恒川光太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ再読でも面白かったです。
長編では恒川さんのノスタルジックでダークで容赦ない世界にじっくり浸れます。
『穏』も、この世の理とはかなり違う決まりで動いている世界。暮らしているのは人だろうけど、限りなく彼岸に近い世界だと思います。
賢也パートと茜パートの時系列が違う事に気付くとゾッとしました。賢也の、雷の季節に消えた姉が茜だったとは…。
その中でも外れまくっているのが絶対悪・トバムネキだけれど、彼も歪んだ理由はあって。それでも、無間地獄に堕ちるのは壮絶。
早田さんは何者なんだろ。穏の血を引く者ではあるっぽいけど。
賢也が最終的に穏に戻れないのは、やっぱり穏での階級で穂高の家より下だからなのかな。苦 -
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Posted by ブクログ
面白かったです。淡々と語られる昔話を聞いているように読みました。
表題作の神の造作が好きです。神を含む輪廻に飲み込まれることで保っている時間も超越した世界…好きでした。クトゥルフに同じ名前の旧支配者がいると解説にありました。
「青天狗の乱」「死神と旅する女」も好きでした。死神と〜は日本が第二次世界大戦に参加しなかったパラレルな世界。運命に注文された〈世界〉という絵を作る時影…死神、なのかな。絵筆はその時々で必要で。でもパラレルワールドは存在してるので、注文される世界もいくつもあるのかも。
「カイムルとラートリー」もとても良かったです。喋る「崑崙虎」かいむる、かわいいし健気。ラートリーも賢くてよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ雰囲気のある短編を多く創っている著者、がっつりした長編は初めて読んだが、とても読み応えがあった。
敢えて取っ散らかる形で書かれていた時空が終盤に向けて収斂していく様は、美しくさえある。
作品全体に関しては、通底する大きなテーマ、のようなものが感じられなかったのが少し残念。
高い構成力を備え、リーダビリティーにも長けたこれだけの物語が、「面白い」だけで終わってしまうのは非常にもったいない。
理屈を超越した衆生の救いの象徴であり、まるでオーパーツともいうべき金色様の出自や幽禅家のルーツ、そしてその系譜がおそらくは熊悟朗や遥香に連なっているという設定などの裏に、より具体的なSF的バックボーンでも立 -
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「異神千夜」「風天孔参り」「森の神、夢に還る」「金色の獣、彼方に向かう」の4編。
元寇を舞台にした「異神千夜」で巫術師の女が連れて来た神の使いの鼬。そしてサンカになったと思われる異国人たち。それが残り三編に繋がって行くようです。もっとも繋がりは弱く、それぞれ独立した短編です。
結局、恒川さんの最大の魅力は異世界を作りだす能力ですね。
美しく、切なく、もの哀しく、どこか胸がうずくような世界。
それが、時にSFっぽい『金色機械』だったり、ノスタルジックな本作や『夜市』だったり、色々とあるのですが。
物語を描くためにそれに合った舞台を準備するのが普通な気がしますが、恒川さんの作品は舞台=異世界を完 -
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「きんいろきかい」と読む。
この本を読むときは、じっくりと腰を落ち着けて、その世界にどっぷりとはまりながら読むのがよい。
江戸時代。
人が生まれ、死んでいく。
人生の糸が複雑に絡み合い、結ばれ、断ち切られ、生と死を繰り返しながら歳月が流れ、やがてそれが新しい世を造る。
生命というものを持たない金色様は、昔、月からやってきたそうだ。外見は(おそらく)C3POのようで、チャーミングなところもあり、でもとても身軽でとても強い。金色様はこの世の移り変わりを、様々な人に常に寄り添いながら見守ってきた。
この物語は、手で触れただけでそのものの命を奪うことができるという不思議な力を持つ遙香という女 -
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現世から隔離された隠れ里「穏」に暮らす少年が、とある秘密を知ったことで穏を追われ、少年に取り憑く「風わいわい」と共に旅に出る。
やはり恒川さんが描く異界は憧れを抱くほどに美しく魅力的!
とにかく一つ一つの設定やディティールの発想力に惚れ惚れする。
この不思議でたおやかな世界観にいつまでも浸っていたくて読み終わりたくないとすら思った。
その幻想世界の中に不意打ちのように現れる醜悪な人間の描写…この毒気もまたいいアクセントになっている。
おや?と戸惑うくらい空気感が変わる章を重ね、やがて「そういうことだったのか」と一つに繋がる気持ちよさ。
先が全く読めない展開に本当にドキドキしながら読んだ。
それ