恒川光太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ異世界転生の「新しい形」を見た。
路上で、全身真っ白な男から提示されたクジを引き、1等の「???」を引き当てた主人公・斉藤夕月(34歳・無職)。眩い光に包まれて目が覚めると、見知らぬ異世界に飛ばされていたという、なんとも脈絡のないスタートを切る。
異世界ものにありがちな「目の前にメニュー画面が開く」といったシステムはあるものの、ここで与えられるのは戦闘スキルなどではなく、「制約はあるが、何でも10個の願いを叶えられる権利」だった。
この世界では、別の世界からやってきてこの権利を持つ者を「スタープレイヤー」と呼び、願いの残数を「スターが10個残っている」と表現する。
この「願い(スター)の制約」が、解釈の仕方次第でかなり汎用性が高くて面白い。
例えば、ただ「車が欲しい」と願えば車が1台現れるだけだが、「車も船も含めた庭付きの豪邸が欲しい」と願えば、同じ「願いの消費1回」でも得られる成果のスケールがまるで違う。
この「制約の範囲内であれば何でもできる(=言葉の定義次第で可能性が広がる)」というルールは、どこか『デスノート』のルールを連想させる。
異世界に飛ばされはしたものの、魔王のような明確な敵がいるわけでもなく、旅の目的があるわけでもない。何をしてもいいし、何もしなくてもいいという圧倒的な「自由」こそが、他の異世界転生ものとの決定的な違いだった。
実際、夕月はスターを2つ使って自分の容姿を「絶世の美女」にカスタムし、自分の実家をベースに増築した家を起点に、正門まで5キロもあるような、現実では絶対に不可能な大楽園を作り上げて過ごしている。
一方で、この世界が一体何なのか、なぜクジを引いたら飛ばされたのか、あの白い男は何者なのか、といった根本的な謎は最後まで明かされない。
パーティを組むわけでも、ダンジョン攻略や魔物退治があるわけでも、レベル上げがあるわけでもない。そうした「ファンタジーあるある」を一切排除した、これまでにない斬新な異世界転生小説として、非常に面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「秋の牢獄」
久しぶりに、読みましたが、恒川ワールド全開の作品でした。大学生の藍は、11月7日を何回も繰り返すリプレイヤーになりますが、そのリプレイヤーは何人もいました。妻に浮気されている犬飼や、藍に転機をもたらすことになる隆一など、色々な人と出会います。最初は、リプレイヤー同士で会ったり、一緒に遊んだりしていましたが、北風伯爵という異形の存在がリプレイヤーを飲み込んでいくという事実を知ります。1人1人藍の側から、リプレイヤーは消えていきますが、大学の知人である由利江が新しくリプレイヤーになったように、リプレイヤーは、更新されていきます。オチとしては、藍が北風伯爵に飲み込まれていく形で、終わっていきましたが、何とも不思議な話でした。
「神家没落」
こちらも迷い込んでいく話でした。主人公がとある道を歩いていると、知らない一軒の民家が出てきて、翁の面をしたセンジという男が出てくる。主人公は、男に勝手に家を明け渡され、元の生活に戻ることができなくなり、そこの家で暮らすことになる。ところがある日、韮崎という男が現れ、彼をこの家に住まわせる(身代わりにする)ために、主人公は家を明け渡す。元の生活に戻った主人公だが、韮崎の悪行を知ったり、センジに明け渡された家が恋しいことに気づいたりで、韮崎から再び家を取り戻そうとする。しかし、韮崎は元の世界に戻りたくなかったため、灯油を家に撒き散らし、燃え盛る家とともに死んでいく。主人公は、毎年4月になると、この家に続いていた小路を歩き、幻の村で再生されていないのか、確認するが、再生されていることはなかった。
「幻は夜に成長する」
この話も最初は不思議な家に住んでいるという設定であり、主人公のリオは、幻の世界をさまよいながら、誰にも視えていない怪物を育てて過ごしていた。私は祖母と2人きりで生活していたが、森の家には、子供など、色々な人が入れ替わり立ち替わり現れていた。そのような中、まちの小学生の女の子であるミズナとシモジョウに出会う。リオは、2人と遊び、初めてできたかもしれない友達と思っていたが、帰路についた時、リオの家はなくなっていた。その後、リオの親を名乗る人間が登場し、リオは新しい小学校に行くことになる。リオは、現実世界でミズナと再会するが、シモジョウはいなくなっていた。シモジョウの兄貴は殺されたことが、分かり、シモジョウは、転校してしまっていた。ミズナとも別れることになり、須藤啓一という男と出会い、付き合うことになるが、1ヶ月で、別れる(裏切られる)ことになる。最終的に、リオがリオでなくなっていくというオチが不思議な感じでした。 -
Posted by ブクログ
自分の大好きな著者の作品に共通する世界観にSFという新たなエッセンスが加えられた傑作!
想念世界の鈴上誠一、ディストピア化した現実世界の主だった登場人物たち。良い意味でそのどちらにも感情移入し切れない絶妙なバランスがSF作品の持つ魅力を更に高めていると感じた。
終盤誠一に投げかけられた「何故あなただったんだと思いますか?」という質問に誠一は「考えたことはないし、これからも考えないでしょう」と答えたわけですが、恒川光太郎ワールドに囚われている自分は
誠一は実はこれまでの著者の作品の登場人物たちの様に不思議な力を実は持っていた。
その力がこの世の全てに絶望して頭の中で糸が切れたその瞬間に自覚なく発動して誠一にとって理想の世界が生まれた。
しかしその世界を維持するためには膨大なエネルギーが必要でそれを補充するための装置として「未知なるもの」とプーニーが作られた。
立場は違えど現実世界にいる抵抗値の高い人物たちはみな自分の家庭環境などが原因で誠一同様この世界に絶望や諦めを感じていたからこそ、仲間となる可能性がありその装置に取り込まれることはなかった。(過去の突撃隊の中には誠一同様、想念世界に住むことにした=取り込まれた人たちもいた。)
だが最後の突入者たちは共鳴する部分を持ちながらも物語の中で言及される様にディストピアと化した現実世界を知っているからこそこの様な結末となった…。
と、考察しました! 違うか(笑)