村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『街とその不確かな壁』を読んだので、こちらも読みたくなり再読。
やっぱり私にとってはこの作品が村上春樹の最高傑作である(結構多くの人にとってそうだとも思いますが)。
以下、下巻の感想もまとめて書きます。
上巻の何かが起きるワクワク感は本当にたまらない。
設定も突飛ではあるし、かなり説明少なく読者の想像に任せる部分も多いのだが(やみくろとか)、そういうものとして淡々と進むから逆に違和感なく読めるのが不思議。主人公がいちいちびっくりしないのも受け入れやすさに影響してるのかもしれない。
とにかく話の展開と構成力、こちらの想像をかきたてる描写力にグッと引き込まれてしまう。
下巻はさらに物語に引き込まれ、少しは明らかになることもありながら、それ以上に主人公の心理描写が何より魅力的に感じる。こんな突飛な設定のなかで、こんな壮大な物語の中で、結局村上春樹が1番書きたいことはこのモノローグなんじゃないかと思うような、主人公の世界との向き合い方。全然自分とは違う世界なのに、なぜか共感して心が静かに揺さぶられて、切なくなる。
物語の解釈は色々できるし、それも語ってみたいけど(やみくろとは?とか、2つのパートの対応とか、ラストをどうとらえるかとか)、でもやっぱりこのモノローグを純粋に受け取るだけで十分な気もしてしまうのだ。
あとはピンクのスーツの女の子が好きすぎました。
チャーミングなキャラを作り出すものだなぁ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ全6巻の小説だから最終巻で描かれるんだろなと予想していた出来事が全部もう起きた!
これまで読んだ本、観た映画の中でも断トツに醜悪でおぞましい、カルト集団のリーダー
そのリーダーの暗殺を請け負った優秀な女アサシン青豆
青豆が同情のカケラもなくリーダーを瞬殺してくれることを信じてここまで読み進めてきた
この巻で両者が接触し、青豆との会話の中でリーダーの鬼畜の所業の理由が明かされる
それは時空を超え、次元をまたぎ、作用反作用の法則に従うものだった
そしてそれを読んでいたら自分でも驚くことに、リーダーを消し去って欲しい気持ちに揺らぎが生じた
物語の青豆も暗殺を躊躇っている
思考の深奥から、闇の奥底から、村上春樹が連れてきた何か(真理なのか狂気なのか?)をこのエピソードに落とし込んだに違いない!
そのせいで自分自身の世界観、価値観までおかしくなった気がする
『でもいくつかの視点から自分の立ち位置を眺めることができるようになると、言い換えれば、自分という存在を何か別の体系に託せるようになると、世界はより立体性と柔軟性を帯びてきます。』
(村上春樹『職業としての小説家』新潮文庫)
All the events I expected to be reserved for the final volume of this six-part novel have already transpired.
Among all the books I have read, among all the films I have watched, never has there been a cult leader so exceptionally grotesque and repulsive.
Aomame, the highly skilled female assassin assigned to kill him.
Trusting wholly that Aomame would dispatch the leader without a shred of sympathy, I have followed this story until now.
In this volume, the two finally meet; through their conversation, the reasons for the leader’s monstrous deeds are laid bare.
These motives, transcending time and space, spanning dimensions, are described as following the law of action and reaction.
And as I read, to my own surprise, my desire to see the leader erased began to falter.
Even within the story, Aomame hesitates to carry out the assassination.
From the depths of thought, from deep in the darkness, Murakami has surely drawn forth something—be it truth or madness—and poured it into this episode.
Because of this, I feel my own worldview, my very system of values, has been fundamentally unsettled.
@A hotel in Santa Clara -
Posted by ブクログ
一冊をひとりで翻訳する、それは孤独な作業。道をひとりぽっちで歩いてゆかねばならない。本書はその旅のおともになる。弱気になった時に読み返すと、少しだけ元気をもらえる。
3つのフォーラム――1996年東大駒場、1999年翻訳学校、2000年若い翻訳家6人と――を収める。若い翻訳者のなかには、25年前の岸本佐知子や都甲幸治もいる。
カーヴァーとオースターの短篇を村上・柴田がそれぞれ訳している、その比較が興味深い。もともと波長が合うためか、ふたりの訳文がそんなに違っていないような印象も受ける。
村上も柴田も勢いがあるのががいい。まだふたりとも、ほぼほぼの40代だもん。 -
Posted by ブクログ
読み応え…!!
この物語から何かを見い出そうとしながら読み進むものの、掬い取れずにこぼれ落ちていくような歯痒さ。それでも一文一文の美しさや重くもあり軽くもあるような文体に引き込まれ、"理解度"なんて表面的なものに捉われずに突き進む気持ちよさ。そのような感覚を終始味わう読書体験であった。
とはいえ、自分なりにこの物語のテーマは?と考えてみると、「深いトラウマを抱えた人間が分裂を経て自我とシャドウを統合するプロセス」と言えるかなと思う。影をなくすというのは、過去のトラウマや心の深い部分を直視出来ず、"なかったことにする"ことかなと。影をなくすと、"記号"のような人格が残る。その人格だけでも、社会性を持って形として生きていくことは出来る。でも人と深く繋がったり感動したりすることは出来なくなってしまうのではないか。
下巻で登場するイエローサブマリンの少年は、恐らく主人公の心の深い部分を刺激し、影を思い起こさせてくれた存在なのだろう。最後のシーンが印象的で静かに感動した。
「あなたの心は空を羽ばたく鳥です。…あなたの分身が、そのあなたの勇気ある落下を、外の世界でしっかり受け止めてくれることを、心の底から信じればいいのです」
更に考えていくと、私の場合は瞬間風速的なトラウマによって壁の街を意識の中に拵えた感覚はないけれど、どちらかというとじわじわと、家庭環境や社会的なコミュニティの中で、"世間の目"のような壁に360°取り囲まれた街に住んでいる感覚はある。この物語の壁は、ディストピア要素もありながらどちらかと言えば"自分を守るため"の孤独だけど平穏で安心出来るユートピアでもある気がする。一方で私のイメージする世間の目に囲まれた街は、もっとディストピア感が強い。ジョージオーウェルの1984年のそれに近いような。
影を完全に切り離して壁に囲まれた街に身を置くプロセスは、1人の人間として統合された成熟を得るために、私にも必要なプロセスなのかもしれない等とも考えた。
※なぜ門番ではなく門衛という言葉に変わっていたのか、些末なことだけどなにか引っかかることも備忘までに記しておきたい。
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Posted by ブクログ
「ノルウェイの森」や「1Q84」でお馴染みの村上春樹さんがご自身の持っているTシャツ(アメリカで1ドルくらいで購入したものや貰ったものなど)をひたすら紹介していくだけエッセイ。
実は私はこれまで村上春樹さんの本を1冊も読んだことがなくて(最初だけ読んで「あ、苦手かも」と本を閉じた記憶だけある)、更に言うと何歳なのかどんな見た目をしているのかも全く知らなかった。洋楽が好きで、レコードも集めたりしていてどことなく自分の父親に近い趣味を持っていて、マラソンをやったりラジオDJをやったりとアクティブな方で、自分が想像していたより高齢の方だったことがこの本を読んでわかりました。
そして何よりTシャツを語る時の文章がとても面白い。短い文章の中に、丁寧な描写と適度なユーモアを織り交ぜており、気楽に読めて、シンプルにエッセイとしても面白かったです。
今のところ「じゃあ他の村上春樹の作品を読もう」とはなっていませんが(ある種満足しちゃった感があるので)、村上春樹さんの作品にハードルの高さを感じている多くの人にとっては良い入口になってくれるのではないでしょうか。