あらすじ
著者の新境地・ネオ江戸ファンタジー小説
謎の存在「金色様」を巡って起こる不思議な禍事の連鎖。人間の善悪を問うネオ江戸ファンタジー。第67回日本推理作家協会賞受賞作。
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Posted by ブクログ
伝奇SF。再読ですが、何度読んでもこの世界に取り込まれてワクワク読んでしまいます。面白かった。
長編でも、寂しさを覚える読後感は変わりません。
地球に降り立った金色様の、永い幕引き…と思うと大変寂しい。
相手や自分を、許す許さない…がぐらぐら揺れ続けるのも良かった。
「筋か。この世の恐ろしいところはな、筋などというものは、本当はどこにも存在しないのだ。ただ、筋を通した、通っていないと当事者とその周囲の者がいうだけでな」
不思議な力を持つ遥香のことを邪険にせず、謎すぎる存在の金色様のことも邪険にせず「違う種類の神様だけど」みたいに接するお年寄りたち、おおらかだなぁ。
日常と異常が無理なく共存しているのは、ファンタジーでもあり、昔の日本でもあり。
恒川さんの、日本の昔話味がいつもより色濃く出ていました。
文章が端正で易しくて、いきなり容赦ない生々しい描写が出てくるのも昔話読んでるみたい。
紅葉さん、流石格好良い。
「人生、起こること、これみな神事。覚悟せいよ熊悟朗」
Posted by ブクログ
雰囲気のある短編を多く創っている著者、がっつりした長編は初めて読んだが、とても読み応えがあった。
敢えて取っ散らかる形で書かれていた時空が終盤に向けて収斂していく様は、美しくさえある。
作品全体に関しては、通底する大きなテーマ、のようなものが感じられなかったのが少し残念。
高い構成力を備え、リーダビリティーにも長けたこれだけの物語が、「面白い」だけで終わってしまうのは非常にもったいない。
理屈を超越した衆生の救いの象徴であり、まるでオーパーツともいうべき金色様の出自や幽禅家のルーツ、そしてその系譜がおそらくは熊悟朗や遥香に連なっているという設定などの裏に、より具体的なSF的バックボーンでも立て付けられていたら、読後のカタルシスは深いものになっていただろう。
であるから、仕舞い方にもパンチ力不足は否めなかった。
Posted by ブクログ
おもしろかった。その一言に尽きる。
この方の作品は初めてだったので、先入観がなかったのもよかったのかも。とにかく、文体が読みやすい。人間の業に迫るような内容なので、決して軽くないはずなんだけど、なんだろ、かるい。いい意味で。軽やか。登場人物が多く、それぞれの物語が時系列もバラバラに切り替わって、混乱するかと思いきや全くそんなことなかった。とにかく先が読みたくてどんどんページをめくってしまった。この感覚久しぶり!純粋に楽しめた。
第67回日本推理作家協会賞受賞作だそうですが、推理小説とは思えなかった。時代小説とも違う。SFといえばそうだけどちょっと違う。すこしふしぎ小説とでもいえばいいのか?
金色様の存在が相当荒唐無稽で、下手したらギャグなんだけど、すれすれでギャグにならずに、ちゃんと物語に溶け込んでいるのがすごいと思った。たぶん、すごく文章がうまいんじゃないだろうか。
(まあ何回か心でツッコミも入れたけど)
昔話の語り口のような、多くを描写しない書き方がいいのかな?胸に迫るような切なさとか、人生のなんたるかとか、そういう重い読後感じゃない。えぐい描写はあるし、ラストもめちゃくちゃなんだけどなあ。押し付けがましさとかがない。登場人物の誰かに感情移入するというより、ずっと俯瞰して見守っているというかんじ。
あ!強いて言うなら金色様の目線なのかもしれない。
ピ、ピコッ。
Posted by ブクログ
江戸時代を舞台としたSFファンタジー。
バラバラの時間軸と登場人物がつながると
切ない物語に仕上がる。
読後はお祭りが終わってしまったような
寂しい気持ちに。
時代物は苦手ですが、問題なく読めます。
抜群に面白いエンターテインメントです。
Posted by ブクログ
読むのに時間がかかった、物語の流れが緩やかだとつい雑念が入り込んでしまう、それはそれでいいのだが。
柔らかい美しい文体で野生的な盗賊たちの生活が描かれているが「金色様」は何か異界の夢物語めいていた。
恒川さんの、現実から幻想的な世界に滑り込んでいく物語が好きで読んでいるが、長編は初めてで少し勝手が違った。
時系列どおりに進むのではなくて登場人物が現れるごとに、それが生きてきた過去から話が進む。時間の往来があってから、現在に合流する。
全編を通して恒川ワールドの雰囲気が続いていく。
はみ出し物の盗賊たちは殺しもやれば子どもの誘拐もする、情け容赦のない場面もあるが、それも全て絵物語のようで、続けて読めば分厚い400ページを越す話も進行は早い。
山奥に通称「極楽園」といい、鬼屋敷とも呼ばれる盗賊の部落がある。子供をさらってきて働かせているが、頭目が殺されて手下だった夜隼が実権を握る。ここにも下克上はある
そこに熊悟郎が逃げ込んできて下働きを始めるが、夜隼に見込まれ、武芸の訓練を受ける。
見る見る上達して仲間に認められるが、彼は長じて、妓楼を任され莫大な利益を得てのし上がっていくことになる。
熊悟郎は人の心が見える目を持っていた。
捕縄の名手、同心の柴本巌信のところに遥香と言う娘がやってくる。彼女は手を当てると人を安楽に死なせる技を持っていた。医者の家で、見込みのない患者にその技を使わせていたが、医者の家からも自分の力からも逃げてきたと言う。
彼女は過去に鬼屋敷にさらわれてきて逃げだした紅葉という娘の子供だった。
遥香は逃げ出てさまよい、庵に中にいた「金色様」に出会う。彼女は父母が殺されたいきさつを話し、厳信が手伝うことになる。
「金色様」と呼ばれるのは遠い昔、月から来た一族だったが、体が金に覆われ光のエネルギーで生きていたため、一族が耐えても生き残っていた。極楽園の中の庵で暮らしていたが、やがて遥香とめぐりあう。この一族の話はなんというか、突然下りて来て紛れ込んだような宇宙譚でこの金色様の話だけで読んでみたい気がする。
同心と一緒になった遥香の復讐、極楽園の人々の末路、話は前後しながら進み、やがて幕引きの時が来る。
金色様と呼ばれるロボット様の物体は、C-3POの姿を彷彿とさせるが、こちらは男にも女にも変幻自在、声まで変えられる。花魁の衣装を着て白塗りの顔を長い髪に隠し、文字通りこの世のものでない強さを見せる。月から来たと言うそのときから物語の中に存在して、人々に関わり続けているが、あまり違和感はない。
何か現代のおとぎ話で、恒川さんの現実離れのしたストーリーは、現実との距離感が荒唐無稽になりそうだが、その世界が好きなら巧妙な言葉で異次元に誘われる。
時々はっと我に返ると、長編だけに少し齟齬のある部分がみえるので、どちらかといえば、短編の方が持ち味に沿っているように思えた。
それでもこんなありそうもない世界をもっと楽しんでみたい気がする。やはりストーリーも夢幻の世界をさまようような恒川ワールドだった。
リアルな世界で構築された物語が好きな人向きではないが、地面を離れて浮遊してみるのも悪くない。
読者を選ぶ作品。
Posted by ブクログ
恒川さんの小説は、『夜市』をはじめ短編が多く、自分も好んで読んでいたが、こちらは長編(しかもそれなりに分厚い)。冒頭は江戸時代の遊郭で、遊郭の主である男と、遊女としての面接を装って侵入してきた何やら訳ありの女が相対する緊迫感のあるシーンからはじまり、今後の展開にわくわく。その後、それぞれの視点の物語(生い立ち)が入り乱れる(ある意味「短編集」とも言えるかもしれない)。進むにつれて、恒川小説に欠かせない怪異の存在が見え隠れするが、今回は「金色様」なるロボット?で、物語の時間軸からすれば、未来から来た存在であるようだ。発想に驚きつつ、この設定・背景に馴染むのか?という若干の心配を持ったが、ややコミカルな仕草も楽しく、圧倒的な戦闘力もあって、物語を上手く収束に導く中心的な役割を果たす。結局、金色様の存在や男と女の特殊な力についての明確な説明はないのだが、そこのムズムズ感を差し引いても魅力的な物語で、読み応えがある。終盤の展開がやや駆け足気味で、もっと余韻を感じたかった。
Posted by ブクログ
【2024年154冊目】
大遊郭の主である熊吾朗の元に、ある日一人の女がやってくる。女郎に身をやつすためにやってきた訳でもなさそうなその女は、言葉を発する度に黒き煙を滲ませる。熊吾朗には殺意の霧が見えるのだが――女が語ったのは数珠繋ぎの因縁の物語であった。
最初は熊吾朗と遥香を巡る物語かと思って読んでいましたが、思ったりよりも壮大な物語でした。結構登場人物が多いのですが、こことここが繋がるのね!なるほど!とわかりやすく、一体どこに着地するのかしらと、ある程度の予想をつけながら読んでましたが、予想外でした。大体そう。
結局金色機械とは何者だったのか、月から来たのであればなぜやってきたのかはわかりませんでしたが、時代小説×ファンタジーなお話で、好きな方にはたまらない世界観だろうなあと思いました。
Posted by ブクログ
一大遊郭「舞竜」の創業者である熊悟朗には、心眼と呼ばれる力があった。それは相手の嘘を見抜いたり、自分への殺意が黒い霧として可視できるというもの。
そんな熊悟朗の元へ、遥香と名乗る女が現れる。彼女にも特殊な力があり、その力とは触れた相手に安らかな死を与えるというものだった。
そこで物語は遥香の過去に遡る。遥香には実の両親がおらず、祖野新道という医師に娘として育てられた。新道は遥香の手の力を知り、やむをえない場合のみ患者を苦しみから救うために使うことを許可していたが、ある日遥香はカメと呼ばれる厄介者の浪人に襲われ、その力を使ってしまう。カメは絶命したが、遥香の実の両親を殺した者の存在について聞かされたため、そのことが心に残った。
正当防衛とはいえ、新道の教えを破って殺人を犯してしまった遥香は家を出た。そして、願い事を叶えてくれると噂の金色様に会うため滝の崖を登り、ついにその謎の機械生命体に出会った。
一方、熊悟朗の少年時代の出来事。彼は父の新らしい女に疎まれ、父によって殺されそうになるが、その心眼によって回避し、偶然出会った鬼御殿の夜隼らの仲間に加わる。鬼御殿は、若い女を攫って男たちに奉仕させる特殊な山賊たちの住処であった。そしてそこには、頭領の半藤剛毅に仕える金色様の姿があった。
さらに、熊悟朗より2歳年上の紅葉という童女と親しい関係にあったが、彼女は冬の日に鬼御殿から脱走する。そして、小豆村の善彦と出会い、紅葉は自分の名を美雪と名乗った。2人は夫婦になり、1人の娘を授かる。名は真子。後に両親を殺され、新道に拾われることになる遥香である。
熊悟朗、遥香、金色様の過去が微妙に絡み合って一本の線が繋がるような作品。
個人的にも好みの世界観で、登場人物の過去やその後についてももっと知りたいと思った。
ただ、エンディングが物足りない感じがしたことと、2人の異能の力についてもっと掘り下げて欲しかったことが、期待が大きかった分残念に感じた。
しかし、月?未来?から来たというスターウォーズのキャラクターみたいな金色様の存在やセリフのユニークさは、物語に幅を持たせていたと思うし、登場人物それぞれに訪れる少し悲しい結末には、何とも言えない独特な感情にさせられた。期待の分で個人的な評価が下がってしまったが、非常に斬新で読む価値は充分にある小説だと思う。