あらすじ
古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは何だったのか? 椎の木の根元から突然現れた緑色の獣とそのかわいそうな運命とは。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極に行こうとしたのか……。次々に繰り広げられる不思議で、楽しく、そして底なしの怖さを秘めた7つの物語。
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様々な角度から「恐怖」を描いた作品。
レキシントンの幽霊は、これに似た話を入試問題で読んだことがある…夫が死んだショックでこんこんと眠り続ける母親と、眠り続ける母親を前に何もできず、孤独に鮭缶だけを食べ続ける子供の話…ケイシーをモデルにしたのかな?
氷男は、旦那の地元に帰った奥さんみたい。
7番目の男が1番怖い。眠れなくなった。恐怖に飲まれずそれを見つめなければならないというメッセージが心に残る。
めくらやなぎと眠る女 は、懐かしい場所に行った時に思い出がフラッシュバックして、色々考えてしまう時の思考が再現されていた。ストーリーの意味は分からないけど、物事を思い出す時の感覚とかはめっちゃわかる!
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秀逸な短編が収められた短編集である。緑色の獣などは非常に模範的な短編であり、オチの付け方、過不足ない情景描写に文章表現、隅々まで緻密に作り上げたのだろうか、しきりに感心してしまった。他タイトルも総じて村上春樹らしさが存分に味わえる物語で、彼に傾倒している私にとって至福の時間を与えてくれたことは最早言うまでもない。
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短編
村上春樹さんはなんだか流れるように美しい文章を運んでくれる
「時間は僕のまわりを心地よく穏やかに過ぎ去っていった。まるでぴったりとサイズのあった ひとがた に自分を埋め込んだような心持ちだった」
「そのあとでようやく、それに気がついた。音だ。
海岸の波の音のようなざわめきーその音が、僕を深い眠りから引きずり出したのだ」
どんな言葉も心を落ち着かせてくれるような
そんな文章たちの一冊
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「自己との切実なまでの対面」
本著は『めくらやなぎと眠る女』を除き、かの有名な『ねじまき鳥クロニクル』の後と、『ダンス・ダンス・ダンス』『TVピープル』の後に書かれた短編集である。
執筆された時期は作品毎に微妙に異なる。
だが読後に私が感じたのは、いずれの作品にも一貫として「自己との徹底的な対面がある」ということだ。
我々は自己との対面を避ける。特に内面的な事柄に関してだ。
背負った業や、現在進行系で抱えているものから目を背け、一時的な逃避に走る。
それは自己防衛に成りうると同時に、自身に重い枷を掛けることにもなる。
時には逃げることも良いだろう。臭いものには蓋をして、それを意識の外側に放置しておくのは精神の安定にも繋がる。
だがその蓋が得てして弾かれてしまったとき。そこからは深い悲しみや激情が溢れ出てくるだろう。
例えば、
納得のいかない自身の現状に目を背け、ひたすらに仕事に身を打ち込む。
人と心の通った関わりを避け、利己的な人間関係を構築する。
腹の底からやりたいことがあるのに、他者の評価や視線を気にして現状に甘んじる。
事の大小や程度が違えど、いかなる人間にもそういった経験はあるはずだ。
私はそれらから逃げるな、とは言わないし、言えない。だがいつか、嫌でも対面しなければならない時がやってくるかもしれない。
一方で、いつその時がやって来るのかは、私たちには予測ができない。
だからこそ私は、しっかりと自身の心の声を聞き、かつて損なわれた自己を省みて、日々を過ごさなければならないと感じた。
限りなくフィクションに近いノンフィクション。
読み返すときには本著が響かない、そんな人間になれれば、私にとっては御の字である。
ぜひご一読を。
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短編集。
「めくらやなぎと、眠る女」は、アニメ映画化されるものとは別の、こちらは短い版のようです。
村上春樹の作品は、長編よりどちらかというと短編やエッセイばかり読んでいる。
短編は、長編よりも物語は入り組んでおらず、不思議な物語の世界観に没入しやすい。
読後は、なんだかフワフワしていたり、ソワソワしていたりして、これはもう、特別な感じです。
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いずれも「過去」をめぐる話だった。
過去に囚われた人(沈黙、レキシントンの幽霊)過去とのみ生きると決めた人(氷男)、過去とはなんの関わりも持たないで生きると決めた人(トニー滝谷)などなど。
この頃彼は過去作の改作にこだわっていたというのも面白い。
めくらやなぎと眠る女、蛍はどちらも改作をしていて、ノルウェイの森に繋がっている。
村上春樹にとってノルウェイの森はそんなに思い入れの深い作品だったのだな。
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私は村上春樹氏の小説がとても好きだ。文章が好きなので、斜め読みせず、時間をかけて読みたい。そして、読み終わったら、しばらく余韻に浸って、内容について考えていたい。
この小説で、夏休みの読書感想文が書けるのか?と聞かれたんだけど、私には書けない。というか、夏休みの宿題で、ちゃちゃっと書ける感想文用の小説ではない、ということは、わかった。もちろん、熟考して書けば、良い感想文は書けると思うけども。
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全体的にサラッと読めて、奥が深い。
とくに七番目の男が印象的だった。
話の最後の恐怖について語るところで、
「なによりも怖いのは、その恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうことです。そうすることによって、私たちは自分の中にあるいちばん重要なものを、何かに譲れ渡してしまうことになります。」
の一文が印象的だった。
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孤独や閉塞感、喪失感といった長編でもお馴染みの重いテーマが扱われており、読み応え充分の短編集。
以下、各話の感想や記録
「レキシントンの幽霊」
不思議な事を自然現象のようにサラリと綴る。村上春樹らしい作品。
「緑色の獣」
なんだろう。村上春樹の描く異形のものは何故か怖くない。どこか愛嬌ごあり、そこはかとなく悲しみを漂わせる。それに比べて女性は怖いな。って感想であってますかね?
「トニー滝谷」
同名の映画『トニー滝谷』の原作。映画は市川準監督、イッセー尾形、宮沢りえ主演。観たのは10年以上前だったと思う。
倉庫のような部屋で故人が残した膨大な服に対峙する宮沢りえが印象的だった。
空調の音だけが聞こえる人工的な静寂のなか響く衣擦れの音、ハンガーが触れ合う音、 そしてすすり泣く声。理屈で説明できない感情が映像と音だけで伝わってきた。
なぜ泣くのか?原作も具体的な言及はない。ほぼ状況説明だけの淡々とした語り口だけど、不思議と得心が行く。不思議な魅力的がある作品です。
「七番目の男」
喪失感。短編とは思えないような読み応えのある作品。
「めくらやなぎと、眠る女」
耳の中に巣食う微小な蝿!緑色の獣とは異なりこいつは怖いです。
「沈黙」
ボクシングの話かと思いきや、、、イヤミスのようなストーリー。
「氷男」
氷男自体は怖くないのだけれど、、、この閉塞感は村上春樹の世界ですね。
登場した不思議な生物たち
・緑色の獣
・氷男
・めくらやなぎ
・耳の中に巣食う微小な蝿
・幽霊
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表題作とめくらやなぎと、眠る女
「いちばん辛いのは、怖いことなんだよ。実際の痛みよりは、やってくるかもしれない痛みを想像する方がずっと嫌だし、怖いんだ。」
「誰の目にも見えることは、それほど重要なことじゃない。」
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粒揃いの短編集。
不思議な体験は、現実に起こりそうな物もあり、ファンタジー色の強い物もある。
恐怖を扱った作品は、「怖い」を楽しむ、いわば娯楽としての恐怖小説とは少し異なる気がする。
「怖い」はどこから来るのか?なぜ「怖い」という感情が湧くのか?と、いろいろ考えさせられた。
この作品集で描かれる恐怖は、心が受けた深い傷から滲み出るもの、怖いけれど楽しいもの?想像に過ぎないもの?、女の心の中の恐ろしさ、人間の心の奥に残った消えることのない恐れの記憶が絶望的な未来を予感させるものなどさまざまである。気が付いていないだけで、まだ他にも隠されているかもしれない。
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作者の短編集読み漏らし②
ボリュームは200p弱だが、どの作品もかなりヘヴィーで読後に陰鬱なしこりが残る。
また全体的に示唆的で、作者の価値観・物の捉え方に対する提示がなされ、意外と他作にはない色合いを持つ。
コンセプチュアルとも言えるし、執筆当時の作者の心情にも思いを馳せれる、とても充実した内容だった。
Posted by ブクログ
『レキシントンの幽霊』意味深な言葉にやられる、近しい人の死の後こんこんと眠り続け起きると心理がわかった的なところも。『緑色の獣』女のいない男にも通づるテーマかなと。『沈黙』とても引き込まれた、大沢さんの正直さや語りに引き込まれた、ボクシングを気に入った理由のひとつは深みがあるから、深みを理解する行為、深みでは孤独、同級生との睨み合いで深みの存在を理解する、トラウマとともに。『氷男』巧みな比喩、氷的性質を持つものに精通しているが自身は透明、最期は主人公も氷男に侵されていくところがいい。『トニー滝谷』ネズミ三部作のような過程を過ぎて中年で孤独に気づく男の話、滝谷省三郎は沈黙で出てくる要領がいいだけの人間を思い浮かべられる、なんか昔話みたい、結局最後は孤独になりましためでたしめでたし。『七番目の男』独白会のようなものか、最後の文章が印象的で人は誰しも立ち向かう壁のようなものがあるのだと、それは恐怖であったり夢であったりもすると思う、Kくんが波の中でカプセルの中に入ってるように見えたことは非現実的だけどリアルなつまりシュルレアリスティックに感じて印象的だった。『めくらやなぎと、眠る女』記憶と現実について、冒頭の描写が好き、ラストは怖さを感じる、この作品だけ独立した感じがする。
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7編からなる短編集。
現実世界のようでありつつ、そこから一歩ズレたような、幻想的な雰囲気をはらんでいると感じました。
どの話も決してスッキリしないというか、モヤモヤ感が残るんですが、それでも読後感は良かった。
全体的に暗い雰囲気が漂ってますが、それが意外と、読んでて心地良かったです。
話は逸れますが、自分はこういう文学作品を読む際も、そのまま実直に読むというか、特に作品におけるメタファーは特に考えずに読む(というか、頭悪いので、そこまで思考が及ばない)ので、他の方の感想を見るとそこんとこ上手く言語化してて凄いと思った。
Posted by ブクログ
7つの短編からなる村上春樹ワールド、不思議な物語。独特なユーモラスな描写や心の奥底の的確な表現によって、物語に引き込まれていく。
ピアノ調律士であるジェレミーが住んでいるレキシントンのアパートで不思議な出来事。決してホラーではない。後半は深みのある哀愁を感じさせられる。
緑色の獣は何を伝えたかったのだろう。人の心に潜む獣の形は実は自分自身なのかもしれないと感じてしまう。
沈黙では、本当の怖さは迎合する人の本能のようなものが上手く表現され、疑問を提起している。メッセージ性の強さを感じる。
氷男、なぜ氷男なのだろう。深掘りすると面白い。髪の毛の白さ、物理的な冷たさや歴史上の凍結の話題、時空を超えて過去も未来もない世界。
トニー滝谷、トニー谷は大昔の芸人だが、それとは別だ。おもしろトナカイでもない。孤独とは何だろう。
七番目の男、読み始めはホラーの様相であった。過去の経験から生まれた心の暗闇に向き合い、その苦しみを乗り越えていく。それは自分の心の都合に合わせているかのようだ。
めくらやなぎと、眠る女では文章の美しさが目を惹く。文字から人物や風景が瞼に映し出されるほどに。
それぞれにテーマがあり、現代社会への問題提起をしているように感じた。読み手の想いや考え方次第でさまざまな色を着色できる作品だ。
Posted by ブクログ
面白かった。メッセージ性が強いものがいくつか。よくわからんものもいくつか。トニー滝谷が映画化されてなかなか高評価を受けてることに驚いた。映像化にはいいのかな
Posted by ブクログ
20年ぶりに再読した。どの作品もあまり印象に残っていなかったけれど、いま読むととても丁寧でおもしろい。
庭の地中から現れる獣と住人の女性が対峙する「緑色の獣」はいまこそ読まれて欲しいし、「氷男」の永久凍土、「トニー滝谷」の都市の暮らしでの、大波の描写が圧巻の「七番目の男」の、それぞれの絶対的な孤独に痺れる。また何年か後にも読みたい。
2025.02.17
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「めくらやなぎと、眠る女」が好き。
2005.05.29
Posted by ブクログ
特に印象に残っているのは、「レキシントンの幽霊」だ。明るいようなこわいような、不思議な伝統。
「氷男」も面白かった。氷は未来という概念gないにも関わらず、最後の結末(未来)は氷男自身わかっていた未来なのではと思うと、改めて彼は何者だろうかと思った。
短編であっても惹きつけられる世界観だった。
Posted by ブクログ
- 掴みどころがなく、ラストも明確な描写が少ない → 読者が汲み取る必要がある。
- ただ、その分文章に引き込まれるし、他では聞けない物語。
- 全編を通じて「恐怖」について描かれている印象。
- 恐怖にどう感じ、どう行動するのか。
- 自分が最も恐れるものは何か。
- 大事なものを失う前に理解し、目を逸らさずに向き合いたい。
Posted by ブクログ
村上春樹といえば幻想的・ファンタジーというイメージがあるが、この短編集は今まで読んできた村上春樹の中でも一番ファンタジー要素が強め、なんなら荒唐無稽のようなお伽噺のような作品集。今まで読んできたものは幻想的ではありつつ、それでもリアリティもあった、いやリアリティの中に幻想的なものがあったが、今作はほとんどが幻想的だった。
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綺麗な文章で意味は分からないけど良い感じ。村上春樹だなぁって感じ。いい意味でも悪い意味でも。もちろん好きなんだけど。
物語を読むというより、文章のリズムと雰囲気を楽しむ感じ、な気がする。まぁいいのか、これで。
Posted by ブクログ
恐怖の中にどこかポップさを
感じさせるストーリー。
言葉のリズムものりやすく、
とても読みやすいので
村上春樹入門としてもオススメ。
個人的には
『氷男』が好み。
Posted by ブクログ
ちょっと不思議で、様々な形の怖さが描かれた短編集。
短編だから一つ一つの作品はさっくり読めるけど、内容は何を伝えたいのかな?ってじっくり考えなきゃいけない感じでした。(自分としては)
個人的には『七番目の男』。恐怖との向き合い方が考えさせられました。
Posted by ブクログ
7つの短編で、旅の帰り道の新幹線にするっと読めた一冊。久しぶりに読んだ村上春樹はやっぱり、見かけは表面が平坦で、静かな波、なのに奥底に渦巻く深さは計り知れない感じ。何を考えてるのか想像しきれない微笑んでる上司みたいな怖さ。本は読み切ったけど、まだ読み切れてない気がする。また戻ってきたい一冊。
以下、本文より
- 私には未来というものがない。ただただ過去を積み重ねていくだけなのだ。
- 具体的な現実から遠いところにいる私たち子供
- 目に見えるものが存在せず、目に見えないものが存在する場所
Posted by ブクログ
「レキシントンの幽霊」★★☆☆☆
「僕が今ここで死んでも、世界中の誰も、僕のために そんなに深く眠ってはくれない」ってロマンチックで好き。結局幽霊の正体って何だったんだ?
「緑色の獣」★★★★☆
体が緑で手足がピンクで鼻が長い、想像すると色合いが気持ち悪い。ゾウとモグラを足したような感じかな。
中身は繊細で礼儀正しくて良い奴に思える。相手の心を読める能力を逆手に取り、残虐な妄想で獣を苦しめる女が怖い。なにも悪いことしてないのに殺された獣が可哀想。
「沈黙」★★★☆☆
青木が陰湿でうざい。青木の噂を信じて大沢を助けない学校側にも問題あると思う。最後大沢は弱りきったけど、青木の目が一瞬震えたから今だにビビってんのかな。だとしたら、大沢の勝ちな気もする。
「氷男」★★★☆☆
「南極にいるこの私の夫はかつての私の夫ではないのだ」南極をきっかけに私が孤独を感じる一文が切ない。
氷男が南極行きにあまり乗り気じゃなかったのは何でだろう。南極の方が彼はイキイキしてるのに。環境に適応しすぎて、私を阻害してまうことを恐れていたのか?
「トニー滝谷」★★★★☆
自分も1人が好きで孤独を愛してるのでトニーに共感できた。妻の服と父のレコードを捨て死者を綺麗さっぱり忘れて、気持ちを切り替えるラストは清々しい。ただ、結局は恐れてた孤独に戻ってしまった訳だから寂しそう。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか絶妙な終わり方が好き。
「七番目の男」★★★☆☆
波で飲み込まれる様子は3.11の津波の映像を思い出した。私はトラウマから逃げがちなので、トラウマと向きあい克服した私の姿勢を見習いたい。
「めくらやなぎと、眠る女」★☆☆☆☆
私といとこのやりとりがずっと続くだけでつまらなかった。
Posted by ブクログ
ただ「読む」だけではどれも抽象的な話の短編集。
読み終えてからネットで様々な人の考察を読むと、小説の楽しみ方、ハルキストの読解力の高さ、そして自分の想像力の浅さを痛感する。
村上春樹の作品は、登場人物の想像で繰り広げられるファンタジー、のような作品が多い気がする。だから親近感を抱くことができるし、現実の世界に希望を抱ける。
短編集のような毎日を多角的に、想像力豊かに過ごしてみようと思った。何かが変わるわけでなくとも。
Posted by ブクログ
恐怖はたしかにそこにあります。・・・・・それは様々なかたちをとって現れ、ときとして私たちの存在を圧倒します。しかしなによりも怖いのは、その恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうことです。そうすることによって、私たちは自分の中にあるいちばん重要なものを、何かに譲り渡してしまうことになります。私の場合にはそれは波でした
やけにリアル
トニー滝谷が個人的に一番村上春樹感を感じて好きだったな。上の波の話、7番目の男もリアルさとノスタルジーを感じて感情移入した。