下界にて収束し、風わいわいを失った状態で復活し弱体化したトバムネキ、復讐に燃える風わいわいと、その力を得た賢也、トバムネキを監視し封印の準備してきた茜(当時失踪した茜はトバムネキ監視の命を受けていた)、最後の戦いの末、トバムネキの心臓の封印に成功。心臓を失った不死の体は、復活の度に息絶える。永劫に終わらない苦痛のリングを男は廻り続ける。

そして平穏を取り戻し、
やがては新しい季節が訪れる。



目次には無いが、話の流れは以下の通り。
プロローグ 薄闇の彼方
第一章  隠     (賢也)←物語の視点
第二章  死者の門  (賢也)
第三章  幽霊    (賢也)
第四章  暴力    (賢也)
第五章  座敷地獄  (ナギヒサ)
第六章  風の鳥   (茜)
第七章  草原    (賢也)
第八章  獣     (賢也)
第九章  都市の外  (茜)
第十章  怪人    (茜)
第十一章 世界渡り  (賢也)
第十二章 隠へ    (茜)
第十三章 待ち合わせ (賢也・茜)
第十四章 幽人の歳月 (トバムネキ)
エピローグ 雷の季節の終わりに



恒川光太郎さんらしい世界観で、下界と隠がまるで違うレイヤーのような異世界の表現方法や、異世界同士で貿易する場面、死者が彷徨って墓町に出現し会話するところなど、夜市に通じるものを感じた。
また、主人公たちだけでなく、敵の視点でも描かれている点は珍しかったし、それにより登場人物それぞれの気持ちを想像して読み進めることができた。
また、風わいわいというネーミングセンスや、茜が義母に対する侮蔑を綴ったノートの内容など、所々に遊び心が見られ、全体的に面白かったと思う。
ただ、最後の決着が少しあっさりしていた印象。弱体化していたとはいえ、トバムネキが最強の設定だっただけに物足りなかった。しかも、アルミ缶の中に封印って、まさかの魔封波。悪くない。

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2020年04月18日

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