【感想・ネタバレ】レキシントンの幽霊のレビュー

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『レキシントンの幽霊』意味深な言葉にやられる、近しい人の死の後こんこんと眠り続け起きると心理がわかった的なところも。『緑色の獣』女のいない男にも通づるテーマかなと。『沈黙』とても引き込まれた、大沢さんの正直さや語りに引き込まれた、ボクシングを気に入った理由のひとつは深みがあるから、深みを理解する行為、深みでは孤独、同級生との睨み合いで深みの存在を理解する、トラウマとともに。『氷男』巧みな比喩、氷的性質を持つものに精通しているが自身は透明、最期は主人公も氷男に侵されていくところがいい。『トニー滝谷』ネズミ三部作のような過程を過ぎて中年で孤独に気づく男の話、滝谷省三郎は沈黙で出てくる要領がいいだけの人間を思い浮かべられる、なんか昔話みたい、結局最後は孤独になりましためでたしめでたし。『七番目の男』独白会のようなものか、最後の文章が印象的で人は誰しも立ち向かう壁のようなものがあるのだと、それは恐怖であったり夢であったりもすると思う、Kくんが波の中でカプセルの中に入ってるように見えたことは非現実的だけどリアルなつまりシュルレアリスティックに感じて印象的だった。『めくらやなぎと、眠る女』記憶と現実について、冒頭の描写が好き、ラストは怖さを感じる、この作品だけ独立した感じがする。

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2024年02月26日

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ネタバレ

何冊か読んだ短編集の中では、一番読みやすかった。好きな話は表題作と「めくらやなぎと、眠る女」。「氷男」も、ひんやりと白い世界が広がり、それがなんともいえない孤独感と合わさってよかった。「緑色の獣」はちょっと可哀想な気もしたが、よく考えると厄介なストーカーなので仕方ない。私は村上作品に出てくる男女の醸す雰囲気が得意ではないのだが、本書はそれが気にならず、幻想小説を読んでいる感じに近かった。

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2023年09月09日

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ネタバレ

『レキシントンの幽霊』
何度読んでも不思議な作品。
ぞくぞくするけど、最後にはなんだかあたたかいような 恐ろしいような妙な気分になる。
ケイシーやケイシーの父は眠ることで死の存在を、死の世界を感じてたのかな。眠りが弔うことに繋がるというのは 今は想像もできないけど、もしかしたら分かるときがくるのかもしれないな。

『緑色の獣』
どうしてこんなにも傷つけることができるのだろうか。自分より弱いと分かった途端に、強い態度をとり なんの罪もない相手を苦しめる。とても悲しかったが、この社会でもよくあることだと思うと さらに胸が痛くなった。
もし、この獣が「私」自身であるとすれば、自分自身を殺したということか。それならばもっと辛いかもしれない。

『沈黙』
意図的に傷つける奴は言うまでもなく悪だが、人を傷つけていることさえも分からずに流される奴はもっと悪だ。しかし、後者のような人間になってしまうことのほうが多い気がする。私自身、自分を守るが故に、無意識のうちに罪に加担してしまっていたことも過去にはあったかもしれない。
奴らに屈しない自分でありたいし、他人の痛みを分かる人間になりたい。他人を傷つけるくらいなら、大沢のように逃げたい。深みを知る人になりたい。

『氷男』
みんな未来なんてなくて、過去を見て生きている。しかし、氷男は過去でも未来でもなく今の「私」だけを愛してくれる。そう聞くととても魅力的に思える。だが、それは過去も未来も切り捨ててずっと今を生きていくこと、このまま変わらないということを表す。
変化しないことを選んだのに、その状況に慣れれば退屈に感じて逃げ出したくなる、変化を求めるのは我儘なのかもしれない。
結局 主人公は自分を失ってこれからも変わることのない世界に閉じ込められるラスト。感情なんてその時々で変わるものだから仕方ないと割り切ってる私にとっては何とも辛い結末だった。変化するのも怖いが、変化しないのも怖いな。

『トニー滝谷』
孤独を知らなかったトニー滝谷が 大切なものを失うことを初めて知る。そして、その喪失から本当の孤独を初めて知る。
淡々と描かれる孤独な人生になんとも言い表せない気分になる。結末では完全に孤独となってしまったトニー滝谷だが、息苦しさや煩わしさはあっても不思議と冷たさや辛さは感じられない。妻が生きているときでさえ、幸福さや他の感情がそこまで感じられなかった。失う恐怖はあったが。とにかく最初から最後まで淡々と過ごしているのがなんとなく奇妙さを生み出している。

『七番目の男』
心底に棲みつく罪悪感が悪夢へと変わり、Kを恐怖の対象としてしか見られなくなっていたんだな。それがKの絵に触れることで、あたたかくて優しい記憶が蘇っていくようで良かった。
自分の抱えている恐怖やトラウマと向き合うのはそう容易いことではない。だが、これまで過ごしてきた記憶を辿ることで、ずっと心を支配していた何かがすっと消えていくこともあるのかもしれないと思った。過去に囚われずっと同じ場所で生きるのではなくて、たまに過去を大切に見つめながら前を向いて歩きたい。

『めくらやなぎと、眠る女』
他人の心の傷に気付かない、あるいは気付かないフリをする。それはとても冷淡なように思えるが、そうすることで自分が傷つかないで済むのならそうしてしまうのかもしれない。主人公が耳が悪いいとこと過ごす中で、過去に見過ごしてきた人の痛みに気づくところが印象的。心に抱えている闇があの独特な詩に表されているのも面白い。
未読の『ノルウェイの森』を読みたくなるような作品だった。

これが初めて私が触れた村上春樹の作品で思い入れがある。この不思議な世界観に惹き込まれて、しばらく戻ってこれなくなるような奇妙な感覚がとても好き。他の作品も読もう。

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2021年08月25日

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ネタバレ

7つの短編。緑色の獣と沈黙、7番目の男が印象的。
トニー滝谷
人を失い、ものを失うという話の進み方がより喪失感を重くさせた。

恐怖を取り戻し、生まれ変わった男。逃げることは何かを失う事。恐怖は波と人生と親友を奪った。

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2021年06月24日

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「レキシントンの幽霊」★★☆☆☆
 「僕が今ここで死んでも、世界中の誰も、僕のために     そんなに深く眠ってはくれない」ってロマンチックで好き。結局幽霊の正体って何だったんだ?

「緑色の獣」★★★★☆
 体が緑で手足がピンクで鼻が長い、想像すると色合いが気持ち悪い。ゾウとモグラを足したような感じかな。
 中身は繊細で礼儀正しくて良い奴に思える。相手の心を読める能力を逆手に取り、残虐な妄想で獣を苦しめる女が怖い。なにも悪いことしてないのに殺された獣が可哀想。

「沈黙」★★★☆☆
 青木が陰湿でうざい。青木の噂を信じて大沢を助けない学校側にも問題あると思う。最後大沢は弱りきったけど、青木の目が一瞬震えたから今だにビビってんのかな。だとしたら、大沢の勝ちな気もする。

「氷男」★★★☆☆
 「南極にいるこの私の夫はかつての私の夫ではないのだ」南極をきっかけに私が孤独を感じる一文が切ない。   
 氷男が南極行きにあまり乗り気じゃなかったのは何でだろう。南極の方が彼はイキイキしてるのに。環境に適応しすぎて、私を阻害してまうことを恐れていたのか?

「トニー滝谷」★★★★☆
 自分も1人が好きで孤独を愛してるのでトニーに共感できた。妻の服と父のレコードを捨て死者を綺麗さっぱり忘れて、気持ちを切り替えるラストは清々しい。ただ、結局は恐れてた孤独に戻ってしまった訳だから寂しそう。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか絶妙な終わり方が好き。

「七番目の男」★★★☆☆
 波で飲み込まれる様子は3.11の津波の映像を思い出した。私はトラウマから逃げがちなので、トラウマと向きあい克服した私の姿勢を見習いたい。

「めくらやなぎと、眠る女」★☆☆☆☆
 私といとこのやりとりがずっと続くだけでつまらなかった。

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2024年05月07日

Posted by ブクログ

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僕が本当に怖いのと思うのは、青木のような人間の言い分を無批判に受け入れて、そのまま信じてしまう連中です。自分では何も生み出さず、何も理解していないくせに、口当たりの良い、受け入れやすい他人の意見に踊らされて集団で行動する連中です。沈黙
目に見えるものが存在せず、目に見えないものが存在する場所に。めくらやなぎと、眠る女
どの話も一見怖い話。でも、最後まで読んでみると、少しの希望が見えてくるような短編集。
短いからこその説得力みたいなものがある。

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2021年10月02日

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