村上春樹のレビュー一覧

  • 遠い太鼓

    Posted by ブクログ

    端的に言って期待以上にめちゃめちゃ面白い分厚いエッセイで、「ノルウェイの森」「ダンスダンスダンス」の副読本というと言い過ぎかもだが、脂の乗ってる30代春樹さん特有の文章(太字の使い方とか)を堪能できるエッセイはこれしかないはず。

    特に序盤のギリシャパートは初期作の雰囲気がぷんぷんで、地図を描いてもらいその地図にキスをするくだりを絵で説明するトピックは、ギャグとしてとても冴えている。後半のローマへの不満パートは読んでいるこちらがイライラしてくるほどの実況ぶりで、流石だなと思う。

    0
    2025年07月19日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉前編―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「しかし正確に言えば、それはただの偶然でない。君たち二人の運命が、ただ成り行きによってここで邂逅したわけではない。君たちは入るべくしてこの世界に足を踏み入れたのだ。そして入ってきたからには、好むと好まざるとにかかわらず、君たちはここでそれぞれの役割を与えられることになる」「この世界に足を踏み入れた?」「そう、この1Q84年に」

    はあ、面白い。面白い。1Q84年に、月が2つの世界に踏み込んだ。

    0
    2025年07月18日
  • パン屋再襲撃

    Posted by ブクログ

    パン屋再襲撃、象の消滅、ファミリー・アフェアという面白い短編が三作も続いて収められており、特にパン屋再襲撃、ファミリー・アフェアの二つはユーモアに溢れた作品であり、あまり本を読まない人にとっても読みやすい事請け合いである。
    ねじまき鳥と火曜日の女たちというねじまき鳥クロニクルの種となる様な短編もあり、こなれてきた読者としても重要な一冊だ。

    0
    2025年07月16日
  • 海辺のカフカ(下)(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    傑作中の傑作 傑作中の傑作、壮大な物語のラスト45章からは、川端康成の雪国のようなノーベル文学賞ものの、強烈な共感を呼ぶ。村上春樹の世界と自分たちの世界が深く共振する感覚を覚える。
    タフな15歳の少年の物語は、幾多の展開をした後、確固たる一つの束となってここに終結する。

    0
    2025年12月06日
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    村上春樹の作品の中でも最高傑作と名高いだけあって、現実世界のハードボイルドワンダーランドと深層世界である世界の終りというパラレルワールドで展開される世界観がとにかく秀逸でした。
    現実世界では苦や悲しみもありながらも感情が伴う世界で、深層世界ではそういった苦しみや争いなどがなく平穏で安定している代わりに心が喪失している世界を表しています。
    ラストシーンも含めて読み手に解釈の余地を与えているので、人によって感じ方は大きく変わりそうです。そういった点も本作の魅力の一つだと思います。
    ストーリー自体は難解ではあるものの村上春樹の作品の中では比較的読みやすい部類に入ると思います。自分の人生哲学を踏まえて

    0
    2025年07月16日
  • 走ることについて語るときに僕の語ること

    Posted by ブクログ

    初の小説じゃない春樹

    今年から走り始めたから、春樹の目を通して走ってみたいな思って、電車時間の読み物として読んでみた
    最近は暑くて走りより泳いでるから、結果的に読んでる期間一度も走らなかったけど、おかげで電車時間が癒し時間になった

    what we talk when we talk about love
    愛について語る時に私たちの語る事が愛以外のものであるように
    本書は走る事を語ってるようで、小説のことや生き方を語っていた

    ポニーテールの比喩と、自分のネイチャーをボストンバッグに比喩していた文章が特に印象に残った
    流れるような美しい文章、一見全然関係ない2つの事柄がすんなり共通してしまう

    0
    2025年07月06日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

    Posted by ブクログ

    サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を村上春樹さんが翻訳していること、併読している『ギンガムチェックと塩漬けライム』(鴻巣友季子著)で初めて知りました。そして、本書に辿り着きました。

    村上さん、『キャッチャー』(『ライ麦畑』)を大絶賛でした。翻訳という大変なお仕事をするのですから、当然といえば当然ですが。『キャッチャー』(『ライ麦畑』)を読んだら、(どちらかでも)本書は必読だと個人的に思います。

    村上さんの翻訳を巡っての柴田さんとのお話は、とにかくおもしろい! 野崎訳『ライ麦畑でつかまえて』を読み、ちょっと理解が難しいところが、こんがらがった糸がほどけたように分かり、すっきりしまし

    0
    2025年07月03日
  • 1973年のピンボール

    Posted by ブクログ


    「僕」が双子と暮らし、ピンボールを見つけ出し綺麗に別れることで直子との過去も断ち切り、(ピンボール=直子)
    鼠は「進歩や変化は破滅の過程に過ぎない」とのことを言っていたが、街をでる決心をし、現状を変えようとしていた(=破滅の道へ)

    過去をたちきり前へ進む「僕」と、
    変化を求め破滅とされる前へ進む鼠
    (同じ方向を向いてるようで2人は互いに逆方向へ)? 東と西に、右に左に、上に下に、

    0
    2025年06月27日
  • アフターダーク

    Posted by ブクログ

    とある都会の一晩を複数の視点から描いた物語。村上春樹らしいと言えばらしいが、他作品とは一風変わった空気感のある構成だった。個人的にはハッピーエンドと読み取ったが、ある登場人物の言動には疑問を感じる点もあった。本当の闇はどこに潜んでいるのか、そして我々我々がちょっとした隙に落ち込んでしまうような、そんな近いところにいるのではないか、と不安を覚えた。確かに悪と呼べるようなもの、どうしようもない仕組みが身近にはある。ただ、それはそれとして時間が過ぎ去れば夜が明ける、そんな希望を感じるお話だった。

    0
    2025年06月27日
  • 職業としての小説家(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    村上春樹がどのようにして小説家を志したか、どのようにして小説を書いていいのか、どう悩みどう見切りをつけ、どう心がけているのかが明らかになっていく。過去のインタビュー集に対する回答がまとまっており、読み進める中で自分の考えも整理されていき、新しいものの見方ができるように思う。もう一度、村上さんの作品を読み直したいと思える、そんな本でした。小説家とは素晴らしい職業ですね。

    0
    2025年06月27日
  • 1Q84―BOOK3〈10月-12月〉後編―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    1Q84のBOOK3~6の感想です。

    牛河がメインキャラ入りしているのは驚いた。
    哀れな最期だったけど・・・。
    ふかえりが出てこなくなってから途端につまらなくなっちゃった。やっぱり動いてる時が良かったね。
    青豆ぐらい激しく愛して、でもそれを受けいれる天吾・・・。
    なんでだろう、不安にならないのかな。うらやましい。すてき。

    以下はお気に入りの文引用です。
    「明日の今頃、私はどこにいるのだろう(略)でもそんなのは些細なことだ。天吾がこの世界に存在しているという事実に比べれば。」
    「説明されないとわからないのであれば、説明されてもわからない」
    「靴は、利用されるだけ利用されて今は死に瀕した哀れな

    0
    2025年06月26日
  • 1973年のピンボール

    Posted by ブクログ

    テネシー・ウィリアムズがこう書いている。過去と現在についてはこのとおり。未来については「おそらく」である、と。
    しかし僕たちが歩んできた暗闇を振り返る時、そこにあるものもやはり不確かな「おそらく」でしかないように思える。僕たちがはっきりと知覚し得るのは現在という瞬間に過ぎぬわけだが、それとて僕たちの体をただすり抜けていくだけのことだ。

    0
    2025年06月25日
  • TVピープル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    三宅香帆の著作で人生を狂わす作品として紹介。
    だいぶご無沙汰な村上春樹でした。初出誌が生まれ年の1989年というのに親近感。

    標題作品の『TVピープル』を始め、全編不気味な雰囲気を纏っている。少し常識から踏み外した世界観から、私たちの日常生活への小さな歪みみたいなものを抉り出される感覚。

    『眠り』の舞台設定が我が身と類似点があり、1番ゾワっとした。眠りを超越し、傾向的な消費から解放され自分の時間を過ごしている。そこに自分の人生を生きているという充実感を覚える。反面、昼間の生活に対する不信感や、踏み込んだ嫌悪感を意識してしまうに至る。夫と息子の寝顔を見ながらの感情の吐露は凄みがある。

    さら

    0
    2025年06月23日
  • 騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(上)―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    一生をかけて何度も読み返す本リストみたいなものがあれば、
    この作品は間違いなく入る作品。

    今のところは5回ほど読んだ。

    0
    2025年06月22日
  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

    Posted by ブクログ

    素晴らしい なぜあれほどまでに完璧であった5人の結束がある日くずれ、4人から絶縁されるまでになったのか。その真相から紐解かれる、色彩を持たない田崎つくるの死と回生の物語。
    自分はどのような価値を持っているのか、鋭い内省と著者の言葉を失った死人への洞察から得る喪失感がひしひしと伝わってくる、また、さらにそれに対して私たちは、どう抗い生きていかなければいけないかを表現した至高の傑作。

    0
    2025年12月06日
  • 街とその不確かな壁(上)(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    今まで私の中で村上春樹は「好きではないが、なぜか読み続けている作家」だったのだが、この作品は好きな本だと強く断言できる小説だった。これまで個人的に苦手としてきた独特な比喩、アレゴリーによる難解さと性的描写がこの作品では殆ど感じられなかった。確かにいくつかの「不確かな」辻褄やアレゴリー(それも楽しみの一つではある)は存在するものの最後には全て納得がいった。全ての意味を完全に理解した訳ではないが、自然に納得がいったのである。一度ほどけた靴紐がまた結ばれるように。あとがきをみると、第1部で終わった可能性もあったらしい。確かに第1部だけを切り取っても物語としてはありだなとは思った。しかし第2部と第3部

    0
    2025年06月17日
  • 神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    6編の短編からなる短編集。文庫本の最後に、各短篇の「初出」が書いてあるが、その全体が

    連作『地震のあとで』その一~その六

    と紹介されている。
    この「地震」は、阪神淡路大震災であるが、地震が起こったのが、1995年の1月であったのに対して、6編の短編のうちの5編が「新潮」に掲載されたのは、1999年8月号から、12月号までであり、地震から4年が経過している。このタイムラグが何を意味するのかは私には分からない。
    「地震のあとで」という連作であるが、6編の短編小説に、阪神淡路大震災はメインのモチーフとして登場しているわけではない。むしろ、たいていの作品の中では、「どこかに出てくる」といった程度の

    0
    2025年06月16日
  • 一人称単数

    Posted by ブクログ

    フィクションのようなノンフィクションのような。

    「クリーム」がとても好きだった。
    「そんなときは何も思わず何も考えず、ただ目を閉じてやり過ごしていくしかないんじゃないかな。大きな波の下をくぐり抜けるときのように」という言葉を大事にしたいと思った。

    0
    2025年06月11日
  • 雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行―

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ギリシャ・アトス半島とトルコ一周の旅行記。

    ギリシア正教の聖地であるアトス半島の独特の空気感、トルコで生きる人々の強さのようなものが垣間見える。旅とチャイが好きなのでトルコ行きたくなりました。

    ウォータークーラーの水飲んで下痢した話が出てきて、昔の人は無菌の飲み物としてお酒を重宝したってのは本当だったんだなあと思ったけど、その後ビールでも下痢していてもうどうしようもない

    高度資本主義教徒

    0
    2025年06月10日
  • 猫を棄てる 父親について語るとき

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    父の心に長いあいだ重くのしかかってきたものを-息子である僕が部分的に継承したということになるのだろう。人の心の繋がりというのはそういうものだし、また歴史というのもそういうものなのだ。その本質は〈引き継ぎ〉という行為、あるいは儀式の中にある。その内容がどのように不快な、目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない。もしそうでなければ、歴史というものの意味がどこにあるだろう?【P63】

    たとえば僕らはある夏の日、香櫨園の海岸まで一緒に自転車に乗って、一匹の縞柄の雌猫を棄てにいったのだ。そして僕らは共に、その猫にあっさりと出し抜かれてしまったのだ。何はともあ

    0
    2025年06月10日