村上春樹のレビュー一覧

  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    『街とその不確かな壁』を読んだので、こちらも読みたくなり再読。
    やっぱり私にとってはこの作品が村上春樹の最高傑作である(結構多くの人にとってそうだとも思いますが)。
    以下、下巻の感想もまとめて書きます。

    上巻の何かが起きるワクワク感は本当にたまらない。
    設定も突飛ではあるし、かなり説明少なく読者の想像に任せる部分も多いのだが(やみくろとか)、そういうものとして淡々と進むから逆に違和感なく読めるのが不思議。主人公がいちいちびっくりしないのも受け入れやすさに影響してるのかもしれない。
    とにかく話の展開と構成力、こちらの想像をかきたてる描写力にグッと引き込まれてしまう。

    下巻はさらに物語に引き込まれ、少しは明らかになることもありながら、それ以上に主人公の心理描写が何より魅力的に感じる。こんな突飛な設定のなかで、こんな壮大な物語の中で、結局村上春樹が1番書きたいことはこのモノローグなんじゃないかと思うような、主人公の世界との向き合い方。全然自分とは違う世界なのに、なぜか共感して心が静かに揺さぶられて、切なくなる。

    物語の解釈は色々できるし、それも語ってみたいけど(やみくろとは?とか、2つのパートの対応とか、ラストをどうとらえるかとか)、でもやっぱりこのモノローグを純粋に受け取るだけで十分な気もしてしまうのだ。

    あとはピンクのスーツの女の子が好きすぎました。
    チャーミングなキャラを作り出すものだなぁ。

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    2025年11月19日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉後編―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    全6巻の小説だから最終巻で描かれるんだろなと予想していた出来事が全部もう起きた!

    これまで読んだ本、観た映画の中でも断トツに醜悪でおぞましい、カルト集団のリーダー
    そのリーダーの暗殺を請け負った優秀な女アサシン青豆
    青豆が同情のカケラもなくリーダーを瞬殺してくれることを信じてここまで読み進めてきた

    この巻で両者が接触し、青豆との会話の中でリーダーの鬼畜の所業の理由が明かされる
    それは時空を超え、次元をまたぎ、作用反作用の法則に従うものだった
    そしてそれを読んでいたら自分でも驚くことに、リーダーを消し去って欲しい気持ちに揺らぎが生じた
    物語の青豆も暗殺を躊躇っている

    思考の深奥から、闇の奥底から、村上春樹が連れてきた何か(真理なのか狂気なのか?)をこのエピソードに落とし込んだに違いない!
    そのせいで自分自身の世界観、価値観までおかしくなった気がする

    『でもいくつかの視点から自分の立ち位置を眺めることができるようになると、言い換えれば、自分という存在を何か別の体系に託せるようになると、世界はより立体性と柔軟性を帯びてきます。』
    (村上春樹『職業としての小説家』新潮文庫)

    All the events I expected to be reserved for the final volume of this six-part novel have already transpired.

    Among all the books I have read, among all the films I have watched, never has there been a cult leader so exceptionally grotesque and repulsive.
    Aomame, the highly skilled female assassin assigned to kill him.
    Trusting wholly that Aomame would dispatch the leader without a shred of sympathy, I have followed this story until now.

    In this volume, the two finally meet; through their conversation, the reasons for the leader’s monstrous deeds are laid bare.
    These motives, transcending time and space, spanning dimensions, are described as following the law of action and reaction.
    And as I read, to my own surprise, my desire to see the leader erased began to falter.
    Even within the story, Aomame hesitates to carry out the assassination.

    From the depths of thought, from deep in the darkness, Murakami has surely drawn forth something—be it truth or madness—and poured it into this episode.
    Because of this, I feel my own worldview, my very system of values, has been fundamentally unsettled.

    @A hotel in Santa Clara

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    2025年11月19日
  • 翻訳夜話

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    一冊をひとりで翻訳する、それは孤独な作業。道をひとりぽっちで歩いてゆかねばならない。本書はその旅のおともになる。弱気になった時に読み返すと、少しだけ元気をもらえる。
    3つのフォーラム――1996年東大駒場、1999年翻訳学校、2000年若い翻訳家6人と――を収める。若い翻訳者のなかには、25年前の岸本佐知子や都甲幸治もいる。
    カーヴァーとオースターの短篇を村上・柴田がそれぞれ訳している、その比較が興味深い。もともと波長が合うためか、ふたりの訳文がそんなに違っていないような印象も受ける。
    村上も柴田も勢いがあるのががいい。まだふたりとも、ほぼほぼの40代だもん。

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    2025年11月19日
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(新潮文庫)

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    80年代に書かれた当作は「羊をめぐる冒険」と同様ファンタジー要素が極めて強い。しかし全く荒唐無稽と感じないのはストーリーはあくまでリアリティを中心に構成されているからだと思われる。主人公の行動や考え方にはなんら普遍性を超越する要素はなく、だからこそ共感と興味を覚え易い。「四谷の雙葉」や「都立志村高校」など実名の固有名詞がためらいなく使われていることも作品の信頼性を高め、上下巻の長いストーリーだが良質の緊張感を持って飽きなく読み進められる。

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    2025年11月16日
  • 街とその不確かな壁(下)(新潮文庫)

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    これは村上春樹の最後の長編作品になるかもしれない。そう思った。

    時計の針が進むこと、自らが老いていくこと。世界は変化を嫌うが、それこそが生きている証なのだろう。

    日々、失敗を繰り返し、過去の栄光を思い返し嘆くこともあるが、そんな自分が美しいんだろうな…

    本作も村上春樹ワールド全開であったな〜

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    2025年11月12日
  • 街とその不確かな壁(下)(新潮文庫)

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    読み応え…!!

     この物語から何かを見い出そうとしながら読み進むものの、掬い取れずにこぼれ落ちていくような歯痒さ。それでも一文一文の美しさや重くもあり軽くもあるような文体に引き込まれ、"理解度"なんて表面的なものに捉われずに突き進む気持ちよさ。そのような感覚を終始味わう読書体験であった。

     とはいえ、自分なりにこの物語のテーマは?と考えてみると、「深いトラウマを抱えた人間が分裂を経て自我とシャドウを統合するプロセス」と言えるかなと思う。影をなくすというのは、過去のトラウマや心の深い部分を直視出来ず、"なかったことにする"ことかなと。影をなくすと、"記号"のような人格が残る。その人格だけでも、社会性を持って形として生きていくことは出来る。でも人と深く繋がったり感動したりすることは出来なくなってしまうのではないか。

     下巻で登場するイエローサブマリンの少年は、恐らく主人公の心の深い部分を刺激し、影を思い起こさせてくれた存在なのだろう。最後のシーンが印象的で静かに感動した。

    「あなたの心は空を羽ばたく鳥です。…あなたの分身が、そのあなたの勇気ある落下を、外の世界でしっかり受け止めてくれることを、心の底から信じればいいのです」

     更に考えていくと、私の場合は瞬間風速的なトラウマによって壁の街を意識の中に拵えた感覚はないけれど、どちらかというとじわじわと、家庭環境や社会的なコミュニティの中で、"世間の目"のような壁に360°取り囲まれた街に住んでいる感覚はある。この物語の壁は、ディストピア要素もありながらどちらかと言えば"自分を守るため"の孤独だけど平穏で安心出来るユートピアでもある気がする。一方で私のイメージする世間の目に囲まれた街は、もっとディストピア感が強い。ジョージオーウェルの1984年のそれに近いような。

     影を完全に切り離して壁に囲まれた街に身を置くプロセスは、1人の人間として統合された成熟を得るために、私にも必要なプロセスなのかもしれない等とも考えた。

    ※なぜ門番ではなく門衛という言葉に変わっていたのか、些末なことだけどなにか引っかかることも備忘までに記しておきたい。


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    2025年11月10日
  • 職業としての小説家(新潮文庫)

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    エッセイとか村上春樹の考え方を知れば知るほど、小説の方も好きになる。まだあんまり読めてないけど。
    難しい言葉を並べなくても良いし、人を感心させる表現をしなくてもいいんだ、というところが小説を書かない自分にとっても響いた。
    余計な言葉は足さずに、簡潔なのに心に響く文、確かにそんな表現をできるようになりたい。

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    2025年11月10日
  • 街とその不確かな壁(上)(新潮文庫)

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    十年ぶりくらいの村上春樹。村上春樹らしい村上春樹。
    最初は抵抗がある。村上春樹の小説はどれもそうだけど、「よくわからんどうでも良い童貞の妄想」を聞かされているような気分になる。それが不思議なことにある程度まで進むと、村上春樹ワールドに浸かって、村上春樹を読む時間が心地良くなる。
    久々に村上春樹、良いなーと感じている。下巻にも期待。

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    2025年11月07日
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上下)合本版(新潮文庫)

    購入済み

    ドアの一枚もない

    「僕のドア…」
    「ドアのことは言うなって言っただろう!」
    チビと大男が主人公の部屋に来た際のやり取りが一番好き。

    #深い #ドキドキハラハラ #シュール

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    2025年11月06日
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(新潮文庫)

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    村上春樹さんの超名作。これまでも繰り返し何度も読んできましたが、Audible でも聴いてみました。読むのとはまた違う没入感があっていいですね。ランニングのお供にすると、続きが聴きたくて毎日でも走りたくなります!

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    2025年11月04日
  • 海辺のカフカ(上)(新潮文庫)

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    前情報なしに、有名な作品だからどんなものかと思い手に取った本。村上春樹の本はほとんど読んだことがない。この一冊で村上ワールドのテイストを判断するわけにはいかないけれど、これは哲学や超常現象が入り混じっていて、少し頭が追いついていかない。家出少年田村カフカと不思議な事件をきっかけにそれまでの記憶を一切失くし読み書きができなくなった老人男性ナカタさんがどこでどう交わるのか、事件の真相は何なのか。
    結果的にこの小説はリアルなのかリアルじゃないのか早く結論が知りたい!

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    2025年11月04日
  • ねじまき鳥クロニクル―第1部 泥棒かささぎ編―(新潮文庫)

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    あーめちゃくちゃ面白かった。
    リアルともファンタジーとも言い切れない不思議な世界を、私は駆け抜けた。
    私は村上春樹の本を刊行順に読むという個人的なプロジェクトをしていて「ねじまき鳥クロニクル」の番がやってきたわけですが、こうして辿ってくると、村上春樹という人が書く物語りがどんどん立体的に拡張していくのが感じられる。
    この話では歴史までもが現れてきた。
    絶対なんかのメタファーの詰め合わせで、考察しがいがあるんだろうけど、ただこの物語だけで私は駆け抜けた。
    意味が不在でも、この物語はとても、とても面白い!

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    2025年11月03日
  • パン屋再襲撃

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    この本は、まさに春樹ワールドといった感じの本で、とても気に入りました。
    少し現実離れして、哲学的で、詩的な感じがとてもよかったです。

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    2025年11月03日
  • ラオスにいったい何があるというんですか?

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    よかった。
    旅行がもともと好きだが、最近は旅行に意味を求めるものが多かった(有名な観光地を巡るためや何かを食べるためなど)。
    この本を読んで凝り固まった自分の旅行観たるものが解された気がした。

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    2025年11月03日
  • 遠い太鼓

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    20年前、アメリカ留学のお供に連れて行った本。本が出版されたのはそれより更に10年前なので、読んでいると20年前の自分と30年前の空気が一緒に降ってくる。
    あー どこか行きたいな

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    2025年11月02日
  • 村上T 僕の愛したTシャツたち

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    「ノルウェイの森」や「1Q84」でお馴染みの村上春樹さんがご自身の持っているTシャツ(アメリカで1ドルくらいで購入したものや貰ったものなど)をひたすら紹介していくだけエッセイ。
    実は私はこれまで村上春樹さんの本を1冊も読んだことがなくて(最初だけ読んで「あ、苦手かも」と本を閉じた記憶だけある)、更に言うと何歳なのかどんな見た目をしているのかも全く知らなかった。洋楽が好きで、レコードも集めたりしていてどことなく自分の父親に近い趣味を持っていて、マラソンをやったりラジオDJをやったりとアクティブな方で、自分が想像していたより高齢の方だったことがこの本を読んでわかりました。
    そして何よりTシャツを語る時の文章がとても面白い。短い文章の中に、丁寧な描写と適度なユーモアを織り交ぜており、気楽に読めて、シンプルにエッセイとしても面白かったです。
    今のところ「じゃあ他の村上春樹の作品を読もう」とはなっていませんが(ある種満足しちゃった感があるので)、村上春樹さんの作品にハードルの高さを感じている多くの人にとっては良い入口になってくれるのではないでしょうか。

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    2025年11月01日
  • 街とその不確かな壁(上)(新潮文庫)

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    若いときの物語と同じモチーフだけど、しっとりとやさしい雰囲気で、作者の落ち着きを感じる。
    無意識の下に釣り糸を垂れる作業が小説を書くことだと対談などで話していたのがうなづけた。ただ、この作品では、個人の無意識下と周囲のそれがつながっていることを表している気がする。その壁が不確かなのではないか?

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    2025年10月30日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉前編―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    少しずつ物語の全容が明らかになってきている。青豆は感情を排して仕事に徹する思っていた。青豆の心情の変化が気になる。全体の感想は最後に。

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    2025年10月30日
  • パン屋再襲撃

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    なんと約40年前の著作。今よりも閉塞感が少なく希望に満ちていた時代の空気感が感じられます。村上春樹さんの文章も力強く若々しい気が。面白かったです。ここから名作、ねじまきどりクロニクルに繋がるんですね。

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    2025年10月19日
  • 世界で最後の花 絵のついた寓話

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    冒頭に作者が娘に対して書く。
    「君の住む世界が、私の住む世界よりもっと善き場所に、なっていることを祈って」
    しかし出版した年に、ナチスがポーランドに侵攻。
    本作では愛すら失った人類が、一輪の花を大切にすることで、ハチドリがやってきて、森が生まれ、人類は再び愛を知る。
    エミリ・ディキンスンの詩に 草原に必要なのはクローバーひとつとミツバチ とあるが、そんな美しさがある。
    だが結局人類は争いを起こすのだが…

    シンプルな話だけど、感動した。

    ほぼ全盲の作家が描いた本作。作家は自分の絵がうっすらとしか見えていなかったらしい。

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    2025年10月18日