恒川光太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレあらすじを目にしてから読んだら、想像と違う始まり方で意表を突かれた。
異界と地球、それぞれに生きる登場人物の視点の切り替わりが、ファンタジーとSFを行ったり来たりしているみたいで独特な雰囲気。
プーニーが現れてから人々の営みが死と隣り合わせになり、様々なことが制限される状況は、3.11後やコロナ禍を思い起こさせる。
プーニーの生体や異界の仕組みなどについては科学的な解説があまりなく、ふんわりしている。しかし、社会がどう変わったかという描写は細やかでリアリティがあるので、世界観に説得力が生まれているように感じた。
鈴上さんに対する印象が、物語が進む中でどんどん変わっていくのは、バイアスに関する思考実験みたいに思えた。それくらい、複雑な立場のキャラクターだった。
彼だけが結果的に何かを成し遂げることなく終わったのは、自分が本来生きるべき世界と向き合って足掻くだけの未練がなかっただけ、というのが哀しい。
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルと装丁が魅力的で気になっていた作品。
プーニーという地球外生命体?が突如現れる。平凡な主人公がプーニーに取り込まれ、理想郷のような夢の世界で核となり幸せに生きて行く。
地球では、プーニーにより多くの犠牲が出ており、プーニーとの適合者が地球を守ろうと奮戦。
主人公と地球人、お互いに今生きている場所を守りたい。それぞれの大切な場所、でも、どちらか一方を守るともう一方の世界は滅びてしまう。
現実か幻かではなく、自分が大切に思う生活を守り抜きたい人々の群像劇でした。
突飛な設定であるも、とてもわかりやすい文章のため、すぐにこの世界に入り込むことができた。
恒川先生の物語は、どこか恐ろしくて優しい、日常の延長線上にあるような、紙一重な非日常。
自分だったら、主人公と同じ選択をしてしまう気がする。
地球では、人間同士のいざこざで被害拡大
地球にとっての異物は、人間なのだなと改めて感じる。きっと、どんな人が取り込まれても、この結果になるのではないか。
みんな同じ様に、何かしらのストレスを持ち、お金と言う概念に縛られて生きている。でも、プーニーの中の世界は、お金に価値はなく、欲しいものはなんでもある、そして優しくて穏やかな人と自然に囲まれて生きていられる。毎日の変わらないささやかな幸せ。
1番欲しいものを手に入れるには、他の多くの人の犠牲に目を瞑らないといけないけれど、それに抗うことができるのだろうか。
残酷なのに目の離せない世界のお話で、夢中で読んでしまいました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ生活の中の牢獄といってもいいような空間で、リアルな風景の中にホラーというか不思議な感覚を溶け込ませた、深みには欠けるがアイデアの優れた一冊だった。
手にとって見ると、「牢獄」と言う題名が少し気になったが、読んでいると、捕らえられて出られない世界のことだった。
☆ 秋の牢獄
雨の音を聞きながら、朝起きて普通の生活を送る、友人の釣りの話を聞き、帰って音楽を聴きながら豚肉とキャベツの醤油炒めを食べて。
次の日に目を覚ますと変な既視感に襲われた。また雨が降っていて、友達は昨日と同じ釣りの話をする。日付けを聞くと昨日だと思ったのが今日だった。1日がダブっているのだ。
もう一度繰り返すならもう少し違った過ごし方があったのに。
ところがそれは一日で終わらず、とうとう同じ日の繰り返しのループの中に入ってしまった。
寝なければ明日が来るのかと、公園に散歩に出掛けたが、ふと毛布に包まれた感じがして朝起きると布団の中で雨の音もしていた。
こうして戻れない日が過ぎていった。そしてある日公園のベンチで青年に出会った。同じ日を50回も繰り返していると言った。仲間がいて「リプレイヤー」と呼んでいるという。公園の広場にはそんな仲間が集まっていた。また同じ日が来るなら、何をしてもいいはずだった。みんなでそう思いながら暮らした。
しかし終わりは来るのだろうか。
不思議な北風伯爵に出会う時、仲間が消えて行くという。不思議な白い顔のない影を時々見かけるようになって、仲間が少しずつ減っていった。
☆ 神家没落
春の朧な夜に散歩をしていた。ほろ酔い気分で気持ちよく公園の道に入っていった。その奥の少し開けたところに古い藁葺き屋根の家があった。
翁の面をつけた男が「奥へどうぞ」と言った。誘われて身の上話を聞いた。話し終わると男は面を残して消えてしまった。
仕方なく縁側に座っていると、一度漆黒の闇に包まれ、再び明るくなると家は白樺林の中に建っていた。
垣根から外に出られず、庭の果実を食べ特に水は甘露で沸いて出てくる。一定期間が過ぎると家は移動して、待っていた男が食料を運んできてくれた。
出るには身代わりがいるという。その時を待った。訪れる人がないわけではなかったが垣根より中には入ってこない。見えない結界が見えているように去っていく。
やっと待っていた身代わりが現れた。その男を家に残して逃げたが、その後事件が起こり始めた。
決まったルートで移動する家や、身代わりをおくという残酷なしきたりは面白かったが、翁の面という素材は少し唐突で違和感があるようにも思えた。
☆ 幻は夜に成長する
リカは海で誘拐された、連れて行った老婆は人を幻惑する術が使えた、物を一時的に変化させる不思議な力も持っていた。
リカはそれを受け継ぐ、老女が殺されて、4ヵ月後に迎えに来た両親のもとに帰った。
身についた不思議な力は残ったまま成長し、恋人もできた。
しかし恋人に秘密を打ち明けると、彼は離れて行ってしまった。
彼女は老女と住んでいたころの知り合いに出遭った。そして波に身をゆだね、彼の誘いに乗った。
それからは部屋から出ないで御簾越しに、相談に来た人の不幸を引き受け、身に飼っている怪物を育てていった。
一話の非現実な(パラレルな)世界が存在すると言うことのつじつまは合っているが、そのねじれが解消される根拠・過程が希薄で、現実の世界に戻す北風伯爵の力、それは何だろう。
一日が繰り返され、ループの中で暮らすことになると、遊びでも旅でも一日だけなら何をして過ごしても良くなる、心情は納得できるが、北風伯爵とはどういう位置なのか、なにものなのか。その世界だけに住むループ妖怪かなw
三話、随分アイデアが割愛されているのではないか。両親についても何か釈然としない。全く生活観のない世界に思えて残念。面白くて少し怖い伝説なのか、お伽噺風で面白いのに。 -
Posted by ブクログ
ネタバレマヤ文明、生贄、国の滅亡と重いテーマではあるけれど、登場人物みんな魅力的で、それぞれの関係性や繋がりも深掘りされていてのめり込んでしまいました。
だからこそ旧知の仲だったり、かつては同志だった人たちがそれぞれの考える正義や信じる道を選んだ結果争うことになってしまうのがとてもやるせなかった。
和解してほしい人たち、この人は生き延びてほしいと思った人がどんどん命を落としていく…
生い立ち、立場、選択、何かがどこかで違っていたら全く違う人生を歩んでいたかもしれない。
ファンタジーだからといって死んだと思っていた人が終盤になって実は生きていました!と登場するなんてご都合展開もなく、命を落とした人はそれで終わり。
淡々とあっさりと人が死ぬ描写が、かえって戦争での死が特別ではないことを物語っているようでした。
主要人物はもちろん、一般市民や一兵士など、1人1人に人生があるんだよなあと思いを馳せる、壮大な作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大好きな恒川光太郎の長編。読んでみたかったけど前まで長編が苦手だったからずっと読めずにいたのを、とうとう読んだ!最後の願い何にするのかなって思ってたら、「願いをとっておくこと」だったのが、すごく良い!!しかもそれって自分で叶えられることだから、スターを消費しない願いの叶え方でもある。夕月は、今後の人生で実際にスターを消費せずに終わっても別に構わないとも最後には思っていて、それがなんというか、あんた強くなったね…!って言いたくなった。笑 願う→叶えるの段階から、また一段階自由になった感じの解放感があって、願い続けながら生きることの素晴らしさもあるなって思えた。しかもちょうど夕月と同じ年齢のこのタイミングで読めたこともなんか嬉しいな。(そして国の名前が「麗和」だったのはびびる…令和になる前に出た作品だったはず…)ヘブンメイカーも引き続き読もうと思う!