村上春樹のレビュー一覧

  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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    素晴らしい なぜあれほどまでに完璧であった5人の結束がある日くずれ、4人から絶縁されるまでになったのか。その真相から紐解かれる、色彩を持たない田崎つくるの死と回生の物語。
    自分はどのような価値を持っているのか、鋭い内省と著者の言葉を失った死人への洞察から得る喪失感がひしひしと伝わってくる、また、さらにそれに対して私たちは、どう抗い生きていかなければいけないかを表現した至高の傑作。

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    2025年12月06日
  • 街とその不確かな壁(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    今まで私の中で村上春樹は「好きではないが、なぜか読み続けている作家」だったのだが、この作品は好きな本だと強く断言できる小説だった。これまで個人的に苦手としてきた独特な比喩、アレゴリーによる難解さと性的描写がこの作品では殆ど感じられなかった。確かにいくつかの「不確かな」辻褄やアレゴリー(それも楽しみの一つではある)は存在するものの最後には全て納得がいった。全ての意味を完全に理解した訳ではないが、自然に納得がいったのである。一度ほどけた靴紐がまた結ばれるように。あとがきをみると、第1部で終わった可能性もあったらしい。確かに第1部だけを切り取っても物語としてはありだなとは思った。しかし第2部と第3部

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    2025年06月17日
  • 神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫)

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    6編の短編からなる短編集。文庫本の最後に、各短篇の「初出」が書いてあるが、その全体が

    連作『地震のあとで』その一~その六

    と紹介されている。
    この「地震」は、阪神淡路大震災であるが、地震が起こったのが、1995年の1月であったのに対して、6編の短編のうちの5編が「新潮」に掲載されたのは、1999年8月号から、12月号までであり、地震から4年が経過している。このタイムラグが何を意味するのかは私には分からない。
    「地震のあとで」という連作であるが、6編の短編小説に、阪神淡路大震災はメインのモチーフとして登場しているわけではない。むしろ、たいていの作品の中では、「どこかに出てくる」といった程度の

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    2025年06月16日
  • 一人称単数

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    フィクションのようなノンフィクションのような。

    「クリーム」がとても好きだった。
    「そんなときは何も思わず何も考えず、ただ目を閉じてやり過ごしていくしかないんじゃないかな。大きな波の下をくぐり抜けるときのように」という言葉を大事にしたいと思った。

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    2025年06月11日
  • 雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行―

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    ネタバレ

    ギリシャ・アトス半島とトルコ一周の旅行記。

    ギリシア正教の聖地であるアトス半島の独特の空気感、トルコで生きる人々の強さのようなものが垣間見える。旅とチャイが好きなのでトルコ行きたくなりました。

    ウォータークーラーの水飲んで下痢した話が出てきて、昔の人は無菌の飲み物としてお酒を重宝したってのは本当だったんだなあと思ったけど、その後ビールでも下痢していてもうどうしようもない

    高度資本主義教徒

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    2025年06月10日
  • 猫を棄てる 父親について語るとき

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    ネタバレ

    父の心に長いあいだ重くのしかかってきたものを-息子である僕が部分的に継承したということになるのだろう。人の心の繋がりというのはそういうものだし、また歴史というのもそういうものなのだ。その本質は〈引き継ぎ〉という行為、あるいは儀式の中にある。その内容がどのように不快な、目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない。もしそうでなければ、歴史というものの意味がどこにあるだろう?【P63】

    たとえば僕らはある夏の日、香櫨園の海岸まで一緒に自転車に乗って、一匹の縞柄の雌猫を棄てにいったのだ。そして僕らは共に、その猫にあっさりと出し抜かれてしまったのだ。何はともあ

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    2025年06月10日
  • もし僕らのことばがウィスキーであったなら(新潮文庫)

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    村上春樹はエッセイや紀行文がいいぜ!というのを言われたりそこここで見かけたので、読むぜ!の気持ちで手に取った。

    大変良いものでした。
    びっくりした。思っていたよりもずっと良い。
    私はウイスキーには全く明るくないし飲んだことがあるものもボウモアくらいで、本の中で表現されるような味の雰囲気や表情を理解することはできないわけだが、この饒舌さは実に楽しい。好きなものを言葉を尽くして語る様子は気分があかるくなるね。
    注釈の8割が本筋にはちょっと関係ないけれどどうしても言っておきたい事って感じの内容で、そこも良かった。

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    2025年06月08日
  • ねじまき鳥クロニクル―第2部 予言する鳥編―(新潮文庫)

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    何度か読み返している本書を数年ぶりに再読した。
    今回は前回よりも深く物語を理解できたような気がする。
    クミコからの長い手紙に彼女の真摯さのようなものを感じ、
    笠原メイからは、現実から違う世界に行こうとする岡田亨をなんとか引き留めようとするいじらしさのようなものを感じ、
    カティサーク飲みたいなぁと感じた。
    また、数年置いて読みたいなと。

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    2025年06月06日
  • 村上春樹、河合隼雄に会いにいく

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    暴力、そして『ねじまき鳥クロニクル』の副読本
     ユングとか河合隼雄とかの怪しさは、いったん脇に置いておく。
     村上春樹の無意識的・形而上的な創作技法が、多少なりともつまびらかにされてをり、それは氏にしては珍しく赤裸々に開陳されたものだと思ふ。
     特にこの対談のメインとなるのは、暴力についてだ。それは氏が『ねじまき鳥クロニクル』を書き終へたばかりといふこともあり、身体から出てきた(頭で考へただけではない)物語だからだ。
     同じく暴力を扱った作家として、村上龍と大江健三郎の名前もすこし出てくる。

     河合隼雄の心療経験の話が面白く、それがうまく村上春樹と噛み合ってゐる。河合が接した患者の心療経験か

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    2025年06月08日
  • 村上T 僕の愛したTシャツたち

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    Tシャツの写真をみてるだけで楽しい。最後のインタビューは蛇足っぽいけど、トニー滝谷の正体が判明したりするので侮れない。

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    2025年06月04日
  • 騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編(下)―(新潮文庫)

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    再読

    村上春樹の作品にはいずれも共通した、独特の世界観のようなものがあり、「騎士団長殺し」もその例に漏れませんでしたが、他の作品と比べても圧倒的に読みやすいと思います。

    じわりと身体の隅々まで文章が行き渡り、ラストもとても綺麗にまとまって、読後感は最高でした。

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    2025年06月02日
  • 風の歌を聴け

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    この20世紀後期感、その時代を生きた訳ではないので実際の雰囲気は分からないが、この時代に創られた良質な作品(小説に依らない)に共通するムードがこれ以上ないくらいに感じられる。

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    2025年12月28日
  • ねじまき鳥クロニクル―第1部 泥棒かささぎ編―(新潮文庫)

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    ねじまき鳥クロニクルを読むのは三度目か四度目になるかと思う。初めて読んだ時からもう二十年くらい経つ。読むたびに自身が感じることが変わり、面白いと思うポイントが変わってきている。これは私の読解力が少なからず成長しているということなのか。
    電話の女、加納マルタ、加納クレタ、そして本田さん…。魅力的なキャラクターが次々に登場するのがとても楽しい。そしてそれらが重なり合って物語が進むのですが、文章や世界観に自分の脳がゆらゆらと揺らされているような感覚になり眠くなる。そう村上春樹は眠くなるのです。この眠くなるという点は、何度読んでも変わらない。
    作者と同じ時代を生きて、作品を読めるということに感謝。だっ

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    2025年05月31日
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)(新潮文庫)

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    上巻から一気に怒涛の展開。
    どちらかというと上巻は癒し系の話かと思ったのに、全然違うかった。
    でも最後の4章は本当に涙無しでは読めなかった。

    世界には涙を流すことのできない悲しみというものが存在するのだ。深い哀しみというのは涙という形をとることさえできないものなのだ。

    誰の心にも諦めたもの、閉ざしてしまったものがあり、でもその諦めたものの、澱のようなものが少しでも残っているならばそれで生きていくことができるのだ。

    世界の終りのラスト、影と私の会話は、自分の心のなかにずっと留め続けたいと思う。この本のことは絶対に大事してゆきたい。

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    2025年05月31日
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(新潮文庫)

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    冒頭から惹きつけられる。
    ハードボイルドワンダーランドと世界の終りが交互に綴られていく展開にグイグイ引っ張られて。
    おそらく現代(ハードボイルドワンダーランド)の硬く無機質な世界観と、世界の終りの牧歌的で美しい風景。
    2つの世界の僕と私の2人にとても好感が持てる。
    主人公以外の登場人物全て、わりと良い人。
    下巻がとても楽しみになる。
    村上春樹の最初の長編なんですね。やっぱりすごいな!

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    2025年05月31日
  • カンガルー日和

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    100%の女の子に出会うの話と
    とんがり焼きの盛衰が特に好みだった。
    「僕」の作った、とんがり焼きが食べたい。

    どれもよく分からないのに、さっと読めて楽しめる。
    そして「やれやれ」があちらこちらに。

    サクッと村上春樹を楽しみたいときに良い文庫本だ。

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    2025年05月28日
  • レキシントンの幽霊

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    秀逸な短編が収められた短編集である。緑色の獣などは非常に模範的な短編であり、オチの付け方、過不足ない情景描写に文章表現、隅々まで緻密に作り上げたのだろうか、しきりに感心してしまった。他タイトルも総じて村上春樹らしさが存分に味わえる物語で、彼に傾倒している私にとって至福の時間を与えてくれたことは最早言うまでもない。

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    2025年05月26日
  • TVピープル

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    加納姉妹の話大好き!
    眠れない女性の車のシーンずっと覚えてる。アンナカレーニナ読もうかな,とあれからずっと思ってる

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    2025年05月24日
  • 辺境・近境

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    ネタバレ

    確か高校の現代文の先生が読んでいたので、本書の存在は知っていた。個人的にも香川、西宮など、ゆかりがある場所が多く出てくるのでそれだけでも楽しく読めたが、加えてこれからある意味での旅に向かう自身にとって響く言葉が多かった(詳細は以下、多くなってしまった)。
    改めて、何かを問うとき、問われているのは自分自身なのだと感じる。どこかへ行くとき、災難に見舞われるとき、発見するのは自分自身なのだと思う。旅とは、ある種の諦念(思い通りにならないこともそりゃ沢山ある、という姿勢)を獲得する過程であり、これを獲得するからこそ、逆説的ではあるが、それでも不変なもの(どうにも変えられない自分の一部、等)に目を向けら

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    2025年05月22日
  • 職業としての小説家(新潮文庫)

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    小説家に対するイメージが良い意味でガラッと変わった。小説家は自堕落で破天荒な生活を送っている人、という偏見を持っていたが、長く小説を書き続けるにはある種の体力的な強靭さが必要というのは考えを改めさせられた。
    また、本、特に小説に対する著者の熱い想いというのが存分に伝わってきた。『小説というものは、物語というものは、男女間や世代間の対立や、その他様々なステレオタイプな対立を宥め、その切先を緩和する機能を有しているものだと、僕は常々考えているからです。』もっともっと本を読んで、自分の視点を広げていきたいなと強く思った。

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    2025年05月21日