あらすじ
著者の新境地・ネオ江戸ファンタジー小説
謎の存在「金色様」を巡って起こる不思議な禍事の連鎖。人間の善悪を問うネオ江戸ファンタジー。第67回日本推理作家協会賞受賞作。
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恒川光太郎初読。章によって主人公や時間が入れ替わり、読み進めていくほど真実が明らかになっていく。淡々とした文章から人の感情が読み取れ、なんとも切ない気持ちになる。ありそうでなさそうな話で非常に好み。
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恒川氏の長編
月から来たとされる金色様
人の殺意が見える男
触れた相手の命を終わらせる女
人の生き死に、人の善悪をテーマにした江戸ファンタジー
章ごとに時代と舞台がいったりきたりしますが、
文章がうまいのであまり混乱せずに読めます。
混乱したまま読んでも恒川氏の「幻想的」な世界に引き込まれたと思って読み進めれば良し。
2021年最後の★★★★★!
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恒川光太郎『金色機械』
短編で名を馳せる作者ですが、本作は長編です。
江戸時代を舞台に、金色様という謎の生命体を媒介として、幼少期に両親を殺された流民の女と遊郭街の頭領の男が出会った時、彼らの運命の歯車が動き出します。
複雑な時間軸が終盤にかけて収束していく様式美には感服しました。
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何て面白いんだ! 京極夏彦「嗤う伊右衛門」の心がキリキリする感じと宮部みゆき「悲嘆の門」のドキドキ感が混ざった素晴らしい内容。 物語自体がとても面白く構成も良く出来ていて又とても読み易い文体で書かれているので内容がすっと入ってくる。 「夜市」があまりに衝撃的だったので期待半分、不安半分で読み進めたがあまりの面白さにページを捲る手が中々止めれなかった。 恒川光太郎に完全に嵌った! 時代物とかファンタジー物とかそんなことどうでも良くなる読み応え抜群の作品。
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スターウォーズのあのお方の親戚でしょうか。飛び抜けて強く賢く忠実で優しい。おまけにユーモアもある。私はすっかり金色様のファンです。
恒川光太郎さんの本はまだこれで4冊目だがどれも面白い。設定はファンタジーだが中身はしっかりと人間ドラマ。「金色機械」を離れがたいが、さて次はどれを読もう…最新刊か?
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これは見事、名作。世界観としては恒川光太郎作品においてさほど新しいとは感じなかったが、構成が素晴らしい。
物語全体は、歴史物とまではいかないが、長い年月を含んだ壮大なストーリーである。これを複数の人物の視点から(時系列でなく)描き、そのどれもを主役級に厚く描写している。どのストーリーも面白いが、こちらの移入度が高まったところで、複数のストーリーが繋がりを見せるので、また一段と興奮が増す。
時代設定やホラーファンタジー的な要素も相まって、京極夏彦作品と共通するものも感じた。時代小説は苦手で読まないが、そういった人でも問題なく楽しめるのでは。
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長年積読になっていた一冊をやっと…。これまでに読んだ恒川作品とはちょっと異なる読み味で、夜市×スター・ウォーズ?みたいな世界観。スケール大きく、ミステリー要素もあり、エンタメ性の高い時代ファンタジー。章毎に年代と視点が切り替わり、それぞれが次第に繋がっていく展開にハマった。物語の核をなす「テキモミカタモ、イズレハマジリアイ…」。金色様の含蓄ある言葉が印象に残った。
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登場人物それぞれの人生を描きながらそれらがひとつの物語に収斂されている秀作。
お初の恒川さんでしたがとっても楽しい読書でした。時折覗く金色さまの天然さがいいアクセントになっていました。
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江戸時代でSFでファンタジー…。 各要素が違和感なく混ざり合い、 独特で不思議な世界観にどっぷりと浸りました。 章ごとに年代と登場人物が変わり、 少しずつ物語が繋がっていくのが面白い! そして切なくも美しい幕引き…。 心地良い余韻です。 物語の軸となる「金色様」が魅力的!
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他の恒川作品のような神話性はあまりなく、江戸時代を舞台にしたSF時代劇?月からやってきたと言う全身金色の機械が登場します。つるりとした頭に丸い大きな目、かすれた声...C3PO?
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おもしろかった。
SFと思ってたので最初は戸惑ったけと。
金色とかピコッって、解説読んで納得。スター・ウォーズね。
読んている最中ずっと金色様のイメージができないでいたんだけどスター・ウォーズね。最初からそのイメージで読みたかった。あ、声もそうか、カタコトじゃなくてあの感じか。
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異次元に連れて行かれてしまう作家No1との誉れも高いですが、この本もまさに別の世界に連れ出されてしまう本であります。
江戸時代なのに金色のロボットと思われる物体が重要人物(物質?)となっています。なかなか無い展開で戸惑いますが、滑らかに物語に入って行けます。
謎の金色様を巡って展開する超展開の江戸時代ロマン。
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雰囲気のある短編を多く創っている著者、がっつりした長編は初めて読んだが、とても読み応えがあった。
敢えて取っ散らかる形で書かれていた時空が終盤に向けて収斂していく様は、美しくさえある。
作品全体に関しては、通底する大きなテーマ、のようなものが感じられなかったのが少し残念。
高い構成力を備え、リーダビリティーにも長けたこれだけの物語が、「面白い」だけで終わってしまうのは非常にもったいない。
理屈を超越した衆生の救いの象徴であり、まるでオーパーツともいうべき金色様の出自や幽禅家のルーツ、そしてその系譜がおそらくは熊悟朗や遥香に連なっているという設定などの裏に、より具体的なSF的バックボーンでも立て付けられていたら、読後のカタルシスは深いものになっていただろう。
であるから、仕舞い方にもパンチ力不足は否めなかった。
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「きんいろきかい」と読む。
この本を読むときは、じっくりと腰を落ち着けて、その世界にどっぷりとはまりながら読むのがよい。
江戸時代。
人が生まれ、死んでいく。
人生の糸が複雑に絡み合い、結ばれ、断ち切られ、生と死を繰り返しながら歳月が流れ、やがてそれが新しい世を造る。
生命というものを持たない金色様は、昔、月からやってきたそうだ。外見は(おそらく)C3POのようで、チャーミングなところもあり、でもとても身軽でとても強い。金色様はこの世の移り変わりを、様々な人に常に寄り添いながら見守ってきた。
この物語は、手で触れただけでそのものの命を奪うことができるという不思議な力を持つ遙香という女が、大遊郭の創業者である熊悟朗を訪ねるところから始まる。遙香の頼みとは。。。
そして時代は行ったり来たりを繰り返し、その度にちりばめられた謎が少しずつその姿を現す。
上手く説明できないのだが面白かった。
独特の世界観に魅せられた。
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おもしろかった。その一言に尽きる。
この方の作品は初めてだったので、先入観がなかったのもよかったのかも。とにかく、文体が読みやすい。人間の業に迫るような内容なので、決して軽くないはずなんだけど、なんだろ、かるい。いい意味で。軽やか。登場人物が多く、それぞれの物語が時系列もバラバラに切り替わって、混乱するかと思いきや全くそんなことなかった。とにかく先が読みたくてどんどんページをめくってしまった。この感覚久しぶり!純粋に楽しめた。
第67回日本推理作家協会賞受賞作だそうですが、推理小説とは思えなかった。時代小説とも違う。SFといえばそうだけどちょっと違う。すこしふしぎ小説とでもいえばいいのか?
金色様の存在が相当荒唐無稽で、下手したらギャグなんだけど、すれすれでギャグにならずに、ちゃんと物語に溶け込んでいるのがすごいと思った。たぶん、すごく文章がうまいんじゃないだろうか。
(まあ何回か心でツッコミも入れたけど)
昔話の語り口のような、多くを描写しない書き方がいいのかな?胸に迫るような切なさとか、人生のなんたるかとか、そういう重い読後感じゃない。えぐい描写はあるし、ラストもめちゃくちゃなんだけどなあ。押し付けがましさとかがない。登場人物の誰かに感情移入するというより、ずっと俯瞰して見守っているというかんじ。
あ!強いて言うなら金色様の目線なのかもしれない。
ピ、ピコッ。
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江戸時代を舞台としたSFファンタジー。
バラバラの時間軸と登場人物がつながると
切ない物語に仕上がる。
読後はお祭りが終わってしまったような
寂しい気持ちに。
時代物は苦手ですが、問題なく読めます。
抜群に面白いエンターテインメントです。
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恒川光太郎さんには珍しい長編小説。
おとぎ話や昔話はこうしてできるのかも、と思わされる物語でした。SFと時代小説が違和感なく一つのものになってて素晴らしかったです。
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『夜市』に続き、恒川作品二作目。日本推理作家協会賞受賞作。“コンジキキカイ”と読むと思ってたんだけど…。江戸ファンタジィ。独特の世界観でとても良かった^^ 星四つ半。
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こちらもクリスマスに友達からプレゼントで頂いた本の1冊です。
私がSF好きなの知ってて送ってくれたのだけど、こちらはSFと言うよりなんか時代SFファンタジー活劇って感じのお話でした。
恒川光太郎さんの小説で時代物で、漢字の名前が多く最初はなかなか入り込みにくかったのですが、読んでいくうちに金色様って言う完全無垢の存在や、それを取り巻く一族の運命と定めの中で、沢山の登場人物の繋がりや生き様が、物語の時間を前後しながら解き明かされていく様に、ついつい引き込まれてしまいました。
よく読んでないと、登場人物の繋がりがわからなくなりそうなので、何度も頁を戻って確認する事が多かったですw
金色様って言うのはおそらく皆さんが思われてるとおりの存在だと思いますが、この中で出てくる触れるだけで人に死を与えられる女性がいて、その女性と金色様の最後のやりとりに哀愁が感じられて少しうるっと来ました。
ただ、その女性の正体が最後まで分からなかったのは少し心残りです。
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残り少なくなった恒川光太郎さんの本を大事に読んでる。
4センチ近い厚さのハードカバーを、通勤に持ち歩いた。
短い時間でも引き込まれる面白さ。
短編と違い、不思議な要素は少なくても、
時代背景の中にない要素が入ることで、
違う空気になる。
ゆるく繋がる人とエピソード。
つじつまを回収していくようなつまらなさはなく、
起こるべくして起こったことと、
人間のもつ怖さから思いつき始まることが
うまく絡みあっていく。
恒川光太郎さんの本の怖さは、
人間の残酷さ、気持ち悪さの描写にもある。
善悪は自分が属する場所によって変わるという言葉が
それぞれが置かれた状況を受け入れて進むしかないことを
端的に表している。
進む方向の先々で、人と出会うときに、
一緒になったり衝突したりと物事が動く。
恒川さんの世界は本当に面白いな。
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これまでの作風とは違う恒川さんワールドが新鮮ですが、それでもやはり恒川さん。丹念な文章から滲み出す、妖しくも美しい独特の世界観は健在です。特に「金色様」という異質な存在が、序盤は不気味に、中盤は切なく、そして後半はある種英雄的に、物語全体を通して光っていたように思います。
地理的にも時系列もバラバラであるたくさんの登場人物の半生が徐々に絡み合い、一つの物語を紡いでいくので、大変読み応えがありました。
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恒川さんの時代モノ。戦国時代から江戸時代初期の設定で人外が普通に馴染んでしまう背景で金色のロボットを出すところが意表を突いていて面白い。登場人物がみな苦しみを背負っていて、陰のある中で、金色様だけが微笑ましく、後半になるにつれコミカルでかわいい。ハッピーエンドではないですが、よい終わり方です。
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江戸が舞台の時代ものファンタジー。
長編だけど連作短編のような感じもあり、章ごとに時代・人が入れ替わりながら、金色様に関わる物語がすすんでく。
時代ものにアンドロイドというとなんとも不釣り合いな設定に思えるけれど、恒川さんのつくりあげた世界観のなかでは不思議となじんでいる。最初はよくわからない存在だった金色様が、徐々に話の中心になっていき、読み進めていくにつれて、その周りにいたいろんな人の話がだんだんつながっていく。みんなわりと非情でいい。
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【2024年154冊目】
大遊郭の主である熊吾朗の元に、ある日一人の女がやってくる。女郎に身をやつすためにやってきた訳でもなさそうなその女は、言葉を発する度に黒き煙を滲ませる。熊吾朗には殺意の霧が見えるのだが――女が語ったのは数珠繋ぎの因縁の物語であった。
最初は熊吾朗と遥香を巡る物語かと思って読んでいましたが、思ったりよりも壮大な物語でした。結構登場人物が多いのですが、こことここが繋がるのね!なるほど!とわかりやすく、一体どこに着地するのかしらと、ある程度の予想をつけながら読んでましたが、予想外でした。大体そう。
結局金色機械とは何者だったのか、月から来たのであればなぜやってきたのかはわかりませんでしたが、時代小説×ファンタジーなお話で、好きな方にはたまらない世界観だろうなあと思いました。
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一大遊郭「舞竜」の創業者である熊悟朗には、心眼と呼ばれる力があった。それは相手の嘘を見抜いたり、自分への殺意が黒い霧として可視できるというもの。
そんな熊悟朗の元へ、遥香と名乗る女が現れる。彼女にも特殊な力があり、その力とは触れた相手に安らかな死を与えるというものだった。
そこで物語は遥香の過去に遡る。遥香には実の両親がおらず、祖野新道という医師に娘として育てられた。新道は遥香の手の力を知り、やむをえない場合のみ患者を苦しみから救うために使うことを許可していたが、ある日遥香はカメと呼ばれる厄介者の浪人に襲われ、その力を使ってしまう。カメは絶命したが、遥香の実の両親を殺した者の存在について聞かされたため、そのことが心に残った。
正当防衛とはいえ、新道の教えを破って殺人を犯してしまった遥香は家を出た。そして、願い事を叶えてくれると噂の金色様に会うため滝の崖を登り、ついにその謎の機械生命体に出会った。
一方、熊悟朗の少年時代の出来事。彼は父の新らしい女に疎まれ、父によって殺されそうになるが、その心眼によって回避し、偶然出会った鬼御殿の夜隼らの仲間に加わる。鬼御殿は、若い女を攫って男たちに奉仕させる特殊な山賊たちの住処であった。そしてそこには、頭領の半藤剛毅に仕える金色様の姿があった。
さらに、熊悟朗より2歳年上の紅葉という童女と親しい関係にあったが、彼女は冬の日に鬼御殿から脱走する。そして、小豆村の善彦と出会い、紅葉は自分の名を美雪と名乗った。2人は夫婦になり、1人の娘を授かる。名は真子。後に両親を殺され、新道に拾われることになる遥香である。
熊悟朗、遥香、金色様の過去が微妙に絡み合って一本の線が繋がるような作品。
個人的にも好みの世界観で、登場人物の過去やその後についてももっと知りたいと思った。
ただ、エンディングが物足りない感じがしたことと、2人の異能の力についてもっと掘り下げて欲しかったことが、期待が大きかった分残念に感じた。
しかし、月?未来?から来たというスターウォーズのキャラクターみたいな金色様の存在やセリフのユニークさは、物語に幅を持たせていたと思うし、登場人物それぞれに訪れる少し悲しい結末には、何とも言えない独特な感情にさせられた。期待の分で個人的な評価が下がってしまったが、非常に斬新で読む価値は充分にある小説だと思う。
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やっと読み終えた。時間がかかったのは、物語の流れが緩やかであったことと、内容がわかりやすくて、つい雑念が入り込んでしまう、それでまた読み返すということを繰り返した。
恒川さんの、現実から幻想的な世界に滑り込んでいく物語が好きで読んでいるが、長編は初めてで少し勝手が違った。時系列どおりに進むのではなくて登場人物が現れるごとに、その過去から話が進む。時間の往来があって、現在に合流する形になっている。柔らかい美しい文体で野生的な盗賊たちが描かれているが、何か夢物語めいている。全編を通して恒川ワールドの雰囲気が続いていく。はみ出し物の盗賊たちは殺しもやれば子どもの誘拐もする、情け容赦のない場面もあるが、それも全て絵物語のようで、続けて読めば分厚い400ページを越す話もあっという間だったかもしれない。
山奥に通称極楽園といい、鬼屋敷とも呼ばれる盗賊の部落がある。子供をさらってきて働かしているが、頭目が殺され手下だった夜隼が実権を握る。
そこに殺されそうになった熊悟郎が逃げ込んできて下働きを始めるが、夜隼に見込まれ、武芸の訓練を受ける。
見る見る上達して仲間に認められるが、彼は長じて、妓楼を任され莫大な利益を得てのし上がっていく。
熊悟郎は人の心が見える目を持っている。
捕縄の名手、同心の柴本巌信のところに遥香と言う娘がやってくる。彼女は手を当てると人を安楽に死なせる技を持っていた。医者の家で、見込みのない患者にその技を使わせていたが、そこからきたと言う。
彼女は過去に鬼屋敷にさらわれてきて逃げた紅葉という娘の子供だった。
遥香は養父の家を出てさまよい、庵に中にいた金色様に出会う。気を失っている間に厳信の元につれてこられたのだった。彼女は父母が殺されたいきさつを話し、厳信が手伝うことになる。
金色様と呼ばれるのは、遠い昔月から来た一族だったが、体が金に覆われ光で生きているため、一族が耐えても生き残っていた。極楽園で暮らしていたが、やがて遥香とめぐりあう。
同心と一緒になった遥香の復讐、極楽園の人々の末路、話は前後しながら進み、やがて幕引きの時が来る。
金色様と呼ばれるロボット様の物体は、言われているようにC-3POの姿を彷彿とさせ、男にも女にも変幻自在、声まで変えられる。花魁の衣装を着て白塗りの顔を長い髪に隠し、文字通りこの世のものでない強さを見せる。月から来たと言うそのときから物語の中に存在し続けて、人々の生き方に関わり続ける。
恒川さんの現実離れのしたストーリーは、離れすぎて荒唐無稽に鳴りそうな部分が、巧妙に異次元に誘う。時々はっと我に返ると、少し齟齬のある部分がみえて、どちらかといえば、短編の方が持ち味に沿っているように思えた。もっと多くの作品を読んでから言うことかもしれないが。
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ここで「おすすめ文庫王国」のエンターテインメント部門1位のこの本に取り掛かる。
廓の大旦那・熊悟朗を遊女になりたいという娘・遥香が訪ねてきた場面から始まる物語は、最初は掴みどころ無く、装丁の地味な印象も相俟って、こうしたお薦めがなければなかなか手に取りそうもない。
二人の生い立ちが語られる前半はファンタジーと聞いていてもあまりそれらしい匂いもなく進み、時代を行き来しながら描かれる物語は二人の生い立ちからどんどん離れて一体どのように話が展開するのだろうと思わせるが、関係が分からないままでも、次々と出てくる新たな登場人物とそれに付随して繰り広げられるエピソードはまるで大河ドラマの趣で興を逸らさぬ。。
二人から離れていったお話が実は全て冒頭の話に結びついていたことを知る後半は、それまで提出された謎が氷解していく推理小説でもあり、ラストがどのように収束するのか、金色様と遥香の冒険小説でもあり、なかなか楽しめた。
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江戸で大きな遊郭を営む熊五郎。彼に会いに来た晴香は、熊五郎にあることを願う。
各章ごとでかなり時系列がバラバラなので、なかなか物語のすじが掴みにくくはあるのですが、触れるだけで生き物を殺すことができる遥香の物語。盗賊たちと生活し、立身出世を遂げた熊五郎の物語、いずれも各章や人物ごとの起承転結がしっかりしているというか、話の内容が濃くて読ませます。
そして、そうしたエピソードが徐々に一本の線につながってくる、そんな構成力の高さにもまた脱帽です。
恒川さんの物語は本当に不思議で、これもどこか民話のような懐かしさはもちろんあるのですが、どこかしら教訓めいた、何かしらのメッセージがあるようでいて、そうでもないような…
そんな言葉にしがたい、恒川さんの魅力があるように思います。
第67回日本推理作家協会賞