あらすじ
1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。
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全編好きだったな。
テーマの1つは、阪神・淡路大震災であるが、直接的な被害などは書かれていない。地震大国の日本で生きていくということは地震と付き合っていくことだが、直接的な被災をしなくても地震からは何らかの影響は受けるし、忘れてはいけない。
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6編の短編からなる短編集。文庫本の最後に、各短篇の「初出」が書いてあるが、その全体が
連作『地震のあとで』その一~その六
と紹介されている。
この「地震」は、阪神淡路大震災であるが、地震が起こったのが、1995年の1月であったのに対して、6編の短編のうちの5編が「新潮」に掲載されたのは、1999年8月号から、12月号までであり、地震から4年が経過している。このタイムラグが何を意味するのかは私には分からない。
「地震のあとで」という連作であるが、6編の短編小説に、阪神淡路大震災はメインのモチーフとして登場しているわけではない。むしろ、たいていの作品の中では、「どこかに出てくる」といった程度の扱いである。そういう扱いになっている理由も私には分からない。あれだけのことがあったけれども、それでも、時間は流れているのだということを示したかったのかもしれない。
この短編集は、これまで読んだ村上春樹の短編集の中で最も好きになった。特に「タイランド」と「蜂蜜パイ」が好きだ。
「蜂蜜パイ」の最後の部分は下記のようなものだ。
【引用】
これまでと違う小説を書こう、と淳平は思う。夜が明けてあたりが明るくなり、その光の中で愛する人々をしっかりと抱きしめることを、誰かが夢見て待ちわびているような、そんな小説を。でも今はとりあえずここにいて、二人の女を護らなくてはならない。相手が誰であろうと、わけのわからない箱に入れさせたりはしない。たとえ空が落ちてきても、大地が音を立てて裂けても。
【引用終わり】
ここに書いてあることの意味は、少し補足しなければ分かりにくいとは思うが、補足をして中身が分かるようになることが大事なことではない。
「大地が音を立てて裂けても」は地震を示すのだろう。たとえ地震が起きて大地が裂けても自分は愛する人を護るし、夜明けの光の中でその愛する人をしっかりと抱きしめることがもうすぐ出来るのだという希望を持ち続けている人がいることを小説で示そう、という決意なのだろうか。
この部分は、とても美しい。
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テレビドラマを機に原作も読んでみた。
ドラマは「続・かえるくん東京を救う」というオリジナルの物語で幕を閉じたので、寧ろ原作はどうなっているのか気になった。
原作の最後の短編
「蜂蜜パイ」
めちゃくちゃ良い話じゃないか。
ドラマで出てきた箱も登場するし、これをドラマの最終話にしなかったのはなぜなんだろう?
なぞ。
ただ、岡田将生くんが演じた小村は原作より好きでした。
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村上春樹の不気味な短編が好き。性にこだわり過ぎてるところは鬱陶しいが。
どれもよかったが、UFOが釧路に降りる、アイロンのある風景がとりわけ印象深い。箱の中身、気になる。
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「本読むふたり」という小説での、話のキックオフになった作品。そこから興味を持って読んでみた。また、映画アフターザクエイクが公開されて、気になっていたが、りかいできるかがわからなかったので、チャレンジ。
・UFOが釧路
・アイロンのある風景
・神の子どもたちはみな踊る
・タイランド
・かえるくん、東京を救う
・はちみつパイ
尻上がりによくなっていった。
村上春樹苦手意識あったけど、読みやすかった。
必要なのか、不必要なのか、急にくる性描写や、下ネタがある。
阪神淡路大震災を受けての短編集。
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⭐️神の子どもたちはみな踊る
阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件をモチーフにしているという。全体的に暗いトーンだが、連作短篇の終わりにいくほど救いがあるように感じる。「アイロンのある風景」「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」
が好み。焚火に癒され、光と闇の闘いに翻弄され、まさきちととんきちにほっこりする。村上春樹ワールドにハマりそうだ!
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やっぱり引き込まれる。
どの短編も読みやすかったけど
かえるくん、東京を救うが特に好き。
これは以前子ども向け?の村上春樹の単行本にあり記憶していた。
宗教と地震は地下鉄サリン事件と阪神淡路大震災から来てるのかと他の人の感想を読んでなるほどと思った。2世の視点が1Q84にも少し通じるものがある。蜂蜜パイの結末がハッピーエンドでよかった。
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映画アフターザクエイクを見て2周目
蜂蜜パイと釧路〜が最高
失うことで、失う理由を知ることでしか学べない辛さが印象的。
蜂蜜パイで、小夜子は淳也と結婚するのでしょうか。教えてください。
Posted by ブクログ
1995年は阪神大震災と地下鉄サリン事件が起こった年。地震と宗教、共通点があるはずはないのですが、同じ年にこの二つの出来事が起きたということは、この世には人の手の届かない何か大きなものがあるのでは?そしてその大きなものを村上春樹は知っているのでは?などと思わせるような不思議な短編集。
登場人物は、被災者や被害者ではないけれど、この2つの出来事が心に小さな余波を残している人たち。独特な文体を取り混ぜて、言葉を話すカエルや天の光の中でひたすら踊る若者など不思議なキャラクターも登場します。彼らが何を抱えているのか、何をしたいのかはさっぱりわからず、ただ淡々と流れるように物語が進み、結局謎のまま終わり。でも心に何かが残ります。メッセージがあるとすれば、「静まり返った心のいちばん深い場所でそれは起こった。生きること、死ぬこと、そして眠ること。」という一節か。
Posted by ブクログ
阪神淡路大震災を受けての短編集。
好きな作品が多かった。
・UFOが釧路に降りる
妻の失踪、釧路に荷物届ける。
何かが起こるわけじゃないのに心がざわっとする。
・アイロンのある風景
家出した順子、放蕩息子の啓太、焚き火が得意な絵描きの三宅さん。
焚き火を見ながらぼんやりと過ごす時間を文章で表現できるの、ほんとすごい。
ラストがとても好き。
・神の子どもたちはみな踊る
1Q84の青豆の設定はここからだろうか。
途中まですごく惹きつけられたが、踊るところからついていけなくなった。
・タイランド
40代の女医のさつきと、タイの観光ガイド兼運転手のニミットとの物語。
ニミットが素敵。空気感が好き。
・かえるくん、東京を救う
信金で働く40歳の片桐と、かえるくん。
ほんわかした話かと思いきや、終盤の臨場感と恐怖がすごい。冷や汗かいた。
・蜂蜜パイ
学生時代から仲の良い三人組。二人が結婚して子どもが産まれ、離婚してからも仲の良い四人組。
すごく良かった。最後じーんときた。箱はよくわからなかった。
かわいそうなとんきち。ふかえりを思い出した。かわいそうなぎりやーくじん。
Posted by ブクログ
1995年という年に寄り添った作品。今年で20年目になる秀作。
不安と恐怖に満ちたあの一年を揺かごに乗せたような哀しみと慈しみ、そして希望が感じられる。
『かえるくん、東京を救う』、書き下ろしの『蜂蜜パイ』が特にオススメ。
Posted by ブクログ
地震が起きると現地の人や現地の被災状況がテレビに映し出されてどうしても現地のことばかり考えてしまうけど、別れた夫が住んでいるとか元々住んでいたとかその時現地にいなくても関係のある人は沢山いるんだなと改めて思った
どの短編の主人公も皆して何かに揺らいで何かを抱えている
地震の被害のように見て分かるものではない
そんな対比があるのかなと思った
アイロンのある風景とかえるくん、東京を救うと神の子どもたちはみな踊るが好きだったな
Posted by ブクログ
村上春樹に少し苦手意識があったけど、これはすんなり自分の中に入れられた。違いはなんだ?
ドラマが放送されるということで読んだ。
「かえるくん東京、を救う」も「神の子どもたちはみな踊る」もよかった。
村上春樹の本当に表現したいことが理解できたかは定かではないけど(というか多分できていないけど)、そういう分かりえる感情ばかりではないし、震災がどう誰に影響するのかも分からないし、何をもたらすかはわからないし、分からないことだらけなんだよなと思えた。
分からないことはなるべく面白い方に考えて、ユーモア溢れて生きたいなと、かえるくんを知って思った。
「かえるさん」を必ず「かえるくん」と訂正するのが好き。
Posted by ブクログ
NHKでやっていたドラマは見逃しましたが笑…面白かった!6つの短編からなる物語で、阪神淡路大震災という共通テーマはあるものの、直接的には繋がっていない。
特に好きだったのは、「アイロンのある風景」「タイランド」「かえるくん、東京を救う」かな
UFOが釧路に降りる:妻が実家に帰り離婚。釧路に小箱を運ぶ男の話
アイロンのある風景:火を囲う人々
神の子どもたちはみな踊る:新興宗教の信者2世だった主人公が生物学的父親を追って、一人踊る
タイランド:タイの休暇で水泳をしながら夢の予言をされる
かえるくん、東京を救う:かえるくん!
蜂蜜パイ:春樹〜だけど、あまり好きじゃなかったな笑。大学時代からの三角関係が自分に落ち着く話
「アイロンのある風景」
…順子は焚き火のにおいに包まれて目を閉じていた。肩にまわされた三宅さんの手は大人の男にしては小さく、妙にごつごつとしていた。私はこの人と一緒に生きることはできないだろうと順子は思った。私がこの人の心の中に入っていくことはできそうにないから。でも一緒に死ぬことならできるかもしれない。(p.77)
「神の子どもたちはみな踊る」
…体がいくつもの図形を描いた。そこにはパターンがあり、ヴァリエーションがあり、即興性があった。リズムの裏側にリズムがあり、リズムの間に見えないリズムがあった。彼は要所要所で、それらの複雑な絡み合いを見渡すことができた。様々な動物がだまし絵のように森の中にひそんでいた。中には見たこともないような恐ろしげな獣も混じっていた。彼はやがてその森を通り抜けていくことになるだろう。でも恐怖はなかった。だってそれは僕自身のな中にある森なのだ。僕自身をかたちづくっている森なのだ。彼自身が抱えている獣なのだ。(p.109)
「タイランド」
…「あなたは美しい方です、ドクター。聡明で、お強い。でもいつも心をひきずっておられるように見える。これからあなたはゆるやかに死に向かう準備をなさらなくてはなりません。これから先、生きることだけに多くの力を割いてしまうと、うまく死ぬることができなくなります。少しずつシフトを変えていかなくてはなりません。生きるここと死ぬことは、ある意味では等価なのです、ドクター」(p.142)
「かえるくん、東京を救う」
…みみずくんのような存在も、ある意味では、世界にとってあってかまわないものなのだろうと考えています。世界とは大きな外套のようなものであり、そこには様々なかたちのポケットが必要とされているからです。…(p.161)
…かえるくんは立ち上がり、にっこりと微笑み、するめみたいに平べったくなって、閉じたドアの隙間からするすると出ていった。片桐はひとりで部屋の中に取り残された。テーブルの上に湯飲みが二つ残っていたが、それいあいにかえるくんが部屋に存在したことを示すものはなかった(p.167)
…ひどい人生です。ただ寝て起きて飯を食って糞をしているだけです。何のために生きているのか、その理由もよくわからない。そんな人間がどうして東京を救わなくてはならないのでしょう?」
「片桐さん」とかえるくんは神妙な声で言った。「あなたのような人にしか東京は救えないのです。そしてあなたのような人のために僕は東京を救おうとしているのです」(p.171)
「でもそのかわり、かえるくんは損われ、失われてしまった。あるいはもともとの混濁の中に戻っていった。もう帰ってはこない」(p.186)
Posted by ブクログ
最近nhkの夜のドラマで始まり、UFOが釧路に降りる とアイロンのある風景 まで見たところで一旦止めまして。
アイロンのある風景はすごく印象に残っていて過去に読んでると確信しましたが、UFOの方がよくわからず、、、改めて再読しました。
私の中ではタイランドとアイロンのある風景の二つが圧倒的に好きですが、最期の書き下ろしの蜂蜜パイがなんだか春樹にしてはほんわかしていてそれもまた珍しく感じる作品。
こう、結局好きだからどーしてもいいと思ってしまうwまさに推しなんですね。
今まで春樹の本がドラマや映画になるとどうしても今一つの感情になっちまうのですが、これからドラマ後半みてみます。なんでも後半戦は時間が今にズレ込んでるらしい。(前半2作は阪神・淡路大震災の時期のまま)
あとはアイロン~ででてきたジャックロンドンの焚き火を今から読みます。
Posted by ブクログ
救いがあるのか、ないのか、よくわからない。救いというものをそもそも意識した小説ではないのかもしれない。
地震という人間の力ではどうによならない出来事によって、震源地から離れて生きている登場人物にも影響が及んでいる。これまでの日常の歯車が狂ったり、壊れたりしている。しかしそれが悪い影響だけなのかと言われたらそうでもないのかもしれない。
ただ不安にさせられることを言われたり、それを回収されることなく放置されたりするので分かりやすい救いのようには感じられない。
ドラマを見たのでいくつかの作品は映像を思い出しながら読むことになった。映像の手助けがなければさらに混沌とした意味のわからない物語として読むことになったと思う。かえるくんが指を一本立てて訂正するのは毎回あったのかな?
映像にはなかったが、蜂蜜パイの物語は唯一、主人公がこれからの二人を護る、3人のバランスに戻り前に進むという意思が感じられ希望のようなものがかすかに見えた。
Posted by ブクログ
阪神淡路大震災が起こってから、寝食を忘れて地震の報道をテレビで見続ける妻。五日目に書き置きを残して家を出る。書き置きの内容は地震とは何の関係もない。あなたは中身が空っぽで、私に何も与えてくれない、というような意味。
村上春樹の作品では、妻や恋人が突然姿を消すことが多い。逃げられる方の男がそんなに酷い奴かというと、私にはそうも思えない。
何か、指し手を一手、間違えてしまったのでは?と思うことはある。むしろ、女の方が面倒臭い人間に思えることが多い。
「あなた、こんなに人が死んでるのに、よく平気な顔で日常生活を送れるわね」って、はっきり言えばいいじゃない?
「そりゃあ、被害に遭った人たちは気の毒だと思うけど、仕事には行かなくちゃいけないし、悲しくてもお腹は空くだろう?」とか、返すかな。
「あなたに決定的に足りないものは想像力だわ!」・・・まあ、あとは同じ結果になりますね。
故郷に帰れない事情を心に抱える人たち。三宅さん。さつき。ノルウェイ人。
三宅さんは自分の死をどこかで望み、さつきは「あの男」が死んでくれていたらいいのにと望む。
地震は人々に公平に、だが皮肉な運命を与えていく。
「生きることと死ぬことはある意味では等価」
似たような意味の言葉を、最近読んだ医療物で見た。
良く死ぬ事とは、良く生きる事。
「神の子」と言われて育った善也(よしや)。
ちょっと変わった名前だなと思って読んだが、ドラマで母親役の女優さんが名前を呼んだのが「ヨシュア」と聞こえて腑に落ちた。
なんとなく田端さんが名付け親なんじゃないかと思った。
どうして踊るのか、よく分からなかったです。ダンス・ダンス・ダンス。
かえるくんは、片桐の想像力の賜物なのか?
そして、箱である。
小村が運んだ箱は、茶色い包装紙で包まれた小さな「骨箱」のようなものと書かれている。
三宅さんが閉じ込められる冷蔵庫は、大きさ的に棺桶を連想する。
沙羅が夢の中で入れられそうになる箱は・・・。
箱は中身を守ってくれるものであると同時に、中身を閉じ込めるものでもある。
Posted by ブクログ
フランス・カナダ・ルクセンブルグ・オランダの合作アニメ『めくらやなぎと眠る女』を観て、直後にNHKドラマ『地震のあとで』第一話UFOが釧路に降りるも観た時点で、こりゃ原作を読まにゃなるまいと。
6編の短編集は初出『新潮』への連作『地震のあとで』その一〜その六
という事で各話通底してるのは阪神淡路大震災。
村上さんは神戸出身。
久しぶり(学生時代以来)の村上春樹。
思ったよりスッキリ、あまり悩まずに読めた。
そうは言ってもカエルくんの登場にはちょっと面食らったけど、とても魅力的なキャラクターだった。なんならミミズくんも憎めない。
そして冴えないおっさん片桐の哀愁が沁みる〜
最後の『蜂蜜パイ』は映像化には絡んでないのだが、個人的にいちばんグッときた。
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ドラマ化されたので再読。阪神大震災やオウム心理教の事件後、時間が経って書かれた短編集。
大震災、地下鉄サリン事件で人々の営みが変わり、経験しなくてもよいことを経験してしまった。地震やサリンで違う世界にきてしまったような不思議な感じを受けた。特に「かえるくん東京を救う」は、村上ワールドをとても強く感じた。
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阪神淡路大震災をテーマにした6つの短編が収録された小説。巨大地震という自然災害に対して、人々はどう感じ、どんな変化をもたらすのかを考えさせる。
それぞれの
お話しに、現長編作品のワードが出てきて
影だったり、突然のダンスだったり、
箱の闇への入り口だったり、
相変わらずの性の描写もあり
消化不良の未回収放置もあり、
発刊当時に読んでいたら
また違う感じ方をしていたかも知れなかったかな?
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思ったりよりも阪神淡路大震災に関連する話というわけではなく、むしろ大部分がそれを忘れさせるくらい日常的あるいはファンタジーな物語だったと感じた。最後に読んだこともあってか蜂蜜パイが印象に残っているが、結末が暗くなかったことがうれしかった。
Posted by ブクログ
これまで、村上春樹作品をまともに読んできませんでした。遠い昔、何だったか…読んで合わなかった記憶があり、そこからずっと「食わず嫌い」なんです、ハイ。感覚的なものなのでしょうが…。
6編の連作短編は、いずれも1995年2月の出来事という設定。読後の印象は、悪くないなと思いながらも、各編の比喩や象徴の意味がやや難解と思える部分があり、好みの差がありました。読み進めると、この年は1月に阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件があったことを自ずと想起します。
共通しているのは、主人公たちが震災から直接被害を受けていないものの、何らかの喪失の経験、先への不安を抱えて生きている点です。
そしてその暗示するものへ思いを巡らせました。確かに2月段階で翌月の大事件の予見は無理ですが、先々の不安はいつの時代の誰にも相通じる気がします。人は常に何らかの痛みを背負い、近くには防ぎようのない暴力的な危険が存在している…。
この世で暮らす限り、私たちを翻弄する傷や不安からどう抗っても逃れようがないねすね。誰にでも起こり得ることですから。だからこそ、どう向き合って受け入れるかを問うている気がしました。
(以下メモ書き)
本作は、「地震のあとで」として1999年に文芸誌に連載されたものをまとめ、2000年2月に刊行。英題は「after the quake」、2002年2月に文庫化。本年4月、本作中の4編が『地震のあとで』と題してドラマ化され、NHKで放送されたようです。
Posted by ブクログ
2025.11
ここ数年で映画化されているし
タイトルが好きで気になっていたけど
地震がテーマになっていることが
どうしても私の気を重くさせていた
でも映画を観たくて
それならその前に原作を観たくて
やっと読んだ
タイトル作の"神の子どもたちはみな踊る"
が一番分からなくて
急に性器の話になって笑ってしまった
村上春樹らしさ全開の短編集だった
心の奥の柔らかいところを突くような
ファンタジーたちだった
Posted by ブクログ
(感想を書くのはこの本で丁度1000冊目)
1995年の阪神淡路大震災をモチーフとした地震にまつわる短篇集。連載は1999年7の月(ノストラダムスの大予言でお馴染みの恐怖の大王が降ってくる月)の翌月から12月まで、プラス書き下ろし一篇。
村上春樹らしいといえばらしいような。
ラストの「蜂蜜パイ」と「アイロンのある風景」がよかった。沙羅(友人の子)と淳平の間で語られる、熊のくまきちととんきち(淳平本人も途中で間違えるが「とんちき」ではない)の話がとてもよい。
表題作になっている「神の子どもたちはみな踊る」が小説的には一番凝っているのだと思うけれど、「蜂蜜パイ」中の言葉を借りれば、「小説的展望」はあっても共感はしにくい内容か。宗教二世の悩み、という点では、安倍元総理襲撃事件を思い出してしまった。
Posted by ブクログ
きっとこの短編集は読んだはずなのだが、全く記憶に残っていなかった。タイランド、蜂蜜パイといった日常に近い短編の方が、阪神淡路大震災を意識の淵に置いた作品より読みやすかった。故郷を捨てあの揺れを体験できないまま廃墟を見つめることはとても苦しいことであろう。しかしあの震災を契機に世界は今につながる軋み始めたことをしっかりと思い起こさせる力があった。
Posted by ブクログ
村上春樹さんの作品はほとんど読み終えましたが、定期的に何か読みたくなりますね。たとえ僕の頭が大したことがなくて記憶に残らなくても。
阪神大震災のあとの世界を舞台にした6つの短編がおさめられている。
とはいうものの、地震のあった地域の話は一つも無い。
その一つに東京を救ったかえるくんの話があった。
2m近い大きさのかえるくんが、東京に大地震を起こそうとするみみずくんと
対決してなんとか東京壊滅をまぬがれる話。この話を読んでいて、
ノストラダムスの大予言のことを思い出した。
1999年当時、恐怖の大王はやってこなかったのではない。やってきたのだ。
ただ僕が彼を倒しただけ。人知れず世界を救っただけ。
なにげにこの話を友達にしたらアホを見るような目つきでみられたっけ。愚かものめ。
誰のおかげで平和が保たれているんだ。
なんてね。